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深刻化するダブルケアの問題|その背景や対策について徹底解説

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近年、ダブルケアが新たな社会問題として注目されはじめています。ダブルケアをしている人は年々増加しており、様々な問題があがっています。 そんなダブルケアの実態と増加の背景、問題点、国が行っている対策などを解説します。
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(1)ダブルケアとは


出典:https://www.photo-ac.com/

介護と子育て、同時に2つのケアを行うこと

親の介護と子育てを並行して行うことを、ダブルケアといいます。

この「ダブルケア」という言葉は、横浜国立大学の相馬直子教授、ブリストル大学の山下順子上級講師の共同研究から生まれました。

介護と子育てを同時に行うと、双方のケアをする側とケアをしてもらう側、どちらにとってもネガティブに影響しうるということが近年指摘され始め、ダブルケアの認知度が高まっています。

ダブルケアが顕在化した背景

従来、介護と育児はあくまで別問題として、それぞれ独自にノウハウや対策などが蓄積されてきました。しかし、近年になってこの2つの問題に同時に悩まされている人の数がとても増えてきています。

内閣府の調査によれば、その数はじつに25万人以上。この数字は、全育児者のうちの2.5%、全介護者のうちでも4.5%を占めています。しかも、これらの数字はあくまで未就学児の育児に限定したデータなので、小学生以上を含めるとさらにその数は大きくなると考えられています。(※内閣府男女共同参画局『育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書のポイント』)

今後もますます増加傾向にあり、これまでの育児や介護に対する公的サービスにも、大幅な見直しが迫られています。

(2)ダブルケアの背景

ダブルケアが社会的に顕在化した背景の一つとして、女性の晩婚化と晩産化が同時に進んだことが挙げられます。

かつての女性は、子供を生み育てる時期と、親の介護を行う時期には年代差がありました。

しかし、現在では平均初婚年齢が30歳に近くなり、4人に1人は35歳以上の高齢出産をするようになっています。すると、まだ子供が大きくならないうちに親の介護が始まってしまうケースが多くなるわけです。

また、これは、男性にとっても同じように当てはまる問題です。

さらにダブルケアに関して深刻な点の一つが、介護と子育てのどちらも、考え始める年代がちょうど社会人としては一般的に働き盛りとされる時期と重なってしまう、という点です。

子育て、介護、場合によってはさらに仕事と並立するという、ダブルケアによる負担はますます高まっているのが現状です。

(3)ダブルケアの実態

平成24年の総務省「就業構造基本調査」、および平成13・19・25年の「国民生活基礎調査」からは、ダブルケアの実態が次のようにうかがえます。

女性に偏るダブルケアの割合

まず、乳幼児の育児を行っている人の数は999万5,000人。一方、日常的に介護を行っている人の数は557万4,000人。

このうち、どちらも行っている、つまりダブルケアに該当する人の数は25万3,000人です。

男女別で見てみると、男性が8万5,000人に対し、女性は16万8,000人と、女性の方がダブルケアを行う人数が2倍近くになっています。ここから、いかにダブルケアによる負担が女性に偏っているかが分かります。

いわゆる「働き盛り」の時期にダブルケアをしている人が多い

また、年齢別で見てみると、40〜44歳が27.1% 、次いで35〜39歳が25.8%と、30代後半から40代前半で過半数を占めています。全体の約8割が30〜40代で、平均年齢は39.7歳となっており、働き盛りの時に負担が押しかかっていることがうかがえます。

(4)ダブルケアは、年々増加傾向にある

世帯の中で、ダブルケアを行う世帯は今後も増加傾向にあるといえるでしょう。

なぜなら、ダブルケアが増加している背景として本記事の見出し(2)にて先述した、「女性の社会進出」や「少子高齢化」、「晩婚化」や「人間関係の希薄化」などの社会の流れは今後も続いていくとみられているからです。

まず、女性の労働者が増えることで、結婚や出産が高齢化していきます。それにともない、親の介護とタイミングが重なりやすくなります。

また、以前であれば兄弟や姉妹、親戚、さらには近所の人などに育児や介護を手伝ってもらうことができました。しかし、子供世代にも一人っ子が増え、さらに隣近所などにも相談できず、問題をひとりで抱えてしまうケースが増えているのです。

このような傾向は、団塊の世代が75歳以上となる2025年以降に大きなピークを迎えるでしょう。その後も、超高齢化社会によってダブルケアの負担はますます増していくと考えられます。

(5)ダブルケアの問題点

ダブルケアが、各当事者にもたらす負担には、主に以下のようなものがあります。

女性に大きなしわ寄せがいく

現在の日本社会でも、いまだに育児や介護はいずれも女性が行うべき、という考えが根強くあります。そのため、ダブルケアによってこれまで以上に女性に負担が偏っているのが大きな問題となっています。

世間一般の問題意識が低いため、周囲の理解を得にくい

ダブルケアという考え方はまだ新しく、それほど一般的とはいえません。そのため、育児は育児、介護は介護、というようにバラバラに相談せざるをえない問題があります。結果的にダブルケアならではの悩みや心理的負担が解決できず、ひとりで追いつめられてしまうケースが少なくありません。

サポート体制が整っていない

ダブルケアが増えている現状にもかかわらず、全国的にこの問題に対応するサポート体制はほとんど整っていません。特に、都市部では保育所や介護施設の不足が深刻です。また、介護と育児では窓口や対策が別々になっているので、うまく連携できていないのも問題となっています。

