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入退院支援加算とは | 施設基準や算定要件、申請方法など

公的制度
2018年度の診療報酬の改定により新設された入退院支援加算。入院前から退院後の生活まで途切れないワンストップサービスを目的にしています。住み慣れた地域で自分らしく生きるために必要不可欠な医療と介護の連携、地域サービスの役割をふまえ、入退院支援加算の算定条件やメリットについて解説します。
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(1)入退院支援加算とは

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2075837

入院・退院の際に生まれる各種ニーズを埋めるための支援制度

2018年度に診療報酬の改定が行われました。その際に注目となったのが「入退院支援加算の新設」です。入退院支援加算とは、入院前から退院まで途切れない支援を目的に行われ、適切な支援がなされた場合に退院時に評価されるものです。

入退院支援加算は、元々存在していた退院支援加算が「入退院支援加算」へと改称されたもので、入院中だけでなく入院前後、退院後の生活の支援する目的で作られました。

入退院支援加算の目的として以下のようなことが挙げられます。

地域包括ケアの構築、医療機能の強化、介護の連携

医療機能や患者の状態に応じた評価、入退院支援の強化、医療と介護の連携の推進、在宅医療や訪問看護との連携などです。在宅での介護や医療を支援を充実して受けることができることが目的です。

新しいニーズへの対応と安心で質の高いケアの実現

医療分野を充実させ、緩和ケアや認知症患者への適切な医療への評価、地域生活支援の充実、医療安全対策の推進などです。個人に合わせたケアをより手厚くすることが目指されます。

(2)入退院支援加算が設置された背景

現在の日本は超高齢社会であり、85歳以上の人口が急増しています。その結果、独居や認知症の高齢者が増え医療介護サービスのニーズも増える一方です。2025年には、団塊の世代と呼ばれる年代の人たちが後期高齢者になり、医療や介護の現場で大幅な人手不足が懸念されています。これは一般的に「2025年問題」とも言われています。

医療や生活支援のニーズは多種多様となり、医療リスクも高く包括的な支援が求められるようになりました。また複数疾患をもつ方も多く、医療機関や多職種協同での医療連携、地域ケア連携、適切なサービス提供と機能の分化が必要となりました。

入退院時は本人と家族、入退院に対応する担当者、ケアマネージャーなど在宅ケアに関わる方達となりますが、地域における在宅支援を行う機関やサービスはたくさん存在します。しかし地域全体で在宅生活を支えるためには介護医療の連携と介護パワーを向上しなくてはいけません。

入退院支援加算設置の目的

このような背景から入退院支援加算が設置されました。以下は入退院支援加算設置の目的になります。

  • 入院前の在宅生活、外来~入院治療中、退院後の在宅生活、外来と途切れない支援の継続
  • 入院前、退院後の支援やサービスの把握と確認
  • 退院支援における在宅福祉サービスとの連携強化、情報の共有
  • 地域連携、地域包括ケアの構築

(3)入退院支援加算の施設基準と算定対象

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/650678

入退院支援加算の施設基準と算定方法は以下の通りです。

施設基準

  • 入退院支援加算の届出を行っている保健医療機関である
  • 入退院支援加算1、2又は3の施設基準で求める人員に加え、入院前支援を行う担当者を病床規模に応じた必要数、入退院支援部門に配置している
  • 退院調整部門の設置:専従1名(看護師または社会福祉士)
  • 退院支援職員の配置:退院支援業務等に専任する職員を2病棟に 1 名以上)
  • 地域連携を行うにつき十分な体制が整備されている
  • 医療機関・介護事業所との連携構築:20以上の医療機関または介護サービス事業所等と転院・退院体制についてあらかじめ協議し、連携を図っている
  • 医療機関・介護事業所との情報共有:連携医療機関または介護サービス事業所等の職員と退院支援、地域連携職員が、3回/年以上の頻度で面会し、転院・退院体制について情報の共有等を行っている

算定対象

入院時支援加算の対象は、「退院困難な要因」があり入院する患者で在宅療養を希望する方となっています。退院することが困難な要因は以下の通りです。

  • 悪性腫瘍、認知症または誤嚥性肺炎などの急性呼吸器感染症のいずれかである
  • 緊急入院である
  • 要介護認定が未申請である
  • 虐待を受けている又はその疑いがある
  • 医療保険未加入者又は生活困窮者である
  • 入院前に比べADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要(推測も含む)
  • 排泄に介助を要すること
  • 同居者の有無に関わらず、必要な介護又は養育を十分に提供できる状況にない
  • 退院後に医療処置(胃瘻等の経管栄養法を含む。)が必要
  • 入退院を繰り返している
  • その他患者の状況から判断して上記の要因に準ずると認められる場合

