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介護離職ゼロに向けて│現状への取り組みや政策(新・三本の矢)など

社会問題
近年急速に進む高齢化の影響で、介護人材の不足だけでなく、介護を理由に離職する「介護離職」が問題になっています。介護離職にはさまざまな問題があり、政府は「新・三本の矢」の取り組みなど介護離職をせずに済むような環境の整備を進めています。この記事では具体的な「介護離職ゼロ」の内容や、現状に対する取り組みなどをご紹介します。
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(1)介護離職ゼロに向けた現状

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1140762

離職には今後のことや継続中の仕事、辞めるにあたっても上司の面談や引き継ぎなど、面倒なことがたくさんあります。それでも、退職される方は一定数います。

 2012年に行われた調査では介護離職をした人が10万1,000人もいることが分かりました。

その後、「介護離職ゼロ」政策が功を奏したのか 2017年に行われた調査では9万9,000人と若干の減少となっておりますが、 予断を許さない状況となっております。

政府が行っている「介護離職ゼロ」の取り組みとはいったいどのようなものなのでしょうか。

詳しく見ていきましょう。

(参考:総務省 平成29年就業構造基本調査・https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/pdf/kgaiyou.pdf

(2)介護離職ゼロに向けた問題点① 経済的負担 

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1641624

政府が「介護離職ゼロ」を目指しているのは介護離職にさまざまな問題がはらんでいるからです。

その問題の一つに経済的負担が挙げられます。

在宅介護には一定の出費がかかります。介護離職をすると、それを無収入で賄うことになります。

また、再就職をしようと思っても、多くの場合以前の職場よりも給与は低下するため、生計を立て直すことが難しくなります。

在宅介護では、「衰えた親を見るのがつらい」という意見や、「衰えた姿を見られるのがつらい」という意見が存在します。

自分の気持ちだけでなく相手の気持ちにも配慮しながら折り合いをつけることもときには必要です。

(3)介護離職ゼロに向けた問題点② 再就職の難しさ

 通常の転職時の問題と同じですが、 介護離職では経済的な負担が大きくなります。

介護離職をされる方は50歳から60歳前半が多く、 転職市場でいえばシニア転職となります。

男性は2割で女性が8割を占めることも問題を複雑にしています。

現状でもシニア世代の転職は問題となっており 転職者ご自身の問題や受け入れ側の会社の問題等あり、努力次第でなんとかなるというものではありません。

具体的に例をあげると転職者自身の高度な専門性や柔軟性、会社の人事や賃金体系となります。

また、女性が多いということもあり、出産後の再就職が非正規などが多い事例を見ても 難しい現状を理解していただけることでしょう。 

(4)介護離職ゼロに向けた問題点③ 社会的な孤立 

在職中だと社内の人間関係に完結しがちです。

定年退職後の人間関係は消滅し、ひとりぼっちの老後をおくる方も多く問題にもなっています。

介護のために離職すると、会社の人とのつながりが薄くなることによって、社会的な孤立を招くことになりかねません。

介護は肉体的にも、精神的にも負担が大きいものです。悩みや不安を相談できる相手がおらず介護うつやそれに近い状態になる可能性もあります。

介護度が高い場合、気の抜けない時間が続くこともありますが、ときには介護のことを忘れて、自分のケアをしてあげることも必要です。

そうしたときに寄り添ってくれる人がいるかどうかということも、介護離職を決断する上で大切なチェックポイントです。

(5)介護離職ゼロの政策〈新・三本の矢〉

政府も無為無策というわけではありません。 過去の介護離職ゼロの取り組みと呼ぶべきものを振り返ってみましょう。

古くは国民健康保険も高齢者に向けた政策ですし、介護保険や後期高齢者制度など 介護者や要介護者にむけて取り組みを行ってきました。

2015年に政府が示した「新・三本の矢」に「安心につながる社会保障」として介護離職ゼロの政府の取り組みがあります。

高齢者だけではなく現役世代の「安心」も含めた考えです。

大きく分けて「高齢者」に向けたものと「現役世代」に向けた方針があります。

  • 高齢者に必要な介護サービスの確保 
  • 地域包括ケアの推進 
  • 介護人材の不足によるサービス低下を防ぐため参入促進、労働環境改善
  • 柔軟な働き方の推奨(例えば、介護休業等取りやすい制度や長時間労働の是正やフレックスタイム制度の見直しなど)

以上が主な介護離職ゼロを目指した取り組みです。

(6)介護離職ゼロへの取り組み① 離職した介護人材の呼び戻し

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/403286

介護離職ゼロを目指し取り組む中で、いくつかの課題が存在します。

それは、介護者の確保や施設サービスの不足、社会問題として介護離職が認知されていないなどです。 そこで政府は介護離職ゼロに向けて、離職した介護人材の呼び戻を図りました。

