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傾聴とは|介護の現場で使える傾聴の技術、方法についても解説

テクニック
傾聴とは、相手の話を聴くだけでなく、相手がおかれている状況や気持ちを理解し、共感することが必用なコミュニケーション技術です。傾聴は介護の現場で活用することでワンランク上のケアができ、高齢者との信頼関係も築けます。
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(1)傾聴とは

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/348257

対人援助においては、直接会話をする場面が多々あります。そのなかでも「傾聴」の技術次第で、相手との関係性が大きく変わります。

「傾聴」は、アメリカの心理学者であるカール・ロジャースによって提唱されたカウンセリングの手法のひとつで、日本でも介護分野だけでなく医療や児童福祉などの分野でもカウンセリングの際に活用されています。

傾聴とは、話をしている相手がこちらを信頼し、本音や悩みなどを自ら話してくれるような良好な人間関係を築くためのコミュニケーション技術です。そのためには、相手の話を聴くだけでなく、相手がおかれている状況や気持ちを理解し、共感することが必用です。また、相槌のタイミング、聴くときの表情や姿勢なども重要な要素なのです。

この記事では、現場で使える傾聴のやり方、やってはいけないことについてご説明します。

(2)介護現場における傾聴の重要性

人は誰でも自分のことを認めてもらいたいという「自己肯定」の欲求があります。特に高齢者は老後への不安や社会的や役割を失うことでの失望感や独居生活での孤独感などから、自分の話をするのが好きという人が多いのが特徴です。このため介護現場でも“傾聴”は、とても重要な技術なのです。

在宅介護の現場

在宅生活においては、65歳以上の男性13.3%、女性21.1%が独居となっており、家の中で話す機会が皆無といえるような高齢者が増えています。

また、家族が居ても日中は仕事に行ってしまい、帰宅しても食事や入浴を済ませると寝てしまい、会話が少ない家族も少なくありません。

このため高齢者は不安や心配事、悩みなどを聞いてくれる人がいないことで、高齢者うつなどを患ってしまうことがあります。また、会話をしないことで口腔機能が落ちたり、脳への刺激が減ることで認知症のリスクが高くなることもあります。さらには、「話を聴いてくれる人」=「いい人」となり、詐欺などの被害にあってしまうこともあります。

(参考:内閣府「平成29年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況」)

施設介護の現場

施設介護は、多くの高齢者がいるから話しやすいと思いがちですが実際には自分の話をしたい、でも難聴や性格などから人の話は聞かない(聞けない)という人が多く、世間話はしても、深い話ができる状況ではありません。また、施設介護での介護スッタフは多くの高齢者の対応に追われており、一人一人の話を傾聴するようなことは難しい状況です。

高齢者への傾聴の重要性

高齢者が不安や孤独な気持ちを伝える場面がないのは、在宅においても施設においても一緒です。しかし、介護現場において支援者は、高齢者がどんなことを思っているのか、どうしたいのか、何が問題なのかが分からなければ本当に必要なケアができません。限られた時間のなかでも相手の本音を聞き出す事、信頼を得ることはケアをしていくうえで重要なことなのです。

(3)傾聴をするときの3つのポイント

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1872769

介護現場での“傾聴”の必要性、重要性が分かったところで、この章では、傾聴の方法として技術的なポイントを3つご説明します。

受容

傾聴のポイント1つ目は、“受容”です。これは、相手の話をすべて聞き入れることです。

たとえ相手の話に矛盾があったり、考え方が間違っていても、それを否定したり、話を遮ることなく最後まで話を聴くことです。話を最後まで聴きいれてくれたことで相手からの信頼が得られます。

共感

傾聴のポイント2つ目は、相手の感情に共感することです。

例えば、話し手の「怖かった」、「辛かった」という話に付随している感情に対して、「それは怖いですよね」、「とっても辛かったね」と傾聴する側も相手と同じ言葉を使い、繰り返すことです。聴いている方も同じ感情ですよという表現することで、相手は「この人は私の気持ちが分かってくれる」と思い、信頼関係を築くことができます。

ここが“話を聞く”と“傾聴”の大きな違いのひとつです。

支持

傾聴のポイント3つ目は、相手の考えや意見に対して支持していることや理解していることを態度で伝えます。

例えば、話に対して簡単な質問を返したり、「私もやってみたい」と感心を示したり、「そうだよ、あなたの言う通りやってみたほうがいいよ」と応援したりすることで、「この人は私の味方だ」とさらに信頼を得ることが出来ます。また、話が長くなりすぎないようにすることにもつながります。

