(1)レスパイトケアの一環でもある、レスパイト入院とは
「レスパイト」とは一時休止・休息という意味であり、レスパイト入院とは家族の休息のために、患者が一時的に病院に入院することができるケアになります。
レスパイト入院とは、レスパイトケアの一つで、長期間にわたることが多い介護生活の中で、気づかないうちに身体的・精神的な疲労がたまっていくのを防ぐ役割があります。
そこで、休息のために利用したり、冠婚葬祭にて長期間介護ができないときなどに利用することが多いです。
ここではレスパイト入院を利用するメリットや利用対象者、費用など利用する際に事前に知っておきたい情報をわかりやすく解説していきます。
(2)レスパイト入院を利用するメリット
急な事情でも利用できる
レスパイト入院は、家族の体調不良などで急な入院が必要な場合でも、空きさえあればすぐに入院することができます。
ショートステイが利用できない場合に利用できる
またショートステイと違い、病院での入院であるため医療的処置を行う施設が整っており、下記のような、介護施設でのショートステイで受け入れてもらえない方も受け入れてもらうことができます。
- 入院加療や通院治療、高度医療措置が必要な方。常時治療や24時間看護が必要な方。
- 精神疾患で治療の必要な方
- 入所時の健康状態(発熱、風邪症状など)が悪い方
その他にも病院の中でも「地域包括ケア病棟」での入院であればリハビリを受けることが可能な場合もあります。
(3)レスパイト入院を利用することができる利用対象者
常時の医療措置が必要なため、介護保険サービスの利用が難しい場合
厳密にいうとレスパイト入院を利用可能な条件は医療機関によって若干の違いがあります。
しかし、ほとんどの医療機関で定められている主な利用条件は以下の2点になります。
- ショートステイやデイサービス等を受けることができず、かつ介護が必要な方
- 医療保険適用の方
医療保険適用の方で利用が多いのは次のような疾患を持っている人です。
- 神経難病の方
- 高齢のがん患者
- 気管切開を受けられた方、吸引の必要な方
- 胃瘻、腸瘻等経管栄養または静脈栄養の方(口からの食事ができない方)
- 自力歩行や排泄ができない方
- 人工呼吸器、在宅酸素の必要な方
逆に医療的処置が必要でなくショートステイを利用することができる場合、レスパイト入院を利用できないことが多いです。
常時医療処置が必要ないため、レスパイト入院を利用したくても利用できない場合はショートステイの利用を検討してみましょう。
(4)レスパイト入院を利用するために必要な手続きの流れ
まずはケアマネやかかりつけ医に相談しよう
レスパイト入院の主な流れとしては、担当のケアマネジャーやかかりつけ医を通し、各病院の地域連携科への申し込みを行います。申し込みの際には、「地域包括ケア病棟入院申込書」と「診療情報提供書」に必要事項を記入した状態で提出します。
そのためまずは、ケアマネジャーもしくは主治医の先生、訪問看護が介入しておれば訪問看護へ相談を行いましょう。
その際の注意点として、予定がわかっていれば少なくとも1週間前には予約が必要であり、場所によっては1か月前でも予約は取れないことが多いため、早めに相談することが必要です。
(5)レスパイト入院を利用するためにかかる費用について
ではレスパイト入院、どのくらいの費用が必要になるのでしょうか。
医療費 | 1週間 | 2週間 | 30日 | 60日 |
3割負担 | 約7万 | 約14万 | 約27万 | 約53万 |
2割負担 | 約5万 | 約9万 | 約18万 | 約36万 |
1割負担 | 約2.5万 | 約5万 | 約9万 | 約18万 |
証明書を所有している場合 | 食事代+自費料金 | 食事代+自費料金 | 食事代+自費料金 | 食事代+自費料金 |
主に入院中に必要な費用は、上の表のような医療費に加え食費+自費費用(おむつ代・病衣代・個室代)となります。*病院により異なるためあくまで参考費用となります。
この中で重傷老人や身体障害者の証明書を有していたり、生活保護の場合は医療費は掛からず食費+自費費用(おむつ代・病衣代・個室代)のみの支払いとなります。
また一日当たりの料金でまとめると大体下記のような料金となります。
医療費(1日料) | 1日目 | 2日~14日目 | 15~60日目 |
3割負担 | 約13500円 | 約9000円 | 約8500円 |
