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(1)ユニバーサルデザインとは
ユニバーサルデザインとは、文化、言語、国籍などや年齢、性別などの違い、障害の有無や能力差などを問わずに利用できることを目指した建築や設備、製品や情報などの設計(デザイン)のことです。
ユニバーサルデザインには次のような7つの原則があり、ユニバーサルデザインはこの原則に基づいて設計されています。
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(2)ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いとは
ユニバーサルデザインは障害の有無、年齢、性別、国籍や人種に関係なくありとあらゆる人を対象にしています。一方で、バリアフリーは障害者や高齢者など特定の方に向けて生活に障害となる物理的な障壁の削除を目的としたデザインになっています。
ユニバーサルデザインは、アメリカの建築家ロナルド・メイス氏が、障害を持つ人々を擁護するために、最初から多くの方に使いやすいものを作るという設計手法などで発明されたものです。
特定の人に向けたものではなくすべての人が使用しやすいように工夫されたものがユニバーサルデザインです。
(3)身近にあるユニバーサルデザインの具体例① 多機能トイレ
広いスペースと充実の機能により、様々な用途に対応できる
ユニバーサルデザインの例として「多機能トイレ」というものが挙げられます。おそらく誰もが一度は目にしたり入ったことがある、内部がとても広く手すりやベビーシートなども装備されているあのトイレのことです。
多機能トイレはもともと、車いす利用者やオスメイト対応設備を必要とする方が、円滑かつ快適にトイレを利用できるように整備されたものです。しかし、体の不自由な方ばかりでなくお年寄りや赤ちゃん連れ、けがをされている方などにとっても利用しやすいようデザインが工夫されています。
具体的には、車いす利用者がトイレ使用に際して回転できる十分なスペースを設けること、視覚障害者のために「洗浄ボタン」「ペーパーホルダー」「呼び出しボタン」の配置が決まっていたり、高齢者やオストメイト、子連れなど様々な方が利用しやすいようにベッド、乳児用いす、おむつ交換台や汚物流しなどの設置がされています。
(4)身近にあるユニバーサルデザインの具体例② シャンプーボトル
シャンプーボトルの側面のギザギザは、ユニバーサルデザインの一例です。シャンプーとリンスを間違えないように、シャンプー容器の側面にギザギザがついています。またポンプ上部にも同じようにギザギザがついています。
このギザギザは「洗髪時に、眼をつぶっていても区別がつくと良い」「目が不自由なので、何か工夫してほしい」との声に1991年、日本の大手消費財メーカーにより開発され、発売されました。
目の不自由な人、近視や遠視で入浴中はメガネやコンタクトレンズを外す人、洗髪中に目を閉じることが多い人、あらゆる人に配慮されたデザインです。こうしてシャンプーのギザギザはユニバーサルデザインの代表例として知られるようになりました。
(5)身近にあるユニバーサルデザインの具体例③ 信号機
最近街角に設置されている信号機も実はユニバーサルデザインとなっています。ユニバーサルデザイン式の信号機は、音や色が以前の信号機と違っています。
例として、以前の信号機は青に変わっても視覚障害の横断者にわからないものが多かったですが、最近の信号機は青になると設置されているスピーカーより、信号が変わった旨を知らせる音が流れるため、視覚障害者でも、「あ、青になった」とわかるようになりました。
また、色についても、以前の青色信号は「緑色」でしたが、最近は色弱者にもわかるように「青みどり色」になりました。この色は赤信号や黄信号と見分けやすい色ですので、色弱者も信号の識別がしやすくなりました。
(6)身近にあるユニバーサルデザインの具体例④ お金
実は、小さくて薄い、紙幣にもユニバーサルデザインは隠されているのです。
紙幣には、表面左右に何かマークのようなものがついているのですが、この形によって、視覚障害者がお金を判別することができるのです。
識別マークの形は1万円がL字、5千円が八角形、千円が棒線となっていて、触るだけで紙幣を判別できるようになっています。
