介護に関わるすべての人を応援します

端座位で豊かな生活を│正しい座り方の効果と在宅での介助方法

ノウハウ
日常生活において、正しい姿勢で座ることは大切です。端座位(たんざい)で座ることで、食事や入浴、トイレなどの残存機能を維持でき、健康的で豊かな生活を送ることができます。また、端座位介助のポイントは力任せに行うのではなく、テコの原理や福祉用具を適切に使うことです。
公開日
更新日

日常生活において「座る」姿勢を保つことは、基本動作のひとつで食事や入浴、トイレなどにも影響があります。この記事では豊かな生活をおくるために、正しい座り方の効果と在宅の介助方法についてご紹介します。

(1)在宅介護で重視したい「座る」


出典:https://www.photo-ac.com/

動きたくない

高齢になると動くことが億劫になってきます。特に夏の暑い季節と冬の寒い季節は高齢者でなくても動くことが億劫になるので、身体機能が衰えてきている高齢者にはなおさらのことです。

そのなかでも要介護とされる方は、日常生活のひとつひとつにエネルギーを要し、また、転倒などの不安から「できれば動きたくない」と考えがちです。

「助けすぎ」がもたらす落とし穴

在宅介護で家族やヘルパーが介護をする際に、「本人が動くと大変そうだから」、「転んだら大変」、「時間がかかる」ということでなんでも助けてしまうことがあります。良かれと思った手助けでも、

  • 本人の残存機能が衰えてしまう
  • 「動こう」・「自分でやろう」という意欲を失う
  • 廃用症候群のリスクが高まる

ということになりかねません。できることは助けすぎず、本人に動いてもらうことが介護の基本です。

「座る」ことの重要性

座るという行為は、足腰を使った日常生活の基本動作です。座ることが減ると足腰の身体能力が衰え、トイレでの排泄が難しくなりオムツの使用を早めることになります。

また、座る時間が減ることで足腰のバランスが崩れ、他の動作にも影響がでてしまい、寝たきり状態に陥ってしまうこともあります。「座る」という行為はとっても重要です。

(2)正しい姿勢で廃用症候群を防ぐ

廃用症候群

安静に過ごす生活は、転倒のリスクや事故の危険性がなく介護者にとっては安心できますが、できることをさせないことなので身体機能が低下してしまいます。

また、安静に過ごす生活は、本人の面倒でも動こう、自分でやらなきゃという意欲を低下させてしまいます。これらが原因で心身に不調を引き起こす廃用症候群になってしまうことがあります。

心身の不調

廃用症候群による心身の不調には次のようなものがあります。

筋力の低下や関節の拘縮(こうしゅく)

からだを動かさないということは筋肉や関節を使わないことです。筋肉を使わないと、筋肉の量が減少・弱くなり、拘縮(衰えて固くなる)が進んでしまいます。

筋肉が拘縮すると体を動かす際にバランスを保てず、立つ、座るといった基本動作に影響を及ぼしたり、歩行の際に転倒してしまうリスクも高くなってしまいます。

また、骨と骨とのつなぎ目で重要な役割を担っている関節も使わないことになり、関節の変形や痛みなどの原因になります。

心臓や呼吸器、消化器などの機能低下

からだを使わないことで体内の循環器の機能も低下してしまいます。

例えば、心臓の機能が低下することで血液の流れが悪くなり、立ちくらみや失神を起こすことがあります。また、肺の機能が低下することで必要な空気を取り込めず、肺炎を引き起こすこともあります。

その他にも腸の機能が低下すると便秘の原因になる、膀胱の機能が低下して膀胱炎を引き起こすなど、いろいろな病気を引き起こすリスクが高くなります。

脳の機能の低下 

からだを使わないことで、脳の機能も低下してしまいます。例えば、「自分でやろう」という気力や、「○○をしたい」という意欲がなくなったり、満足感や充足感などが満たされず感情が出にくくなります。さらには脳への刺激が減ってしまうことで、認知症のリスクが高くなります。

床ずれ

寝たきりの状態など同じ姿勢が続くと、血流が悪くなるだけでなく、同じ部位に体重の負荷がかかり皮膚が圧迫されたり、擦れたりするので床ずれを引き起こしてしまいます。床ずれが悪化すると皮膚が炎症するだけでなく壊死してしまうこともあります。

心への影響も

廃用症候群の影響は身体機能だけではありません。意欲や気力の低下に加えて、精神的に落ち込んでしまう「うつ」や、ないものが見えてしまう「せん妄」、今いる場所などが分からなくなる「見当識障害」といった精神的な病気を引き起こしてしまうこともあります。

正しい姿勢で座る時間を増やしましょう

廃用症候群の予防だけでなく、介護予防のためにも体を使うことが必要です。寝たきりの状態を減らし、座る時間を増やしましょう。座る際にも正しい姿勢を保つことがポイントです。

正しい姿勢で座ることで筋肉や関節などの運動になり、また、血の巡りや脳への刺激にもなります。さらに、座っている時に家族や介護者がいろいろな話をすることで、気持ちに張り合いが出てきます。

座り方にも様々な種類があります。次の章では日常生活での基本となる端座位についてご紹介します。

(3)端座位とは?

