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(1)高齢者のレクリエーションの目的
デイサービスや有料老人ホームなど、介護サービスを提供する多くの施設では、高齢者のレクリエーションの時間に力を入れています。一見高齢者と施設職員が一緒に遊んでいるだけにも見えるレクリエーションですが、実は施設が企画する高齢者向けのレクリエーションには次に挙げるような目的があります。
- 老化で低下する身体機能の維持や向上
- 認知症予防や症状進行を抑制するための脳の活性化
- 施設利用者同士のコミュニケーション促進
上記の目的を負担が少ないかたちで行えるプログラムで、高齢者向けのレクリエーションは企画されています。
(2)レクリエーションの目的
加齢と共に起こる運動量の減少のカバー
一般的に「老化現象は改善の余地がない」と認識される傾向がありますが、これは加齢と共に運動量が減少し筋力低下や関節硬化が引き起こされることで、高齢者の身体能力が著しく低下することが理由だと言えるでしょう。
高齢者向けのレクリエーションは、負担に感じない程度に全身を動かすようにプログラムされています。ゲーム性を持たせることなどで、楽しみながら筋力維持や関節硬化予防に効果がある全身運動を行える高齢者向けレクリエーションは、老化現象の進行を効果的に改善できると考えられています。
(3)レクリエーションの持つ効果① 認知症予防
認知症の予防や既に発症している認知症の進行を抑制するためには、高齢者の脳へ刺激を与えることが重要です。指先を動かす運動が脳に刺激を与えることは広く知られていますが、単調な指先運動は長期間にわたって持続することが難しいというのが現実です。
感覚で指先や頭を使うプログラムを取り入れた高齢者向けレクリエーションに参加することは、無理なく脳に刺激を与えることに繋がり認知症予防や発症した認知症の進行の抑制が期待できます。
またレクリエーションイベントに参加すること自体が、生活にメリハリを与えることとなり脳への刺激となります。
(4)レクリエーションの持つ効果② 引きこもり予防
一般的に高齢者になると「人づきあいを煩わしく感じてしまう」という傾向がありますが、レクリエーションに参加することで施設利用者同士のコミュニケーションが生まれます。新たな人間関係を構築することは脳に刺激を与えることに繋がりますし、同世代とコミュニケーションを行うことは、高齢者の自立したいという気持ちを刺激すると考えられます。
レクリエーションを通じて新たな人間関係を上手く構築できれば、高齢者向けレクリエーションへ参加することがモチベーションとなり積極的になれるという心理的効果も期待できます。
積極的に人づきあいを行うことは、高齢者の引きこもり防止に繋がると言えるでしょう。
(5)効果的なレクリエーションのポイント
筋力増強・維持につながる
高齢者向けレクリエーションしては、体を動かして筋力の維持や増強ができることが一つのポイントです。
筋力を維持・増強することで身体能力の低下予防や改善が行えるプログラムです。筋力の維持や増強というとトレーニングジムでのマシーントレーニングや、ジョギングなどをイメージするかも知れませんが、これらは一般的に高齢者にとって身体的負担が大きすぎるのでおすすめできません。
過度な身体的負担がかからない
そのため、高齢者向けのレクリエーションでは、体に過度な負担がかからないことも非常に大切なポイントなのです。
体を動かす高齢者向けレクリエーションのおすすめのプログラムとして「パターゴルフ」があります。パターゴルフはゲーム性が高く、高齢者が楽しみながら穏やかな全身運動を行えるうえにカップを狙う集中力も求められるので、脳への刺激も多いスポーツだと言えるでしょう。
(6)予防に効果的なレクリエーション
指先を動かす作業は、脳への刺激を与え認知症に対する予防効果が高いとして広く知られています。日常生活の中でも指先を動かす作業として調理などが挙げられますが、高齢者向けレクリエーションのプログラムに取り入れるのは現実的でないと考えられます。
