(1)障害者支援のための基幹相談支援センターとは
障がいを持つ方やその家族のための総合支援窓口
基幹相談支援センターとは、簡単に説明すると障がいを持つ人やその家族の相談窓口です。
この基幹相談支援センターは、平成24年4月1日施行に市町村に設置されました。
基幹総合支援センターが設置された背景
この基幹相談支援センターの設置は、厚生労働省にて決められた障害者福祉における相談支援の充実に向けた取組の一環として行われました。
厚生労働省が公式資料にて説明するように、障がい者が地域で暮らせる社会また自立と共生の社会を実現するための相談支援の強化が必要となったことが背景にあると考えられます。
(参考:厚生労働省「障害者福祉における相談支援の充実に向けた取組について」)
障がい者向けのサービスは整備されたものの選択が難しい
2010年に障害者自立支援法が立案されて以降、障がい者の地域で生活し自立するという世の中の流れがあり、その中で障がい者が特別視されたり、差別視されたりすることがないよう、障がい者が各種支援サービスを選択できる環境は整備されたといえます。
しかし、障がい者の自由を確立する中でサービスを選択する際、専門的な知識がないと、どのサービスを利用するのが自分のケースにとってベストなのかがはっきりしないため、なかなか手をだすことができなかったのが課題として指摘されていました。
障がい者の自身に合ったサービス選択を支援することが主な目的
そこで、各障がい者が少しでも地域にて自立した生活を送ることができるよう、サービス選択などを簡易的にするべく、専門的な知識をもつ相談員が派遣された基幹相談支援センターが設置される流れになったのです。
本記事では、そんな基幹相談支援センターについて、その役割や具体的なサービス内容などについて詳しく説明していきます。
(2)基幹相談支援センターの役割
この基幹相談支援センターでは、主に下記のような事業に取り組んでいます。
障害者に対する総合的・専門的な相談支援
専門的な知識をもって、障害の種別や各種ニーズに対応し、柔軟な対応を可能としています。
基幹相談支援センターにて相談することで、相談窓口から必要な支援にまでワンストップで行うことができます。
地域移行・地域定着への取り組み
障がい者支援の入所施設や精神科病院への働きかけ連携を行い、地域で生活できるように住居の確保・新生活の準備等や必要なサービス(単身者の夜間サービス等)常時連絡体制を確保する等の体制整備に係るコーディネートを行います。
地域の相談支援体制の強化と取り組み
相談支援事業者へ対しての専門的指導や助言や、相談支援事業者の人材育成を行い、相談機関との連携強化の取組を行います。
障害者の虐待防止・権利擁護
障がい者の権利擁護のため成年後見制度利用支援事業を推進し、また障がい者の虐待防止と養護者への支援を実施するため、相談機能の充実及び啓発活動を積極的に行い虐待防止を目指します。
(参考:厚生労働省『行政説明 「障害者福祉における相談支援の充実に向けた取組について」』)
(3)基幹相談支援センターの設置場所
この基幹相談支援センターは基本的に全国の各市町村に、設置されているためどの地域でも相談可能です。
では、市町村のどこを尋ねれば基幹相談支援センターに相談することができるのでしょう。
市町村役所 | 35% |
公共施設 | 26% |
障害福祉サービス事業所内 | 19% |
障害者支援施設 | 5% |
その他 | 15% |
(参考:厚生労働省『基幹相談支援センターについて(26年4月1日現在)』)
このように、基幹相談支援センターは単独で設置されていることはほぼなく、何からの施設内外に併設されていることがほとんどです。
そのため、相談したい場合は、住んでいる市町村の市役所に電話すれば基幹相談支援センターに相談することができます。
(4)基幹相談支援センターと相談支援事業所の違い
そもそも相談支援事業所とは
まず、相談支援事業所は特定相談支援事業所と一般相談支援事業所の二つがあります。
特定相談支援事業所とは、自宅で生活する障がい者の方々のために障害福祉サービスを利用するためのサービス計画の作成(プラン)を行います。
