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介護事故を防ぐ|ハインリッヒの法則に基づくヒヤリハット報告の方法

テクニック
世間の関心が高まっている介護事故。前回はヒヤリハット報告書の例として、代表的なケースの原因と対策を紹介しました。今回はもう一歩踏み込み、ヒヤリハット報告を単なる個別事例の情報共有・報告に終わらせずに、 「介護事故を防ぐ仕組み」につなげるために何をすればいいのかを考えていきます。
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(1)ヒヤリハット報告とハインリッヒの法則

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2045551

介護分野に限らず、一般的に労災や仕事中の事故には「ハインリッヒの法則」が成り立つと言われています。

これは1件の重大な事故の背景には、29件の軽微な事故と、300件のヒヤリハットが生じているという経験則で、「1:29:300の法則」とも言われています。

ハインリッヒの法則は建築や発電所、航空会社など幅広い業種業態で用いられており、介護の現場でも「介護事故の防止」のために威力を発揮する法則です。

ハインリッヒの三角形「1:29:300」という比率は、重大な事故ほど「複数の原因が重なって」発生するためと考えられます。

例えば「介護施設のベットと机の距離が離れている」という事象は、 「利用者が机のものをとろうと、ベットから身を乗り出してしまう」というヒヤリハットの原因となります。

利用者が「ベットから降りないとものが取れない」と認識し、無理に身を乗り出すことを止めれば、ヒヤリハットで終わりますが、 ここに利用者が「あとちょっと乗り出せば、机のものに届くと思った」という失認が加わると、転倒事故に発展しかねません。

さらに「事故が職員が少ない時間帯に起こってしまった」というという3番目の要因が加わると、発見が遅れ、重大な事故へと発展してしまいます。

(2)ヒヤリハット報告を個別報告に終わらせない

ハインリッヒの法則から介護事故を眺めると、ヒヤリハット報告の意義が大きく変わってきます。

例えば、「本来はミキサー食なのにキザミ食が準備されていた」というヒヤリハット報告に対して 「厨房職員の確認ミスが原因で、対策として介護職員が全ての入居者の食事形態を把握し、間違いに気づけるようにする」という結論を出したとします。

これだけ見れば至極まっとうな結論ですが、ヒヤリハットはこれ1件だけではなく、数百と存在します。 100件のヒヤリハットに、100個の原因を見つけ、100個の対策を講じても、全てを業務に組み込むことは難しいでしょう。

もちろん様々なケースに対応できるようスキルや経験を磨いていくことは必要です。

しかし、ヒヤリハットを個別事例の報告で終わらせるのではなく、多くのヒヤリハットを引き起こしている2,3の「ありがちな要因」を分析し、それを取り除くことこそがヒヤリハット報告の真の意義です。 個別報告から最大限の価値を引き出すためにも、ヒヤリハット報告を集計して、潜在的な事故や重大事故に発展するリスク要因を減らしていきましょう。   

(3)集計しよう!

人間のパターン認識能力は非常に優れています。特別な訓練を受けていなくても、ものごとの因果関係や、事故が起こりやすいパターンを発見することは、驚くほど簡単にできます!

個別のヒヤリハット報告をグルーピングし、眺めるだけでも、事業所が抱えるリスクを発見することができ、ヒヤリハットや事故リスクを劇的に減らすことができるはずです。


Case1:時間別に集計する

ヒヤリハット報告を発生時間帯ごとにグルーピングしてみましょう。もし、特定の時間帯に報告件数が多くなっているようでしたら、 その時間帯の特徴を探してみましょう。新人に偏ったシフトの時間帯に件数が多いことを発見したら、シフトを組み直せば、多くのヒヤリハットを解消できるはずです。


Case2:発生場所別に集計する

特定の場所での報告件数が多い場合は、そこに原因があるはずです。ベットの近くでのヒヤリハットが多い場合、「ベットの配置は適切か?」「ベットが高すぎないか?」など、観察してみましょう。


Case3:利用者ごとに集計する

個々の利用者ではなく、利用者の属性(性別や要介護度、年齢etc)ごとに集計してみると多くの気付きがあるはずです。 例えば、リハビリを開始してから10-20日の利用者に、 ヒヤリハット報告が多ければ、何が原因なのでしょうか? 利用者の実際の運動能力と認識のギャップが大きくなっているのかもしれません。 その場合、どのような対策を講じるべきでしょうか?簡単に対策が見つかるはずです。


いかがでしたか?他にも様々なグルーピングや分析ができます。 100個のヒヤリハットに対して、100個の対策を講じることも重要ですが、2,3の根本原因を取り除くことは、さらに重要です。

ハインリッヒの法則は、ちょっとしたヒヤリハットが重大な事故に発展する危険性を示しています。 介護事故を防止するためにも、ヒヤリハット報告を個別報告に終わらせず、集計・分析して、事故防止の「仕組み」につなげていきましょう!  

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