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【シミュレーション付】在職老齢年金とは|計算方法、支給停止の対象者など

公的制度
老齢年金とは、65歳以上から受給できる年金のことをいい、老齢基礎年金と老齢厚生年金があります。国民年金から支給される老齢基礎年金では、受給資格を満たしていれば65歳から受給することができますが、70歳未満で厚生年金に加入しながら働いている場合には老齢厚生年金額が調整され、この制度を「在職老齢年金」といいます。ここでは「在職老齢年金」の基本月額や年齢別の受給額シミュレーションを行っていきます。
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(1)在職老齢年金とは

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2286474

在職老齢年金は、年金額を調整するための年金

在職老齢年金とは70歳未満で厚生年金に加入しながら働いている場合や、70歳以上でも厚生年金適用の事業所に勤務している場合に老齢厚生年金額と給与額(ボーナス含む)に応じて調整される制度です。この給与額によっては老齢厚生年金の全額が支給停止される場合もあります。

この年金額の減額・支給停止の対象となるのは老齢厚生年金のみです。国民年金から支給される老齢基礎年金は対象とならないので支給額が減額・支給停止となることはありません。

近年では超高齢化社会を背景に定年退職した60歳以降も働き続けるというのが一般的になってきています。しかし在職老齢年金制度の下ではそういった60歳以降の方が年金を受け取りながら働く場合、その年金が給与額によって減額されてしまうのです。

「いつの間にか年金が減額・支給停止されていた・・・」ということがないように、早い段階でこの在職老齢年金の仕組みについて理解しておくことが重要です。

ここでは在職老齢年金の仕組み、支給停止対象者、年齢別の計算方法などについて1から分かりやすく解説していきます。

(2)そもそも老齢年金とは

老後の生活の柱になる老齢年金

老齢年金は高齢になった際に受け取れる年金のことで、老後の生活においては収入の柱となる重要なものです。受け取れる年金の種類は加入していた年金制度によって異なり、現在日本には国民年金と厚生年金の2つの制度があります。

国民年金と厚生年金

このうち、国民年金は自営業者のほか、学生や専業主婦などの20歳以上60歳未満の国内在住者が加入します。一方、厚生年金は会社員や公務員・教員などが加入します。厚生年金の場合は国民年金にも同時に加入することになります。

そして、国民年金保険料を原則として最低10年以上納めていた場合には65歳以降から老齢基礎年金が受け取れます。また、老齢基礎年金の受給資格を満たしていて、かつ厚生年金に1ヶ月以上加入していた場合には老齢厚生年金も受給することができます。

(3)在職老齢年金の支給停止の対象が平成27年10月から変更に

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1895768

平成19年4月より在職老齢年金の対象者は、昭和12年4月2日以降に生まれた人と定められていました。しかし、平成27年10月から昭和12年4月1日以前生まれの人についても在職老齢年金の対象となり、対象範囲が広くなりました。

これにより、今までは齢厚生年金が全額支給されていた人についても、老齢厚生年金の支給額が調整されることになりました。

(4)在職老齢年金の仕組み

在職老齢年金は、「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額により、老齢厚生年金額が調整されます。また、基本月額と総報酬月額相当額の定義は以下のようになっています。

基本月額

60歳以上65歳未満の場合

基本月額=加給年金額を除いた特別支給の老齢厚生年金の月額

ここでいう加給年金とは、一定の要件を満たした子供や配偶者がいる場合に追加支給される年金のことをいいます。また、特別支給の老齢厚生年金は老齢厚生年金の支給開始年齢の65歳への引き上げに伴い経過措置として設けられたもので、生年月日と性別で支給開始年齢が決まっていますが、男性は昭和36年4月2日以降、女性は昭和41年4月2日以降生まれの場合、そもそも支給されなくなります。

65歳以上の場合

基本月額=加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額

ただし、公的年金の制度ではなく私的年金の企業年金制度である厚生年金基金に加入していた期間がある場合には、これを除いて算出された老齢厚生年金の年金額をもとに計算します。

総報酬月額相当額

総報酬月額相当額=その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額÷12

標準報酬月額とは、勤務している事業所から支給される基本給のほか役職手当や通勤手当、残業手当といった各種手当を合算した総額を金額によって1等級から31等級に区分し、等級に該当する金額をいいます。

この標準報酬月額は1年間の平均ではなく、各年の4~6月の平均額がその年の9月から1年間適用されます。

また、標準賞与額は税引き前のボーナスなどの賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てたものです。