端座位(たんざい)

端座位とは、イスやベッドの端など座りやすい高さの座面に腰かけた姿勢のことです。端座位は座るだけでなく、立ったり、歩くための日常生活の基本となる姿勢になります。

端座位は、リハビリテーションにおいて基本動作のひとつとなる重要な動作です。また、端座位が安定しているかが歩行や更衣、排せつなどADL自立度の指標にもなっています。

その他の座位

端座位の他にも、介護業界で使われる座位があります。

座位 説明

長座位(ちょうざい)

足を伸ばして座っている状態
起座位(きざい) クッションや枕などを抱えて座っている状態
半座位(はんざい) ベッドの背もたれを45度(端座位の半分の斜度)に起こした状態に座っている状態
椅座位(いざい) 椅子に座っている状態
仰臥位(ぎょうがい) 仰向けになって寝ている姿勢

(4)端座位の効果

端座位の姿勢をとること、できるだけ長く保つことは、身体の状態を確認することやケアマネジメントにおける回復状態の指標になるだけでなく、心身において3つの効果を得ることができます。

多くの空気を取り込める

端座位は背中がベッドから離れるため胸部が広がります。胸部が広がることで、寝ているときよりも多くの空気を体内に多く取り込むことができます。

器官の活動が活発になる

多くの空気が取り込めることで、体内の器官を使ってからだの各部位に新鮮な酸素が行いきわたります。このことで体内のいろいろな器官の活動が活発化します。

また、端座位の姿勢になること、端座位の姿勢を保つなど体を使うことは、エネルギーを消費したり筋肉や脳に刺激を与えるので、廃用症候群などの予防にもつながります。

自分で食事をする、排せつをするなど活動の幅が広がる

端座位の姿勢が保てれば自分で食事をすることができます。また、便座に座ることもできるのでトイレに行って排せつをすることもできます。その他にも入浴や着替えなど日常生活での活動の幅が広がります。

活動の幅が広がることで、自分で出来るという自信や、食べたい・入浴したいという意欲なども出てくるのでメンタルの部分でも効果を得ることができます。

(5)端座位の注意点 

介護者は高齢者がしっかりと端座位の姿勢をするためには、殿部、大腿部、足底の3カ所に体重が乗っているかどうかに注意してください。特に足底はしっかり床に着けることが安定するポイントです。その際に、注意したい座り方が「仙骨座り」です。

これは、椅子に浅く座り、腰を曲げて椅子の背もたれによりかかった状態です。この座り方は滑りやすいので危険な座り方です。また、仙骨座りは、背中が丸まった状態なので腰椎の変形、胸部が狭まって呼吸がしにくくなる、褥瘡のリスクが高くなるなど逆効果になるので改善する必要があります。

(6)端座位の介助方法


出典:https://www.irasutoya.com/

この章では、端座位の姿勢をとるための介助方法についてご紹介します。

端座位介助 その1

①説明と同意 

  • はじめに端座位の介助の説明をし、本人の同意を得ます。
  • 本人ができることは介助せずに、なるべく自力で行ってもらいます。
  • 動作ごとに声掛けをします。

②対面側臥位にする

  • 利用者の顔を手前に向けます。
  • 利用者にできるだけ小さく手を組んでもらいます。
  • 利用者の膝を高く立てます。
  • 介護者は利用者の膝と腰に手を置きます。
  • 利用者の膝を先頭にして体全体をゆっくり手前に倒します。

③起き上がり

  • 介護者は両手で利用者の両足を持ち、利用者の足首をベッドサイドから出します。
  • 介護者の両手を利用者の肩甲骨の下に、もう片方の手で利用者の膝を上からしっかり押しつけます。
  • 介護者は両足を開いて、利用者の足元を向いて立ちます。
  • 利用者に近づいたまま、体重移動によって腰で起こします。(腕の力で無理に引き起こすのではなく、テコの原理を使います)
  • しっかりとベッド端座位になって、安定していることを確認します。  

端座位介助 その2

①説明と同意 

  • はじめに端座位の介助の説明をし、本人の同意を得ます。
  • 本人ができることは介助せずに、なるべく自力で行ってもらいます。
  • 動作ごとに声掛けをします。

②ベッドで起き上がる

  • 介護者は両手で利用者の頭を持ち上げます。その状態で片手を肩甲骨の下に入れます。
  • 介護者の肘をテコの原理で大きなカーブを描きながら立てます。そのときに利用者の肘をすこし体から離して開き、肘に体重をかけるようにするのがポイントです。

③端座位にする

  • 介護者は肩甲骨を支えている手を絶対に外さないでください。
  • もう片方の手で、利用者の腕をなるべく小さく組ませます。
  • 手を組ませたら、次に介護者の手を利用者の膝下に入れて、でん部を支点にして回転させます。
  • 端座位が出来たら、しっかり安定していることを確認してください。

