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ドイツでは現金支給も?日本と世界の介護保険の現状を比較してみた

在宅介護サービス
高齢者が受ける介護サービスも年々多様化してきています。民間企業の参入により、通所系、居住系、訪問系の中でもさまざまな特色を売りにした事業者が現れ、さらには福祉器具の貸与や食事のケータリング、訪問入浴サービスなど色々なサービスが登場しています。利用者が増えるとともに介護サービスに費やされる金額も年々膨れ上がってきていますが、あらゆる介護サービスの貴重な財源となっている「介護保険制度」について、他国との比較を交えながらご説明したいと思います。
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(1)日本の介護保険制度の歴史


出典:https://www.photo-ac.com/

日本における「介護保険法」は1997年(平成9)に成立。世間がミレニアムで沸いた2000年(平成12)に施行されました。

介護保険導入の背景には、増え続ける高齢者に対する介護サービスのニーズ、そして家族介護の限界がありました。その後「介護保険法」は3年に一度見直しが行われ、その度に介護報酬の改定やプランの見直しが行われています。

日本の介護制度は65歳以上の高齢者が介護サービスを受ける場合、利用料は、利用者の自己負担額を除いたうち半分を介護保険、もう半分を自治体(国、都道府県、市町村)でまかなう仕組みとなっています。

全国民の40歳以上は強制的に保険者となり、毎月の給料から介護保険料が天引きされる仕組みで財源を確保しています。

40歳以上であれば、私たちの給与明細にも「介護保険料」と書かれた項目が必ずあるのでチェックしてみましょう。

2000年にスタートした介護保険制度ですが、初年度3.6兆円だった給付金が2013年度には9.4兆円に達し、ここ10数年で約2.6倍に増えました。介護サービスが充実した結果の数字と言えますが、同時に歯止めの効かない社会保障費の増加が浮き彫りになっています。

(2)世界の介護保険制度と比べてみましょう

日本では2000年にスタートした介護保険制度ですが、世界の国々ではどうでしょうか?

福祉大国で知られる北欧やその他ヨーロッパ諸国では、地方自治体の財源による介護サービスを行っている国と、日本と同じように保険制度によって介護サービスの財源を確保している国があります。

例えばスウェーデンやイギリスは前者で、ドイツやオランダは介護保険制度を導入しています。日本の制度は、特にドイツの介護保険制度を参考に作られています。

(3)国民全員が保険者!ドイツの介護保険制度

ドイツでの介護保険制度は1995年(平成7)にスタートしました。

1980年代に入り、介護にかかる費用が払えない世帯が増えたことが社会問題となったため、公的な保険制度の設立が求められていました。

ドイツの介護保険が日本と大きく異なる点は、健康保険と一体型になっていることで、年齢に関係なく国民全員が介護保険の保険者となっているのです。また自己負担は定額を超えない限り発生しません。

また福祉用具や住宅改修への補助金支給は日本でも行われていますが、ドイツでは介護にあたる家族にも現金(介護手当)が支給されています。

介護を理由に退職した場合も想定し、介護家族への最低賃金が保障される仕組みになっています。

ドイツでは日本以上に在宅介護を重視していること、また乳幼児から40歳未満までの幅広い層が保険者になっていることから被介護者と家族への補償が両立できていると言えるでしょう。

(4)過疎エリアには現金給付も!韓国の介護保険制度

ヨーロッパ圏以外の国ではどうでしょうか? お隣の韓国でも日本の介護保険制度にあたる「老人長期療養保険制度」が2008年(平成20)に施行されました。

この制度は1998年(平成10)に大統領に就任した金大中(キムデジュン)氏の発案で始まったもので、一国のリーダーの主導で始まったという世界的に見ても極めてレアなケースといえます。

韓国の介護保険制度は日本とドイツの制度を参考にして策定されています。保険料はドイツと同じ方式で、すべての健康保険加入者から徴収する仕組みですが、自己負担が在宅介護の場合は1.5割、施設介護の場合は2割と、ドイツ・日本と比べても保険者・被保険者両者にとっての負担は大きいと言えます。

また過疎地域や離島など福祉インフラが未発達の地域に限り介護者(家族)への現金給付も行われており、一切の現金給付がないのは日本だけとなります。

(5)揺れる介護保険の財源確保問題

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2253382

万全に見える介護保険制度ですが、課題が多いのも事実で、制度見直しの度に問題点の改善策を講じています。 介護保険料は介護サービスを受けられる65歳以上の人でも当然支払いの義務が生じます

少ない年金でやりくりしている家庭にとっては大きな負担になるのは目に見えることで、納付を渋る人が出てきました。

2014年の改正では、生活保護受給者や低所得者の納付額が軽減され、同時に高所得者の自己負担額が2割に引き上げられました。

さらに財源確保のために、介護保険の対象だった「要支援1・2」が介護保険の適用から除外されることになりました。これまで介護保険で補っていた財源を自治体が負担することになりことになりますが、自治体も使える予算も限られているため、地域によっては将来的に自己負担額がグンと増える可能性もあります

経済的に介護サービスを利用できなくなる高齢者が増え、その結果として介護事業者が赤字に追い込まれることも予想されます。

しかし日本の介護保険制度は、世間の動向やニーズに応じて法改正の度に新たなプランを盛り込むなど“柔軟”に方向転換しながら機能してきた面もあります。

介護する人とされる人、両者が安心して幸せな生活を送れるよう、各方面で日々闊達な意見が交わされているのも日本の特徴なのではないでしょうか。

(6)多くの高齢者を支え続けた介護保険の15年

世界各国の介護保険制度をご紹介しましたが、人口10億人を超える中国では介護保険制度はありません。

またアメリカでは介護保険の制度がないばかりか、日本で当たり前の国民皆保険制度も存在しないのです。高額な保険に加入できない低所得者は、医療でも介護でも切り捨てられるのが現実です。

世界規模で見ても、介護保険を取り入れている国というのはまだまだ少ないのが現状です。

日本で介護保険がスタートして15年。多くの介護サービスが誕生し、多くの高齢者が介護保険によってその恩恵を受けてきました。家族など身内によるケアだけでは限界がある今の日本において、介護サービスの存在なくして高齢化社会を乗り越えていくのは不可能です。

その現場で働くには重大な責任が伴いますが、同時に大きなやりがいを感じられることだと思います。

(参考:

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