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(1)リハビリ専門職とは
病院などの医療機関やデイサービスなどの介護施設で、高齢者などの機能回復のために活躍しているリハビリ専門職をご存知でしょうか。
今回は、リハビリ専門職の種類や給料、資格の取得などについてご紹介します。
そもそもリハビリとは?
正式には、「リハビリテーション」といい、WHO(世界保健機構)の定義では
「障害がある場合、機能的能力が可能な限り最高の水準に達するように個人を訓練あるいは再訓練するため、医学的・社会的・職業的手段を併せて、かつ調整して用いること」
(出典:WHO(世界保健機構)(英語版))
と謳われています。簡潔にいえば、病気の後遺症やケガなどの影響で出来なくなった機能を、あらゆる手法を使って出来るだけ機能や意欲を回復させることです。
リハビリのスタッフって、どんな人?
リハビリの施設で機能回復にむけて高齢者などに直接指導しているスタッフは、リハビリ専門職として位置づけられており、リハビリのための資格を持った人です。
その他にもリハビリの施設内には、高齢者の世話などをするために介護職のスタッフもいます。
また、施設の運営に関する事務処理やちょっとした補助などのためにリハビリ専門職の資格や介護職の資格を持たないスタッフを配置している事業所もあります。
リハビリのスタッフとして働くための資格とは?
リハビリの施設で働いているスタッフには、1人ですべてのリハビリを担当するわけではなく、リハビリの種類に応じた資格が必要となります。
リハビリは、リハビリの種類に応じた分業制が確立されているのです。リハビリの種類については、次の章でご説明します。
(2)リハビリが必要な動作の種類
病気の後遺症による麻痺や転倒して骨折してしまった影響で、それまで出来ていた動作が出来なくなってしまうことがあります。その出来なくなった動作を生活できるレベルに戻すための療法ですが、出来ない動作によって、リハビリのやり方が変わってきます。
基本の動作
人としての基本動作である
- 「寝返り」
- 「起きる」
- 「座る」
- 「移動」
- 「立つ」
- 「歩く」
といった動作です。
リハビリの手法としては、筋肉の可動域を広げたり、柔軟性を持たせるといった「理学療法」や、手すりの着いた通路や階段、ベッド、イスなどリハビリ専門の器具を使って基本動作の訓練を行う「作業療法」などが、主なものとして挙げられます。
日常生活の動作(ADL)
生活していくうえで必要な“食事”、“トイレ”、“着替え”などの動作です。リハビリの手法としては、手や指などの機能を回復するために、握りやすい箸や滑りづらいスプーン、脱着しやすい洋服などリハビリ用の器具や普段使っている物を使った作業療法となります。
口の動作
生活するうえで
- 「話す」
- 「噛む」
- 「飲む」
など口を使う動作です。リハビリの手法としては、口の機能を回復させるために、発声、発音など会話をする、食べ物を噛む、噛んだものを飲み込みといった訓練になります。
(3)リハビリの資格の種類
それでは、リハビリ専門職と呼ばれるリハビリのスタッフに必要な資格についてご説明します。
理学療法士
別名“PT(physical therapist)”とも呼ばれます。立つ、座る、歩くための指導などを行います。理学療法士は、解剖学や病理学、整形外科学などの医療要素の専門的な知識が必要で、国家資格になります。
理学療法士は、2019年3月現在で119,525人で、リハビリ専門職の中では最も多い資格となります。
(出典:公益社団法人日本理学療法士協会)
理学療法士について、より詳しい記事はこちら |
作業療法士
別名“OT(occupational therapist)”とも呼ばれます。食べる、トイレ、着替えなどができるように指導を行います。その他に趣味やちょっとした遊びを取り入れて社会復帰に向けた意欲の向上にも取り組みます。理学療法士同様に医療要素などの専門的士知識が必要で、国家資格となります。
作業療法士は、94,241人で、理学療法士に次ぐ人数となっています。
作業療法士について、より詳しい記事はこちら |
言語聴覚士
別名“ST(speech therapist)”と呼ばれます。噛む、飲む、発音、発声など口の機能を回復させるための指導を行います。言語聴覚士も国家資格となります。
言語聴覚士は、32,863人で、リハビリ専門職のなかでは、一番少ない人数となっています。
