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「介護保険の対象」となる杖の6種類|種類別に特徴や使い方等を解説

介護用品
杖にはさまざまな種類のものがあります。そのうち、一部の杖は「歩行補助杖」として、介護保険を利用してレンタルすることもできます。どのような人や場面で使うのに向いているのか、それぞれの特徴や選び方について解説していきます。
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(1)杖を使うメリット


出典:https://www.irasutoya.com/

杖には、足腰が弱った人の歩行にとってさまざまなメリットがあります。

バランスを安定させる

足は閉じているよりも、広げたほうがバランスが安定します。これは、体重を支える点と点を囲んだ「支持基底面」が広がるからです。

杖を用いると、3点で結んだ面積がさらに広がって、安定性が大きく増すことになります。

足腰にかかる負担を減らす

高齢になると、筋肉のおとろえだけではなく、足腰の関節の痛みで歩きづらくなる人も多くなります。杖を用いると、体重を三点に分散することができ、負担を減らして歩きやすくなります。

歩行リズムを一定にする

筋力がおとろえると、足を一定のリズムで踏み出しにくくなります。

その結果、つまずいたりふらついたりして、転倒のリスクが高まってしまいます。そこに杖の動きを差しはさめば、リズムよく安定した歩行をサポートすることができます。

安心感を得られる

杖は歩行のバランスをよくするだけではなく、視力のおとろえた高齢者にとっては障害物などを察知するアンテナともなります。

このように安心感が得られることで、外出にも前向きになり、より充実した生活を送れるようになります。

(2)杖の種類

杖は、介護保険を利用してレンタルできるものとそうでないものの2種類に大きく分けられます。

ほかにも介護保険貸与対象となっている福祉用具には、車椅子や介護ベッドなど、13種類の品目があります。

そこで指定されている「歩行補助杖」は、松葉づえ、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホームクラッチ、多点杖、とかぎられています。いずれも、医療用とされている種類の杖です。

これらの歩行補助杖を介護保険でレンタルするには、「要支援」あるいは「要介護」の認定を受けている必要があります。自己負担額は、支給限度額の範囲内で、所得に応じて1〜3割負担となります。

レンタルは、都道府県から「指定福祉用具貸与」、「介護予防福祉用具貸与事業者」の指定を受けているか、市町村の基準に該当する事業者で行うことができます。

利用の際は、ケアマネジャーか地域包括支援センターに相談してください。

一方、通常の一本杖などは介護保険の対象とはなりません。こちらは、その形状によって、T字型、C字型、L字型などの種類に分けられています。

(3)介護保険貸与対象外の杖の種類①T字型


出典:https://www.photo-ac.com/

T字型は、杖のグリップ部分が「T」の形をしています。

杖というとこのタイプがイメージされやすく、実際にもっとも広く用いられている種類の杖です。

グリップは、人差し指と中指ではさむようににぎります。すべりにくく、6分の1程度まで体重をかけることができるので、一本足杖のなかでも安定性の高い種類となっています。

フレームには、木製からアルミ合金のものまでさまざまなタイプがあります。長さを調節できるものや、折りたたみ式のものもあり、デザインが豊富にそろっているのも特徴です。

持ち運びに便利なので、自力で歩くことができ、ちょっとした場面で支えがほしいという人に適した種類の杖です。女性の場合は、グリップが細いタイプがおすすめです。

(4)介護保険貸与対象外の杖の種類②C字型

C字型は、グリップが傘の持ち手のように湾曲している種類の杖です。ちょうど「C」が下を向いているような形になっていることから、その名称がつけられています。

グリップを腕などに引っ掛けることができるため、物を持ったり作業をするときにも、いちいち杖を下ろす必要がありません。

その反面、グリップに力を入れにくく、ややすべりやすくなっています。

また、体重がまっすぐフレームにかからないため、杖がたわんでしまうこともあります。歩くさいには、あまり体重をかけないようにする必要があります。

どちらかというと、歩行リズムをととのえたい人に適している種類の杖です。

(5)介護保険貸与対象外の杖の種類③オフセットL型

オフセットL型は、横向きのグリップから伸びたフレームが、「L」の形に曲がっている種類の杖です。

T字型の杖の場合、グリップをにぎる際にフレームの根本がどうしても邪魔になってしまいます。

また、腕が垂直になっているため、体重が手首にかかって負担となってしまいます。

しかし、オフセットL型はまっすぐ横からにぎることができるので、より力強く、体重をかけて歩くことができます。握力がしっかりある人に適している種類の杖といえます。

T字型とくらべると大きくなりがちですが、ある程度重みがあるほうが杖としての安定性も高まります。

(6)介護保険貸与対象の杖の種類④ロフストランド杖

ロフストランド杖は、グリップの上方にカフという輪が付いている種類の杖です。ここに前腕部を固定して用いるため、「前腕部支持型杖」ともいいます。

体重をグリップとカフの2ヵ所で支えるので、体重も3分の2までかけることができます。T字型の杖とくらべると、かなり安定性が増します。

また、カフのみで支えることもできるので、杖を使用したまま両手を自由に使うこともできます。

カフには、固定部分が開いている「U字型」と、閉じている「O字型」の2種類があります。U字型には装着がしやすい、O字型には安定して固定できる、というメリットがそれぞれあります。

カフの素材には、フィット感のある合成樹脂や、強度の高い金属などが用いられています。ほかにも、カフとグリップの間やフレームの長さを調節できるタイプのものもあります。

