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音楽で認知症を改善?介護現場で使われる音楽療法の世界

ノウハウ
「音楽療法」という言葉自体を聞いた事がある人は少なくはないでしょう。それが、なんとなく認知症高齢者にとっていいものであるということを認識している人は多いとは思いますが、具体的には何をして、どんな効果が期待できるはあまり知られていません。音楽療法はまだまだこれからの研究に期待されるテーマではありますが、現時点でわかっていることをまとめ、どのような効果が期待できるのかを理解することで介護の現場で役立つ技術として提供できます。人は古くから音楽の力を信奉し、音楽とともに歩んできたと言っても過言ではありません。そして、クラッシックだけでなく、様々なジャンルの音楽を聴くことで起こる精神的・身体的効果が挙がっています。今回は介護の現場で簡単に行える音楽療法も含めて手法と効果をご紹介します。
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(1)音楽療法とは

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1894058

音楽療法とは、対象となる人の精神、健康などの治療や安定を音楽を用いて行う手段です。この技術を専門とした音楽療法士という職業もあり、その効果は徐々に知られる様になってきています。音楽療法を知る前に、音楽そのものにはどのような効果があるのか少し触れておきましょう。

音楽療法の効果

気持ちを落ち着かせる

まず音楽には人の心を落ち着かせる効果があります。ヒーリングミュージックなどはその良い例です。柔らかいハープの音色や小鳥のさえずり、川のせせらぎの音を取り込んだ音色は、それを聴く多くの人の心を鎮め、リラックスへと導きます。

しかし人の心を落ち着かせるのは、そのようなあからさまなヒーリングミュージックばかりではありません。車の中や自宅でなんとなく音楽をかけている人も少なくはないと思いますが、あの時かけている音楽にも人の気持ちを落ち着ける効果があります。

活動的にさせる

音楽は聴く人の気分を高揚させ、活動的にする効果があります。例えば運動会などでよくかかるテンポの速い曲を聞くと、なんとなく気分が上がる人は少なくはないでしょう。ノリノリのクラブミュージックを聴きながら掃除をしたり、好きなアーティストの曲を聴きながら仕事をするとはかどるという人もいるのではないでしょうか。実際にうつなどの精神障害の人相手にも音楽療法は用いられ、その効果を得ています。

心を乱し、気分を悪くさせる

音楽は実は良い効果ばかりではなく、悪影響を及ぼすこともあります。例えば静かな音楽が好きな人がヘビーメタルを聴きながらくつろぐ事ができるでしょうか?パーティー会場で念仏のような曲がかかっていたら盛り上がるでしょうか?このように場にそぐわない音楽や趣味に合わない音楽は、人に対してストレスを与える要因にもなります。

そのような音楽は人の集中力を奪ったりして物事の効率を悪くさせたり、場合によっては頭痛などを生じさせたり、睡眠障害などにつながることもあります。

(2)音楽が認知症の人に与える影響

音楽は脳に刺激を与え、そこからさらに様々な感情を生じさせます。過去の思い出を引き出してみたり、楽しい気分を引き出したりするトリガーとなると言われています。これらのことから認知症高齢者にも音楽は様々な効果があります。

脳に刺激を与え、周辺症状を和らげる

認知症高齢者の暴言や暴力、不潔行為などといった周辺症状は、脳の器質的な変質などによって生じる中核症状がその大元の原因です。中核症状を抑える事ができれば、それに合わせて周辺症状も落ち着くはずですが、残念ながらそのために必要な脳の外科的手術は現代の医学では難しいとされています。しかし、脳には失われた部分の機能を他の部分が代わりに担う能力がありますので、その他の部分を活性化させれば、ある程度脳の機能を回復させて周辺症状を和らげる事が可能です。

