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ICFとは|基本的な考え方や誕生背景、活用事例までを徹底解説

社会問題
ICFは人が生きることの全体を把握することのできるモデルです。人の生活や人生を生活機能というプラスの側面から把握します。また、ICFを介護で用いることで、障害があっても生活や人生の質を向上させる支援を行うことが可能になります。このようなICFの基本的な概念、誕生背景、ICFを設計しているモデルから活用事例までを解説します。
ICF
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(1)ICFの基本的概念 

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2461617/

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は2001年に世界保健機関(WHO)により採択された概念です。日本では国際生活機能分類といいます。家族や医療専門職が対象者のことを共に考える際に用いることのできる共通言語として開発されました。

ICFの目的の一つは、対象者の「生きる」全体を把握することです。「生きる」を把握するためにICFは、健康状態、心身機能・身体構造、活動、参加、個人因子、環境因子のカテゴリーを設定しています。対象者の状況をこのカテゴリーに分類し、支援するポイントを焦点化します。支援による変化はカテゴリー全体に波及するように、各カテゴリーは相互作用すると想定されています。

「生きる」ことを支援するモデルであるICFを利用することは対象者のQOL(Quolity of life:人生の質、生活の質)の向上に役立ちます。

(2)ICFの前身、ICIDHとは

ICIDH(International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps)は1980年にWHOにより採択された概念です。日本では国際障害分類と呼ばれます。ICIDHは障害を機能障害、能力障害、社会的不利という3段階に分類して捉える画期的な概念でした。

ICIDHでは障害をマイナス側面として捉え、機能障害から能力障害、社会的不利に向かって一方向に進むと考えられています。

また、ICIDHにおける障害は機能障害を出発点としており、「障害は個人の問題」というふうに批判的に捉えられています。しかし障害は個人の問題として捉えるべきではなく、環境要因を含めた、より包括的な視点で考えた方がいいのではないかという議論が巻き起こりました。

ICIDHは批判的に考えられることがありますが、障害に社会的不利という側面を提起したことは医学的な進歩でした。社会的不利という概念がなければ、障害を生活機能の側面から考える現在のICFのモデルは誕生しませんでした。

(3)ICFの生活機能モデルについて

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1872769

生活機能とは、心身機能・身体構造、活動、参加の3つのレベルの包括的概念で、「人が生きることの全体」を表します。3つのレベルは心身機能・身体構造が生命レベル、活動が生活レベル、参加が人生レベルに該当します。

「生活機能」は人が生きることのプラスの側面を把握するための概念です。マイナスの側面の包括的概念が障害で、各カテゴリーの障害にはICIDHの分類にあった機能障害、能力障害、社会的不利が該当します。

心身機能・身体構造

「心身機能・身体構造」は身体や精神の動きや働き、内臓や骨等の身体そのもののプラスの状態が該当し、障害要素は機能障害に分類されます。

活動

「活動」は生活に関わる活動で、食事や入浴といったセルフケアや余暇活動等のプラスの状態が該当し、障害要素は能力障害に分類されます。

参加

「参加」は社会や人生に関わる活動で、社会で役割を持つ活動や人生で重要なプラスの状態が該当し、障害要素は社会的不利に分類されます。

心身機能・身体構造、活動、参加の3つのレベルは相互に影響を与えます(相互依存)が、相互に独立(相互独立)しており、相互作用すると考えられます。

(4)ICFの背景因子について

生活機能を補完するように背景因子が設定されています。背景因子には環境因子と個人因子があります。

環境因子には、

  • 福祉用具のような物的環境
  • 介護者や家族などの人的環境
  • 介護保険制度などの社会的・制度的環境

が含まれます。

個人因子には、

  • 性別
  • 年齢
  • ライフサイクル

などが含まれます。

背景因子も生活機能と相互作用し、人が生きることの全体を支えます。ICFは人が生きることには背景因子も影響を与えることを明確にしています。

(5)「活動」、「参加」と背景因子の相互作用

「服を着る」ことを考えてみましょう。服を着ることは生活のレベルで活動に該当します。しかし、個人因子に「華道の先生」という要素があると、服を着ることは先生という社会的役割の一部になります。服を着ることが、個人因子の相互作用で参加に分類されます。

