介護に関わるすべての人を応援します

回想法は認知症に効果あり? | 家庭での実践方法やテーマや注意点

在宅介護サービス
「回想法」をご存じでしょうか。心理療法の一つで、近年認知症に効果があると注目を集めています。このことによって、徐々に回想法を取り入れる施設も増えてきています。また、方法自体がシンプルなこともあって、自宅で回想法を実践してみた事例も報告されています。  本記事では、家族の誰かが認知症になってしまい認知症の進行を止めたいといった方向けに、具体的な実践例を踏まえ、方法やテーマ設定、行う際の注意点など、自宅で今すぐ取り組めるように解説していきます。
公開日
更新日

(1)回想法とは?

「回想法」をご存じでしょうか?回想法とは、高齢者が過去の出来事や自身と馴染み深いものなどを思い出し、聴き手が経験を分かち合いながら共感的に聞くことで、高齢者が人生を振り返る方法です。

回想法には二種類あり、一般的に介護施設などで10~20前後のグループを作り、専門家の指導を受けながら行う「グループ回想法」と、個人で行う「個人回想法」があります。

回想法の対象者

回想法の対象者は高齢者です。

回想法は、提唱された1960年代当初は、うつ病を患う高齢者のうつ病治療に使用されていました。その後、認知機能が改善するといった事例が増加して以来、日本でも認知症を患う高齢者の認知症における進行予防に使用されるようになってきました。

回想法の歴史

そもそも回想法とは、1963年にアメリカの精神科医であるロバート・バトラー氏によって提唱された心理療法の一つです。

提唱されて以来、欧米を中心として高齢者の医療・福祉・介護のような場面で広く実践されてきました。その後、日本でも研究が進められ、近年では認知症に効果があるとして注目を集めています。

(2)回想法の効果

回想法を行うことによって得られるポジティブな効果は大きく分けて、「個人の内面に及ぼす効果」と、「個人の内面を超えて、対人関係へ及ぼす効果」の二つに分けることができます。

個人の内面に及ぼす効果

主に精神的な安定をもたらす効果が期待されます。

  • 抑うつ気分を軽減し、不安や孤独感の解消
  • QOL(生活の質)の向上させることができる
  • これまでの葛藤を解決する
  • 誇りをもって自分の人生を受け入れられるようになり、人生の満足度を増加させる

対人関係へ及ぼす効果

主に社会的な活動を活発にする効果が期待されます。

  • 対人関係を促進させる
  • 高齢者の意思を引き出すことによる、他者とのコミュニケーション能力の回復

(3)回想法は認知症にも効果がある?

(2)で回想法がもたらす効果を紹介しましたが、近年日本では認知症の進行予防効果もあるとして注目を集めています。

そもそも認知症は、物忘れが激しくなるなど最近の記憶が失われる症状であり、過去の古い記憶は比較的最後まで維持される特徴があります。回想法は、この認知症における記憶障害の特徴を生かした心理療法といえます。

認知症の症状の一覧を載せた記事がありますので、詳しく知りたい方は参考にしてください。

過去のことを思い出して誰かに話したり、聴き手とのコミュニケーションを図ることで脳が活性化し、

  • 記憶を維持すること
  • 症状の進行を遅らせること

につながります。

また、認知症患者とコミュニケーションをとることで、日々症状が悪化するのではと心配する高齢者の不安を取り除く、精神的なケアといった側面もあります。

(4)回想法はどんなテーマで行う?

回想法を行うときはテーマを決めて行います。この見出しではよくテーマとして使われるものを紹介していきます。

  • 家庭生活
  • 学校生活
  • 交友関係
  • 仕事関係
  • 娯楽

カテゴリーとしては、だいたいこの5種類に分かれると思います。具体的には以下のようなテーマがあります。

カテゴリー テーマ例
家庭生活
  • 両親、祖父母
  • 兄弟・姉妹
  • 子供
  • 食事
学校生活
  • 先生
  • 校舎
  • 通学路
  • 制服
  • 部活・習い事
交友関係
  • 友達
  • 出会い・別れ
  • 恋人
  • 幼馴染
  • 喧嘩・仲直り
仕事関係
  • 仕事内容
  • 同僚
  • 上司・部下
  • 成功・失敗
  • 就職
娯楽
  • アニメ・漫画・演劇
  • テレビ・ラジオ・映画
  • スポーツ・ダンス
  • 音楽・カラオケ
  • 旅行

これは一部に過ぎないのですが、高齢者が過去に体験したものは、その人その人に応じて様々なものが見つかると思います。

(5)家庭で回想法を行う方法

この見出しでは、実際に回想法を家庭で行う方法の一つ、上の画像の方法を紹介していきたいと思います。回想法を家庭で行う手順は次の通りです。

  1. テーマを決める
  2. 回想法を行う際に利用する道具・材料を準備する
  3. 実際に道具や材料を用いながら過去にあった出来事を思い出す
  4. 出来事や思い出を聴き手と共有する、聞き手は質問をして思い出を掘り下げる

テーマを決める際は、より昔のものを思い出せるように高齢者が子どもの年代のものを選択しましょう。このとき、聴き手もこの内容に触れたことのあるものであれば、手順の4番において共有するときにスムーズになります。

次に用意する道具・材料なのですが、当時実際に使っていたもの、または当時のことを記録した写真や本、テレビ番組、映画など様々なものがあります。さらに、香りがするものや食べ物など五感を刺激するものなどは、過去の記憶を思い出すのに有効です。