(出典:一般社団法人日本言語聴覚士協会)
言語聴覚士について、より詳しい記事はこちら |
その他
一般的にリハビリ専門職というと、先にあげた「理学療法士」、「作業療法士」、「言語聴覚士」の3つが主となります。
これらは国家資格であり、かつ、「理学療法士」、「作業療法士」については、リハビリ施設に常駐として配置されているスタッフになります。しかし、近年、リハビリの手法もバリエーションが増えてきており、次の資格を持ったスタッフもいます。
音楽療法士
音楽を聴いたり、楽器の音を出してみることで、人の脳や心に刺激を与え、麻痺などの軽減、機能回復、意欲の向上などを図る療法を行うための資格です。音楽療法士学会などが認める民間資格です。
視能訓練士
もともとは眼科で眼圧の検査や矯正視力の検査など視機能検査を行っていた専門職です。
最近では、弱視や斜視の方の視機能回復のための訓練を行うための資格です。国家資格になります。
視機能訓練士は、16,199人の資格者がいます。
(出典:公益社団法人視機能訓練士協会)
義肢装具士
別名“PO(prosthetist and orthotist)"と呼ばれます。
医師の指示の下で義手や義足などを作り、患者に装着して調整し、使い方を指導するための資格で、国家資格となります。
義肢装具士について、より詳しい記事はこちら |
(4)リハビリ専門職の給料
気になるリハビリ専門職の給料についてご説明します。ここでの数字は、厚生労働省「平成30年賃金構造基本調査」 に基づいてご紹介します。
従業員規模別の給与
月給平均 | ボーナス | |
---|---|---|
従業員10~99人の事業所の場合 | 298,000円 | 572,600円 |
従業員100~999人の事業所の場合 | 268,700円 | 653,400円 |
従業員1000人以上の事業所の場合 | 270,500円 | 757,500円 |
毎月の給料については、小規模の事業所が高くなっていますが、ボーナスについては規模の大きい事業所のほうが高くなっています。
全産業の平均現金給与が285,196円(一般労働者:368,913円、パートタイム労働者:100,078円)であることを鑑みると、リハビリ専門職の給料は平均を下回っています。
しかし、全産業の中には医師や弁護士といった給与水準が高い業種を含んでいるうえ、年齢や地域により給料水準が変動するので、一概にリハビリ専門職の給料が低いと断定はできません。
(出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査30年11月分)
(5)リハビリの専門職として働くメリット
安定した仕事
リハビリテーションというと、以前は、病院でのケガの回復のための付帯施設という位置づけでしたが、介護保険事業の開始に伴い、高齢者の機能維持や機能回復といったデイケアの普及もあり、リハビリテーションの位置づけが一気に広がりました。
また、障害者へのリハビリやアスリートのリハビリなどの施設や利用者も増え、多くのニーズが生まれています。
リハビリの仕事は、引く手あまたであり、多くの業種の中でも安定している業種のひとつなので、長期にわたって仕事ができます。
安定した収入
一般的に企業における給与額は売上や人気など業績に影響されますが、リハビリ専門職の給与は国が定めた介護報酬や医療報酬に基づいているので、一般企業の給与額のように大幅に変動することがありません。
また、報酬のうちの7~9割分が国・都道府県・市町村が負担しているので、民間企業のように、所属する組織による中間搾取の心配もありません。
リハビリ専門職の給与額は、安定した収入が得られる仕事です。
利用者との距離感が近い
利用者(患者)を定期的に、しかもマンツーマンで指導するので、距離感がとても近いのが特徴です。
しかも、出来なかったことが出来るようになったときの喜びは、リハビリ専門職冥利につきます。
リハビリ専門職は、利用者との顔と顔が見える距離感の近い関係なので、やりがいがあります。
(6)リハビリの資格の取得方法
学校に通う
リハビリに関する資格を取得するには専門学校に通って知識と技術を学ぶ方法のもとなります。リハビリ系資格の専門学校は、全国で268校あり、それぞれ規模や費用も違います。
(出典:全国リハビリテーション学校協会より)
学校選びの際には、通いやすいという立地条件も重要なポイントですが、技術取得のための設備の状況や卒業後の就職状況も押さえておきたいポイントです。まずは、一度見学することをお勧めします。
