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(1)同行援護とは
同行援護については、障害者自立支援法第5条4に以下のように記されています。
視覚障害により 、移動に著しい困難を有する 障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供する とともに、移動の援護その他の厚生労働省令 で定める便宜を供与することをいう。
簡単にいうと、同行援護とは、視覚障害によって一人きりでの移動が難しい方の外出に付き添い、スムーズな歩行や移動中の排せつや食事の介助など、外出時に必要な援助を効果的に行うことをいいます。
障害者自立支援法第5条4は平成23年6月に公布され、同年10月から開始されました。
(2)同行援護のサービス内容
同行援護のサービス内容としては、主に以下のようなものがあげられます。
- 移動時及びそれに伴う外出先において必要な視覚的情報の支援(代筆・代読を含む)
- 移動時及びそれに伴う外出先において必要な移動の援護
- 排泄・食事等の介護その他外出する際に必要となる援助
(3)移動支援との違い
同行援護と移動支援の違いは、利用対象者の決定を行う範囲が異なるということです。「同行援護」は国が対象者を、「移動支援」は市町村が対象者を決めています。
「同行援護」は平成23年10月に厚生労働省により重度視覚障害者に対する個別支援として創設されました。国の制度として定められたことにより、「同行援護」のサービス内容や事業所の指定要件などはどこの市町村でもほぼ同じになりました。
一方、「移動支援」は市町村独自の制度なので、市町村によって事業所の指定要件などが異なります。
また、サービスの目的や提供の条件にも違いがあります。
移動支援事業は、障害があるなどの理由で外出の際に支援が必要と認められる方に対して、移動支援サービスを提供することで、自立の促進および生活の質の向上を図る目的で行われています。
移動支援事業のサービスは、社会生活上必要不可欠な外出及び余暇活動など社会参加のための外出の際に受けることができ、原則として1日で用務を終えるものに限られます。
それに対し、同行援護は、視覚障害により移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに移動の援護等の便宜を供与することと定められています。
サービス内容については、移動時及びそれに伴う外出先において必要な視覚的情報の支援、移動の援護等を行いますが、視覚的情報の支援については代筆や代読も含まれます。
原則として、同行援護の対象となる方については「同行援護」を利用し、対象にならない方について「移動支援」を利用することになります。
(4)サービスの利用対象者
同行援護のサービスは身体障害者、難病患者等、障害のある子どもがサービスの対象者になります。それぞれの利用対象者の基準は、状態像により身体介護を伴わない場合と身体介護を伴う場合に分けられます。
身体介護を伴わない場合は、視覚障害により移動に著しい困難を有する方等であって、同行援護アセスメント調査票において移動障害の欄に係る点数が1点以上であり、かつ移動障害以外の欄(「視力障害」、「視野障害」および「夜盲」)に係る点数のいずれかが1点以上である方が対象になります。
身体介護を伴う場合にあたっては、次のいずれにも該当する方が対象になります。
- 障害支援区分が区分2以上
- 障害支援区分の認定調査項目のうち、次に掲げる状態のいずれか一つ以上に認定されている
- 歩行 「全面的な支援が必要」
- 移乗 「見守り等の支援が必要」、「部分的な支援が必要」または「全面的な支援が必要」
- 移動 「見守り等の支援が必要」、「部分的な支援が必要」または「全面的な支援が必要」
- 排尿 「部分的な支援が必要」または「全面的な支援が必要」
- 排便 「部分的な支援が必要」または「全面的な支援が必要」
(5)サービスの費用の目安
同行援護のサービス費用は、18歳以上の場合は利用者とその配偶者の所得、18歳未満の場合は保護者の属する世帯(住民基本台帳上の世帯)の所得に応じた自己負担の上限月額があります。
ただし、上限月額よりもサービスに係る費用の1割の金額の方が低い場合には、その金額を支払うことになります。
例)A.30分未満 身体介護を伴う場合 サービス利用料金 2,540円 利用料負担額 254円
B.30分未満 身体介護を伴わない場合 サービス利用料金 1,050円 利用料負担額 105円
