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福祉の意味 | 社会保障との違いや関係する教育・介護の仕事

公的制度
介護や保育の話でよく出てくる「福祉」とは具体的にどのような意味なのかご存知ですか?この記事では、意外と知られていない「福祉」の意味や、福祉に関するお仕事についてご紹介します。
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(1)福祉の意味

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/430332

仕事を探すとき、職種の中に「福祉関係」というジャンルがあります。テレビや新聞などでも「福祉の充実」というキーワードがあちらこちらで聞かれます。そんな「福祉」の意味について辞書で調べてみると以下のように定義づけられています。

公的な配慮・サービスによって社会の成員が等しく受けることのできる充足や安心。幸福な生活環境を公的扶助によって作り出そうとすること。

デジタル大辞泉より引用)

福祉は大きくとらえると人々の幸福を目指すものであるということがうかがえます。

日本ではこうした福祉の考えに基づき、充足や安心、幸福な生活環境を作るために、「社会福祉」や「社会保障」、「公衆衛生」などの取り組みが行われています。

(2)社会福祉とは

福祉の中の一つである「社会福祉」の定義は大辞林第三版によると下記の通りです。

貧困者などの生活を保障し、心身に障害のある人々の援助などを行って、社会全体の福祉向上を目指すこと。教育・文化・医療・労働など広い分野に関係する組織的活動で、生活保護法・児童福祉法・身体障害者福祉法・社会福祉法などの法律に基づき、原則として国・地方公共団体・社会福祉法人の行う第一種社会福祉事業と、その他の者が知事に届け出て行う第二種社会福祉事業がある。

簡単にいえば、社会福祉とは、行政や福祉法人等が行う社会福祉の制度や事業となります。

(3)社会保障と社会福祉の意味はどう違う?

似ているようで実は違う「社会福祉」と「社会保障」の意味の違いについて説明します。

「社会保障」とは、医療や介護、障害、失業などのリスクについて、税金や保険料を広く浅く国民に負担してもらい、その財源をもってリスクに対する予防や生活を安定させるための援助(給付)を行うことで、具体的には次の5つの事業を行う意味を謳っています。

社会保険

事業にかかる費用を加入者に広く浅く負担してもらい、保障が必要な人に給付をすることで本人は一部(1~3割)の負担でサービスを受けることができます。なお、対象者は原則として強制加入となります。具体的には、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険などの事業を謳った意味となっています。

公的扶助

生活困窮者に生活保護費を給付することで、生きていくための最低限の生活を保障する意味合いのものです。最近、テレビドラマの題材になったのでご存知の方も多いと思います。

社会福祉

生活をするうえで社会的に立場が弱い方(高齢者、母子、児童、障害者など)に支援し、自立を促すものです。具体的なサービスは、老人福祉、母子福祉、児童福祉、障害者福祉など意味合いとしては広いものとなっています。

公衆衛生及び医療

安心して健康に生活をおくれるように、食品の衛生保持や、病気の予防・正しい知識の啓蒙などについて保健所や市役所が行っています。具体的には、感染症対策、食品衛生、廃棄物処理、野生の動物対策などです。

老人保健

医療への依存度が高い75歳以上の方のための医療制度です。具体的には、後期高齢者医療保険です。

(4)近年、福祉の意味に新しいあり方が求められている

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1639076

もうすぐ東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。それに併せて、国では「バリアフリー」を観点にハード面を、「ダイバーシティ」を実現するためのソフト施策を提唱しています。

以前からも、「ユニバーサルデザイン」や「ハートビル法による建築物」など社会的弱者の利便性を高めるための取り組みが行われてきましたが、いずれも築造物におけるバリアフリー化という意味でした。

では、今回の「ダイバーシティの実現」の意味は、これまでの福祉の意味と何が違うのか?について2つの観点からご説明します。

ハード+ソフト

今回の「ダイバーシティの実現」への取り組みは、ハード(築造物)に、ソフト(仕組み)が加わったことです。

例えば、これまでの働き方は、「健常者」、「高齢者」、「障害者」など仕事内容が区分けされていましたが、福祉器具が飛躍的に改良されはじめていることで、1つの空間で健常者や高齢者、障害者が協力しあって働く会社が増えてきました。

そんななか、新しい発想で作られた福祉器具の展示会「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展(通称「超福祉」)が話題を呼んでいます。

この「超福祉展」を主催するNPO法人ピープルデザイン研究所の須藤代表理事によれば「あらゆる人が交ざりあうこと」がポイントと話されており、ソフト(仕組み)を構築していくことが、「ダイバーシティの実現」の大きな意味をなしています。

ゼロからプラスへ

これまでの福祉器具は、「できない」ことを「できる」ようにするために、つまりマイナスの状態からゼロにするために機能性を求めた器具でしたが、最近の福祉機器は、小型化やAI機能による機能向上、ファッション性の導入などゼロからプラスにする機能や付加価値をつけています。

ここ数年、経済産業省が関わる福祉器具の展示会(「Care Show Japan」など)も開催され始めており、「ダイバーシティの実現」への後押しをしています。

このことから今後の福祉の意味は、多様性を尊重できる社会を実現することが大きなウエイトを占めています。

(5)福祉に関する仕事にはどんなものがある?