(7)リハビリの資格の取得難易度
理学療法士
理学療法士の試験は、筆記試験と口述試験・実技試験で構成しています。
筆記試験の内容は、一般問題と実地問題となります。
一般問題
- 解剖学
- 生理学
- 運動学
- 病理学概論
- 臨床心理学
- リハビリテーション医学
- 臨床医学大要
- 理学療法
実地問題
- 運動学
- 臨床心理学
- リハビリテーション医学
- 臨床医学大要
- 理学療法
と幅広い知識が必要となります。
合格率は85.8%(平成30年)で高い合格率になっていますが、問題の内容をみると決して楽に合格できる資格ではないので、難易度は低くはありません。
作業療法士
作業療法士の試験も、筆記試験と口述試験・実技試験で構成しています。
筆記試験の内容は、一般問題と実地問題となります。
一般問題
- 解剖学
- 生理学
- 運動学
- 病理学概論
- 臨床心理学
- リハビリテーション医学
- 臨床医学大要
- 作業療法
実地問題
- 運動学
- 臨床心理学
- リハビリテーション医学
- 臨床医学大要
- 作業療法
と幅広い知識が必要となります。
合格率は76.2%(平成30年)で高い合格率になっていますが、問題の内容をみるとやや難易度が高いといえます。
言語聴覚士
試験内容
- 基礎医学臨床医学
- 臨床歯科医学
- 音声・言語・聴覚医学
- 心理学
- 音声・言語学
- 社会福祉・教育
- 言語聴覚障害学総論
- 失語・高次脳機能障害学
- 発声発語
- 嚥下障害学
- 聴覚障害学
と非常に幅広いものとなります。
合格率は68.9%(平成30年)で、難易度はやや高めの資格試験となっています。
(8)通信で取得できるものもある?
リハビリ専門職のうち国家資格である「理学療法士」、「作業療法士」、「言語聴覚士」は専門学校に通う必要がりますが、専門学校に通わずに通信講座で取得できるリハビリ系の資格があります。
介護リハビリセラピスト
日本介護リハビリセラピスト協会が認定する民間資格で、アロマビタミンオイルを使って体の痛い場所に塗ることで、血液やリンパに栄養や刺激を与え、関節や筋肉の機能を回復させる施術をするための資格です。
通所ケア専門士、ケアレク専門士、リハビリケア専門士
日本通所ケア研究会が認定する民間資格です。
(9)リハビリ業界の就職状況
病院
リハビリ系の専門学校の就職先の半数以上がリハビリ病棟やリハビリ施設がある病院などの医療機関です。
介護施設
リハビリ系の専門学校の就職先で2番目に多いのが介護老人健康施設(通称「ろうけん」)です。
その他
デイケアなど高齢者の介護施設があります。規模の大きい病院勤務を辞めて利用者との距離感が近いデイケアなどに再就職するケースがあります。
(10)リハビリの資格を取ろう
人に貢献するリハビリ専門職
リハビリとは、リハビリテーションの略で、病気やケガなどで出来ていたことが出来なくなった機能をあらゆる手段で可能な限り回復させ、併せて社会復帰に向けて意欲なども向上させるために指導をすることです。
リハビリ施設では、リハビリする内容に応じた専門職が働いています。
理学療法士
立つ、座る、歩くなど基本的な動作のリハビリで、筋肉の可動域や柔軟性を取り戻すための訓練を指導します。
作業療法士
食べる、服を着る、トイレなど生活するうえで必要な動作のリハビリで、手や指などの訓練を指導します。
言語聴覚士
話す、噛む、飲むといった「口」の機能を回復させるためのリハビリです。
リハビリ専門職を取得する
リハビリ専門職と言われる、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は国家資格で、合格率は70~80%台で難易度はやや難しいというものです。
しかし、リハビリ業界はニーズが安定していること、報酬は国が定めており、ほとんどが国・都道府県・市町村が負担するので、安定した給与が得られます。
リハビリ専門職の資格を取得するには、専門学校に通う必要があります。
リハビリの資格を取ろう!
IT技術がどんなに発達しても人が相対して行う仕事があります。それがリハビリ専門職です。
リハビリの仕事は、成果が分かりやすいので、人のためだけでなく自分にとってもやりがいのある仕事です。また、一生続けられる仕事でもあり、勤務先も自分のスタイルに合わせて選ぶことも出来ます。
ぜひ、リハビリ専門職の資格を取って、リハビリ専門職として力を発揮してみましょう。