硬貨は識別マークの例はありませんが、硬貨自体の大きさと中心の穴で判別できるようになっています。硬貨は紙幣と比べて小さく、識別マークを入れることが困難なため、大きさや中心の穴で判断することになっています。
ただし、現在の紙幣の識別マークは以前のものと比べ、凸凹が浅くなり、視覚障害者が判別しにくいため、今後の改善が求められています。
(7)身近にあるユニバーサルデザインの具体例⑤ 自動販売機
ユニバーサルデザインの自動販売機が最近普及してきています。この自動販売機には色々な機能がありますが、一番多い例は硬貨投入口や紙幣投入口が低く取り付けられていて、車いすばかりではなく、子供たちでも使いやすいということです。
また取り出し口は取り出しやすいような高さになっていますし、押しボタンなどは高低2段になっている例が多く、車いすなどで使いやすいようになっています。また自動販売機自体も背を低く設置されている例もあります。
また購入者が使うボタンがオレンジ色になっていたりする例もありますし、照明の照らし方も視覚障害者に製品がわかりやすいような例になっているものもあります。
(8)身近にあるユニバーサルデザインの具体例⑥ ピクトグラムの標識
言語の違いなどを超えて物事を伝えるためのピクトグラム
ピクトグラムとは、非常口の標識のように、文字よりも視覚で伝えることを意図して作成された、ある種のサインのようなもののことを指します。
このピクトグラムにより、例えば海外の人にも、何かを伝えようとする際、言語の障壁を超え、物事や概念、指示などを公平に伝えることができるのです。このピクトグラムも、ユニバーサルデザインの一つなのです。
ピクトグラムは、作って終わりではない
ただし、ピクトグラムの標識には、人間の色への感じ方が全員一様ではない点で、必ずしもユニバーサルではない、という課題も指摘されていました。なぜなら、遺伝子のタイプやさまざまな目の疾患などによって、色の見え方が一般の人と異なる人が多く存在しており、その結果、その標識から伝わる意味や物事に違いが生まれてしまうこともあるからです。
そこで、見る人のニーズに合わせ、逐一ピクトグラムに変化を加えていくことも大切なのです。
来る2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据え、国土交通省はピクトグラムのいくつかに改正を施すことにしましたが、それもその一例です。
多様な色覚を持つ人達や、視力に障がいがあるロービジョンの方々、訪日外国人も含め、多くの人々の安全の確保及び利便性の向上が期待されるというのが、「ユニバーサルデザインカラー」を採り入れた今回の改正の目的と考えられます。
改正の例として、視覚障害などに分かりやすく色の変更をしたり、色を明るめにしたりと微妙なことですが、安全の確保や利便性の向上が期待されています。
(9)ユニバーサルデザイン2020行動計画
ユニバーサルデザイン2020行動計画とは、過去に障害者が色々な差別が共生社会ではあってはならないという前提から、障害者はかわいそうであり、一方的に助けられる存在であるということは誤りであり、全ての人が同じ社会生活を営むことが必要であると言われています。
例として、障害者も健常者と同じ生活ができるような環境つくりが必要であり、差別をしないという社会が理想といわれます。また障害者も健常者もストレスを感じないような環境をつくっていかなければならないとも言われています。
このため共生社会の実現に向けた2つの大きな柱の、「心のバリアフリー」分野と「街づくり」分野を検討し、ユニバーサルデザイン2020行動計画として取りまとめることとなりました。
(10)ユニバーサルデザインを理解して、みんなが住みやすい社会にしていこう
障害の種類や障害の程度は人によって違い、「障害者」とだけ表現するには良くない場合もあります。「健常者」と呼ばれる人とは何か、「障害者」と呼ばれる人とは何が違うかを考えなければなりません。
「誰もが使いやすいデザイン」と呼ばれる「ユニバーサルデザイン」は、本当に誰でも使いやすいものなのか、使う人によっては使いづらいものではないのか。それを考えていかなければ本当の「誰でも使えるデザイン」とは言えないのではないでしょうか。
こういったユニバーサルデザインの本質は、「誰かひとりのためであっても、その人だけに対して真剣に考えられたデザイン」として、現代の社会情勢に合わせて再検討する必要がありますし、今後構築していかなければなりません。