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(1)疲れがとれないのはなぜ?
「疲れ」とは、「これ以上、心身に負荷をかけると身体に害が出ます」という危険信号の一種です。人の身体は身体機能を常に一定に維持するホメオスタシス(恒常性)が働いています。それが崩れそうなとき人の動きを制限するために「疲れ」と呼ばれる症状が現れるのです。
ちなみに、日本疲労学会によると「疲れ」は以下のように定義されています。
疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である。
では、実際に疲れ(疲労)とはどのようなメカニズムで発生するのでしょうか。
「疲れ」が生まれるメカニズムとは
疲れが発生するのは、体内で生成される「活性酸素」が原因とされています。活性酸素は人が活動する際に必ず生まれる物質で、強い酸化作用を持っています。
活性酸素が過剰になると体内の細胞が傷つけられ、そこから「FF(ファティーグ・ファクター)」と呼ばれる物質が生成されます。疲労因子と呼ばれるこの物質こそが、倦怠感や体調不良をもたらす「疲れ」の原因なのです。
本来ならば体内の「FF」が増加すると、「FR(ファティーグ・リカバー・ファクター)」と呼ばれる疲労回復物質が生まれ、「FF」を中和し疲労を和らげてくれます。
しかし、加齢などによって「FR」の生成量が減少すると、中和が間に合わずなかなか疲れがとれない状況に陥りやすくなるのです。
(2)疲れの種類
さて、人が感じる疲れには以下の3種類があります。
- 肉体的疲労
- 精神的疲労
- 神経的疲労
肉体的疲労
肉体的疲労とは純粋に運動や力仕事で筋肉を過剰に使用して疲れ物質が蓄積されている状態です。肉体的な疲れがとれないと
- 体のだるさ
- 倦怠感
などが症状として現れます。デスクワーク中心の生活や過度な運動不足が続いていると筋肉が疲労しやすくなり肉体的疲労に陥りやすくなるとも言われています。
精神的疲労
精神的疲労は悩みや対人関係のストレスによって発生する疲れの症状です。子の疲れがとれないまままでいると、
- 落ち込みやすい
- 不安感がある
- 食欲不振
になるなどの症状が現れます。
神経的疲労
神経的疲労とは、目の使いすぎ、脳の緊張状態などが続くことで発生する疲れの症状です。神経的疲労による疲れがとれないと、
- 仕事に集中できない
- 物覚えが悪くなる
といった症状が現れやすくなります。
(3)疲れがとれないのは乳酸が原因?
昔から言われていた「疲れがとれないのは乳酸が溜まっているから」という説は約10年程前に否定されています。
乳酸は筋肉を使うと発生する物質です。そのため、長い間、乳酸の蓄積が疲労の原因となると言われていましたが、むしろ乳酸は筋肉のエネルギー源となるグリコーゲンを生成し筋肉の成長を促す重要な物質なのです。
乳酸が疲労の原因であるという説は未だ根強く残っていますが、実際に因果関係は認められていないので注意しましょう。
(4)「疲れがとれない」と感じるときのNG行為
世の中には様々な疲労回復法がありますが、中には良かれと思ってやっていても疲労回復の効果がないものもあります。
間違った方法を行うといつまでも疲れがとれない状況が続き余計に疲労を蓄積してしまいます。
疲れているときに、以下のようなを行為をしている場合はすぐに辞めて、正しい方法で疲れをとりましょう。
お酒を飲む
ぐっすり眠るためにお酒を飲む、これは一見効果的ですが飲酒による睡眠は途中覚醒の率が高く、良質なものとは言えず、一見ゆっくり寝たようでも疲れがとれない行動です。
沢山食べる
とにかく沢山食べるという回復方法もおすすめできません。食べ過ぎると身体に残ったエネルギーを消化吸収に費やしてしまうので、逆に疲れがとれない状況になります。
甘いものを食べる
「疲れがとれない時は甘いものを取る」という方法には、体内の低血糖を解消して疲労を取る効果があります。
しかし、過剰摂取は逆効果です。急激な血糖値の上昇はインスリンを過剰分泌させて逆に低血糖を促進してしまうのです。
寝だめをする
普段の寝不足を解消するために休日は長く寝ると言う方法は体内時間を狂わせたり、体の血行を悪くしたりと、疲れがとれない原因を増やすことになります。
そもそも、人の身体は睡眠を貯める「寝だめ」ができないようになっているので、「必要以上に長く寝る」という行動自体が意味のあるものではないのです。
(5)疲れがとれない時の対処法① 睡眠の質を高める
疲れがとれない時は、まずは睡眠の質を高めることから始めてみましょう。寝ている間は活動によるFFの生成が減少し、FRの生成が上回る時間帯なので、適度な睡眠は疲労回復にとても効果的です。
しかし、睡眠の質が悪いと身体が十分に休息を取れず、寝ている間もFFの生成がなされてしまいます。睡眠の質を高めることでFRの分泌量を上回らせ、効率的に疲れをとりましょう。
(6)疲れがとれない時の対処法② 疲労回復に効く栄養素を取る
疲れがとれない時には、疲労回復に効果的な栄養素を摂取して身体の中から疲労を解消しましょう。疲労回復には
- ビタミンB1
- B2
- カルシウム
- 鉄分
- イミダペプチド
