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(1)生業扶助とは
生活保護を受けている方は、自立して生活をしていく中で必要となってくる費用に対して、金銭や現物で扶助が行われます。生活保護受給者が受けられる扶助には、次の8種類があります。
- 生活扶助
- 住宅扶助
- 教育扶助
- 医療扶助
- 介護扶助
- 生業扶助
- 出産扶助
- 葬祭扶助
扶助の中の一つである生業扶助とは、就職をするために必要な資格を取ったり、技能を習得したりするために支払われるものです。生活保護を受給している方は、最低限度の生活ができる最低生活費が決まっています。
就職活動を行う際に、ただでさえ少ないその生活費から就職するための技能や資格を取るための費用を捻出しないといけない、という誤った認識を持っている方も少なくありません。
しかし生業扶助は、最低生活費に上乗せして支給されるもので、就職するために生活が脅かされることはないため、安心して申請することができるものなのです。
本記事では、そんな生業扶助について対象者や金額、申請方法などに関して詳しく説明していきます。
(2)生業扶助の対象者は?
生業扶助を受けることができる対象は、生活保護を受給している方やその家族だけではありません。生活が困窮し、生活保護予備軍ともいえる立場の方も含まれます。
つまり最低限度の生活を維持できないと判断された方が対象となります。
また扶助をしてもらえるのは、就学意欲、勉学する能力、勉学する場所がある方となります。
(3)生業扶助の対象① 生業費
扶助の対象
生業費は、次のような小規模な事業を行う際う方を対象としています。
- 食料品店(鮮魚店・青果店・精肉店や製菓店など)
- 飲食店(食堂・ラーメン店・蕎麦やうどん店・喫茶店など)
- 文化品店(書店・文房具店・生花店・玩具店など)
- その他、自由業やサービス業など
基準の支給額
基準となる支給額は46,000円ですが、やむを得ない場合に限り特別に77,000円まで受けることができます。
(4)生業扶助の対象② 技能習得費
扶助の対象
技能習得費は、自立した生活を行うために必要な技能の習得に支払われるものです。技能の習得に関しては、その実態を調査確認したものに限られます。
平成30年10月から支給金額などの見直しが行われたため一部支給金額が改定され、その対象は下記になります。
- 自動車の免許取得
- ホームヘルパーなど福祉関係の資格や研修
- コンピューターなどの操作
- 自立支援プログラムによる支援
- その他、医療関係・電気建設関係の資格など
基準の支給額
技能習得費としての支給基準は80,000円ですが、やむを得ない場合は特別に133,000円まで支給されます。
基準としては、技能取得1年に対してのみ支払われますが、自立する上で特に必要があるとされた場合は1年につき80,000円を2年まで受けることができます。
また1年に複数回技能の習得が必要になった場合は、自立支援プログラムに基づき行われた場合に限り、年額213,000円まで上限を引き上げることができます。
その他380,000円までの支給が可能になる特別基準が当てはまるのは、次のような場合になります。
- 自立を助長できると確実に見込まれた、専修学校や各種学校においての技能取得
- 免許の取得が雇用の条件となっている場合の、自動車運転免許取得
- 公的資格が得られ自立を助長できると認められた、雇用保険法に規定された厚生労働大臣が指定する教育訓練講座の受講
(5)生業扶助の対象③ 高校学校等就学費
扶助の対象
義務教育ではありませんが、高校に進学することで自立した生活が送れるようになる可能性が高いと判断された場合、高校に通うために必要となる学用品費、授業料費、交通費などが支払われます。
支給の対象となる学校は次のような学校です。
- 全日制・定時制・通信制の高等学校
- 高等専門学校
- 高等学校に準ずると認められている各種学校や専修学校
- 中高一貫教育の中等教育後期課程
- 特別支援学校の高等部
基準の支給額
高校学校等就学費についても、入学準備金や基本額となる支給額の見直しが行われ平成30年10月より下記の金額になっています。
費用の種類 | 支給額 |
---|---|
入学料 | 都道府県によって違うため居住地で確認が必要 |
入学準備金 | 86,300円 |
授業料 | 公立高校の授業料相当。※私立高校でも同じ |
教材費 | 実費 |
学用品・通学用品費 | 月額5,200円 |
学級費や生徒会費 | 月額1,750円 |
クラブ活動費など学習支援費 | 年額83,000円 |
通学費 (交通費) | 実費 |
入学準備金の内訳は教材費以外の学校指定の学生服や鞄、靴などです。支給額は86,300円となっていますが就学期間中に成長によるものや災害などで買い替えが必要な場合も同額支給されます。
また、学用品・通学用品費はH30年の改定までは5,450円でしたが10月1日より減額となっているため注意しましょう。
(6)生業扶助の対象④ 就職支援費
扶助の対象
就職確定後に就職のために必要となる、洋服や履物、鞄などの購入費用について支給されるものです。正規・非常勤などの雇用形態は問われませんが、社会保険に加入していることが条件となっています。
基準の支給額
平成30年10月より、31,000円までの支給となりました。
(7)生業扶助を受けるメリット
自立した生活を支えるために、仕事を見つけることは大変重要なことです。しかし、就職に必要な技能や資格などを習得するには、必ずそれなりの費用がかかります。
技術や資格がないために就職ができなくても、最低限の生活費からは費用を出せないと、就職を諦めてしまっている方もいるのではないでしょうか。
しかし、今までで説明したような金額の生業扶助を受けることによって、就職に必要な技能や資格を習得できます。生活保護を受けなくても、自立した生活が送れるようになることは大きなメリットです。
生業扶助について、詳しく聞いたことがないという方も多いかもしれません。自治体によって生業扶助として支給される金額が違う場合もあるため、しっかりケースワーカーに相談してみましょう。
(8)申請方法
生活保護を受けている方は、まずは担当のケースワーカーに相談しておきましょう。生業扶助を申請したからといって、すべて支給されるとは限らないからです。
次に申請をします。生業扶助の申請は生活保護申請時と同じ、福祉事務所となります。
また、現在生活保護を受けておらず生活困窮者自立支援法の対象となる方も、生業扶助を申請することが可能です。生活困窮者自立支援法の対象となって生業扶助が支給してもらえるかどうか福祉事務所で相談してみましょう。
(9)申請に必要なものは
生業扶助の申請に必要なものは、次の通りです。
- 申請用紙
- 生活保護受給証明書
- 振込してもらう通帳の口座番号
- 印鑑
生活保護を受けていない生活困窮者の方は生活保護受給者証はなくても良いので、福祉事務所で生業扶助が受けられるかに関して相談をしてみましょう。
(10)生業扶助の対象となる費用を理解したうえで申請しよう
生業扶助の生業費などは、事業を起こすには低すぎる基本額となっていますが、技術や資格を取得するための技能習得費としては十分な額であると言えます。技術や資格を取ることで、最低限の生活から脱出できるかもしれません。
資格をとったから必ず就職ができるかという問題は存在しますが、ほとんどの場合は、資格が証明する技術や知識を習得するだけで、就職活動における大きな武器になることは間違いありません。せっかくの支援を無駄にするようなことにならないよう、生業扶助についてしっかり理解をした上で、申請をしてみましょう。