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(1)ソフト食とは
ソフト食とは食材ごとにミキサーにかけてペースト状にしたものを、とろみ剤などを加えて形を整え固めなおしたものです。食べ物を噛みにくい・飲み込みにくい方が安全に食べることができます。
また、普通食に近い形に整えるので見た目にも美味しく楽しい食事の時間を過ごすことができるでしょう。
(2)ソフト食の目的
食事の楽しさと安全性を両立できる
咀嚼嚥下が困難な高齢者に提供される刻み食やミキサー食には、「どんなメニューなのか入っている具材が見た目で分からない」といった課題がありました。
ソフト食は食材ごとにミキサーにかけるので、素材や味、風味を損なわず、色や香りを楽しむことができます。
また、見た目でメニューの内容が分かるので、普通食と同じように食欲増進や楽しさにつながります。
つまりソフト食は、食事に不安のある方が安全に美味しく食事できることを目的にしているのです。
(3)ソフト食の利点
ソフト食は刻み食やミキサー食と比べて大きく2つの利点があります。
見た目
食材をミキサーにかけますが、普通食と同じような見た目に成形するので食材の彩りを楽しみながら食事をすることができます。
安全
ペースト状にしているので、咀嚼嚥下機能が低下している方でも舌や歯茎を使い食べることができます。飲み込みやすく工夫されているので誤嚥のリスクが少なく安全です。
(4)ソフト食における柔らかさの分類
ソフト食は噛む力、飲み込む力が低下した方に適していますが、食べる方の「かむ力、飲み込む力」や身体状況に合わせてスムーズに食べられる柔らかさの区分を選びましょう。
「食べやすさに気を配った料理」という概念である、ユニバーサルデザインフードでの柔らかさの分類は以下のようになります。
ユニバーサルデザインフードについて、より詳しい記事はこちら |
容易にかめる
- かたいものや大きいものはやや食べづらい
- 飲み込むことはできる
食材の目安
- 米飯・軟飯
- 焼き豆腐
- 焼き魚
- 厚焼き卵
など
歯ぐきでつぶせる
- かたいものや大きいものは食べづらい
- 食材により飲み込みづらいことがある
食材の目安
- 軟飯・全粥
- もめん豆腐
- 煮魚
- だし巻き卵
など
舌でつぶせる
- 細かくて柔らかい食材であれば食べられる
- 水やお茶が飲み込みづらいことがある
食材の目安
- 全粥
- 絹ごし豆腐
- 魚のほぐし煮(とろみあんかけ)
- スクランブルエッグ
など
かまなくてよい
- 固形物は小さくても食べづらい
- 水やお茶が飲み込みづらい
食材の目安
- ペースト粥
- 豆腐のペースト
- 白身魚のうらごし
- やわらかい茶碗蒸し(具なし)
など
(参考:日本介護食品協議会『ユニバーサルデザインフードとは(外部リンク)』)
(5)ソフト食を食べるとよい人
ソフト食が向いている人は、摂食嚥下障害の方に向いています。
具体的には、
- 噛む力
- 口腔内で食べ物をまとめる力
- 飲み込む力
のいずれかに低下の傾向が認められる場合には、ソフト食を提供することで、嚥下・摂食の際に思わぬ事故が起きてしまうリスクを回避できる、といえます。
食材を歯茎や舌で潰し、飲み込みができる方であればスムーズに食べることができます。
(6)ソフト食の調理をする際のポイント① 調理前に準備するものを工夫する
食材の選び方
咀嚼嚥下機能の低下した方が食べやすいようにやわらかい食材を選びます。野菜はブロッコリーや人参など繊維が少ないもの、肉や魚は赤身を避け、適度に脂身があるものを選びます。赤身を使用する場合は筋を切ったり叩き柔らかくし、ひき肉を使用する場合は口の中でバラバラになりやすいため卵などつなぎを使います。
切り方
繊維質は口の中に残りやすいので、なるべく皮を剥き、繊維と直角に切り調理します。繊維と直角に切ることで、加熱後柔らかい食感となり食べやすくなります。
ナスや大根は隠し包丁を入れ、かぼちゃや豆類はペースト状にします。
調理器具
食材を細かく刻むためフードプロセッサーやミキサー、ハンドミキサー、やわらかく調理するため、圧力鍋やスチームコンベクションを用意します。
少量調理する場合はすり鉢やすりこぎも最適、料理を成形する際はラップやプリン型などを使用し見た目を工夫します。