パズルや折り紙、塗り絵がおすすめ
指先や頭を使い、認知予防や症状の進行を抑制する高齢者向けレクリエーションのプログラムに多く取り入れられているのがパズルや折り紙・塗り絵を使ったレクリエーションです。
細かい作業が多いパズルや折り紙、塗り絵は指先を動かし、頭を使うものなので脳への刺激が多いレクリエーションですし、作り上げれば達成感を感じることができるので高齢者向けのレクリエーションだといえるでしょう。
塗り絵に関する記事はこちら |
(7)生きがいの創出に効果的なレクリエーション
高齢者向けのレクリエーションと言っても、施設内の高齢者だけが集まって行うものばかりではありません。
施設が位置する市区町村に居住する外部の人たちとの交流などを通して、社会貢献の側面を持つ高齢者向けレクリエーションも存在します。核家族化が進む現在は以前と比べると子供たちが高齢者と接触する機会が、大きく減少したと言えるでしょう。
高齢者との接触の機会が少ない保育園児や幼稚園児が高齢者施設を訪問し、交流を深めるプログラムなどが実施されています。
現在の子供たちが知らない昔の遊びや昔話、地元の言い伝えなど形のない文化を、高齢者から子供たちに語り継がれる文化継承は非常に意味があるといえるでしょう。
また子供たちと過ごす時間に充足感や自己肯定感を感じる高齢者も少なくないことから、社会貢献型の高齢者向けレクリエーションは大きな意味を持つものだと考えられています。
(8)レクリエーションの企画前に知っておくべき点
高齢者向けのレクリエーションを企画する際には、高齢者がどのようなプログラムを望んでいるか、プログラムがどのような効果があるかをを掴んでおくことはもちろんですが、高齢者の視力や聴力にも配慮するべきです。
視力の低下に注意
加齢と共に視力や聴力は低下し若い頃にしっかりと見聞きできていたものでも、年を重ねると共に視覚や聴覚からの情報が掴みづらくなります。視野は狭くなりがちですし、動くものに反応する動体視力などは大きく低下するので、動きの早いものを捕らえることが難しくなります。
聴力の低下に注意
また聴力の低下で小さな音が聞き取りづらくなりますが、大きな音はうるさく感じてしまうようになります。細かな音の周波数を聞き分けることができなくなることから、聞き間違えが多くなりコミュニケーションが難しくなりがちです。
このような高齢者特有の視力や聴力の特徴を掴んだ上で、高齢者向けレクリエーションプランを企画しましょう。
(9)レクリエーションを企画する際の注意
若い世代にとっては、ゲームのルールは複雑な方が面白みを感じるものですが、高齢者向けレクリエーションを企画する際には、レクリエーションのルールを簡単で明確に定義付けることが重要です。
しかし合唱やお遊戯のような余りにも単純なものばかりだと、レクリエーションを幼稚に感じ自尊心を傷つけてしまうケースもあるので注意が必要です。仮に認知症を発症している高齢者でも、自尊心や承認欲求が失われるものではありません。そのため、本来ならば各高齢者に合わせたものが望ましいのですが、実現は非常に難しいとも言えます。
そこで個人で行うレクリエーションよりも団体戦の形をとったものの方が、各自の個性を活かしたプログラムとして成立しやすい場合があります。
レクリエーション自体のルールは簡単なものでも、団体戦にすることでリーダーシップをとる人やサポートに回る人などポジションが発生するので、より多くの高齢者が共に楽しめるレクリエーションになる可能性が高くなります。
(10)高齢者レクリエーションを通して楽しい毎日を
高齢者向けのレクリエーションを企画する際に、対象が高齢者であることから様々な制約が発生するのも事実です。
しかし高齢者が楽しみながら身体能力の低下や認知症の予防を行えるレクリエーションには大きな意味があると言えます。
高齢者が喜んで参加できるようなレクリエーションを企画することは、日常生活にハリと潤いを提供することにもなりますので、効果的な高齢者向けレクリエーションを通して楽しい毎日を過ごせる環境作りをしていきましょう。