(1)介護食士とは
介護食士は、高齢者の食事をサポートするための資格
介護が必要な高齢者の中には、かみ砕いたり飲み込んだりする力が衰えてしまい、一人で安全に、満足のいくまで食事をすることが難しい人もいます。
その状態で放っておくと、必要な食事量が摂れなくなったりしてしまうので、食事のサポートをする以外にも、「介護食」という、食べやすい食事を作るなどのアプローチがとられることがあります。
介護食士は、そんな介護食を作るための専門知識を学んだことを証明する資格です。
具体的には、介護に携わっている方が高齢者の身体の機能や栄養について専門的な知識を身につけ、調理技術をアップさせる目的で作られた民間資格です。
介護施設での調理や食事介助の際に役に立つ知識が多く詰まっていることから、介護職や看護師を中心に人気のある資格となっています。
認定は、全国調理職業訓練協会という公益社団法人が行っています。
(2)介護食士の仕事内容
介護食士は資格であり、仕事ではない
介護食士というのは、栄養士や看護師のような職種を表す言葉ではなく、介護食のプロとしての知識・技術を証明する資格のことです。
具体的には、
- 介護職員
- 看護師
- 調理師
- 栄養士
などの資格保持者が、より介護の現場で活用できる資格として介護食士も取得する、というケースが多くなっています。
介護施設での仕事は、
- 調理をする職種として採用されていれば要介護者に提供する食事を調理
- 介護士として採用されていれば食事介助
を行います。
資格を持っていることで、より美味しく食べやすい食事を提案することができ、また丁寧な食事介助ができます。
訪問介護職員(ホームヘルパー)では、利用者に合うよう調理し食事介助を行います。利用者にあったメニューや調理の仕方、食事介助の仕方を家族にアドバイスすることもあります。
(3)介護食士の資格の種類
介護食士の認定資格は、「3級」「2級」「1級」と3種類あります。
介護食士3級では、介護食の基礎知識を学ぶと同時に、高齢者の食事をする能力や衛生面について主に学んでいきます。
介護食士2級では、より応用的に、介護食の医学的な意義や食品の衛生管理などを学んでいきます。
介護食士1級では、要介護者の栄養状態の判断や、要介護者が服用している薬剤と食事の関係などを学んでいくなど、より様々なケースに対応できる知識・技術を習得することができます。
(4)介護食士になるには?資格の取得方法
介護食士認定資格を取得する方法は2通りあります。
- 専門学校などで講習会を行っている学校の学生になって受講する
- 一般人向けの講習会を行っている専門学校などで受講する
どちらであっても講習会は、調理訓練校や調理師学校など調理ができる設備の整った調理関係の学校で行われています。講習会を80%以上出席した方のみ終了後に、筆記と実技の試験を受けることができます。試験は筆記も実技も60点以上で合格となり、認定資格が取得できます。
また講習会の受講料は、協会指定の認定校により異なりますが、70000~90000円が相場となっています。
(5)介護食士認定資格の受講条件と講座内容
各級の講座内容と受講要件などについて紹介していきます。
3級の受講条件と講座内容
受講条件
- 3級は受講するために条件などはないため、一般の家庭で家族を介護している方や介護食に対し興味がある方など、誰でも受講し資格を取得することが可能。
学科講習
- 所要時間は25時間。
- 高齢者の身体機能や心理学・栄養学の基礎知識・食品学、食品衛生学などを学ぶ。
実習
- 所要時間は47時間。
- 介護食の調理実習や調理理論などを身に着ける。
2級の受講条件と講座内容
受講条件
- 2級は3級の資格を取得している方が受講条件。実務経験は条件にない。
学科講習
- 所要時間は16時間。
- 高齢者のかかりやすい病気などの医学的な基礎知識や心理学・栄養学・食品学、食材の衛生管理などを学ぶ。
実習
- 所要時間は56時間。
- 介護食の調理実習や介護食だけでなく生活習慣予防病食などの調理理論などを身に着ける。
1級の受講条件と講座内容
受講条件
- 1級は2級の資格習得後、2年以上の介護食の調理実務経験が必要。また25歳以上という条件もある。
学科講習
- 所要時間は32時間。
- 高齢者の栄養状態の判定など医学的基礎知識や高齢者に関する制度、栄養学・食品衛生学などを学ぶ。
実習
- 所要時間は40時間。
- 身体機能低下や疾病・低栄養などを想定した献立の作成や調理などを身に着ける。
(6)介護食士 資格講習の開講施設一覧