プラン作成後もサービス提供事業所が集まって行うモニタリング会議を行うことで、障がい者の方々が本当に必要なプランを受けられるように援助してくれます。
次に一般相談支援事業所ですが、長期に渡り施設や病院や精神科病院を出て、地域で暮らすための地域移行支援・地域定着支援を行い、病院から地域での生活を援助します。
相互に協力しあう、基幹相談支援センターと相談支援事業所
この相談支援事業所は、基幹相談支援センター以外の、障害者の生活を支援する相談窓口としてしばしば挙げられます。
では、基幹相談支援センターとこの相談支援事業所の違いはどういった点にあるのでしょうか。
上記にて説明したように、相談支援事業所は、特定の障がい者の支援と定期的なモニタリングを行い、課題の解決を目指す支援を直接的に行う、という役割を持っています。
一方、基幹相談支援センターでは、障がい者の生活全般にわたる相談支援を担うための相談支援専門員の育成体制や、権利擁護・地域移行/地域 定着支援等といった、より専門的な相談支援の展開も同時に必要であり、市区町村における相談支援の中核的な役割を担う機関として、相談支援に関する業務を総合的に行うことが目的となります。
要するに基幹相談支援センターにきた相談をもとに、相談者が抱える生活上の悩みや課題を洗い出し、相談支援事業所に伝え担当者を決めて支援を行っていく、という形で両者は協力をしているのです。
(参考:厚生労働省『障害のある人に対する相談支援について』)
(5)<サービス利用者向け>基幹相談支援センターではどんなことが相談できるのか
基幹相談支援センターの役割、提供サービスなどについての概要については以上の通りですが、実際に利用する際には、どのような相談ができるのでしょうか。
生活上の困りごとや悩みを、様々な側面から相談できる
期間相談支援センターでは、主には地域での生活上の困りごと・不安や家族・人間関係についての悩みなどの相談をすることができます。
その上で基幹相談支援センターでは、障がいのある方やその家族等からの相談に応じて、福祉サービスの利用援助、社会資源の活用、ピアカウンセリング、権利擁護のために必要な援助、専門機関等の情報提供などを行うことにより、地域における生活を支援します。
相談可能事項の例
相談可能な事柄の事例としては、
- 福祉サービスの利用援助
- 社会資源の活用
- ピアカウンセリング
- 権利擁護のために必要な援助
- 専門機関等の情報提供
- 障がい者虐待に関する通報届出の受理
- 障がいを理由とする差別に関する相談
などを主な相談可能事項として掲載しています。
(6)<サービス利用者向け>基幹相談支援センターを利用する際の料金は?
相談料金は基本的には無料
この基幹相談支援センターにて相談する際の料金ですが、どの都道府県・地方自治体においても、基本的には相談料金は無料となっています。
サービスを利用する際は当然料金は発生する
ただ、期間相談支援センターでの相談を経て、実際に障がい者向けのサービス(ホームヘルパー<障害者自立支援居宅介護サービス>等)を利用する、という流れになった際には、そのサービス料金は期間相談支援センターにおいてではなく、実際にサービスを提供する事業所において発生します。その際、サービス仲介手数料といった類の料金は、少なくとも相談者に請求されることは特にはございません。
(7)<サービス利用者向け>基幹相談支援センター以外に利用できる福祉に関する相談窓口
いざ相談しようと思った時、「基幹相談支援センターがどこにあるかわからない」「近所に基幹相談支援センターが見当たらない」というケースも、大いに考えられます。そんな時、基幹相談支援センター以外にも福祉に関する相談窓口があるので、ぜひ参考にしてみてください。
市役所でも相談は可能
例えば、どこにでもある市役所でも専門知識を持っている介護支援専門員(ケアマネージャー)や社会福祉士などの資格を持っている人が在籍していることが多いです。在籍しない場合でも市役所のスタッフが対応してくれ、専門の機関に繋いでくれます。