(5)60歳~64歳の在職老齢年金の計算方法

60歳~64歳の場合、在職老齢年金は基本月額と総報酬月額相当額の関係で以下のように計算します。

月額報酬 支給額
基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円以下の場合 全額支給
基本月額が28万円以下で総報酬月額相当額が46万円以下の場合 基本月額−(総報酬月額相当額+基本月額−28万円)÷2
基本月額が28万円を超え総報酬月額相当額が46万円以下の場合 基本月額−総報酬月額相当額÷2
基本月額が28万円以下で総報酬月額相当額が46万円を超える場合 基本月額−{(46万円+基本月額−28万円)÷2+(総報酬月額相当額−46万円)}
基本月額が28万円超え総報酬月額相当額も46万円超える場合 基本月額−{46万円÷2+(総報酬月額相当額−46万円)}

いずれも、計算後の年金額がマイナスになった場合は老齢厚生年金が全額支給停止となり、加給年金も支給停止となります。

(6)60歳~64歳の在職老齢年金シミュレーション

例えば、60歳~64歳の場合、在職老齢年金によって実際にはどれくらい年金が減額されたり、支給停止になるのでしょうか。

まず、基本月額、総報酬月額相当額がともに10万円の場合を考えてみましょう。この場合、基本月額と総報酬月額相当額の合計は20万円のため、厚生年金は全額支給されます。

では、基本月額10万円、総報酬月額相当額30万円の場合はどうでしょう。この場合は、「基本月額が28万円以下で総報酬月額相当額が46万円以下の場合」に該当します。

そこで、「基本月額−(総報酬月額相当額+基本月額−28万円)÷2」として計算すると、
100,000円−(300,000円+100,000円−280,000円)÷2=60,000
となり、本来の年金額から6万円減額されます。

(7)65歳以上の在職老齢年金の計算方法

次に、65歳以上の場合の在職老齢年金ですが、支給停止となる基準額が異なるため、以下のように計算されます。

月額報酬

支給額
基本月額と総報酬月額相当額の合計額が46万円以下の場合 全額支給
基本月額と総報酬月額相当額の合計額が46万円を超える場合 基本月額−(基本月額+総報酬月額相当額−46万円)÷2

(8)65歳以上の在職老齢年金シミュレーション

65歳以上の在職老齢年金についても、どれくらいの年金が減額されたり、支給停止になるのかみてみましょう。

そこで、基本月額、総報酬月額相当額がともに20万円の場合を考えてみると、60歳~64歳よりも基準額が上昇しているため、基本月額と総報酬月額相当額の合計は46万円以下となり、厚生年金は全額支給されます。

では、次に基本月額10万円、総報酬月額相当額が40万円の場合を考えてみます。「基本月額−(基本月額+総報酬月額相当額−46万円)÷2」に金額を当てはめると、

100,000円−(100,000円+400,000円−460,000円)÷2=80,000

となり、本来の年金額から8万円減額されます。

(9)在職老齢年金の受給対象年齢になったら働かないほうがいいのか

ここまでのように、総報酬月額相当額と基本月額の合計が一定の金額を超えてくると在職老齢年金によって年金が減額され、一見働かないほうがよいようにも感じられます。しかしながら、減額の対象となるのは基準額を超えた金額の半分で、働いたら働いただけ収入は増加し、必ずしも損をするわけではありません。

また、60歳以降の厚生年金の加入期間に関しては、退職あるいは70歳以降の老齢厚生年金額に加算されるため、総報酬月額が増えれば増えるほど加算額も増加します。

ただし、65歳以降に配偶者や子どもを扶養している場合には、在職老齢年金が減額されても加給年金が支給されますが、在職老齢年金が全額支給停止となる場合には加給年金も全額支給停止となるため注意が必要です。

(10)在職老齢年金制度が廃止の可能性も

政府は今年の6月11日に発表した「経済財政の基本方針」で在職老齢年金制度の廃止を打ち出しました。これは早ければ2021年にも廃止されるという見方が有力です。

働く高齢者の年金を減額する「在職老齢年金」が廃止となると、いくら働いても支給年金額が減らないので、今より老後の生活が豊かになるかもしれません。

在職老齢年金制度が廃止となるかどうかこれからの動向をチェックしておきましょう。

(11)在職老齢年金について正しく理解をして、老後の生活設計を立てよう

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/348157

老後の生活設計において、在職老齢年金が減額されない範囲で働くこともひとつの選択肢です。しかしながら、年金が減額されない範囲で働き、かつ生活を充実させるためには、より多くの貯蓄や計画的な資産形成が求められます。

このため、在職老齢年金にとらわれて望まない働き方をしたり、ライフスタイルに制約を受けるのであれば、たとえ年金が減額されたとしても働きたいと思うだけ働き、生活を充実させた方がよいでしょう。それによって働いている期間の収入が増えるだけでなく、その後の年金を増やすことも可能になります。

このため、在職老齢年金の制度については間違った認識をしないことが重要です。

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