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(1)よりよい介護サービスを提供するために
利用者にとって、よりよい介護を提供するために、介護施設は利用者のニーズや情報を知る必要があります。
また、介護現場では、実際に介護をする介護士だけでなく、ケアマネージャーや医師、看護師などさまざまな専門家が関わっており、全員が連携する必要があります。全員が適切に連携するためには、正しい情報共有が必要です。
この記事では、情報共有の手段の一つとして、フェイスシートについてご説明します。
(2)フェイスシートとは
介護現場で使用するフェイスシートとは、介護が必要な方の基本的な情報を記入する書類のことです。
フェイスシートはサービス利用者の基本情報が記載されており、病院でいうカルテのように、一読するだけで利用者の様々な情報が把握できるようになっています。
フェイスシートの役割
フェイスシートには事業所内やスタッフ間で、利用者さんの情報共有をスムーズに行う役割があります。
介護サービスを利用するにあたり、異なるスタッフから同じことを何度も聞かれては、ご本人も家族も不快感や不安感を覚えます。
利用者や家族の生活形態や、経済状況でサービスの利用頻度や種類が変わってきます。一人ひとりに合わせたケアプランの作成のためにもフェイスシートは重要です。
新規の利用者の場合、担当者が利用者へのヒアリング内容を一度だけ質問します。それをフェイスシートに記入して事業所内やスタッフ間で把握できるようにしておくことで、コミュニケーションも円滑に進む可能性が上がりますし、不用な質問を避けることができます。
フェイスシートの様式
フォーマットは、事業所によって独自のものを使っている場合や、介護ソフトなどに用意されているものを使っている場合があり、どのようなものを利用しても構いません。
事業所独自でフォーマットを作成する場合は、項目漏れがないように作成しましょう。必要に応じて項目を増やすこともできます。
フェイスシートのリンクを掲載していますので、ぜひクリックしてダウンロードしてください。
ケアマネジメントオンライン フェイスシート(利用者基本情報)
(3)フェイスシートの基本項目
介護するにあたって、最低限必要な情報は
- 氏名
- 年齢
- 性別
- 住所
- 連絡先
- 家族構成
- 既往症
- 要介護認定の有無
などです。フェイスシートにはこれらの情報を記載する必要があります。
特に、利用者にとって何度も聞かれたくないことや、こちらが把握しておくべきことを中心に作成します。
例えば、「お仕事は何をされていたのですか?」、「お子様はいらっしゃるんですか?」などの質問を、担当者が入れ替わるたびにされることは嫌な思いをされる可能性が高いです。家族との仲がうまくいっていない人にとっては、家族のことはあまり質問されたくないことです。
ジェノグラム
フェイスシートを作成する際、家族構成をわかりやすく図で表現したものを、ジェノグラムといいます。ジェノグラムには記入する際のルールがあります。
誰が見ても把握できるようにするには、ルールに従って記入することが求められます。主になる介護者や連絡の優先順位、子の住所地などを書いておくと、さらに使いやすいものになります。成年後見人制度を利用している方の場合、連絡優先順位に影響するので、記入しておきましょう。
ルールは、簡単ですので下記内容で覚えておきましょう。
シートで使用する図形 | 表すもの |
---|---|
四角□ |
男性 |
丸〇 |
女性 |
二重の丸◎や四角▣ |
利用者本人を表す |
塗りつぶしている丸●や四角■ |
死亡していることを表す |
縦線 |
親子関係 |
横線 |
夫婦や兄弟 |
囲い線 |
同居している |
(4)フェイスシートの発展項目
利用者に合ったよりよいサービスを提供するために、基本的な項目に加えて以下のような情報を追加するとよいでしょう。
- 経済状況
- 家族の協力体制
- 自宅の間取り
- 趣味
施設のサービスや利用者の状況によって、追加する項目を変えることができます。ここでは、訪問介護と介護給付の場合をご紹介します。
訪問介護の場合
訪問介護で使用するフェイスシートは、主に利用者と信頼関係を築くことを目的として作成すると考えてよいでしょう。訪問介護においては、在宅介護サービスの中で一番利用者と近い存在になることがほとんどです。
介護度が上がるにつれて介護士やケアマネージャーが毎日訪問することになる場合もありますし、新規利用者の場合も、訪問する機会が一番多い職種ですので、担当者は、必ずフェイスシートの記載内容を把握しておきましょう。
訪問介護のフェイスシートには、自宅の間取りや生活状況などを記載しておくとよいでしょう。
