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(1)検食とは
病院や介護施設では、食事が提供されています。食事を提供する上で、衛生管理は最も大切です。
食の安全を担保するために、病院など様々な施設や業態では、「検食」が行われています。
検食には、以下の2通りの意味があります。
①衛生検査用に保存する「サンプル」しての検食
衛生検査用に保存しておく為の「検食」で、介護施設や学校給食などの施設の他に、弁当を販売する業者でも行われ、食中毒等が発生した場合には保健所に提出します。
この記事では、検食採収として説明します。
②給食責任者などによる「試食」としての検食
介護施設や学校給食等、集団で給食する施設において、栄養士や施設の責任者が提供される食事の以下の4点を検査するために行われるのが「試食」としての検食です。
- 内容
- 栄養
- 衛生
- 嗜好性
この記事では、試食として説明します。
(2)検食は法律で定められている
食中毒や異物混入など、提供される「食品」に異常があれば、原因を特定し検査することが法的に義務づけられています。
これがいわゆる「検食」であり、病院や介護施設に関係する法令は以下の2つがあります。
検食にまつわる根拠法令
食品衛生法
「食品衛生法」第50条第2項の規定に基づいた「公衆衛生上講ずべき措置の基準及び同法第51条の規定に基づく営業施設の基準等」で定められた条例で、食品に衛生上の「異常」の発生・拡大を未然に防ぐ措置を強化した基準です。
給食施設をもつ病院や介護施設に団体宿泊旅館等に適用され、それに基づいて検食を行います。
具体的な基準を示す食品衛生法施行条例は、自治体によって異なります。必ず確認しましょう。
参考:食品衛生法
大量調理施設衛生管理マニュアル
同一の給食を「1回につき300食以上」、若しくは「1日750食以上」提供する施設で適用されるガイドラインです。
主に、大規模な介護施設で適用されますが、厚労省では中小規模の福祉施設等にも推奨しています。
「大量調理施設衛生マニュアル」はガイドラインであり、法律ではありません。しかし、検食自体は「管理運営基準」で義務付けられており、適用する食品の規模によって適用される基準が異なります。
(3)検食採収の目的
検食採取は衛生検査を目的として行われています。
食中毒が起こった場合、提供された食品が食中毒の原因物質に汚染されていたか否かを特定する必要があります。
そのため、料理に使用した食品の一部を保管しておき、食中毒などが発生した場合、保健所に提出して検査する仕組みがとられています。
(4)検食採取の実施方法
検食採取は、「食品ごとに50g以上保存」を行い、それを2週間以上保存することが基本となっています。
また、検食採取を行い、それを保存をする時には以下の様な点に注意して行う必要があります。
検食採取を行う際の注意点
- 検食採取を行う際に使用する器具、保存容器を素手で扱わないようにし、二次汚染を防ぐようにする。
- 食品ごとに検食採取を行い、漏れがないようにする。(使用した食材を全て含むようにする。)
- 検査に必要な最低量50g以上を清潔な容器に採取する。
- 採取後完全に密閉し、-20℃以下の専用冷蔵庫で2週間以上保存する。(2週間経過した日が休業日であれば、その翌日まで保存)
- 検食採取した品目、採取年月日、破棄年月日を明記の上記録を行う。なお、中身を開ける必要がなく、触れずとも確認できる様に番号など明記するとよい。
- 検食採取した食品を廃棄する際には、異常が無いか確認した上で破棄すること。
以上のような点に注意して、検食を行いましょう。
参考:検食のポイント
(5)試食の目的
「試食」としての検食の目的は、提供された食事の内容が献立計画の通り履行されたかを確認すると共に、安全でかつ美味しく、栄養価が高い食事が提供されているかを確認する、ということにあります(内容、栄養、衛生、嗜好の検査)。
食事をする前に、食事における異物が入っていないか、異臭はないかなどの、衛生上の観点と味付けや彩、大きさ、固さ、盛り付けなど各施設における必要な項目をチェックする必要があります。
また、献立や味の感想を項目に入れておくことで、食事提供を改善しやすくなります。
(6)試食の実施方法
試食のやり方は、以下の流れに沿って行われます。
①担当者の選定
検食をするにあたっては、栄養部門責任者が検食を行う担当者を以下の中から選定して依頼を行います。
- 調理の担当者(外部委託している場合は委託業者)
- 栄養部門担当者若しくは給食責任者
- 医師
- その他の責任者や役職者
また、検食担当者が決まったら「検食簿」を配布し、検食後に必要事項(衛生面、味付けや分量等)を記入します。
②検食の実施
給食の準備が整えば、検食を実施していきます。提供される以前に検食され、検食担当者が検食の結果を検食簿に記載します。
なお、検食は常食を対象に行いますが、栄養部門責任者の指示があれば治療食などでも実施されます。
③検食簿の確認及びフィードバック
給食施設での作業が全て終了した後に、検食簿を回収して栄養部門責任者が確認し内容を了承します。
この時、必要に応じて調理担当者へのフィードバックを行い、献立や調理方法等を再度検討し、その結果に応じて是正処置を講じます。
参考:検食の実施手順
(7)試食の注意点
異常時の対応
検食を行って異常が確認された場合、検食担当者が直ちに栄養部門責任者に報告を行います。その後栄養部門責任者が確認を行い、
- 食事の回収
- 代替食の提供
- 提供者に対する説明
など、必要に応じた対応を行います。
なお、食中毒や異物混入があった場合は、給食施設にマニュアルが用意されているので、それに則って対応を行います。
検食の時間
給食責任者等による「試食」としての検食は、必ず給食の提供前に行われなければなりません。しかし、介護施設における検食では、稀に提供後に行われているケースがあります。
こういった検食のやり方では、給食の異常を未然に発見することが出来ず、義務違反(検食は法的に義務づけられています)となってしまいます。
食事の提供前に行うことを徹底し、検食担当者が不在などの時に備えて、複数専任するなど対策を講じておくと良いでしょう。
(8)検食で安全な食事を提供しましょう
味や量、彩りなど、提供された食事の満足度にに欠かせない要素はいくつもあります。
しかし、それらの前提になっているのが、提供される食事への信頼です。病院や介護現場で提供されている食事は、そういった信頼を検食という具体的な方法で担保しています。
検食をしっかりと実施し、食の異常を未然に防ぎ、安全かつ美味しく提供することで、利用者の満足度を向上するように努めることが重要でしょう。