握力がいちじるしくおとろえている人や、手に麻痺がある人、または関節に痛みや変形がある人などに適している種類の杖です。

(7)介護保険貸与対象の杖の種類⑤サイドウォーカー

サイドウォーカーは、脚立のような形に開いて歩行を支える種類の杖です。

4本脚で支持基底面がかなり広くなるため、杖のなかでももっとも安定性の高い種類です。体重をしっかりかけられるので、歩行以外でも、ベッドやトイレからの立ち上がりにも利用できます。

ただし、平らな床面でなければ利用できないので、基本的に自宅や施設など屋内での利用にかぎられます。

脚部伸縮タイプで身長に合わせて調節したり、折りたたみ式で場所を取らずに収納することもできます。

体の片側が完全に麻痺しているなど、より安定性をもとめる人に適している種類の杖です。歩行訓練のリハビリにも用いることができます。

(8)介護保険貸与対象の杖⑥多脚杖

多脚杖は、フレームの先端が3〜4つに分かれている種類の杖です。一本杖にくらべて支持基底面が広くなるため、より安定した歩行を実現してくれます。

自宅や病院、介護施設のように屋内での使用が中心となります。床面に凸凹があるとかえって転びやすくなるので、気をつける必要があります。

グリップはオフセットL型のタイプのものが多く、しっかりにぎって使うことができます。ほかにも、T字型のグリップのものもあります。

体重をかけても転倒しづらいので、筋力が大幅におとろえた人や、麻痺がある人に適している種類の杖です。歩行訓練にも用いることができます。サイドウォーカーとくらべてかなり軽量なので、腕力がない人でも十分に使いこなすことができます。

(9)杖の選び方

杖を選ぶときにもっとも重要なのは、自分の体に合ったものを使用する、ということです。そのためのポイントを見ていきましょう。

長さ

杖は、ちょうどよい長さでないとかえって歩きづらくなり、転倒のリスクも高まります。

その目安となるのが、「身長÷2+3cm」という長さです。使用時の高さなので、身長は靴を履いた状態で測ってください。腰が曲がっている場合は、その状態での高さとなります。

握りやすさ

グリップは、にぎりやすいものでないとしっかり力を入れることができません。

たとえば、男性であれば大きめのもの、女性や握力のおとろえた人であれば小さめのものといったように、大きさ以外にも形や素材なども考慮する必要があります。自分が、もっとも自然ににぎることができるものを選びましょう。

太さ

杖は、フレームが太いほど丈夫なものとなります。丈夫であれば体重もかけやすいので、より安定した歩行となります。

ただし、太いとそれだけ重くなることにも注意してください。逆に軽すぎても使いづらいことがあるので、長さやグリップなどと合わせ、実際に自分で感触をたしかめることが大切です。

(10)杖の使い方

杖にはタイプごとにそれぞれ正しい使い方があります。誤った使い方をしていると、かえって転倒のリスクが高まるので注意してください。

T字杖

自由が利くほうの脚と同じ側の手で、杖を持ちます。グリップは、フレームを人差し指と中指で挟むようににぎります。

歩き方は、まず杖を前に出して、次に不自由な脚、最後に自由な脚、という順番になります。これを、3点歩行といいます。

ロフストランド杖

グリップとカフが近すぎると手首に負担がかかるので、ちょうど楽な位置に合わせてください。

グリップのにぎり方や歩き方は、T杖と同じです。

多脚杖

グリップは、肘を30〜40度曲げた程度の位置にくるものを選びます。

歩き方は、T字杖と同じ3点歩行です。

(11)杖を使うときの注意点

杖を使うときの注意点を把握し事前に転倒などのリスクを回避しましょう。注意点は次の通りです。

服装

杖を使うときには、まず服装に注意しましょう。

杖を使っていると、裾が長い服などはどうしても引っ掛けやすくなります。転倒のリスクが高くなるので、足にかかるような服装は絶対に避けるようにしましょう。

靴のサイズ

靴のサイズも、大きすぎず小さすぎず、ぴったり合ったものを選びます。サイズが合っていないと正しい姿勢で歩くことができずふらついて転倒する危険性があります。

杖を使って出かける際は靴にも注意を向けましょう。

持ち方

杖を持つ手は、自由のきかない脚と反対側の手で持ちます。自由のきかない脚の側で持つと杖を前に出したときにそちら側に体重がかかってしまいます。

グリップは、フレームを人差し指と中指ではさむようににぎります。正しいにぎり型をしないと、力がうまく入らず転倒する可能性があります。正しい持ち方を理解しておきましょう。

歩き方

歩きだす際には、まず周囲の足元に気をつけます。障害物になるようなものが落ちていないか、よく確認して歩くようにしましょう。

また、杖をつく位置は持っている側の足のつま先から前および外へ15cmほど先です。あまり外側にすると杖が斜めになったり、体が曲がったりします。逆に、自分に近すぎると杖を蹴ってしまったり、バランスを崩したりする原因になります。

(12)杖を使って足腰の負担を軽減しよう

足腰がおとろえても、人目が気になるといった理由で杖を敬遠する人は少なくありません。

しかし、杖は思いのほか歩行を楽にしてくれます。

歩くことは、そのまま生活の質を高めることにつながります。自分一人で買い物や散歩ができるようになるだけで、気分がとても前向きになり、自信もついてくるでしょう。

杖には、さまざまな種類があります。身体状況や使用方法に合わせ、ぜひ自分に合ったものを選んでみてください。

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