講座が受講できる専門学校を紹介していきますので参考にしてください。一般と学生どちらも受けられる学校と、どちらかだけの学校があります。2019年時点では、1級を受講できる学校は3校のみです。
地方 | 所在都道府県 | 研修施設名 | 対象等級・対象者 |
---|---|---|---|
東北地方 | 青森 | 弘前医療福祉大学短期大学部 | 3級(一般・学生) 2級一般 |
岩手 | 北日本ハイテクニカルクッキングカレッジ | 3級(一般・学生) 2級学生 | |
福島 | 日本調理技術専門学校 | 3級(一般・学生) | |
関東地方 | 茨城 | 中川学園調理師技術専門学校 | 3級学生 |
栃木 | 国際TBC調理・パティシエ専門学校 | 3級(一般・学生) | |
栃木 | IFC調理師専門学校 | 3級(一般・学生) | |
群馬 | 群馬調理師専門学校 | 3級学生 2級学生 | |
群馬 | 東日本調理師専門学校 | 3級学生 2級学生 | |
埼玉 | 国際学院埼玉短期大学 | 3級一般 | |
東京 | 香川調理製菓専門学校 | 3級(一般・学生) 2級一般 | |
東京 | 東京誠心調理師専門学校 | 3級(一般・学生) | |
東京 | 華調理製菓専門学校 | 3級(一般・学生) | |
神奈川 | ヨコスカ調理製菓専門学校 | 3級(一般・学生) | |
中部地方 | 新潟 | 新潟調理師専門学校 | 3級(一般・学生) 2級(一般・学生) |
新潟 | 悠久山栄養調理専門学校 | 悠久山栄養調理専門学校 3級学生 | |
石川 | 金沢調理師専門学校 | 3級(一般・学生) | |
福井 | 青池調理師専門学校 | 3級(一般・学生)2級(一般・学生) | |
静岡 | 浜松調理師菓子専門学校 | 3級(一般・学生) 2級(一般・学生) 1級一般 | |
静岡 | 東海調理製菓専門学校 | 3級(一般・学生) | |
静岡 | 中央歯科衛生士調理製菓専門学校 | 3級(一般・学生) | |
静岡 | 川口調理師専門学校 | 3級学生 | |
愛知 | 名古屋調理師専門学校 | 3級(一般・学生) | |
近畿地方 | 三重 | 伊勢調理製菓専門学校 | 3級(一般・学生) 2級(一般・学生) |
大阪 | 大阪城南女子短期大学 | 3級一般 | |
大阪 | 梅花女子大学 | 3級学生 | |
兵庫 | 兵庫栄養調理製菓専門学校 | 3級(一般・学生)2級(一般・学生) | |
兵庫 | 日本調理製菓専門学校 | 3級(一般・学生) | |
兵庫 | 兵庫国際調理製菓専門学校 | 3級学生 | |
兵庫 | 育成調理師専門学校 | 3級学生 | |
奈良 | 奈良調理短期大学 | 3級(一般・学生) 2級(一般・学生) 1級(一般・学生) | |
中国地方 | 島根 | 松江栄養調理製菓専門学校 | 3級一般 2級一般 |
岡山 | 西日本調理製菓専門学校 | 3級(一般・学生) | |
広島 | 広島酔心調理製菓専門学校 | 3級(一般・学生) | |
山口 | 山口調理製菓専門学校 | 3級学生 | |
四国地方 | 愛媛 | 愛媛調理製菓専門学校 | 3級(一般・学生) 2級一般 1級一般 |
高知 | RKC調理製菓専門学校 | 3級一般 | |
九州地方 | 福岡 | 北九州調理製菓専門学校 | 3級(一般・学生) |
佐賀 | 西九州大学佐賀調理製菓専門学校 | 3級(一般・学生) 2級(一般・学生) | |
長崎 | 九州調理師専門学校 | 3級(一般・学生) 2級(一般・学生) | |
長崎 | 九州文化学園調理師専門学校 | 3級(一般・学生) | |
大分 | 田北調理師専門学校 | 3級(一般・学生) | |
沖縄 | 沖縄調理師専門学校 | 3級(一般・学生) 2級学生 | |
沖縄 | 琉球調理師専門学校 | 3級学生 |
(7)介護食士の給料
介護食士は記事の上部でも説明したように、資格の名前であって職業の名前ではないため、介護食士として働いている人はいません。(6)で紹介したように、講座が受講できるのは調理師専門学校や調理製菓専門学校が多いため、並行して資格取得しやすい
- 調理師
- 栄養士
の給料を紹介していきます。
調理師の年収
調理師の年収は322~341万円となっています。月給では15~20万円前後です。また調理師の場合、勤務先によって給料に差があり、病院などでは180~220万円ですが、1流ホテルでは年収が1000万円にもなる場合があります。
