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ターミナルケアから立ち直る1つの方法 | デスカンファレンスについて解説

テクニック
ターミナルケアを経験して、強い虚無感や無力感にとらわれたことはありませんか。ターミナルケアは身体的にはもちろん、精神的にも、介護職員に大きな負担を与えます。そのためターミナルケアでは気分が落ち込むのが普通です。 そのつらさから退職を決める介護職員もいるほどです。職員が受けるそのつらさを軽減し気分を切り替える方法について今回解説していきます。
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(1)終末期ケア、緩和ケアの現場で注目されているデスカンファレンスとは


出典:https://www.photo-ac.com/

昨今終末期ケア、緩和ケアの現場で注目されているデスカンファレンスとは、死後のカンファレンスです。

デスカンファレンスとは、スタッフを集め、患者やご遺族から得た情報・患者の看護記録・看取り業務の振り返りを共有した上で、スタッフ同士意見交換を行う場のことです。

従来、病院の緩和ケア病棟などで行われていますが、高齢者施設でも看取りケアを行うようになり、その質を高める為に取り入れられるようになりました。

デスカンファレンスとは呼称のひとつであり、同様に看取り後カンファレンス、看取りケア終了後カンファレンスなど、事業所ごとにそれぞれの呼称が用いられているようです。

では、なぜデスカンファレンスを行うのかを解説していきます。

(2)デスカンファレンスの目的や意義

デスカンファレンスの意義

デスカンファレンスには、ご利用者の看取り後に、「出来たこと」「出来なかったこと」などを振り返ることにより、患者に対してのケアを見直し、次につなげる意義があります。

死に直面した職員の精神的ケアにも重要なものと位置づけられます。

デスカンファレンスの目的

デスカンファレンスの目的は、看取り業務の振り返りを共有することで、次回同じ問題に直面した際に、ケアの質を高めることにあります。

デスカンファレンスでは、職員間の情報や体験を共有した上で、意見交換を行います。自分が考えていなかった他者の意見を聞くことで、考えを深めることが出来ます。 これにより、同じ問題に直面した際に、問題を回避出来たり、ケアの質を高めることが出来るのです。

また、精神的なストレスを負う職員の気持ちを、話す行為で軽減させる効果もあり、精神的ケアも重要な目的です。 ターミナルケアを行うチームとしての支え合いやチーム力のアップも期待されます。

(3)デスカンファレンスの効果

・ケアの向上につながる
終末期ケアには正解がありません。だからこそ過去の事例を通して学んだことや得られたことを他のスタッフに共有することが、ケアの見直し・向上に繋がります。

・経験の浅いスタッフの育成
デスカンファレンスの場は、様々な業種の方の意見や先輩スタッフの意見を聞ける場となるため、今後の業務に活かせる知見が得られるでしょう。また、当事者となった際に、学んだことを活かしてより良いケアを施せるようになるでしょう。

・家族やスタッフの感情共有の場になる
患者の苦痛や家族の悲しみに立ち会ったスタッフは、本人や家族と同じ感情を抱くケースも多くあります。
その際感じたものを、デスカンファレンスで共有することで、立ち会ったスタッフのメンタルケアにもつながるでしょう。

(4)デスカンファレンスは、様々な立場の職員が作り上げる 

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2338006

では、デスカンファレンスは実際にどう進めればよいのでしょうか。

実施時期や頻度

看取り後なるべく期間をおかないことが望ましいのですが、看取り直後にはまとまった時間の確保が難しい為、概ね1か月以内に実施できるよう予定を組むのが一般的です。通常の定期カンファレンスの時間や既存の会議の時間を一部あてる形が良いでしょう。

参加者

看取りに関わった全ての職員です。職種は問わず、直接関わらなかった職員も可能な限り参加してもらいましょう。客観的な意見も大切です。

デスカンファレンスの流れ

①アンケート作成

看取り後の気持ちや記憶が薄れない早い段階で、全職種向けにアンケートをとる事業所が多いようです。

このアンケートは職員一人ひとりが、この方へどう向き合ったのか振り返ってもらうのにとても有効です。アンケート結果からデスカンファレンス内で取り上げる議題について、ピックアップしておきます。

担当介護職員と相談員などで相談して決めても良いでしょう。

アンケート例.

