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連載 #2【介護×DXの先駆者に】住民とともに高齢化問題に取り組む大子町福祉課の挑戦

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連載記事 #1に引き続き「介護×DX」という全国的に見ても先進的な取り組みを行っている茨城県大子町を取り上げます。町の高齢化率が45%と、人材不足への対策がいち早く求められる中、ベンチャー企業とともに介護現場へのDX導入のプロジェクトを進めています。町が指揮をとりながら、事業所とどのように共同して新しいプロジェクトを進めてきたのか、前回に引き続きプロジェクトを最前線で行ってきた町の職員である神長さんに伺いました。
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(1)「介護×DX」-大子町が取り組む最先端の事業とは

茨城県大子町は茨城県北部にある町です。都心から直線距離で130㎞とほど近く、景勝地としても知られています。

トップページ | 大子町公式ホームページ

大子町は現在、深刻な少子高齢化の問題を抱えており、高齢化率が45%と県内ナンバーワンの数字です。2025年には、2人に1人が高齢者になると推測されており、介護事業所の人員不足が課題です。

大子町では2021年4月から、福祉課が中心となって介護事業所にDXを導入しています。

このプロジェクトは、2020年10月に開催された、関東経済産業局のガバメントピッチ*によって実現しました。大子町は6社のベンチャー企業と連携し、システムを導入している段階です。

高齢化や介護の問題に対して、福祉課だけでなく、ベンチャー企業・介護施設と連携して対処することで、新たな取り組み(DX)を導入し、事業所の問題を解決・町の強みにしていきたいと考えています。

今回は、大子町役場の神長さんにインタビューを実施し、大子町のDXについて話を聞きました。

*ガバメントピッチ…「超高齢社会における自治体が抱える地域課題やニーズをヘルスケアベンチャー向けに発表するという経済産業省 関東経済産業局が主催したイベント」

「ガバメントピッチ」を通じ、自治体×ヘルスケアベンチャーのマッチングが成立しました | 経済産業省 関東経済産業局

大子町×介護事業所×ベンチャー企業 | 介護職の人材不足の軽減とイメージアップを

プロジェクトの構想は主に2つあります。

一つ目に、介護事業所の業務効率化や生産性の向上だけでなく、介護職のイメージアップにつなげること。

二つ目に、介護職はきつい、大変というマイナスイメージがあると思われがちですが、DXを促進することで働く人たちのモチベーションアップや、介護職に対するイメージアップにつながるような取り組みを行うこと。

そのために、介護施設にDX導入を推進しています。

‐介護施設へのICTの導入を、町が指揮を執るのはなぜですか?

ICTを導入したり、DX化を進めたりすることは、たとえ必要だと思っても事業所が独自に進めるのは難しいとわかったからです。

事業所の持っている人手不足への危機感は、そもそもすぐに解決できるものではありません。人手不足の部分をDX、ITを活用し、ほかではやっていない新しい取り組みになることを理解してもらうことが大事になってくると思います。

福祉課では、町と事業所、ベンチャー企業が一緒になってDXを導入する仕組みづくりを行っています。

(2)DX導入で介護人材の不足を解消 | 現場と一致団結

行政が介護事業所の経営支援という新しい視点を

‐大子町はなぜ、DXを導入したのですか?

介護保険の8期計画策定*の際に介護事業所様に実施したアンケート結果から、介護現場の人材不足の深刻さが明らかになりました。

それまで、行政には介護事業所の経営支援という観点がありませんでしたが、その必要性を痛感したと同時に、介護事業所も行政にそれを求めていることが分かりました。

事業所でも、深刻な人手不足、かつ職員の高齢化が問題として挙がっており、地元で介護士として就職する若者も少ないため、どんどん人材が不足していってしまうという問題意識を共有していると思います。

* 8期計画策定…「2025年を目指した地域包括ケアシステムの整備、更に現役世代が急減する2040年の双方を念頭に、高齢者人口や介護サービスのニーズを中長期的に見据える計画のこと。各都道府県及び市町村は、基本指針に即して、3年を一期として計画を定めている」