テーマ、道具・材料を決めたら、それを用いて実際に過去にあった出来事を思い出し始めましょう。このとき、高齢者の方が感じたことを自由に話させてあげましょう。

過去の出来事を思い出し終えたらその内容と、よみがえってきた思い出を聴き手と共有しましょう。聴き手は、記憶をもっと深く掘り下げていけるように質問をしていきましょう。

ただこれはあくまでも一例にすぎず、何気ない日常会話から始め、だんだんと過去の思い出を聴いていくようなコミュニケーションの一環として行う手法もあります。

(6)個人回想法とグループ回想法

(1)で述べた2種類の回想法、個人回想法とグループ回想法に関して詳しく見ていきましょう。

家庭で行われる個人回想法

個人回想法はよく家庭で行われます。

個人回想法のメリットとして、一人一人個別に向き合うことで対象者個人の人生にじっくりと向き合うことができる点です。聴き手に対する信頼性が高まることによって、回想を深めていくことができます。

また、家族や在宅介護の訪問スタッフなど身近な人が、日々のコミュニケーションの一環として形式にこだわらずにリラックスした状態で行えるといった強みもあります。

施設で行われるグループ回想法

グループ回想法(集団回想法)はよく施設で行われます。ただ、施設によっては個人回想法を行うところもあります。

グループ回想法は主に10名前後の小さなグループで行います。数十名での大きなグループでの大きなグループで行う方法もあるそうです。グループ回想法のメリットとして、グループのメンバーの様々な考えに触れることで、回想が深まることです。

さらには、メンバーとコミュニケーションを盛んに取ることによって、回想法の効果が上がるといった側面もあります。

グループ回想法を取り入れてる施設もあるグループホームってなに?、有料老人ホームとの違いは?といった方向けにグループホームに関する記事があります。ぜひご覧ください。

(7)回想法を行う際の注意点

聴き手は回想法を行う際に「思い出を話してもらおう」と安易に考るのはやめましょう。事前に準備を十分にしないまま、相手から思い出を根掘り葉掘り聴きだそうとするのは、他人のプライバシーに土足で踏み込むようなものです。

その人の自尊心を守らなければ、聴き手との信頼関係も生まれず効果的な回想法を行うことができません。具体的に意識しなければならない注意点を見ていきましょう。

回想法を始める際

  • 語り手の尊厳を守る
  • 語り手の話が変わっても否定しない
  • 話したがらないことは無理に聴かない
  • 語り手が回想法をやめたくなったら無理に続けない
  • プライバシーを守る
  • 否定せずに傾聴する
  • 語り手の思い込みや偏見に注意する

といった点に注意しましょう。また語り手が話している間は途中で質問をはさむなど、話を遮るといったことはないようにしましょう。

回想法を終える際、終えた後

  • 回想法を心地よく終える
  • 回想法参加者がそこで語られたことを他言しない

といった点に注意しましょう。

(8)回想法に研修・資格はある?

回想法を家庭で取り入れたい人や、施設でのレクリエーションとして取り入れたい人、または回想法を実際に体験したい方向けに、回想法に関する研修があります。

また回想法に限った資格というものはありませんが、回想法に関連した回想療法の資格があります。それぞれを詳しく見ていきましょう。

回想法の研修

回想法の研修について書かれているサイトをいくつか紹介していきます。

この他にも研修はあるのですが、現在は定員を募集していないものや、募集が終わってしまったものがほとんどです。今後も新たな研修が開かれる場合がありますので、最新の情報をチェックしましょう。

回想法に関する資格

回想法のプロセスの中で、聴き手が適切な質問によって回想を深めていく点などで、会話は重要な位置にあります。このような回想法に関連した、会話による回想療法に

  • 心療回想士(レミニシャン)
  • パーミングセラピスト

があります。

心療回想士(レミニシャン)

心療内科医療から生まれた、インタビュー形式で回想を行う心理療法の資格があります。

パーミングセラピスト

会話機能がやや低下してしまった方へのコミュニケーション技術である、パーミングを取り入れた心理療法の資格があります。

(9)回想法に関する人気書籍3選

この見出しでは、回想法を体験する人、学びたい人など、回想法に興味のある方全員に向けて書籍をいくつか紹介していきます。

『認知症と回想法』黒川由紀子

『なぜ、「回想療法」が認知症に効くのか』小山敬子

『Q&Aでわかる回想法ハンドブック―「よい聴き手」であり続けるために』野村豊子/語りと回想研究会/回想法ライフレヴュー研究会

(10)取り組みやすい回想法を、ぜひ実践してみては?

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/92485

日々のコミュニケーションの一環として、家庭で取り入れることが可能な点は回想法の強みと言えます。テーマも豊富にあり、毎回変えることにより脳も活性化には大切です。

回想法のほかにも、家庭で気軽に行えるレクリエーションがあります。詳しく知りたい方は以下の記事をお読みください。

回想法は、高齢者が人生を振り返ることによってポジティブな効果を得るという目的は定まっていますが、決まりきった1つの方法というものは存在しません。

そのため、回想法のやり方は複数存在します。それぞれの状況にあった回想法を、家庭または施設で取り入れてみてはいかがでしょうか。

この記事が気に入ったら
いいねしよう!