社会になくてはならない「福祉」の仕事ですが、意味や目的、仕事の内容は、「高齢福祉」や「障害福祉」、「児童福祉」、「保健衛生」など多岐にわたっており、仕事の種類によっては必要な資格も変わってきます。

また、働く場所も様々で、行政機関であれば市役所や保健所、地域包括支援センター、小・中学校となります。行政機関の外殻団体では社会福祉協議会があります。この他にも社会福祉法人の福祉施設や介護保険サービスの事業所、医療機関などがあります。

これより、「介護」、「保育」、「保健医療」、「その他」の4つの分野別に意味や仕事の内容や必要な資格についてご説明します。

(6)福祉の仕事内容① 介護の場合

まずは、高齢化によりに年々ニーズが高まっている介護の仕事内容について4つの資格別にご説明します。

社会福祉士

自宅や施設などで生活するうえで、課題がある方またはその家族からの相談対応や福祉サービスを使って支援を行う仕事で、多くの分野で活躍している資格の一つです。

一例を挙げますと、地域包括支援センターで働く場合は、高齢者からの介護や健康、生きがいづくり、虐待や成年後見制度などの相談やサービスの紹介、支援などを行います。

介護施設の場合では、相談業務や施設内のレクリエーションの企画や運営、家族へのケアなどを行います。総合病院の相談室では、退院に際して、自宅での介護・福祉サービスの紹介や地域包括支援センターやケアマネジャー、家族といった関係者間の調整などがあります。

社会福祉協議会では、ボランティアや地域活動のコーディネート、高齢者からの相談や支援、障害者の生活や就労の支援、生活困窮者の相談や支援を行います。また、市によっては福祉部署の相談業務に社会福祉士などの専門職を配置する場合もあります。

社会福祉士についてさらに知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。

社会福祉士の仕事内容とは | 業務/給与/やりがい/将来性など

【徹底解説】社会福祉士の国家試験 | 受験資格、試験科目、申込み手順

介護支援専門員(ケアマネジャー)

介護保険サービスを利用する際に必要なケアプラン(サービス利用に関する計画書)の作成や、サービスを提供する事業所との調整を行います。最近では医療に関する連携・調整業務も加わっています。

一般的には、居宅介護支援事業所(通称「ケアマネ事業所」)に所属し、要介護1から5の方のケアプランを作成し、定期的に利用者宅に行き、体調の状況をチェックします。地域包括支援センターで働く場合は、要支援1と2のケアプランの作成・状態のチェック、高齢者からの総合相談などを行います。

また、最近では民間の有料老人ホームや高齢者専用住宅などでも、入居者の介護サービス利用のために専属の介護支援専門員を配置する施設も増えてきました。

ケアマネージャーについてさらに知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。

ケアマネージャーとは|仕事内容/ケアマネ資格のメリットと取得方法

【ケース別】ケアマネージャーの給料はいくら?金額・内訳・将来性

介護福祉士

介護が必要な高齢者や障害者に介助を行ったり、介護をしている家族へのアドバイス、ヘルパーの指導などを行います。主に、介護施設や介護事業所などで実務を行ったり、責任者として指導を行っています。

介護福祉士についてさらに知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。

介護福祉士とは | 仕事内容・試験の難易度・資格取得のメリットなど

介護福祉士の資格を取得するには|試験を受験するまでの3ルート

ヘルパー

高齢者宅や施設などで、家事や買い物、掃除、洗濯といった生活支援と、食事やトイレ、入浴といった身体介助を行います。介護施設(特別養護老人ホームなど)や介護保険のヘルパー事業所、民間のヘルパーサービス会社(ダスキンなど)などがあります。

ヘルパーについてさらに知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。

ホームヘルパー(訪問介護員)とは | 仕事内容や時給など

【徹底解説】ヘルパー資格 | 取得方法や名称変更による影響など

(7)福祉の仕事内容② 保育の場合

次に、保育の仕事内容について、資格別に3つご説明します。

保育士

子どもの体調を管理しながら、生活習慣を身につけさせたり、遊びをとおして健康な体づくり、集団活動や社会性を持たせる業務を行います。

保育所(保育園)の場合は、食べる、眠る、トイレなどの基本的な生活環境を身につけさせたり、四季の行事に合わせたイベントなどの集団活動を行います。

児童の遊びを指導する者

児童厚生施設で子どもに自主性や社会性、創造性の育成をする業務を行います。以前は“児童厚生員”とばれていましたが、平成11年から“児童の遊びを指導する者”に名称が変わりました。

