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障害者差別の事例 | 対策としての障害者差別解消法も解説

社会問題
障害者差別の事例をもとに、障害者差別がどんな場所で行われているのか、深刻化させる要因、国の施策などを解説します。障害者差別への理解を深め、身の回りから差別や偏見を解消していきましょう。
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(1)障害者差別の実態

障がい者差別総合研究所が2017年度から1年間、326人の障害者を対象に差別や偏見の実態を調査したところ、59%の方が「日常生活で、差別や偏見を受けたと感じる場面がある」と回答しました。つまり約6割の方が差別や偏見を感じ嫌な思いをしているという現状です。

(グラフ:障がい者総合研究所のデータをもとにいろはにかいご編集部が作成)

2017年度から障害者差別解消法が実施され、障害者に対する差別や偏見を解決しようという動きは見られますが、上記の結果からわかるように効果は不十分だといえます。

誰もが暮らしやすい社会を築くために、実際に起きている差別の事例や障害者差別を引き起こす要因など障害者が実際に直面している問題への理解を深めていきましょう。

(2)どのような場所で障害者差別は起こっている?

障害者の方はどのような場所や場面で差別や偏見を受けたと感じているのでしょうか。

障がい者差別総合研究所の調査によると、差別・偏見を受けたと感じる場所で最も多かったのは「職場」で56%もの人が感じていると回答しました。次に「公共交通機関」で30% 、「インターネット」で18%、「施設利用」で16%、「学校」で10%という結果になりました。

(グラフ:障がい者総合研究所のデータをもとにいろはにかいご編集部が作成)

障害者を受けいれている職場でも障害者をケアする相談窓口などの職場環境がまだ整っていないところもあり、誰にも相談できず一人で悩みや不安を抱え込んでしまう障害者の方が少なからずいらっしゃいます。

このように一人で悩んでいる方を少しでも減らしていくために職場環境を整えることは重要です。

(3)障害者差別の事例① 職場

ここでは実際に職場であった障害者差別の事例をいくつか紹介します。

「仕事の効率が悪い」「仕事の覚えが悪い」として、一方的に減給された。

職場で障害を理由にした嫌がらせを受け、上司に相談しても解決にならず、自主退職に追い込まれた。

派遣業者に登録しても仕事の連絡がないので理由を確認すると、障害の特性に対応できる職場がないと言われた。

障害者雇用の実習を終え、内定をもらったが、入れる部署がなく、内定を取り消された。

このように理不尽な待遇が実際に職場で行われていることからも障害者差別解消法が普及し、定着していないことがわかると思います。

(4)障害者差別の実例② 公共交通機関

続けて公共交通機関で実際にあった障害者差別の事例をいくつか紹介します。

電車で空いていた席に座っていると「優先席に座ったらいいのに」とひそひそ言われた。

一人でバスに乗ろうとすると、対応ができないからと言われ乗車拒否された。

聴覚に障害があり、電車が遅れているときに何が起きているのかわからず、筆談で質問したら嫌な顔をされた。

見た目ではわからない障害をもっていて、多目的トイレに入りかけると「そこは健康な人が使うところではない」と言われた。

(5)障害者区別を複雑化させる要因

障害者判別を複雑化する要因には、障害者の方が困ったときや悩んでいる時に相談する環境が整っていないことが挙げられます。

障がい者差別総合研究所が実際に差別や偏見を受けた際の相談先について質問したところ47%と約半数の人が「誰にも相談していない」と回答しました。相談している人の相談先としては「家族・友人」が30%、「専門機関」が23%として、専門機関が相談先としてあまり機能していないことがうかがえます。

行政や専門機関が相談窓口を積極的に利用してもらえるよう働くことが重要であり、また一番の相談先である家族や友人は障害者が抱える悩みに寄り添い、理解することが大切です。

(6)対策としての「障害者差別解消法」とは

障害者差別解消法は2013年6月に成立し、2016年4月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」として実施されました。この法律は役所や事業者に向けて、障害を理由とした差別をしないこと、障害にできるだけ対応できるよう努力すること、この2つを基本として定められています。

障害者差別解消法には以下のことが定められています。

誤った差別的取扱いの禁止

この法律では国、都道府県などの役所から会社、お店などの事業者までを対象としており、障害がある方に対して正当な理由もなく障害を理由に差別することを禁止しています。

例えば、車いすでの入店を断っている、障害があるからマンションを貸さないなどは不当な差別的取扱いの禁止になる可能性が高いです。

合理的配慮の提供

障害者の方には社会の中にあるバリアによって生活しにくいと感じる時があります。たとえばお店の人に意思を伝えたくてもその手段が整っていない、段差があるため車いすでいけないなど、障害者にとってさまざまな障壁が社会の中にあります。

この法律では国、都道府県などの役所や会社、お店などの事業者に向けてこうした障壁を取り除いてほしいという意思が伝えられた時に負担がかかりすぎない範囲で取り組むことを要求しています。これを合理的配慮の提供といいます。

合理的配慮の具体例は以下の通りです。

  • 電車・バスなど障害特性に応じて座席を決める。
  • 意思疎通をお互いしあえるように絵や写真、タブレット端末などを用いる。
  • 段差がある場所にはスロープなどをつける。

(7)障害者差別解消法の導入目的

障害者差別解消法は1929年にできた障害者基本法の理念に基づいており、障害者基本法第4条「差別の禁止」の規定を具体化するものとして導入されました。

障害者基本法には第4条「差別の禁止」には以下の項目が定められています。

第一項:障害を理由とした差別等の権利侵害行為の禁止

「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。」

第二項:社会的障壁の排他を怠ることによる権利侵害の防止

「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。」

第三項:国による啓発、知識の普及を図るための取り組み

「国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。」

(引用:e-Gov

この法律では誤った差別的取り扱いの禁止と合理的配慮の提供を求められておりますが細かな規定は定められていません。そこでこの部分をより具体的にし、すべての国民がお互いを尊重し共生していく社会の実現を目指し、障害者差別解消法は導入されました。

(8)「障害者差別解消法」が規定する罰則

障害者差別解消法には罰則が定められており、懲役や罰金、料金の対象となる可能性があります。
この罰則は行政機関や事業者に対して執行されます。罰則の具体的な内容は以下の通りです。

第二十五条

「第十九条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」

第二十六条

「第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。」

(引用:e-Gov

(9)「障害者差別解消法」の課題


出典:https://www.pakutaso.com/

障害者差別解消法の課題として理解の低さ、また効果が出ていないことがあげられます。

法律の認知率は6割を超えますが、内容を理解している人は3割以下になります。このように社会に法律が浸透していないのが現状です。

また、障害者差別解消法が施行されても実際には効果が出ていません。障がい者差別総合研究所が障害者差別解消法の施行以降、「あなたに対する差別や偏見は改善したと感じるか」と質問したところ89%もの人が改善を実感していないと回答しました。

障害者にとって暮らしやすい社会を築くことを目的として成立したのはいいものの実際に社会に定着、普及していないのがこの法律の課題と言えます。この課題を解決するには国をあげた取り組みが必要になります。

(10)障害への理解が差別解消の第一歩となる


出典:https://www.photo-ac.com/

障害者差別の実態、実際にどのような差別を受けているのかなど相手の立場を理解することは差別解消の第一歩となり、みんなが暮らしやすいと思える社会を実現するために必要不可欠なことだとえいます。

また、差別解消のための法律も施行されていますが、課題も多くあります。このような障害者差別を深刻化させる要因も理解しましょう。

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