(6)ダブルケアの問題が深刻な理由

ダブルケアは、以下のような要因により、徐々に深刻化していくと考えられます。

仕事との両立が難しいこと

そのひとつが、仕事との両立です。ただでさえダブルケアで肉体的にも精神的にも疲労している状態で、これまでと同じように働くことはとてもむずかしいことです。そのため、ダブルケアをきっかけに離職する人も少なくありません。

女性では4割、男性では2割程度の人がそれを経験しています。

しかし、離職をすると収入が減ってしまい、今度は経済的な負担が押し寄せます。復職を目指そうにも、介護と育児からは手を離せないことから、ブランクが長くなってしまう。

このような悪循環を起こすケースがとても多くなっています。

介護と育児のバランスをとることが非常に難しいこと

また、ダブルケアではどうしても、一人で放っておきやすい育児への比重が軽くなりがちです。介護につきっきりになっていると、子供と向き合う時間が減ってしまうことも悩みのひとつとなります。子供に寂しい思いをさせるだけではなく、悩みや問題行動に気づきにくい、また親にとっても充足感が得られず、罪悪感さえ抱いてしまうこともあります。

かといって、逆に育児だけに偏ってしまっても、被介護者が身体的・精神的にサポートが必要な時にサポートができなくなってしまいます。

夫婦などのパートナー同士の間で火種になってしまう場合もあること

基本的に、育児や介護には休日が一切ありません。特にパートナーが非協力的だと、このような問題をほとんどひとりで背負ってしまうことになるのです。

何もダブルケアに限った話ではありませんが、お互い負担のないよう、協力しあうのがベストなのですが、介護や育児などに関しては特に、往々にして考えや価値観のすれ違いが顕在化してしまうタイミングです。子育てと介護、同時に行うことで、様々な衝突が起きてしまいがちなことも、一つの障壁でしょう。

(7)ダブルケアへの対策


出典:https://www.photo-ac.com/

ダブルケアは、いつ自分の身に訪れるか分からない問題です。

そのため、まだ余裕のある20~30歳台のうちにあらかじめ経済的な準備以外にもさまざまな備えをしていくとよいでしょう。

まずは、介護の問題について家族とよく話し合っておきましょう。

なかなか切り出しにくい話題ではありますが、たとえば誰がいつどのように介護をするのか、その役割分担や、費用負担についても具体的に決めておきます。

それぞれの家庭状況なども考えて、できるだけ一人に負担が偏る、というケースが起こらないようにします。

また、少しでも負担を減らせるように、さまざまな公共サービスを積極的に利用していくことも考えましょう。

その例として、在宅介護サービスやデイケア、施設への入所などが挙げられます。育児についても、役所や子育て支援センター、児童館などが役立ちます。また、包括支援センターでは介護だけではなく、子育ての悩みにも相談に乗ってくれます。

(8)行政の取り組み

先述したとおり、世間一般的には未だ深刻な問題として広く知られていないダブルケアですが、自治体によってはすでにさまざまな取り組みを始めているところもあります。

横浜市

「ダブルケアサポート横浜プロジェクト」をかかげ、ダブルケアに対応できる市職員の養成や、ハンドブックの作成などに取り組んでいます。また、地域の信用金庫と連携して、ダブルケアにサービスを行う民間企業に対して融資相談事業を行っています。

京都府

地域包括支援センターと子育て世代包括支援センターを連携させて、ダブルケアの相談などに対応しています。

ケアマネージャーにもダブルケアの研修を行い、子育てをふくめたケアプランの作成を心がけています。また、インターネットで実際に問題をかかえる人たちの声にも耳をかたむけています。

堺市

育児と介護をトータルに相談できるダブルケア相談窓口を設置。

介護離職をふせぐための実態調査を行い、介護施設や保育施設の拡充、基準の見直しなどを進めています。また、セミナーや講演を開催して、ダブルケアの周知にもつとめています。

このように、今後は各地域でダブルケアに対する取り組みが進んでいくと思われます。自分の住む地域はどのような対応になっているのか、支援制度などについてもよく情報を集めておきましょう。

(9)相談したいときは


出典:https://www.photo-ac.com/

ダブルケアに関して悩みを抱えているにも関わらず、誰にも相談ができないと感じる時でも、ひとりで抱え込まずに相談をすることが大切です。

たとえば、地域包括支援センターでは介護以外にも、それにともなう子育てや家族間の悩みについても、積極的に相談を受け付けています。

逆に、子育て支援センターや児童館のような子育て支援サービスでも、介護にまつわる相談を受け付けているので、ぜひ利用してみてください。

自治体によって行政サービスの形態が異なっているので、まずは役所に相談してみるとよいでしょう。

ほかにも、民間のNPOや市民団体が開設するダブルケアカフェの利用もおすすめです。

無料で誰でも気軽に参加して、同じ悩みを持つ人同士で話し合うことができます。日頃の不満を打ち明けたり、思わぬアドバイスや共感を示してもらったりすることで、とてもよい息抜きとなるでしょう。

このような取り組みは、何よりダブルケアに直面する人の孤立をふせぐという意味で、大いにメリットがあります。

(10)ダブルケアの認知度を高めていくことが重要


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ダブルケアは現在、大きな問題となりつつあります。その一方で、当事者以外にはあまり知られておらず、その深刻さが伝わっていないのも事実です。

周囲の理解を得られないことで、ダブルケアを負担に感じている人は、その負担そのものにより、ひいてはその負担を違う人と共有できたり相談できたりすることができないことにより、精神的・肉体的・経済的に追いつめられてしまうケースが少なくありません。

今後、少子高齢化が進むなかでダブルケアはますます増えていくことでしょう。それを新たな社会問題としてとえらえ、行政はもちろん、家族や社会も一体となってサポートしていくことが必要となってきます。

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