この支持が傾聴の大きなポイントになります。

(4)傾聴の具体的なやり方 姿勢

前章で傾聴は話の聴き方のポイントを説明しましたが、話を聴くときの基本的な姿勢(態度)も重要な要素になります。ここでは、アメリカの心理学者であるカール・ロジャースが挙げた3つの基本姿勢についてご説明します。

自己一致

「見せかけやうわべだけの態度ではなく、ありのままの自分でいるときに、クライエントと真の援助関係が成り立つ。一致とは感じたことと言葉にズレがないこと」と提唱しています。

例えば、友人の奥さんから美味しくない料理をだされたときに「美味しいです」というのは嘘になりますが、「まずい」と言えば角が立つ。そこで「こういう料理が好きなんですね」と言えば、嘘でもなく、角も立たない、それでいて素直な意見を言える、ということです。

言葉で表現するのは簡単ですが、自分のなかで感じたことと言葉にズレがない自己一致を行うのは奥の深い技術が必要です。

無条件の肯定的配慮

相手を選択することもなく尊重し、相手の存在や考え、行動などを評価せずに無条件に受け入れることです。これも言葉で表現するのは簡単ですが、相手を大切して、尊重し、受容するのは非常に奥の深い技術です。

共感的理解

共感的理解とは、まず「クライエントの私的な世界を、あたかも自分自身のものであるかのように感じる」ことを行ったうえで、その世界に巻き込まれず、客観的に理解をすることです。

これも、言葉の意味は分かりますが、共感することと客観的に理解するという背反する作業は、とても高度な技術です。

(5)傾聴の具体的なやり方 話し方

ここまでは、傾聴をする際の聴き方と姿勢をご説明しましたが、この章ではもう一つ上のレベルとして、あなたの話し方や質問の仕方についてご説明します。

この技術を使うことで、相手がより話しやすい雰囲気を作ることができます。それには、相手が話しやすくなる言葉を使って言葉を返します。

例として

「その話、もっと詳しく聴かせてください」

「そのあと、どうなったんですか」

などの声掛けの方法があります。

このような言葉は、「あなたの話に興味を持ってますよ」、「もっと話を聴きたいですよ」という意思表示となり、相手は気持ちよく話を続けていくことが出来ます。

さらには本音なども聴けてコミュニケーションが円滑に、そして信頼関係が深くなっていきます。このことで、相手のことを深く知ることが出来たり、今まで知らなかった一面をみることができます。

(6)傾聴をする際にNGなこと

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1634947

ここまで“傾聴”の技術についてご説明してきました。「早速実践で使ってみたい!」と試す前に注意すべき点があります。傾聴もやり方を失敗すると信頼関係が築けるどころか相手が心を閉ざしてしまうことがあります。

この章では、傾聴のNGを挙げたので同じことをしないように注意してください。

  • 相手の話に対して求められていないアドバイスをする
  • 相手の話の内容を否定や反対意見、批判、説得をする
  • “共感”ではなく、上から目線で“同情”する
  • 相手よりも利き手の話が長い
  • 相手の話を遮る、または相手が話している途中で利き手が話をかぶせる
  • 相手の話に集中していない(無反応やうわべだけの反応)
  • 話し手が考えていたり沈黙しているときに、利き手が話をしてしまう
  • 話を広げるためではなく、利き手が聞きたいことを質問する
  • 利き手が結論にむけて話を誘導する
  • 「ごめん、忙しいから、またあとで」と話を終了してしまう

介護スタッフは多くの利用者の対応で忙しく丁寧な対応が難しいとは思いますが、こういった対応は相手の信用を損ねてしまうだけでなく、気を引こうとしてトラブルを起こすことがあります。対応には十分注意しましょう。

(7)傾聴における効果とは

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/970138

ここまで“傾聴”の技術、そして注意すべきNG集をお伝えしましたが、思っていたよりも「難しい」、「奥が深い」と思った方も多いと思います。しかし、“傾聴”が“話を聞く”こと違うのは、多くの効果が得られる点です。この章では傾聴で得られる効果をご紹介します。

相手(高齢者)

  • 信頼できる相手ができて、孤独感を解消できる
  • 不安や悩み、困りごとなどの話ができて問題を解消できる
  • 話す事で自分自身のなかで気持ちの整理ができる

自分(介護側)

