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連載 #6 【大子清流高校 福祉系列】密度の濃い指導で、温かな介護士を育てる

介護士
大子町を流れる久慈川にちなみ「清廉な人物」を育成したいと名付けられた大子清流高校。高齢化社会のニーズに対応した科目を学べる福祉系列があり、介護士を目指して生徒たちが学んでいます。 介護福祉に特化した清流高校ならではのカリキュラムとはどういったものでしょうか。介護士になるために生徒たちは実際どういったことを学び、卒業後はどんな仕事をしているのでしょうか。 福祉系列教諭の渡邊 絵美子(わたなべ・えみこ)さんと、常陸大宮市の特別養護老人ホーム「 御前山フロイデガルテン」に介護士として勤める卒業生の大賀美咲(おおが・みさき)さんにお話を伺いました。
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(1)少人数ならではの密度の濃い指導

- 大子清流高校福祉系列は生徒より先生が多いと聞きましたが。

渡邊先生 本校の特徴は「生徒の多様性に応える学校」であると言えますが、多様な学びを実現する二つの学科「農林科学科」と「総合学科」があります。2021年度の生徒数は162名で半数以上は「総合学科」に所属しています。「総合学科」では、1年次に全員共通の授業を受け、2年次以降は進路希望に応じて「人文科学系列(文系)」、「自然科学系列(理系)」、「福祉系列」から一つを選択します。

福祉系列では2年次3名、3年次2名の計5名の生徒が福祉の専門職になるべく学んでいます。福祉系列の職員は4名おり、非常勤講師までいれれば生徒より多いくらいですから、生徒たちはいやでも教師の目がばっちり行き届いた環境で2年間、介護について真剣に学ぶことになります。

大賀さん その生徒より先生が多いというのが、大子清流高校福祉系列のよさです。確かに何をするにも先生に見られているので、サボったりはできませんが、先生との距離が近いので、分からないことがあればすぐに聞けますし、人間対人間の本気の付き合いが先生とできるようになります。

熱い先生方による密度の濃い授業を受けながらの高校生活は、何物にも代えがたいよい思い出です。私は介護士になって今年で4年目ですが、高校時代に学んだことは日々役に立っています。

大子清流高校 福祉系列教諭の渡邊さん

- どんなタイプの生徒が福祉系列を選択していますか。

渡邊先生 1年次の時にガイダンス的授業を2回行います。1回目は福祉に興味を持ってもらうことを目的に、福祉の楽しさを体験できる和気あいあいとした授業にしています。2回目は現実路線といいますか、実際に勉強することや実習内容などを詳しく説明し、人の命の大切さとそれを担うことの責任の重さを理解してもらうようにします。やっぱり介護の仕事は厳しいですから、それを理解した上で進みたいっていう子でないとなかなか続きませんから。

毎年だいたい1回目では5,6人くらい希望者がいますが、2回目が終わると2,3人程度に減ります。「お母さんみたいな介護士になりたい」、「介護施設に入っているおばあちゃんの手助けをしたい」など、身近で介護と接している子は目標も具体的ですし、ブレませんね。

在校生の川上さん(左)藤田さん(右) 好きな科目は「医療的ケア」。座学の授業は少し苦手。

- 福祉系列として今一番注力しているカリキュラムは何でしょうか?

渡邊先生 在学中に実務者研修修了を目指します。資格がなくても介護施設では働けますが、資格がある方のほうが専門性が高い仕事ができたり、資格手当などで給与が高くなったりします。

介護福祉士国家試験は実務者研修を修了していないと受験できず、研修費用は地域や施設によって違いますが、だいたい10万円程度はかかりますね。その費用がかからず、高校卒業時には実務者研修を修了しますので、無駄なくキャリアが築けます。

介護福祉の現場において即戦力として働くことができるよう、実務者研修では普段以上に生徒の動きを細かくチェックし、接遇、技術、礼儀、すべてにパーフェクトな介護士を育成すべく指導しています。

(2)高校生活で身につけたバランス力

- そういった指導を受けた後に現場で働いてみて、一番役立ったと思う授業は?

大賀さん 在学時には実践に役立つ実習授業の方が面白く、座って聞くだけの講義は眠くなってしまうこともあり、座学には力を入れていませんでした(笑)。ですが、現場に出てしまうと現場仕事ばかりで講義を聴く機会はほとんどありませんので、今から思えばもう少し座学をきちんとやっておけばよかったなと思います。

現場で一番必要だなと思っているのは、身体的にも精神的にも広い視野を持っていることで、そのためには、適度を見極めるバランス力が必要だと思っています。

例えば広いフロアで食事をとる場合、自分で食べられる方から介助が必要な方まで、いろいろな方がいます。その時に目の前の介助が必要な方だけを見ているのではなく、振り返って後ろも見て、全体を見ることが必要なんです。自力で食べられるから大丈夫だと思っていた後ろの人が、ひょっとしたら喉をつまらせている可能性もありますので。目の前の介助が必要な人と全体を見る、その割合をどのくらいにするかというバランス感覚ですね。