(8)福祉の仕事内容③ 保健医療の場合

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/156069

3番目は、保健医療についての仕事内容を資格別に5職種についてご説明します。

保健師

保健師の業務範囲は非常に広く、人の年齢でいえば妊婦、乳幼児、母子、成人、高齢と全世代を対象としており、業務内容も病気や健康、精神疾患、食品までが業務となっています。

保健所で働く場合は、インフルエンザなどの感染症対策や、精神疾患の方の支援、食中毒予防に関することがあります。市役所の場合は、健康福祉の部署で、乳幼児や母の検診、歯の健康に関する事業、健康診断に関すること、高齢者の運動に関することなどがあります。小・中学校の場合は、子どものケガや病気の対応、発育測定などがあります。

リハビリ専門職その1(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)

はじめにリハビリテーションの専門職のうち次の3職種の役割について簡単にご説明します。

  • 理学療法士(一般的に「PT」と呼ばれています)

自立した生活をおくるために必要となる”立つ“、”座る“、”歩く“といった基本的な動作ができるよう、筋肉や関節を動かすリハビリやマッサージを行います。

  • 作業療法士(一般的に「OT」と呼ばれています)

利用者が自宅で生活をおくるために必要な“家事”、“趣味”、”仕事“などができるよう、手先などを使ったリハビリを行います。

  • 言語聴覚士(一般的に「ST」と呼ばれています)

脳梗塞などにより言語障害で思っていることがうまく話せない方、または“くち”の麻痺により食事がうまくできない方などのために“くち”を使えるようにするためのリハビリを行います。

これらの専門職の活躍の場は、総合病院のリハビリ科や通所リハビリテーション事業所、老人保健施設などがあり、集団でリハビリを行います。また、訪問リハビリテーションは、自宅に訪問し、マンツーマンでのリハビリを行います。

最近では、運動施設(公共の体育館や民間のフィットネスクラブ)で介護予防体操を行うところが増えてきました。この他にも、障害者施設、難病施設における障害者のリハビリでもニーズが高まっています。

リハビリ専門職その2(義肢装具士)

義肢装具士とは、生まれつきまたは病気やケガで失った手や足の機能の代わりをする義肢やコルセットなどを作り、使用する方が使いやすいように器具の調整を行います。

ほとんどの義肢装具士は義肢用具メーカーに所属し、病院や施設へ行って、利用者や支援者と相談、設計、製作、アフターケアを行います。

看護師

一般的には病院などの医療現場で勤務するイメージが強い看護職ですが、医療への依存度が高い高齢者や障害者の現場でも必要な職種となっています。

地域包括支援センターでは、介護予防のための体操教室や認知症予防の取り組み、在宅医療のための連携業務などがあります。高齢者の介護施設(特別養護老人ホーム、デイサービスなど)においても、設置基準のひとつに介護職の配置基準が設けられていて、利用者または入所者の体調管理、急変時の対応などを行います。

(9)福祉の仕事内容④ その他の場合

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/972869

最後に、その他の仕事について、資格別に2つご説明します。

心理士

いろいろな問題や不安を抱え、悩んでいる人の話を傾聴し、問題の本質を探り、問題解消に向けた心理的な援助・支援を行う仕事です。

心理士に関する資格は、国家資格(公認心理士)や一般社団法人の認定(学校心理士、産業カウンセラーなど)、各種学会の認定(福祉心理士、メンタルカウンセラーなど)、NPO法人の認定(教育カウンセラーなど)、任意団体の認定(スピリチュアル心理士など)など、心理士の名称や認定機関が多種多様となっています。

最も身近なもので、学校に配置されているスクールカウンセラーがあります。業務内容は、学校の生徒や親からの相談や問題行動の対処、不登校の対応などです。この他に行政機関(児童相談所、市役所の福祉系窓口、知的障害者更生相談所、婦人相談所など)の相談員(面接官)、会社の社員向けの産業カウンセラー、病院やクリニックでの心理療法など多くの分野で活躍しています。

栄養士

子どもの発育に欠かせない食事ですが、その食事の栄養バランスの指導をするのは栄養士です。保育園や小・中学校などで提供する給食の栄養に関する管理や指導を行います。最近では、食事から摂取する栄養の大切さを教える“食育”などにおいても活躍しています。その他にも、高齢者の施設や病院などで提供する食事などでも栄養管理・指導などで活躍しています。

(10)福祉という言葉を捉えなおしてみよう

“福祉“の仕事が社会を支えている範囲の広さ、働く人たちの資格の多さがお分かりいただけたでしょうか。福祉の意味はとても深くて、非常に広いのです。

冒頭で「福祉の意味=幸福な生活環境を作ること」とご説明しましたが、それぞれの“幸せ”のかたちは違います。福祉の勉強をされた方なら一度は聞いたことがある「バイスティックの7原則」という対人援助の行動規範があり、そのなかで「人は育ってきた環境や経験値、価値観にまったく同じものはない」という「個別化の原則」というものがあります。

福祉の実現には、「支援される人の幸せを探る」ことが必要になってくるのかもしれません。

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