いいねしよう!
認知症で要介護1だった姑は、自他共に認める「厳しい人」でした。
相手の弱点を見つけるのが得意で、注意したり叱ったりするのが自分の仕事だと思っているような節がありました。 当時、要介護3で「入浴介助」や「デイサービス」を利用していた妹(おばさん)を近くで見ていましたが、自分が介護保険を利用することは全く考えていませんでした。
年老いた自分の身の回りの世話は、嫁がするのものだとなんの疑いもなく思っていたようです。 そのため姑が「介護保険」を利用するのには少し時間がかかりました。
警戒心の強い姑でしたが、初めての入浴介助サービスには、おばさんでお世話になっていた顔見知りの訪問ヘルパーさんが来てくれました。 特別に頼んだわけではありませんでしたが、そんな配慮が安心感につながったと記憶しています。 入浴介助を嫌がっていた姑でしたが、バイタルチェックの後、
「じゃ、手だけ洗わせてください」
「足湯をしてみませんか?気持ちいいですよ」
「着替えを手伝わせてください」
と、姑を強引に入浴させるのではなく、ゆっくりと時間をかけて警戒心を解いていきました。やはり家族では、そんな穏やかなやりとりは難しくとても勉強になります。
ヘルパーさんが、何かのイベントで作った風船細工を姑に持ってきてくれました。それはそれは、幼い子どものようにはしゃいで、小さくしぼんでしまうまで部屋に飾ってありました。 その後、姑の認知症が進み入浴を嫌がったり、ヘルパーさんに大きな声で怒ることもありましたが、いつも「はい、わかりました」と、絶対に否定はせず
「じゃ、手だけ洗わせてください」
「足湯をしてみませんか?気持ちいいですよ」
「着替えを手伝わせてください」
と最後には入浴に導いてくれました。今思い返しても、姑を週3回入浴させるのは、家族ではとても難しいことでした。姑の心と身体のために本当にかかせない重要な介護サービスのひとつでした。
バニラファッジ プロフィール
著書に「91歳毒舌系女子、喧嘩を売って生きてます」、 「7人家族の真ん中で。」、 「スーパー嫁の汗と笑いの在宅介護」、「86歳乙女系女子、恋の力で生きてます」など多数。