身体介護を伴う場合と伴わない場合、双方とも、時間が増すごとに単価が上がります。また、2人の職員で同行援護を行った場合や夜間・早朝・深夜等、緊急時対応などの加算があり、地域区分によっても加算がある場合があります。
利用する際にはサービス事業所へ費用の確認を行うことが大切です。
(6)利用の手順
同行援護のサービス利用を希望する場合は、お住まいの市町村の窓口に申請し、基本的に障害支援区分の認定を受けることが必要です。
市町村は、サービス利用の申請をした方(利用者)に、「指定特定相談支援事業者」が作成する「サービス利用等計画案」の提出を求めます。
利用者は、認定を受けた後、「サービス利用等計画案」を「指定特定相談支援事業者」で作成してもらい、市町村に提出します。市町村は提出された、計画案、その他勘案すべき事項を踏まえて、サービス量の支給決定を行います。
「指定特定相談支援事業者」は、支給決定された後にサービス利用に関する会議(「サービス担当者会議」)を利用者・事業所と行います。この会議ではサービス事業所と調整を行い、「サービス等利用計画」を作成します。その後、サービスの利用を開始することができます。
同行援護で身体介護を伴わない場合は、障害支援区分の認定は不要です。詳しく知りたい方は、市町村の窓口で確認することをお勧めします。
(7)利用の際の注意点
同行援護サービス申請時に、身体介護が必要と想定する場合は各市町村の窓口に事前に相談を行うことが大切です。身体介護を必要とするかどうかの判断のために、障害程度区分調査を受けることになります。
例えば、肢体不自由との重複障害を伴う場合などは身体介護を「伴う」か「伴わない」かの認定を受けることになります。
障害程度区分が2以上でかつ同調査項目における「歩行」「移乗」「移動」「排尿」「排便」の5項目のいずれかが「できる」以外となると「身体介護を伴う」と判定されます。
(8)同行援護者には資格が必要
同行援護者は、同行援護従業者養成研修(一般研修)修了者、若しくは、介護福祉士・実務者研修修了者・介護職員基礎研修修了者・ヘルパー1級または2級の資格を有する方になります。
ただし、これらの方が同行援護者になるには、1年以上、視覚障害に関する実務経験が必要です。同行援護従業者養成研程とは、現在の視覚障害者ガイドヘルパーのカリキュラムに含まれていなかった「情報支援と情報提供」「代筆・代読の基礎知識」が追加されたものになります。
ヘルパー1級や介護職員初任者研修等が介護保険制度上の資格であるのに対して、同行援護従業者養成研修は障害者総合支援法(旧・障害者自立支援法)上の資格になります。
同行援護養成研修には、一般課程と応用課程の2種類があり、一般課程は障害者福祉サービスの同行援護サービスを行っている訪問介護事業所などで勤務するにあたり必要な資格となります。
尚、応用課程まで受講されると、同行援護サービス事業所のサービス提供責任者になることができます。
(9)広がる視覚障害者向けサービス
視覚障害者の日常生活での困りごとは、「街中の移動」「公共交通機関の利用」に次いで、「買い物」があります。
「商品の陳列場所や値段が分からない」、「食料品の原材料や賞味期限がわからない」という悩みの解消や、「ウィンドウショッピングをしてみたい」という要望に応えることを目的とした、視覚障害者の方の日常生活の自立サポートを目指したサービスの実証が始まっています。
店舗より貸し出したスマートフォンのカメラとマイクを活用し、視覚障害者が買い物をしている現場の映像と音声をコールセンターに接続します。コールセンターのオペレータがお客様と映像を共有しながら会話し、実際の服飾雑貨売り場までの案内や買い物をサポートするサービスの商品化に向けて、現在、開発途中であります。
(10)同行援護サービスを利用してみよう
同行援護とは、移動に著しい困難を有する視覚障害のある方が外出する際、ご本人に同行し、移動に必要な情報の提供や、移動の援護、排せつ、食事等の介護のほか、ご本人が外出する際に必要な援助を適切かつ効果的に行うことができます。
利用者が行きたいところに同行するだけではなく、外出先での情報提供や代読・代筆などの役割も担う、視覚障害のある方の社会参加や地域生活において無くてはならないサービスです。
また、視覚障害の方の不安と不便の解消ができ、安心して外出できるサービスです。
利用したい場合はまず、お住まいの市町村の障害サービスを担当する窓口に相談することをおすすめします。