  • 利用者である高齢者のことを深く知ることが出来る
  • 高齢者の気持ちの変化や状況の変化に気づき、的確なサポートが可能になる
  • 認知症や高齢うつなど、対応が難しい相手との信頼関係が築ける
  • 介護の専門職として、コミュニケーション能力のレベルを上げられる
  • 高齢者以外にも、職場や家族、友人にも活用できるので、人間関係を良好にすることができる

(8)傾聴の技術を活かせる傾聴ボランティアとは

高齢者の話を傾聴することが大事なことというのはわかりましたが、介護保険サービスのなかでは話をじっくり聴いてあげられないというのが実情です。そんななか注目を集めている支援があります。

傾聴ボランティア

傾聴ボランティアとは、傾聴に関する技術を学んだ人たちが「誰かの役に立ちたい」という気持ちで行っているボランティアです。ボランティア活動なので利用は無料です。傾聴を求めているのは高齢者に限らず、若くてもメンタルの面で課題があったり、子育て中のママなど多くのニーズが増えています。一方で、傾聴ボランティアは特別な資格を必要とせず、また、年齢や性別、職歴なども問わないので、始めやすい社会貢献なので、傾聴ボランティアの活動は全国で広がりをみせています。

傾聴ボランティアを始めるには

傾聴ボランティアを始めるあたり、傾聴のスキルを身につける必要があります。そのスキルを身につける方法は、次の3つです。

  • 社会福祉協議会に登録している傾聴ボランティアの団体に入り、団体が行っている研修を受ける
  • 社会福祉協議会などが行っている無料または教材費のみ実費負担の講座を受ける
  • 有料の通信講座(U-canなど)を受ける

といった方法があります。

(9)介護の現場で使える傾聴の例

“傾聴”というと、じっくり長い時間をかけて話を聴くというようなイメージがあるかと思いますが、じつは日常の介護現場でも傾聴の技術を使えるシーンがあり、ワンランク上の介護ができることもあります。この章では、介護現場における傾聴の活用例を挙げてみます。

高齢者が泣いている

NGな対応

高齢者:「孫に嫌われた」と泣いています

介護者:「分かりますよ~」と若い介護士がなぐさめる

高齢者:「孫がいないあなたになんかに、この気持ちは分からないわよ」と怒る

OKな対応

高齢者:「孫に嫌われた」と泣いています

介護者:「嫌いと言われると、辛いですよね」と若い介護士が「嫌われて辛い」ことの共感をする

高齢者:「じつはね、こんなことがあって、、、」

この場合、若い介護士に「孫から嫌い」と言われることがないにもかかわらず「分かる」と言ったことが、高齢者の怒りに繋がってしまいました。この場合は、「人から嫌いといわれると辛い」ことに共感することで、「泣いている理由」を分かってもらえたという安心感になります。

入浴拒否

NGな対応

介護者:「今日は女性が一番風呂ですよ、入りましょう」

高齢者:「まだ入りたくない」

介護者:「今は入る気持ちじゃないんですね。でも、早く入ってもらわないと、次の人が困っちゃうから」

高齢者:「嫌だ、絶対に入らない!」

OKな対応

介護者:「今日は一番風呂ですよ、入りましょう」

高齢者:「まだ入りたくない」

介護者:「今は入りたくないんですね。」と共感し、「働いていた頃も一番風呂は好きではなかったのですか」と質問

高齢者:「働いていた頃は、まず夫がお風呂に入って、その次に子どもが入って、最後が私だった。」

この場合は、拒否をすることへの受容と、傾聴による拒否の理由を聴くことで、利用者の長年の生活スタイルが分かり、さらにその利用者の入浴を最後にしたことで入浴拒否がなくなり、介護がスムーズになります。

あくまでも一例ですが、「共感」や「受容」によって相手を知ることは、ケアに活かすことが出来ます。特に認知症の方への対応は、その人の長年の生活スタイルを知ることが介護拒否をなくし、スムーズなケアを行う上で重要なポイントです。ぜひ、活用してみてください。

(10)傾聴の技術を身につけて利用者とより良い関係を作ろう

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/348270

傾聴とは、ただ話を聞くだけではなく、話している人の話を聞きつつ、相手がおかれている状況や気持ちを理解し、共感することで、カウンセリングでも使われる重要なコミュニケーション技術です。

特に高齢者は不安や悩み、孤独感があるので話をしっかり聴いてくれることで信頼関係を築くことが出来ます。

傾聴の技術を介護現場で活用することで、ワンランク上のケアができます。ぜひ、傾聴の技術を身につけて利用者とより良い関係を作りましょう。

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