基本指針について | 厚生労働省

DX導入のために現場の生の声を

DXを導入するにあたって、まずは介護施設に直接出向き、経営者の方などから話を聞きました。また、大子町内で福祉科を持つ高校である清流高校のOBで現在町内の介護事業所で働く方や、清流高校の先生からも話を聞きました。

清流高校*の卒業生は、多くが町外に就職してしまっていることが分かりました。介護事業所に実習にいった際に、町内の事業所よりも町外の事業所の方が魅力的で、卒業後町外に出てしまう高校生が多くなっている現状があるそうです。

そのため、大子町で就職してもらうためには、「大子町の施設の魅力を向上させる」ことが必要だとわかりました。

* 清流高校…茨城県立大子清流高等学校のこと。総合学科の中には福祉系列の学科が存在。

茨城県立大子清流高等学校ホームページ

現場の人々に理解してもらい、必要性を感じてもらうことがDX導入の第一歩

DXを進めるに当たっては、まず、介護現場にヘルステックを導入することの必要性について、施設の経営者の方に、客観的に理解してもらいました。

「ヘルステックが必要である」という意識の醸成などを目的として、第三者である社会福祉法人 善光会*様に、各介護事業所の現状の課題の抽出、分析をしてもらうことにしました。その上でヘルステックを導入することで、より持続可能な取組となると感じています。

* 社会福祉法人 善光会…「『オペレーションの模範となる 業界の行く末を担う先導者になる』という理念を掲げる社会福祉法人。事業は特別養護老人ホームなどの経営や老人デイサービスセンターの経営、介護老人保健施設の運営等を事業として行っている」

社会福祉法人 善光会

プロジェクトはまだ始まったばかりですが、地元の医師会、一部の事業所経営者等、関係機関との連絡調整は、改めて難しさを感じました。

DXの導入の必要性は、1回の説明で分かってもらえることではないことを念頭に置いた上で、根気強く、何度も話をする機会をつくることの重要性を感じています。一方で、導入に積極的な現場職員の方がたくさんいることも分かり、そうした方の存在は、大きなモチベーションになりました。

大子町が介護×DXの先駆者になり、大子町で介護職員として働きたいと思ってもらえる町にしたいですね。20年後には、危機的な人材不足を解消したいと考えています。

カギは福祉課全体で関わっていくという組織作り

‐大子町でDXを導入できたのはなぜですか?

介護施設や医師会などを巻き込んで、新しいことを町役場が進めようとする動きはなかなか難しいです。大子町福祉課では、福祉課全体でかかわっていくという雰囲気を私の上司である課長が作っていることが成功の要因だと思います。

ほかの自治体ではそういう組織づくりができていないところも多く、スタートラインに立つことが難しい自治体様も多いのではないでしょうか。所属長の理解がないと事が進まないので、役場内の組織づくりは非常に大事だと実感しています。

(3)ベンチャー企業とともに挑戦することで見えた未来

新たなことに挑戦する重要性

‐ベンチャー企業の動きは、どのように感じていますか?

今回のプロジェクトに参加してくれた全てのベンチャー企業に共通して言えることは、新たなことに挑戦することに対する意欲が非常に高く、課題解決に向けたノウハウも持っていることです。

そのため、一緒にDXに取り組むに当たってはとても心強いと感じています。各ベンチャー企業の方々からは、ヘルステックに限らず、ビジネスパートナーとして、日々、多くのことを勉強させてもらっています。

‐今後、このプロジェクトのどのようなことに期待していますか?

DXをきっかけに、これまでできなかったことができるようになることを実感してほしいです。また、ベンチャー企業とつながることで、これまで以上に視野を広げたり、新たなことに挑戦する意欲につながるようなきっかけになってほしいと思います。

また、DXによって介護職のイメージアップが実現することを期待しています。若い人たちにとって、介護事業所が魅力的な職場であり続け、サステナブルな人材確保につながっていってほしいです。そして、それが介護サービス資源の確保や、よりよい介護サービスの提供に繋がっていくとよいですね。

また、大子町での介護職のイメージアップを実現することで、清流高校の福祉系列の卒業生が、町内の介護事業所に就職する流れができたらうれしいです。


介護×DX 連載はこちら

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