介護給付の場合
フェイスシートは、介護給付(介護保険下で利用したサービスに支払われる保険給付)を申請する際に必要な書類になります。
病状や生活環境について、最新の情報があれば、フェイスシートに記載しておくとよいでしょう。
また、認知症などで利用者本人からの情報収集が難しい場合は、家族から情報をお聞きすることになります。その場合、利用者の立場を尊重した内容になるよう、質問を利用者目線で行なうなど、工夫が必要になります。
(5)アセスメントシートとの違い
フェイスシートとセットで作成されることの多い書類に、アセスメントシートがあります。フェイスシートとアセスメントシートは似た要素をもちますが、違う役割を持ちます。
フェイスシートは、先に説明したように、利用者がどんな人でどんな生活を送っているのかを知り、スタッフ間で情報を共有することを目的とした資料です。
一方で、アセスメントシートは、利用者の身体状況をより詳しく調査し、課題を分析して、ケアプランを立てるための資料です。
違いを知って、用途別に使用することができるようにしましょう。
(6)フェイスシートの書き方① 誰でも理解できるように記入する
ケアマネージャーから共有を受けるフェイスシートは、病名などが英語表記になっている場合があります。そのような場合も、一目見てわかるように、なるべくわかりやすく日本語表記にしておきましょう。また、専門用語はなるべく使わず、わかりやすく書き換えましょう。
またフェイスシートには文章を記入することもありますが、要点をおさえ簡潔にかけるように心がけてください。文章が難しい場合は、箇条書きにするなど、工夫しましょう。
(7)フェイスシートの書き方② 全ての項目を記入する
フェイスシートの情報には、ご利用者さん本人から確認できることもあれば、同居しているご家族や、遠方に在住しているご家族に確認しなければいけないものもあります。
空白箇所を残したままにして情報がないと、後々困ったり緊急の対応がスムーズにできない可能性があります。キーパーソンの連絡先や、今までの病歴などについては必ず確認するようにしましょう。
(8)フェイスシートの書き方③ 最新情報を記入する
フェイスシートに記載している情報が変更されたら、すぐに書き直すようにしましょう。緊急時の迅速な対応に支障をきたすため、緊急連絡先やかかりつけ医の情報は必ず最新の情報を記載するよう徹底しましょう。
緊急連絡先は、家族や親族など、利用者への対応について決定権をもつ方にしてください。最低2件は記入するようにしましょう。これは日中連絡が取りづらいことがあったり、たまたま連絡がつかないなどで、対応が遅れることがないようにするためです。
かかりつけ医の連絡先に関しては、主となる薬の処方や往診対応していただけるところを記入しましょう。
(9)フェイスシートの取り扱いに注意
フェイスシートには利用者の個人情報はもちろん、家族の情報もたくさん記載されています。ファイルを施錠せずにおいたり、車内などに置いたままにしたりすることは、個人情報の漏洩につながり、危険ですのでやめましょう。業務が終了したら、ファイル数を確認するなどきちんと管理する必要があります。
フェイスシートが紙媒体やUSBなどの場合、施錠できる書庫などに保管し、責任者や信頼のおける人だけが鍵を持つようにします。クラウド保存の場合は、パスワードで二重ロックするなど、万全を期する必要があります。
保存義務の期間にも注意
更新などのタイミングで使用しなくなったフェイスシートは、指定を受けている地域によって、使用終了から5年間保管義務や、利用者がサービス終了してから2年間の保管義務があります。もう使わないものだとしても、保管義務の期間内は同じく厳重に保存しておきましょう。
保管義務の期間については、地域によって異なるため注意が必要です。
(10)フェイスシートを利用して情報共有をしましょう
フェイスシートは、多くの介護関係者に共有されるシートです。必ず最新情報に書き換え、わかりやすく記入しましょう。特に、満年齢や主治医などの更新を忘れがちになるので気をつける必要があります。
利用者や家族の要望は、尊重するべきことなので変化があった場合は追記してください。こういった更新をおこなった場合は、いつ更新したのかも忘れず記載しておくとよいでしょう。
フェイスシートを要点をおさえて書こうとすると、慣れも必要ですし、要点を見抜く力も大切です。難しい書類ではありませんが、慣れるまでは書きづらい部分もあるでしょう。できるだけ情報を簡単に共有できることを意識して記入していくことが重要です。
フェイスシートを作成と情報共有は、よりよい介護サービスの提供につながります。フェイスシートをわかりやすく作成できるように、日々作成に取り組みましょう。