調理師は1人前の調理師になるまでに時間がかかり、それまでは月収も低く抑えられてしまうため、年収が全体的に低くなっています。また調理師の仕事はサラリーマンのように、年功序列ではなく昇給も明確ではないことも、調理師の仕事が他の仕事に比べ年収が低い原因となっています。
栄養士の年収
栄養士の場合は、年収が250~400万円となっています。月給では17~22万前後です。病院などでは18~27万円、老人施設も同じくらいで18~25万円となっています。
栄養士として働くためには資格が必要ですが、資格さえ取得すれば仕事を探すのはそれほど難しいことではありません。栄養士の平均年収の範囲も280~410万円と幅広く、最近では高齢化とともに介護施設などの福祉分野での需要も高まっています。
介護食士を取得してスキルアップ
調理師と栄養士の平均年収は、おおよそ上記のような額になっています。どちらの仕事に関しても、介護食士の資格をとることによって知識が増え、自分のスキルアップにつながり、携われる仕事の幅が広がります。このようにして関わる業務を増やしていけば、給料アップにもつながるのではないでしょうか。
(8)介護食士の求人事情
先に紹介したように、介護食士というのは介護福祉士や栄養士、調理師などに付加的に取得する場合が多いため、「介護食士」として求人されることはありません。現在保有している栄養士や調理師・介護福祉士などの資格や就きたい職種で求人情報を探し、履歴書で資格を取得していることを明記するようにしましょう。
介護職の求人サイトはたくさんありますが、おすすめできるサイトを紹介します。
介護のお仕事
株式会社メディカルコンシェルジュ(MC)が運営している、介護の総合求人案内サイトです。求人を検索する際に、
- 全国の施設をカバーしている地域別
- 老健・特養・有料老人ホーム・グループホーム・デイサービスなど施設の形態別
- 職種別
- 雇用形態別
の項目別で、求人を検索できます。非公開求人を多く持ち、キャリアアドバイザーによるサポートが受けられます。
かいごWORKER
株式会社ティスメが運営している、介護総合求人サイトです。全国の施設をカバーしており、
- 地域別
- 老健・特養・グループホーム・サービス付き高齢者住宅などの施設形態別
- 職種別
だけでなく、年収や時間給などの給料別でも検索ができます。また非公開求人を多く持ち、こちらもキャリアアドバイザーに相談することが可能です。
(9)介護食アドバイザーとの違い
介護食士に似た資格に、介護食アドバイザーがあります。介護食アドバイザーは、一般社団法人の日本能力開発推進協会が認定を行っている民間資格です。高齢者の身体の機能や栄養について基礎的な知識が得られ、口腔ケアや食べさせ方などもマスターできます。
どちらも介護をしている方に向けた資格であり、高齢者の身体的な機能や栄養について知識を得ることができるものですが、違いもある資格です。2つの資格の違いについて説明していきます。
介護食士 | 介護食アドバイザー | |
---|---|---|
級数 | 3級~1級まである | ステップアップできるような上の資格はなし |
受験条件 | 2級・1級には受験条件がある | 受験条件はなし |
資格の取得過程 | 専門学校での受講の後、試験を受け合格すれば資格を取得 | 通信講座を受講し、在宅で試験を受け合格すれば資格を取得 |
介護食アドバイザーについて、より詳しくはこちらの記事もぜひご参考ください! |
(10)介護食士認定を取得しよう
介護が必要な高齢者の身体的な機能を理解した上で、美味しく食べてもらえるような食事が提供できる人材は、介護の現場に必ず必要といえます。また在宅で介護を受けている利用者も、家庭で美味しく食事ができれば何よりの楽しみに繋がるはずです。
食事をすることは生きる上で最重要されるべきですが、食べにくい料理が並んでいるだけでは、食事量が減り身体の機能低下に陥ってしまうかもしれません。
ただ口に食べ物を入れるだけでなく、味わって美味しいと感じながら楽しく食事ができるようにサポートできる、介護食士の認定資格を取得してみませんか。
介護食士の資格を取得した後は、その資格を十分に活かせる仕事を探してみるのもいいでしょう。資格を活かす仕事を探すには、求人サイトやハローワークなどを見る方法があります。
しかし、求人を見るだけでは、いい仕事が見つからない可能性もあります。そういった場合は、転職エージェントを利用してみるのもおすすめです。
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