他にも、「買い物に行く」ことを考えてみます。一人で移動できない場合、買い物に行くことはできません。この状況は能力障害に該当します。ここに「週に2回家族が買い物に同行する」という人的環境の環境因子が相互作用すると、この方は買い物に行くことができます。環境因子により買い物に行くことは能力障害からプラスの活動に変わります。

(6)ICFはどのような現場に適用されているのか

ICFは医療、福祉、介護、教育、政策、といった様々な分野で適用されます。ICFは人が生きることの全体を支援するので、障害のある人だけでなく、全ての人を対象に利用できます。

共通言語として使用できる特徴も様々な分野に適用される要因になります。

(7)ICFを介護現場に適用するメリット

介護は対象者の生活の一部です。また、対象者にとって介護は生活や人生の一部ともいえます。

このように対象者の支援は、対象者の生活や人生を支援することにつながります。ICFを用いることで、家族や医療従事者が知り得る生活機能や背景因子の情報を介護現場で共有できます。

生命レベルから人生レベルまでの情報を共有し、包括的に支援することは、対象者のQOL(生活の質)を高めることに繋がります。

(8)ICFの介護現場での活用例① 心臓疾患により右半身麻痺の高齢者

「心臓疾患による右半身麻痺の高齢者」という状況を仮定して、活動面の変化をみてみると、以下の通りになります。

  • 健康状態:心臓疾患
  • 機能障害:心臓機能低下、右半身麻痺
  • 能力障害:生活に支援が必要
  • 個人因子:高齢

ここに環境因子として介護サービスの利用を加えると、以下のようになります。

  • 健康状態:心臓疾患
  • 機能障害:心臓機能低下、右半身麻痺
  • 活動:訪問入浴により入浴できる
  • 能力障害:生活に一部支援が必要
  • 個人因子:高齢
  • 環境因子:訪問入浴

訪問入浴の利用で、能力障害の一部がプラス側面の活動に変化します。マイナス側面に変化がないままですが、入浴できるということで、対象者のQOLは向上しているということができるでしょう。

(9)ICFの介護現場での活用例② 認知症の高齢者

出典:https://www.photo-ac.com/

「認知症の高齢者」という状況を仮定して、参加面の変化をみてみると、以下の通りになります。

  • 健康状態:認知症
  • 機能障害:記憶力の低下、判断力の低下
  • 社会的不利:迷子になってしまうため、外出が制限されて日中一人
  • 個人因子:高齢者

ここに環境因子として介護サービスの利用を加えると、以下のようになります。

  • 健康状態:認知症
  • 機能障害:記憶力の低下、判断力の低下
  • 参加:デイケアで他の利用者と楽しく活動を行っている
  • 社会的不利:迷子になってしまうため、外出が制限されて日中一人
  • 個人因子:高齢者
  • 環境因子:デイケアの利用

デイケアの利用により、プラス側面である参加が加わります。人と接することは認知機能の低下を予防できる効果もあるので、場合によっては心身機能・身体構造にいい影響が加わる可能性があります。

(10)ICFの考えを理解して、介護に生かそう

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/942755

ICFは障害を多方面から捉えることに優れたモデルです。医学的な知識のみに偏ることなく、家族を含めた他職種が情報を共有するためのツールとして有用です。

介護の世界でもICFの概念を用いることで、たとえ身体や精神に機能障害を抱えていようとも、対象者がより良い生活や人生を送ることを支援し、QOLを向上させることができます。

ICFの考えを理解することで、前向きな介護を実践し、対象者の生活がより良いものになるように支援していきましょう。

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