このように、入退院する対象者の把握やニーズの抽出、地域サービスとの連携について、多職種協働のもとカンファレンスの実施が規定されています。

(4)入退院支援加算の算定要件

入退の予定がある患者、在宅生活での状況把握や入院中の治療や療養支援計画について患者本人、家族、関係者と情報共有を行うことが算定要件となっています。

支援には以下の内容が含まれます。

  • 身体的、社会的、精神的背景を含む情報の把握
  • 褥瘡リスク、栄養状態の評価
  • 持参薬の把握
  • 入院中の治療、検査、入院生活への説明
  • 退院困難となる要因についての評価

(5)入退院支援加算を導入するメリット

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/417780

入退院支援加算を導入することで、退院困難な要因をもつ患者やニーズの抽出、地域や多職種と連携した入退院の支援を行うことができます。

また、患者本人にとっても地域包括システムが構築されることで、納得して入院、治療を受け、退院し住み慣れた地域での療養を行い自分らしい生活を継続できるでしょう。医療機関として積極的に地域福祉サービスと情報共有することで、ケアマネージャーと連携強化でき、退院後の生活支援についての助言も可能となります。

(6)どのような入居・退院支援が行われるのか

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/356969

入退院支援加算を利用するにあたり、行われる入退院支援の流れをご説明します。

1.スクリーニング(入院後3日以内)

退院調整担当者が多職種連携のもと、退院困難となる要因の抽出と退院後生活のニーズと支援方法を検討

2.入退院支援スタート(入院7日以内)

院内にて医師や看護師、ケアマネージャーなど関係者間で情報共有を行うとともに患者本人、家族の意向を確認し退院支援計画書を作成

治療と並行して退院支援計画書について説明、同意を得る

3.退院時カンファレンスの実施

退院後の生活の継続に向け、課題と方向性、退院後に利用する地域サービスの確認を行う

患者本人、家族、ケアマネージャー、介護サービス事業者が出席し情報共有と共通認識をもち、在宅支援に向けての最終確認となる

4.退院後フォロー

退院時カンファレンスで構築したネットワークや信頼関係を継続し、退院後の状況確認を行い、適切な支援計画だったかを検証

※退院調整を担当する職種は医療機関により、地域医療連携室、退院調整看護師、医療ソーシャルワーカー(社会福祉士、精神保健福祉士)、受け持ち担当看護師など異なります。

(7)入退院支援加算の申請方法

入退院支援加算の申請では、保健医療機関が所在する都道府県の管轄事務所(厚生局本局所在地にあっては指導監査課)に当該施設基準に係る届出書(届出書添付書類を含む。)を1部提出します。

この際、届出書を入手するための方法ですが、担当の地方の厚生局のサイトから、届出書のファイルをダウンロードすることができます。

ちなみに、この入手方法は入退院支援加算以外の各種加算においても適用されます。

参考までに、関東信越地方厚生局の該当ページと、近畿厚生局の該当ページをご覧ください。こちらのページにアクセスすることで、それぞれの地方における、各種加算の届出書をダウンロードすることができます。

(8)入退院支援加算の注意点

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2197688

入退院支援加算は院内でだけ実施すればよいわけではありません。

地域サービスの要となるケアマネージャーや入居施設の担当者との医療・介護連携を密にすることが大切ですが、要介護認定を受けていない場合はケアマネージャーが選定されていないため、入退院時の情報共有や連携が不足するケースがあります。

在宅医療、介護サービスなど、地域での社会資源を適切に利用できるよう多職種間での情報共有できるネットワーク作りが求められるでしょう。

(9)入退院支援加算の課題

入退院支援加算制度を維持する際の課題として、患者の入退院の調整に関するノウハウを持つ人員の確保が難しいことが挙げられます。

医療機関においては、地域医療連携室や退院調整の担当者が定まっていないなど、入院患者の入退院を調整する役割を持つチームが固定設置されていない場合が多くあります。

そうなると、該当分野に関する専門的な教育や研修を施しづらく、知識や資質、能力にばらつきが出てしまい、適切な退院調整が実施できる人員が確保できないという医療機関も少なくありません。

専門的な資質向上に向けての時間やコストの調整が課題となるほか、地域連携への知識や入退院支援加算制度の周知が課題となるでしょう。

(10)医療・介護の情報連携が不可欠

本記事の(9)にて述べた通り、医療と介護の連携はまだまだ発展途上の段階です。途切れない支援を継続するためにはさらに医療・介護の情報共有と連携が必要となります。

患者が住み慣れた地域で自分らしく最期まで生きるためには、地域包括システムを構築し、ワンストップサービスでの支援を継続しなければいけません。入退院支援加算の改定は、地域包括ケアへの第一歩、医療介護の連携推進における重要な意味があるものといえるでしょう。

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