保健所や保健センターにも相談に対応可能なスタッフがいるケースが多い
また、都道府県や政令指定都市・中核都市に配置されており精神保健・難病対策・感染症対策などを行う機関である保健所や、市町村に配置されており地域住民に対して健康相談や保健指導・予防接種・各種検診を行う保健センターでも専門知識をもつ保健師・看護師・薬剤師・栄養士・精神保健福祉相談員に相談することができます。
福祉事務所なども助けになってくれる場合も
他にも、老人・身体障がい者・知的障がい者・児童・母子や寡婦・生活保護などに関する事務を行う行政機関である福祉事務所でも、社会福祉主事や身体障害者福祉司、知的障害者福祉司の資格がある所員や事務員に相談することができます。
このように、基幹相談支援センターは障害者の方々の相談窓口として大活躍していますが、基幹相談支援センター以外にも障害者の方々の相談窓口があります。
このように相談窓口は基幹相談支援センター以外にも沢山あります、何か些細なことでも近場の機関に相談することをお勧めします。
(8)<福祉・介護関係従事者向け>基幹相談支援センターの求人に応募する際の注意点
基幹相談支援センターで行われる相談支援センターには、専門知識を有する資格などが必要な場合が多い
障がい者の方々の相談事業を行う基幹相談支援センターで相談業務を通じ、困っている人の助けになりたい、と思い、基幹相談支援センターにて就業したい、と考えている人も、実は多いようです。
有資格者の募集が多い
その際、地域に復帰できるよう障がい者の方々のための相談支援が適正かつスムーズに実施できることが大切であるため、基幹相談支援センターでは専門的なスキル(相談支援専門員・社会福祉士・精神保健福祉士・保健師・生活支援員など)を有する方が比較的積極的に求められています。
そのため、基幹相談支援センターでは専門的なスキルを有する有資格者の募集がほとんどです。
事前に、未経験でも応募はできるか、資格が必要か、といった応募条件に関するチェックは必須となります。
また、当然ですが日勤・夜勤があるのか、休日は休みであるのかなど、自分の求める勤務体系かどうかの確認もしっかり行う必要があります。
実際に、基幹相談支援センターの求人募集でみられる必須資格については、以下の見出しを参考にしてみてください。
(9)<福祉・介護関係従事者向け>基幹相談支援センターにて相談業務にあたるために必要な資格にはどのようなものがあるか
介護・福祉サービス全般に関する知識を証明できる資格が理想
基幹相談支援センターにて提供される主なサービスが「相談業務」であることを踏まえ、
- 社会福祉士
- 精神保健福祉士
- 保健師
など、福祉サービス全般に関する専門知識をもった国家資格保有者の募集が多いです。
これらの資格の主な仕事は以下のようになっています。
- 社会福祉士…身体的・精神的・経済的など何かしらのハンディキャップのある方々の相談業務を行い、日常生活の問題点を解決できるよう支援を行う
- 精神保健福祉士…心に病を抱えた人(精神的疾患を有する)が日常生活を問題なく過ごせるように、相談業務を行い必要な生活支援・助言・訓練を行い、地域での生活や社会への参加の手助けを行う仕事
- 保健師…地域の方々の病気予防や健康な生活のために保健活動を行うこと
その他にも、国家資格を持たなくても豊富な経験があれば
- 相談支援専門員…障がいをもつ方やそのご家族の相談援助を行う
- 生活支援員…障がいを持った方の日常生活動作(入浴や排せつ、食事の介護等)の生活サポートを行う
として業務にあたることも可能な場合があります。
(10)障害に関する悩みを抱いたら、相談支援センターに相談することを検討してみよう
このように基幹相談支援センターには障害に関する豊富な知識のある専門スタッフが揃っており、些細なことでも悩んだら相談することを推奨します。
障がいのある人は実は身近に多くおり、一人で悩み苦しんでいる人も多くいます。
そのような人々の為にも、まだまだ認知度の低い基幹相談支援センターが社会に認知されるよう伝えていくことが大切です。