取り組みとしては2点あります。

再就職準備金貸付制度

転職や退職の問題としては、結婚・人間関係・労働環境が挙げられます。 介護人材の離職にも同様の問題があり、再就職準備貸付事業が新設されました。

子供の預け先を探すための活動費や通勤用のバイクなど交通手段の購入費、介護に関わる学び直し代として 再就職準備金が支給されます。

2年間介護職員として勤務すると全額免除となります。 それ以外の職に転職した場合は返済の義務があります。

離職した介護人材の届出制度

ナースセンターによる看護人材の復職制度に似たシステムとして、 2017年度から都道府県福祉人材センターで離職した介護人材の復職を支援するシステムが稼働しました。

離職した介護人材へ介護に関わる最新情報の提供や研修によるスキル維持、 向上のサポート、就業の意思がある方には最適な就業場所の紹介を行います。

(7)介護離職ゼロへの取り組み② 新規参入促進

介護離職ゼロの取り組みの二つ目として、新規参入促進が挙げられます。

介護人材を増やす取り組みは離職した介護人材の復職を除けば新規参入を促すしかありません。 この場合新卒と退職後のシニア世代の新規参入が軸となります。

まず、新卒を考えると実際には就職を前提にした学生への働きかけとなります。 特に介護に関連した「介護福祉士」を目指す学生に向けたサポート、学費貸付の拡充です。

全国で120万人のシニア世代が高齢者向けのボランティア活動を行っており、 介護への関心が高いことが伺えます。

そこで、シニア世代の動向に詳しいボランティアセンターや都道府県福祉人材センターなどの連携により福祉人材の掘り起こしを行い、各都道府県で実施されている職場体験、入門的研修の情報や実施を行います。

(8)介護離職ゼロへの取り組み③ 離職防止・定着促進

介護職はサービス業であり専門職です。

離職の理油は通常の退職理由、結婚、人間関係・労働環境があります。 他に介護職としての将来のキャリアパスへの不満等あります。

そのため、介護離職ゼロの取り組みの一環として1.2万円相当の介護職員の待遇改善、キャリアアップのための研修費の低減や代替要員による機会の確保、 管理者に等に対する雇用管理改善、資格取得や介護ロボット、ICTの活用で現場の負担を低減する施策が行われています。

(9)介護離職ゼロへの取り組みの課題

「介護離職ゼロ」という目標には、もちろん課題もあります。

「介護休業制度」という介護が必要な場合に休業できる制度がありますが、 これが活用されていません。

長期間ではなく、期間を分割して取得したり対象範囲の家族の拡大、対象労働者の拡大など条件が緩和されています。

有給の取得の問題と同様の問題を「介護休業制度」も抱えています。 特に中小企業などでは常に人手不足のため休業するにも抵抗感があります。

多くのケースが考えられるのでそのためのルール作り、システム作りには限界もあります。 労働者の自助努力が期待されていることもあり、課題は残されています。

ただ、不足分は民間の活力に期待するという意図もあるでしょう。「介護離職ゼロ」はまだ、道半ばともいえるでしょう。

(10)介護離職ゼロを目指して、サービスの有効活用を 

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1340969

50代60代の再就職は困難を伴います。 経済的な負担、生活費やローンの問題、人間関係の消滅による孤立、 介護自体の難しさからくる身体的、精神的疲労の蓄積などあげればきりがありません。

離職を考えたら一度立ち止まって考えてください。 資金と期間を工面する必要があります。

介護には

  • 直接介護:自らが介護者となる
  • 間接介護:介護保険の認定やサービス利用の手続きを行う

の2種類があります。

ここでの介護離職の問題は直接介護であり、回避策としては間接介護で介護をアウトソーシングすることです。 その場合は資金の工面が必要となり、事前の貯蓄などが必要です。

また次に期間の問題があり「介護休業制度」など会社主導の介護離職ゼロに向けた制度を活用する必要が出てきます。

実際には有給と同様取得が難しい例もあるでしょう。 時間の確保のために職場を近場にしたり地域限定社員などの制度活用が考えられます。

また、要介護者がいることを公言することで理由を通しやすくする、 普段から同僚の仕事をサポートし、コミュニケーションにつとめ円滑な職場関係を築くなど有効活用する方策は考えられます。 この場合は社内での立場など収入、待遇面でもデメリットも考えられるのでよく考慮してください。

「介護離職ゼロ」の取り組みはまだ十分とはいえませんが、希望はあります。 離職の前にサービスの活用を考えてみましょう。

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