また、人に寄り添う仕事ですので、利用者さんとそのご家族の気持ちを理解して、その立場になって動くようにしています。ですが、気持ちを入れすぎてしまうとまた、それはそれでまた難しくなりますので、介護士には気持ちのバランスを保つ力がとても必要とされます。そういったバランス力を養うことも高校時代に教えてもらいました。

当時も生徒4人で先生と同じ人数でしたので、少人数ならでは「ガチ」の指導が行われていました(笑)。先生と生徒という関係ではなく、人間対人間として、本気でぶつかり合う濃い指導です。泣いたり、泣かせたり、先生との「ガチ」の付き合いから、人間として成長していく上で欠かせない基礎みたいなものを学ばせてもらいました。

その経験が今、仕事だけに限らず何に対しても役立っています。今でも、渡邊先生にはいろいろと相談に乗ってもらっています。先生、ありがとうございます!

卒業後も交流がある渡邊先生と大賀さん

(3)介護とは人に寄り添って支援すること

- なるほど、少人数ならではの濃い授業が大賀さんのような「ガチ」な介護士の育成につながるのですね。介護士としてどんな時に仕事のやりがいを感じていますか?

大賀さん 勤めている施設では要介護3以上の方々がいらっしゃるのですが、意思疎通が難しいおじいちゃんおばあちゃんが、表情で笑っているのを感じる時がすごく嬉しいです。

私が箒を持って虫を追い払ったりしていると、よくそんな表情というか雰囲気を感じますね。「笑ってもらえるんだったら、何でもしちゃうから!」って、廊下の向こうまで虫を追いかけ回したり、やりすぎになってしまうことも時々ありますけど(笑)。

私は元々おしゃべりなので、リアクションがなくても話を続けるのは苦じゃないんですが、意思疎通ができなくても、おじいちゃんおばあちゃんが私の話を聞いてくれているのが分かります。顔を見てればよく分かります。

お看取りはもう何回もしました。目の前でおじいちゃんやおばあちゃんの呼吸が止まっていく様子を見ながら、「苦しくなくてよかったね」「最後においしくごはんが食べれてよかったね」「髪の毛きれいにしておいてよかったね」とかそういうことを話しかけて、だんだん安らかな顔になっていく方々をよい表情でお看取りできるようにしています。

できたら笑顔でお見送りできたら、とは思っているんですが、この人の最後の瞬間に立ち会ってるんだなと思うと、やっぱり涙が出ちゃうんですよね。だから、今のところは、あんまりうまくはできてませんけど…。

お看取りするたびに、この人への関わり方はこれでよかったのかな?これでこの人は嬉しかったのかな?っていつも思います。答えのない問題にいつも向かい合わなければなりませんが、利用者さんが嬉しいと感じてくれることは何だろう、そのために私ができることをやっぱり一生懸命やろうと思っています。

卒業生の大賀さん

- 介護とは人の人生に寄り添って支援することなんですね。看取りケアという言葉も最近は聞かれるようになりましたね。

渡邊先生 高齢化が進む日本では看取りケアの重要度が年々増してきています。人生の最期を迎える方に寄り添い、支える終末期ケアのスペシャリストとして「終末期ケア専門士」という民間資格も2020年度より新設されました。

人の最期に寄り添うには医療的な技術だけでなく、人としての高いスキルが求められます。負担も大きくて、難しい仕事ではありますが、やりがいも感じられる仕事です。

大子町は高齢化率が45%を超えていますので、看取りケアができる人材の育成がますます必要とされています。大賀さんのような、温かみがあって優秀な介護士を今後とも育てていくべく、いっそう努めていきたいと思っています。

(4)人生について学べ、自分自身を成長させてくれる介護の仕事

- 最後に、介護・福祉職を目指す人にメッセージをお願いします。

渡邊先生 介護福祉は本当に楽しく、魅力あふれる仕事です。利用者さんの生活をサポートする中で人生について学べ、自分自身が成長できます。先入観や偏見という壁を越えて、介護の楽しさを感じてみてほしいですね。

介護に興味がある方、介護士を目指している方はぜひ、大子清流高校福祉系列に来てください。一緒に学びましょう!

大賀さん 介護職は体力的にも精神的にもきつい面がありますが、利用者さんとそのご家族からもらえる「ありがとう」の言葉が活力になります。介護をしている私たちの方が、利用者さんから元気をもらえる時もあり、やりがいのある仕事です。

人が好きな方、私みたいにおしゃべり好きな人には向いていると思います。そこの中学生のキミ!ぜひ清流高校福祉系列で学んで、私と一緒に介護をやりましょう!

ライター

 林ぶんこ

7年の愛媛・宇和島生活を終え、2021年より横浜に戻ってきたフリーライター。Webメディアや企業誌を中心に活動中。

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