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摘便をうまくやるコツは?準備するもの・手順・注意点を徹底解説

ノウハウ
摘便とは、自然排便が行えない方の肛門に直接指を入れて排便を促す医療行為です。摘便により排便することが出来ても、直接肛門に指を入れることにより肛門を傷つけるリスクも伴うため、摘便を行う前に知識をつけておくことが重要です。摘便の方法とコツ、事前準備、摘便のリスクと注意点を解説します。
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更新日

(1)摘便とは

自然排便が困難な人の排泄を手助けする医療行為のこと

硬い便がちょうど蓋の様に排便の邪魔になっている状態を「便秘」と言います。便秘状態の人は、一定の期間排便が止まるものの、下剤などを使えば自然排便が行えるようになるので、大きな問題となることもありません。

しかし、高齢者の方ほど、便秘になるケースが多く、更に寝たきり等で自然排便が行えなくなる状態になりがちです。勿論、そういった高齢者であっても下剤を使うケースがありますが、副作用が指摘される事もあるので、やはり自然排便のほうが身体的には良いと言えます。

こういった自然排便が難しい人のために、「便を取り出して」あげる医療行為の事を「摘便」と言うのです。大抵の場合、硬い便が蓋になって自然排便の邪魔になっているケースが殆どなので、硬い便を取り除く行為を「摘便」と言ってもいいでしょう。

在宅介護の場合、家族が摘便するケースもありますが、介護者・被介護者ともに身体的・精神的負担が大きい作業なので、無理に行わずに訪問看護サービスなどを利用してみてください。

(2)摘便が必要な人は?

先述したように、「摘便」を行うケースは、主に自然排便が行えない人に行われる行為です。概ね何らかの要因で便秘になっている時に用いられますが、傾向として便秘になりやすく、自然排便が困難になりがちな高齢者において「摘便」が行われるケースが多いようです。

「摘便」を行うと、硬い便の上側に詰まっている柔らかい便が排出されるので、身体的にかなり楽になります。なお「摘便」は、高齢者の他に以下の様なケースでも用いられています。

「摘便」が用いられるケース

  • いわゆる便秘状態にあって自然排便が困難な人
  • 浣腸などを行っても排便が行えない人
  • 何らかの理由で腹圧がかけられない人
  • 脊損や直腸機能に障害がある人

(3)摘便ケアの前に準備する物品

出典:https://www.photo-ac.com/

摘便は、肛門に直接指などを入れて便を取り出す行為なので、ケアをする際には事前に準備をする必要があります。肛門は排泄する部位なので汚れている部位ですが、同時にデリケートな部位でもあるので、摘便中は勿論摘便後も清潔にしておく必要があるのです。

摘便ケアをする際に必要な物品

  • カーゼ等柔らかく清潔な布
  • ぬるま湯(ケア後の洗浄用)
  • 石鹸(ケア後の洗浄用)
  • 潤滑油(オリーブ油、ワセリン等)
  • ディスポーザブル手袋等のゴム手袋
  • ケア用のシーツ
  • バスタオル
  • ビニール袋
  • トイレットペーパー
  • マスク
  • ビニールエプロン

その他、便器、紙おむつ、尿瓶、尿とりパッドも必要に応じて用意しておくと良いでしょう。

(4)ケアする側の準備

摘便を行うには、まずは患者への説明が必要になります。患者の心身ともに苦痛を伴う行為なので、しっかりと説明を行いましょう。

また、摘便は指を直接肛門に入れる行為なので、ケアする側もしっかりとした準備が求められます。

摘便ケアする側の準備

  • 患者に摘便の必要性及び方法を説明する。ケアは1人で行うよりも、摘便ケアと腹部マッサージを行える様に、なるべく2人で行うことが理想的。
  • 痔等肛門や直腸に疾患があるかないかを確認する(何らかの疾患がある場合は、出血するリスクがあるので摘便ケアは避ける)。
  • ディスポーザブル手袋等のゴム手袋に加え、マスク、ビニールエプロンで感染対策を行う。
  • 手袋は二重にしするようにし、汚染対策を講じておく(手袋の破損及び怪我防止のため爪が伸びていないかも確認)

(5)患者側の準備

患者への説明が終わった後は、患者側の摘便ケアの準備を行います。

患者側の摘便ケアの準備

  • 室内の温度・換気を調整し、プライバシー保護のためにカーテンを閉める。
  • 患者を横向きの体勢(左側臥位)にし、排便しやすい様に膝少し曲げてもらう。
  • 下着等を降ろし臀部を露出させる。なお、無用な露出を避けるためバスタオル等で臀部以外を隠す。
  • 臀部の下にケアシーツやおむつを敷く。

なお、摘便ケアを行い際、腹部マッサージを行うので、患者が排尿する事があります。そのため、尿瓶や尿とりパッド等を用意しておくと、排尿による汚染や患者の罪悪感を緩和することが出来ます。

(6)摘便する際の適切な体位は?