(7)ソフト食の調理をする際のポイント② 調理方法を注意する
蒸す
食材を蒸すことでやわらかく食べやすくなり、茹で料理に比べて栄養を逃しません。加熱によって固くなりやすい肉もあらかじめ蒸すことで柔らかさを保つことができます。
とろみをつける
味噌汁やスープ類はサラサラして誤嚥にリスクが高いですが、片栗粉やゼラチン、とろみ剤などを使用しとろみをつけることで安全に飲み込むことができます。
とろみのつけ方などについて、より詳しい記事はこちら |
油を使う
油やバターを使って調理することで風味が出て食欲をそそり、飲み込みやすくなります。食欲が低下している方はオリーブオイルやごま油を使用することで香りよく食欲が増すことがあります。
つなぎを使う
ソフト食を作る際は食材をミキサーにかけた後、とろみをつけたり成形するための食材として、卵白やかたく粉、玉ねぎ、山芋など。口腔内での滑りをよくするための食材として卵黄や生クリーム、サラダ油などが必要です。
つなぎに卵を使用すればタンパク質を同時に摂取できるのでおすすめです。
(8)ソフト食のレシピ
高齢者に人気の高いソフト食のレシピをご紹介します。
お寿司
材料
- やわらかく炊いたごはん(適量)
- すし酢(少々)
- ネギトロ用のマグロ・ペースト状にした鮭フレーク(具はお好みでも可能)
作り方
- やわらかく炊いたごはんにすし酢を入れミキサーにかける
- ラップに包み丸くまとめる。20分程度置くことでまとまりやすい。
- ラップにネギトロ用マグロを拡げ、まとめたご飯を包み完成!
(ペースト状にした鮭フレークも同様)
おはぎ
材料
- お粥(適量)
- 増粘剤
- あん
作り方
- お粥に増粘剤を加えミキサーで撹拌する
- バットに広げ粗熱をとり適量に切り分ける(お粥ゼリー)
- ゆるめに練ったあんに増粘剤を入れ加熱、粗熱をとる
- ラップにあんを広げ、あんの上に1で作ったお粥ゼリーをのせ包む
- 形を丸く整え完成!
ぶり照り焼き
材料
- 茹でたぶり(骨は取り除く)50g
- だし汁 40g
- ゲル化剤 0.5g
- 照り焼きのたれ 10g
作り方
- 茹でたぶりにだし汁、ゲル化剤を加えミキサーで撹拌する
- なめらかになったら鍋に入れひと煮立ちさせる
- バッドにラップを敷き、粗熱をとりゼリー状に固める
- 固まったら切り分け、照り焼きのたれを塗って完成!
(9)ソフト食以外の、嚥下・摂食機能に不安のある方向けの食事の種類
摂食嚥下機能に不安のある方に対して、ソフト食以外では以下のような食事の種類があります。
きざみ食
食材を細かく刻んだ食事で、咀嚼機能が低下したが嚥下機能は維持されている方に向いています。誤嚥のリスクが高い方へはトロミをつけて提供します。
きざみ食について、より詳しい記事はこちら |
ペースト食
食材をミキサーにかけトロミをつけたものです。ミキサー食に比べると水分量が少ないことが特徴で、粘度に合わせて区別します。咀嚼機能が低下している方が安全に食べることができますが、ペースト状なのである程度の嚥下力がある方に向いています。
ムース食・ゼリー食
ミキサーなどにかけてペースト状にし、寒天やゼラチンなどでムース状、ゼリー状にしたものです。口腔内で食材がまとまるため、誤嚥のリスクが低いことがメリットです。
ミキサー食
食材をミキサーにかけてやわらかくしたもので、噛まずに食べられるため咀嚼機能、嚥下機能ともに低下した方に向いています。しかし水分が多いため意図せず喉に流れ込む可能性もあるため、誤嚥のリスクが高い方には嚥下力に合わせてトロミをつけ提供する必要があります。
スプーンで垂らしたとき、落ちた形がすぐに消えるポタージュ状のトロミがついている程度が目安です。
ミキサー食について、より詳しい記事はこちら |
(10)ソフト食は見た目もよく、食べやすい食事を可能にする
咀嚼嚥下機能の低下した方はペースト食やミキサー食の提供が多くなり、食べやすくて安全ですが食材の形が分からず「何を食べているか分からず美味しくない」と声もきかれます。
食事は栄養を摂る手段だけではなく、季節感を感じ見た目や香りなど五感を使って楽しむためのものでもあります。
ソフト食は安心安全に食べることもでき、目で見て美味しいと感じることのできる食事を可能にします。
日々、美味しく食事ができれば生きる喜びや明日への活力につながるでしょう。