2割負担 | 約9000円 | 約6000円 | 約5700円 |
1割負担 | 約4500円 | 約3000円 | 約2850円 |
(6)レスパイト入院とショートステイの違いについて
適用される保険が異なる
この2つのサービスの大きな違いはまず、ショートステイは「介護保険」の中のサービスである一方、レスパイト入院は「医療保険」の適用サービスである点です。
そのためショートステイは介護保険利用にて施設に短期入所し、レスパイト入院では病院に短期入院します。二つのサービスはそれぞれ施設と病院で行われ、大きな違いは医療的処置を行える施設があるかどうかになります。
そのため医療的処置(気管切開・吸引・経管栄養・静脈栄養・人工呼吸器・人工呼吸器など)を必要とする状態変化の可能性があったり、発熱などの病的症状を有し、常時治療や24時間看護が必要な方や、精神的に不安定であり介護施設での対応が難しい場合には、専門機関である病院でのレスパイト入院が必要となり、それ以外の介護保険保有者の場合はショートステイを利用します。
(7)レスパイトケアを利用する際の基本ルール・注意点など
病院によって若干異なるため、申し込む前に確認が必要
ではレスパイト入院を利用する上での注意点はどのようなものがあるでしょう。
入院期間や入退院の注意点として、大まかに下記のようなルールを定めている病院が多くあります。
入院期間に関しては1回の入院期間は、14日以内(病院によって異なり、入院期間は通常5日から7日が目安の病院もあるため相談の必要があります)
- 入院する日は、平日(月曜日~金曜日)10時~15時とし、病院の休みである祝日や休日の入院はできない(病院によっては平日の午前中のみ)
- 退院については午後7時までの退院であり、退院先は原則として入院前の自宅または施設が対象
- お薬・注入食等は原則として持参し、レスパイト期間中の処方は行えない。
- 各種検査やリハビリについては必要に応じて実施するがしない場合もある
- 入院中に症状が急変し治療が必要になった場合には、急性期病棟に転棟もしくは専門医のいる病院に転院の処置を行う
- 他の患者さんにご迷惑となるような行為等があった場合、入院継続が困難になる場合があります。
- 送迎は原則行っていないため、家族または介護タクシーの利用の必要があります。
しかしこれらのルールは病院により、異なる場合も多いため入院前の確認が必要となります。
(8)レスパイト入院を受け入れる、「地域包括ケア病棟」とは
地域包括ケア病棟は、平成26年度診療報酬改定により新たに認められ、主に在宅復帰に向けて診療・看護・リハビリを行なうことを目的とした病床となります。
従来からある回復期病院と異なる点は状態が落ち着いていない方も受け入れを行い、在宅復帰に向けて診療・看護・リハビリを行なう点です。
このような病院でのレスパイト入院では、リハビリテーションを行うことができることが他のレスパイト病院と比べメリットとなります。
在宅介護のサポートは、レスパイトケア以外にも
ちなみに、この「在宅介護をサポートすべく、地域が一体となって各種ケアサービスを提供できるようにするシステム」のことを、地域包括ケアシステムと呼びます。
レスパイトケアだけでなく、介護に関してその他様々な分野に関する相談サービスを、各地域ごとに設置されている「地域包括支援センター」という場所が提供しています。
介護生活に関して何かしらの不安を抱えている人は、こちらに相談してみるのはいかがでしょうか。
(9)レスパイト入院が利用できない際に利用できる他のレスパイトケアについて
このように今回はレスパイトケアの中でもレスパイト入院を挙げましたが、他にも介護者の負担を軽減するためのレスパイトケアのサービスはあります。
例えば訪問介護・訪問看護やデイサービスを組み合わせることで、24時間体制での介護を可能にすることができます(医療的処置が必要であるため看護の介入は必須)。
そのためレスパイト入院が利用できない場合でも、ケアマネと相談し自分にあったサービスを検討してみましょう。
(10)介護負担があまりにも重いと感じたら、レスパイト入院などのレスパイトケアの利用を考えてみては
このようにレスパイト入院をはじめ、レスパイトケアサービスは多くあります。
介護に少しでも「疲れた」「しんどい」と感じることがあれば、無理をせずに担当のケアマネジャーや介入している医療従事者に相談し、サービスの見直しを行いましょう。