音楽療法では音楽を聴く、演奏する、歌う、踊る、と脳の多くの部分を使って脳を刺激します。結果として脳の活性化に繋がり、周辺症状の緩和に繋がります。

精神的なゆとりができる

認知症高齢者は多くの不安の中で生活しています。今までできていた事ができなくなったり、周囲と物事の認識が明らかに違っていたりと、精神的な苦痛がさらに周辺症状を増強してしまうこともあります。しかし認知症であっても過去の記憶は薄れていない事が多いので、懐かしい曲などを聴くと当時を思い出して楽しい気分になったり、落ち着いた気持ちを作り出す事ができます。

活動意欲が生まれる

認知症になると、脳の機能低下により周囲への関心が薄れてしまう事があり、活動意欲が著しく減退する事がよくあります。音楽には前述した通り人の気持ちを高揚させ活動的にする効果がありますので、対象となる認知症高齢者が昔好きだったアーティストの曲や、祭りの定番曲などを用いることで活動意欲を湧き立たせる事ができます。

夜間の不安がおさまり、ぐっすり眠れる

認知症の方には昼夜逆転傾向にある人や、夜中のちょっとした物音が気になって眠れないという人がいます。音楽には雰囲気を作り出したり、リラクゼーション効果がありますので、そのような場合は夜中に小さな音で音楽をかけていると熟睡してくれることもあります。

(3)介護現場ではどのような形で音楽療法を取り入れるといいの?

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/333092

介護現場で上記のような音楽の効果を利用したい場合、どの様な形でそれを取り入れているのでしょうか。レクリエーションの一環として取り組めるものをいくつか挙げてみましょう。

バンド

高齢者の方の中には様々な楽器を演奏できる方がいます。三味線や琴、ギターなど、普段はあまりその様な話をしないだけで、お願いするとまだまだ上手に弾ける方は少なくありません。その様な人を集めてバンドを組んで、月に一回演奏会をすると、聞く側も演奏する側もよい刺激が与えられます。メンバーは何も利用者に限定する必要はなく、スタッフなどが加わるのもアリです。

演奏会

バンドという形ではなくても、簡単に演奏できる楽器を使って即興で演奏会なども出来ます。歌に合わせてハンドベルやカスタネット、トライアングルなどを鳴らすだけでも歌に能動的に参加している意識を与え、満足感が得られやすくなります。

音楽鑑賞

普段はなかなか聴く事がなく、なおかつ皆が好きな曲を選んで掛けてみましょう。ただ聴くだけではなく、それにまつわるストーリーや制作秘話など、上手な司会進行も加えると更に音楽鑑賞を楽しむ事が出来ます。映像もあると尚効果的です。

BGM

事あることにBGMとして音楽を活用してみましょう。例えば朝の体操の時に必ずかける音楽や、レクリエーションが終わった時にかける音楽など、シチュエーション毎に音楽を決めておくと気持ちの切り替えがうまくいく様になり、生活にリズムを作り出しやすくなります。

合唱

皆で歌を歌うことは精神的なストレス解消の他に、肺活量を高めたりなどの効果もあります。大勢で一気に歌うのもいいですが、それだと声を積極的に出さない人も出てきてしまいます。3?5人のグループに分けて、歌う部分を決めておくと皆が積極的に声を出してくれやすくなります。

カラオケ

カラオケは利用者にとっての十八番を皆に聴いてもらえる、ある意味自己表現としても効果的な方法です。ストレス解消や肺活量の強化、積極性の向上などの効果が見込めます。

(4)まとめ

音楽療法士が行う音楽療法は流れも重要とされますので、厳密にプログラムを組んで行われます。

しかしその様に流れをしっかり決めてしまわなくても、音楽やそれに関連した動作などそのものに十分期待できるだけの効果があります。効果さえ見込めればそれだって立派な音楽療法です。まずは今回紹介した中から出来そうなものから取り入れてみて、ますます興味を持てる様になってきたら司会や演出、個々の能力に合わせたプログラムなどにも力を入れてみてはいかがでしょうか。

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