正しい姿勢で摘便をしないと患者の負担になるのでしっかりと確認しましょう。

摘便の適切な体位は「側臥位でお尻を突き出してもらう態勢」です。

横向きに寝ている状態(側臥位)で膝を軽く曲げ、お尻を突き出してもらいます。その時、膝はくっついた状態にしてください。適切な高さの枕を使うと患者さんの頭が浮かないようにになり、また余計な力が抜けて肛門が緩むため、スムーズに摘便することができます。

患者に負担が少ない、正しい体位で摘便をするには介護者や施設スタッフが正しい側臥位の取り方・体位変換の方法を知っている必要があります。こちらもあわせて確認しておきましょう。

https://1682-kaigo.jp/article/000550

(7)摘便ケアの手順

患者側は摘便ケアの事をよく知らないので、手順ごとに説明を行いつつ、無用な不安を抱かないような配慮をしてあげましょう。また、肛門に直接指を入れる行為なので、痛み等を確認しつつ行うと、スムーズに摘便ケアが行えます。

摘便ケアの手順

  1. 潤滑剤を指(人差し指)に取り、肛門周辺に塗布する
  2. 肛門の筋肉を緩ませるために患者に口呼吸してもらう。
  3. 肛門周辺をマッサージし、患者に声を掛けながらゆっくりと指を挿入する。
  4. 指で便を有無と固さを確認する。
  5. 指でゆっくりと「の」の字を描く様に便を掻き出していく。
  6. 掻き出した便をビニール袋に処理し、排便した便の性状(異常の有無等)を確認する。
  7. 自然排便及び指に便が触れなくなるまで摘便を行う。またその際は適時潤滑剤を塗布しながら行う。
  8. 便の排出が終れば、臀部を清掃して患者の衣類・寝具を整えて終了。
  9. 摘便ケア後の患者のフィジカルアセスメントを行う。なお、大量排便すると血圧が下がる事があるので注意。

(8)便が固い場合の摘便のコツ

便が硬い場合は、無理に掻き出そうとすると腸粘膜や肛門を傷つけてしまう可能性があります。

また、硬い便を一度に掻き出そうとすると、疼痛を伴うのでスムーズな摘便ケアが行えなくなってしまいます。ですから便が硬い場合は、まず硬い便を指で細かく潰して、小さい塊の便にしてから掻き出す様にすると、痛みを緩和することが可能です。

(9)便が柔らかい場合の摘便のコツ

便が柔らかい場合は、指の腹を直腸壁に沿わせながら回転して刺激をするとスムーズに摘便が行えます。ただ、柔らかい便の場合、摘便だけだとしっかりと排便が行えない場合があるので、マッサージなどを重点的に行うと効果的です。

柔らかい便の摘便のコツ

  • 腹部をマッサージしながら指で掻き出し、途切れたら再びマッサージを行って便を降ろしながら掻き出す。
  • ぬるま湯で肛門を刺激したり、蒸しタオルでお腹を温めながら腹部マッサージを行う。
  • 完全に排便が行えない場合は、指示を仰ぎつつ浣腸を行う。

(10)摘便ケアで注意すること

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1564944

摘便ケアは、見た目以上に患者に負担が大きい行為なので、以下の様な配慮が欠かせません。

無理に行わない

便の性状によっては、指で掻き出すのが難しくなります。

また、10分を超える摘便ケアは、羞恥心と共に患者の苦痛を増加させてしまうので、すばやく済ませる事が求められます。短時間で無理の無い摘便ケアが行える様に、便の性状に併せたケアをする必要があります。特に、腸や肛門を損傷させないような配慮は欠かせません。

摘便ケアの時間

スムーズな摘便ケアが行えるように、腸の動きが活発になりやすい食後1時間にすると効果的です。

場合によっては浣腸も有効

摘便ケアは、直接指で便を掻き出す行為です。したがって、指で触れられない範囲(肛門から4cm以上の場所)にある便では、処置を行うことができなくなってしまいます。

こういった場合は、摘便ケアをする前に浣腸することでスムーズに摘便ケアを行うことが出来ます。

しかし、この時に直腸を損傷するとグリセリンが傷口に入り込んで、大きな事故に繋がる可能性があるので、適切な方法で摘便ケアをする事が求められます。

(11)注意点をしっかり把握して安全に摘便ケアをおこなおう

摘便ケアを行う際には、本当であれば事前にレントゲンを撮影し、どのくらいの便がどの位置にあるのか把握して行うことが理想的です。しかしながら、現在の医療・介護の現場においては、レントゲンを経て摘便ケアを行うのは難しいのが現状です。

逆に言ってしまえば、摘便ケアにはそれほどのリスクが伴い、処置中には慎重さが求められるということです。事実、ケアによって直腸や肛門を傷つけることがあるので、処置する場合は注意点をしっかり把握して安全に摘便ケアを行うようにする必要があるでしょう。

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