(7)介護者が腰を痛めないために  

端座位の介助をする際に介護者が気をつけたい重要なポイントがあります。それは介護者自身が腰を痛めないようにすることです。実は介護者の9割が腰痛を発症し、約3割が腰痛で作業に影響があるという調査結果があります。

高齢者の中には介護者よりも体重がある場合があり、その高齢者を引き上げるのでかなり腰に負担がかかります。この章では介護者が腰を痛めないためのポイントをご紹介します。

出典:社会福祉施設の介護職職員における腰痛の実態調査、画像診断と予防対策係る研究・開発、普及

準備運動

引き起こしは重労働なので、怪我の予防のために、しっかり準備運動をしましょう。特に朝や寒い日は体の筋肉が固くなっているので、腰だけでなく肩や足、腕などをしっかりストレッチすることをお勧めします。

力任せにやらない

一見、自分よりも軽そうに見える高齢者でも、からだを引き起こす作業は重労働です。また、介護される高齢者も力任せの介護は痛みを感じたり、不安になってしまいます。引き起こしは「力」ではなく「テコの原理」を使って行いましょう。

利用者に小さくなってもらう

利用者とベッドが接している部分が広いと、その分摩擦が起きるので介助が大変になります。利用者に腕を組んでもらったり、膝を高く上げてもらうなどできるだけ小さくなってもらうことでベッドとの接している面積が小さくなり、摩擦が減り、介助の負担が減ります。

介護者の重心を下げる

介護に関わらず、腰を伸ばした状態で重たい物を引き上げようとしたり、無理な姿勢で自身のからだを曲げたり、ねじったりすると腰やひざなどを痛めることがあります。

介護者はやや広めに脚を広げ、膝を少し曲げ、腰を落とした状態で介助をすることをお勧めします。この姿勢は重心を下げた状態なので、踏ん張りやすく、バランスを保つことができ、腰痛のリスクが軽減できます。

福祉用具を使う

最近では介護用品のバリエーションが増え、介護者をサポートする福祉用具も種類が増えています。介護用品であれば、介護保険制度によりレンタルする方法と購入する方法があります。引き起こしに使う福祉用具の一例をご紹介します。

体位変換機

利用者の身体の下に入れて体位返還したり、引き起こしなどに使う福祉用具です。空気圧を利用したタイプなどがあります。

体位返還機能付きマットレス

自動で体位変換するマットレスです。

ケアマネジャーやお近くの福祉用具ショップに相談してみてください。

(8)端座位が不安定な場合の対処法① ベッドの高さを調節する

出典・引用: 独立行政法人 福祉医療機構『福祉用具貸与』
 

端座位の姿勢をとってもらったものの、不安定な場合があります。その場合、次の3つの解決方法があります。

端座位の姿勢が安定しない場合、まず確認したいのがベッドの高さです。足が浮いているとバランスをうまく保てないことがあります。ベッドの高さの目安は、本人の身長の4分の1程度です。ベッドの高さを調節して、しっかり足を床に着けましょう。

(9)端座位が不安定な場合の対処法② 滑り止めマットを敷く

端座位の姿勢が安定しないときの対処法2つ目は、滑り止めマットを足元に敷くことです。足が床に着いていても滑る状態では姿勢が安定しません。マットは滑り止め機能がある方がベストですが、普通のマットを使う場合は、両面テープなどでしっかり固定してください。

(10)端座位が不安定な場合の対処法③ ベッド移乗バーを設置する 

端座位が不安定な場合の対処法3つめは、ベッドに移乗バー(柵)を設置する方法があります。

移乗バーにもいろいろな種類があり、固定された柵や一部が開閉できるタイプ、ベッドから前に立ち上がる時に使いやすいL字型のもの、3種類の高さのバーがはしご状になっているものなど、目的によって選ぶことができます。

端座位保持テーブルを使う

ベッドなどで端座位を保つのが難しい場合は、端座位保持テーブルを使う方法もあります。

端座位保持テーブルは、椅子の背面にベルトがついているので上半身が前傾姿勢になるのを防ぎます。また、テーブルが付いており、テーブルに手を置いてバランスをとることもできます。

(11)補助器具のレンタルには介護保険が利用できる

移乗を楽にする移乗バーや、保持テーブルなどの補助器具をレンタルする場合は、介護保険制度が利用できます。介護保険を利用してレンタルすれば、原則1割負担(所得によっては2割、3割負担の場合もあります)で利用することができます。

レンタルする場合の自己負担割合(1~3割)や、具体的な料金、介護保険が適用する補助器具などは、ケアマネジャーやお近くの福祉用具ショップに相談してみてください。

(12)端座位で座る時間を増やして豊かな生活を送りましょう 


出典:https://www.pakutaso.com/
 

端座位は、残存機能を維持することで介護予防になります。また、筋肉をつけて自分の力で起き上がることができるようになるため、自身で食事や入浴、トレイ、着替えなど「自分のことを自分でやれる」ようになります。体だけでなく、精神的にも良い効果が得られるでしょう。

端座位は生活の質を向上する要となる姿勢です。正しい姿勢で座る時間を増やし、豊かな生活を送りましょう。

この記事が気に入ったら
いいねしよう!