(1)介護におけるインフォーマルサービスとは
介護のサービスは、
- 介護保険制度内で展開される「フォーマルサービス」
- 介護保険制度を使用しない「インフォーマルサービス」
の2つに分類することができます。
フォーマルサービスとは、介護保険制度を利用する公的なサービスのことです。インフォーマルサービスとは、公的なサービス以外のもので、家族や友人、町内会や民生委員、地域住民、ボランティア等が行う、援助活動です。
インフォーマルサービスは、サービスの質や提供される内容は一定しませんが、顔見知りの方々による支援や公的なサービスにではできないきめ細やかなニーズに対応ができるという優位点があります。
地域において、地域住民に生活上の何らかの問題を抱える者が生じた際に、住民やボランティアがお互いに自発的に協力、協同することをインフォーマルケアといいます。
(2)インフォーマルサービスの例① 傾聴ボランティア
インフォーマルサービスの例として、介護保険施設や自宅、有料老人ホーム等にお伺いし、高齢者等のお話に耳を傾ける傾聴ボランティアがあります。
単に話を聞くだけでなく、お互いに対等な関係で接することにより、引きこもりやうつ防止の抑制につながり、高齢者の心の援助へとつながります。高齢者が話すことによって心が解放され、抱えていた悩みや問題等が整理できるメリットがあります。
ボランティアには守秘義務があり、話の内容は家族や第三者に内容はいっさい伝えないことになっています。内容としては、地域により異なりますが、概ね、月1~2回、1回につき1時間~1時間半程度で活動をすることが多いです。
(3)インフォーマルサービスの例② 見守りボランティア
認知症や一人暮らしの方々等の何らかの見守りが必要な人に対して、生活状況の見守り(カーテンの開閉、ポスト、状況を遠くから見守る)、挨拶や声掛け、家族不在時の見守りや話し相手を行うことが主な活動内容になります。
市町村等の研修や講習を受けた方々が市町村等へ登録し、利用者の家族等から依頼を受けて活動するインフォーマルサービスです。
見守る頻度や訪問する回数等は市町村に申請します。委託を受けた民間業者やケアマネージャー等を通じて話し合いを行い、内容を決定、利用の開始となります。
介護ボランティアについて、さらに詳しく知りたい方はこちらを参照してください |
(4)介護におけるフォーマルサービスとは
フォーマルサービスとは、インフォーマルサービスの反対の意味を持ちます。
- 介護保険(介護予防)サービス
- 介護保険外の行政サービス
- 医療・保健サービス
- 地域包括支援センター
- 社会福祉協議会
- 非営利団体(NPO)
などの制度に基づくサービスなどが挙げられます。
- 市町村等(公的機関)の職員や医師
- 看護師
- ケアマネージャー
- 介護福祉士
- 社会福祉士等の専門職
が、制度に基づきサービスや支援を提供することをいいます。
(5)フォーマルサービスの例① 在宅サービス
在宅サービスとしては、
- 通所介護
- 通所リハビリ
- ショートステイ
- 特定施設入居者生活介護
などがあります。
また、高齢者が在宅で生活できるように地域密着型サービスとして存在するのが、
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能居宅介護
- 看護小規模多機能居宅介護
です。
その他、行政のサービスとして、紙おむつの給付や日常生活用具の給付等があり、医療機関、地域包括支援センター、社会福祉協議会等も在宅サービスの一つといえます。
(6)フォーマルサービスの例② 訪問サービス
訪問サービスとしては、
- 訪問介護
- 通院等乗降介助
- 訪問入浴
- 訪問看護
- 訪問リハビリ
- 居宅療養管理指導(医師・薬剤師・栄養士等)
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
- 住宅改修
- 居宅介護支援
等があります。
また、訪問サービスの中の地域密着型サービスとして
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 夜間対応型訪問介護
があります。在宅介護・訪問介護における地域密着型サービスについて、対象者や利用の流れをまとめた記事があります。
地域密着型サービスについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。 |
行政のサービスとして、訪問理美容、配食サービス等が挙げられます。
(7)フォーマルサービスの例③ 施設サービス
施設系サービスとして
- 介護老人福祉施設
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
があり、地域密着型サービスとして認知症対応型共同生活介護等です。
介護施設を調べた際によく名前を聞く、「特別養護老人ホーム」や「老人保健施設」、「有料老人ホーム」などはフォーマルサービスといえます。
(8)インフォーマルサービスの必要性は高まっている
誰もが安心して、暮らしていくことのできる「地域包括ケアシステム」において、公的な制度にたよらないサービスとして、インフォーマルサービスの必要性は高まってきています。
地域包括ケアとは、団塊の世代が75歳以上となる「2025年」を目途に、要介護や要支援、何らかの障害を被った状態になったとしても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最期まで継続できるように、住まい、医療、介護、予防、生活支援が一体的に提供できるシステムの構築を目指すことを指します。
地域包括ケアについて詳しくはこちら |
インフォーマルサービスを形成していく中で、それぞれの生活圏域や団体、組織が持っている強さ(ストレングス)を育て、活用することが有効になります。
その中で、介護が必要な高齢者をはじめとする、様々な課題を抱えた人たちのニーズに対して柔軟な対応ができるインフォーマルサービスは重要です。
積極的に活動している地域の団体や組織、団体の中でリーダー的役割を果たしている人材を見つけ、その結果、地域の中で地域や団体、組織が持っている、潜在的な能力の洗い出しや個人の意欲を活用でき、地域の特性に合った地域づくりができることになります。
そういった動きが、インフォーマルサービスの理想の形といえるでしょう。
(9)フォーマルとインフォーマルの連携が大切
フォーマルサービスとインフォーマルサービスについては、どこからどこまでがフォーマルで、どこがインフォーマルサービスかという基準は明確ではありません。
基本的には、保険制度や行政に基づいた支援がフォーマルサービスとなり、それ以外のサービスがインフォーマルサービスといえます。
そして今後の超高齢社会において、インフォーマルサービスがますます大切になってきます。今後は、新規のインフォーマルサービスの創出を働きかけること、既存のフォーマルサービスと連携、支援していくことが重要です。
例えば、介護保険制度上でデイサービスはフォーマルサービスの一つです。
しかし、デイサービスの営業時間以外は、誰もが利用できるような地域交流の場所としてデイサービスを解放することにより、コミュニケーションの機会や地域の方々の憩いの場となり、子どもから高齢者までが交流できる場所となります。
そういった、地域にとってはかけがえのない場所となるでしょう。
このような、フォーマルサービスとインフォーマルサービスを組み合わせた、事業所が増えていくことで、フォーマル・インフォーマルが互いに連携できるようになり、地域の中で重要な役割を担っていきます。
(10)インフォーマルサービスを効果的に利用しよう
地域によっては、インフォーマルサービスが充実されていない地域もあります。
その際は、ケアマネージャーや社会福祉士、地域包括センター等の専門職や公的機関とともに、社会資源の開発を行っていくいう視点も大切です。
地域において認知症の方が安全に穏やかに過ごすために地域住民による、見守りや声掛け運動を行う、認知症サポーターは広く周知されていますし、その発展的な活動で、地域あんしんシステムや見守りSOS事業等を展開し、活動している地域もあります。
このような、インフォーマルサービスを有効的に活用するには、自分の地域の中にどのような、インフォーマルサービスがあるか、民間事業者の行うサービスはどういったものがあるかを事前に調べ、情報を持っておくことが大切です。