(出典:「デスカンファレンス見直し後の看護師の意識の変化 - CORE」)

②進行方法の確認

デスカンファレンスの場において、特に直接関わった職員は責められているような気持ちになりやすいので、十分注意して進行しましょう。ケアマネージャーや生活相談員など、チームの中で調整能力を持っている人が進行するとスムーズですが、職員の育成のために、輪番制をとっても良いかもしれません。

あらかじめ、進行方法などのフローを作っておき、20〜30分程度で終了できるよう進行します。

デスカンファレンスの記録方法

患者やご遺族から得た情報、日々の看護記録などを抜け漏れなく記録できるようにしておきましょう。また、各職種からご利用者の情報を集めまとめておくことも重要となります。

ご遺族

出来ればカンファレンスに参加してほしいところですが、難しい場合は、生活相談員などがご家族にご意見を伺っておき、カンファレンスの場でスタッフに伝える形を取ります。

ご家族の想いは、職員の心に響くものですし、それによって精神的に救われる職員もいるので、是非伝えてあげましょう。

また、ご利用者を思うあまり、ご遺族に「もっと面会にくるべきだった」「もっと○○してあげるべきだった」と批判的な意見を持つ職員もいることでしょう。しかし、そのような意見を述べる立場に、職員はいないことを強く意識しましょう。

注意事項

デスカンファレンスは、反省会ではありません。何が目的かをしっかりと参加者が理解しておくことが必要です。決して他者を否定・非難することのないよう、お互いに気を付けましょう。

出来なかったことばかりでなく、出来たこと、次に活かせることに焦点を当てるようにします。また、こんなことがあったから、こうしていきたい、といった前向きな議論をするようにしていきましょう。

(5)デスカンファレンスのポイントとは

より良いカンファレンスを行うためのポイント

①話し合う内容を明確にする、スケジュール調整

デスカンファレンスには、普段の業務が忙しいこともあり、なかなかまとまった時間が取りにくいというケースがあります。
そのため、事前に話し合う内容を明確にしておき、有意義なデスカンファレンスを全員が参加できるようにしましょう。

一概には言えませんが、スケジュール調整の際には、医師の予定に合わせることがおすすめです。

診療所での診断や訪問先での診断などに加え、休みが不定期であるため、まず医師からスケジュール調整を行うとうまくいくことが多いでしょう。

②否定しない環境づくり、発言しやすい雰囲気づくり

医療業界に関しては医師の方が他の業種より立場的に上ということもあり、医師以外の人がデスカンファレンスでなかなか発言できないことがあります。

ただ、スタッフ同士双方向からの意見を確認し、理解し合うこともデスカンファレンスの意義の1つともなっています。そのため、全員が発言しやすい雰囲気づくりやルール決め、司会進行の設定が必要になるでしょう。

気を付けること・課題

①発展的な見解を得るのが難しい

課題)医療業界に関しては医師の方が他の業種より立場的に上ということもあり、医師以外の人がデスカンファレンスでなかなか発言できないことがあります。そのため、議論が発展せず発展的な見解が得られないこともあるかもしれません。


解決方法)
デスカンファレンスの目的の1つとして、自分が考えていなかった他者の意見を聞き、考えを深めることが挙げられます。また、デスカンファレンスにはご利用者の看取り後に、振り返りを行うことによって、ケアを見直し、次につなげる意義があります。こういった認識を持ちつつ、今後どう活かすかを考えると良いのではないでしょうか。

②スタッフ間の意識の差

課題)デスカンファレンスを行う前に、参加者全体で目的の認識をしていないがために強い否定をしてしまったり責任追及をしてしまったりと本来の目的と異なってしまう課題があります。


解決方法)
デスカンファレンスを行う前に、事前に話し合う内容・行う意図や目的を明確にしておき、有意義なデスカンファレンスになるよう全員の意識を統一し、参加するようにしましょう。

③感情の表出がなかなかできない

課題)スタッフはご利用者様の看取りに立ち会うため、様々な感情が込み上がってきます。またご家族の方の悲しみに対しても反応してしまう可能性があります。そこで、スタッフは感情の表出していいのかどうかという問題があります。


解決方法)感情の表出に関しては賛否が分かれる問題となっています。
ただ、あまりにも蓄積すると精神的な疲労で体調を崩してしまう可能性があります。デスカンファレンスとはスタッフ同士の意見交換の場なので、意見交換を通し感情を抜くことも忘れずに認識しておくことが必要です。
 

(6)後悔しないターミナルケアを実施しよう

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/548602

看取りケア加算の創設により、新たにターミナルケアに取り組む施設が増えてきました。

看取りケアに関して、より詳しい記事はこちら

→『介護報酬の一つ「看取り加算」とは | 対象者、算定条件などを解説

しかしケア体系はまだ試行錯誤で、ケアを行う職員の側にも心に死を迎え入れる準備が出来ていないケースが目立ちます。 また、ターミナルケアを開始する段階となって、担当者が「さあどうしよう、何かしなくちゃ」と慌てるのではなく、今回の流れに沿って着実に準備を進めていきましょう。

ターミナルケアは日常のケアの延長線上にあります。高齢者施設なのですから、入居時から、状態はどうあれ広義のターミナルケアと考えて、毎日の関わりを行うべきです。

担当のご利用者と、かけがえのないエピソードを築いていく毎日こそ、重要とされるべきです。ターミナルケアに至るまでのケアがないがしろにされているようでは、ターミナルケアは形だけのものになってしまうのです。

ターミナルケアで後悔したくない。デスカンファレンスを通して、まず、日常のケアから見直していきましょう。

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