などが効果的と言われています。以下に、各栄養素を含んだ食材をまとめておきます。疲れがとれない時のレシピ作りの参考にしてみてください。
- ビタミンB1…かぼちゃ・とうもろこし・ブロッコリー
- ビタミンB2…納豆・卵・レバー
- カルシウム…乳製品・キャベツ・ブロッコリー
- 鉄分…ホウレン草・赤身の肉・アーモンド
- イミダペプチド…鶏胸肉・まぐろ・さんま
(7)疲れがとれない時の対処法③ リラックスして休息
半身浴やアロマテラピー、音楽鑑賞など心身がゆったりリラックスできる時間を作るのも効果的な疲れの取り方です。
特に、脳の疲れや精神的なストレスによる疲労を感じている場合、一度疲れの原因を忘れて、自分がゆったりとリラックスできる空間で心を休めてみましょう。
脳が休まることで精神的な疲労が解消し、意欲的に物事に取り組めるようになるはずです。
(8)疲れがとれない時の対処法④ アクティブレスト
疲れがとれない時にあえて軽い運動を行い疲労回復を早める方法をアクティブレストと呼びます。身体的な疲れが残っている時には、軽い運動によって身体全体の血行を促進させると筋肉回復の効率が上がり、疲れが回復しやすいとされています。
また、運動によって分泌されるセロトニンにはストレス解消効果があるので、精神的な疲労にも効果的と言えるでしょう。
アクティブレストを行う時には、筋肉を適度に動かしセロトニン分泌を促進する単純リズム運動出会える、ランニングやジョギング等の有酸素運動がおすすめです。その他に、筋肉をほぐして血行をよくするストレッチなども取り入れてみましょう。
(9)過度の疲労感は病気のサインかも
普通に毎日を過ごしているだけなのに強い疲労を感じる、何をしても疲労がとれない、といった場合は身体が「病気のサイン」を発しているのかもしれません。病気の中には症状の中に疲労感が含まれるものも多く、放っておけば症状が重篤化してしまう恐れもあります。
以下に、「疲労感を覚える病気」の代表的なものをまとめたので、その他の症状を参考に、何か身体に違和感を覚えた時にはすぐに病院に行って医師に相談しましょう。
うつ病
うつ病とは、何らかの原因で脳の働きが乱れ、気分が沈んだり意欲が低下したりする病気です。疲労感や倦怠感、抑うつ状態などの心理的なものから、食欲・性欲の低下や動悸、息切れなど肉体的なものまで様々で、人によって症状が様々で多岐に渡るという特徴があります。
糖尿病
糖尿病は体内でインスリンが不足することで起こる病気です。主な症状には疲労感の他に、手足のちくちくとしたしびれや視力低下、空腹感や喉の渇き、ED等があります。
関節リウマチ
関節リウマチとは、関節が炎症を起こし機能が損なわれたり、関節が変形したりしてしまう病気です。疲れやすくなった、と感じた時に手足のしびれやむくみ、何かを持つ動作がしづらいと感じた時にはこの病気を疑いましょう。
肝硬変
肝硬変とは、肝炎が進行して肝臓が硬化・縮小する病気です。初期段階では疲れがとれない、や食欲がないなどの症状が現れますが、症状が重篤化すると黄疸や意識障害などさらに重い症状を発症します。
心不全
心不全とは、何らかの原因で心臓の機能が低下しその役目を果たせていない状態を指します。心臓が十分に機能していない状態なので、息切れやむくみなどの症状が起こりやすく、症状が進行すると疲労感やだるさを強く感じるようになります。
慢性腎不全
慢性腎不全とは、数ヶ月から数年単位で腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。腎臓の機能が低下すると体内に老廃物が貯まりやすくなり、疲労感や吐き気・頭痛などの症状を発症します。
エイズ
エイズとはHIVウイルスへの感染によって身体の免疫機能が低下する病気です。免疫力が下がった身体は健康時には影響がなかった病原体やウイルス、微生物の攻撃にさらされることになるので、感染症による死亡リスクが高くなります。
B型C型肝炎
B型・C型肝炎とは、ウイルス感染によって起こる肝炎の名称です。初期症状は食欲不振、吐き気、腹痛・嘔吐などですが、症状が進行すると肝臓がんや肝硬変などの重篤な病気に移行する場合もあります。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患とは、免疫細胞がエラーを起こし自分の腸の細胞を攻撃することで腸内に炎症が起こる病気です。腹痛や血便、慢性的な下痢等の症状が発症します。
多発性硬化症
多発性硬化症とは、全身の中枢神経で硬化が起こり視力や感覚、運動などに麻痺症状などが起こる病気です。病気の具体的な原因は不明で、男性よりも女性が発症しやすいと言われています。
慢性閉塞性肺疾患
慢性閉塞性肺疾患とは、肺や気管支に障害が発生する生活習慣病です。咳や痰が出やすいという初期症状が進行すると、息苦しさや息切れが増え、さらに症状が重くなると呼吸不全を引き起こす恐れもあります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に一定時間呼吸が止まった状態になる症状が繰り返される病気です。睡眠の質が著しく低下するため脳が不眠に陥り抑うつ状態や疲労感を感じるようになったり物事に集中できなくなるといった症状が発症します。
(10)疲労感をうまくコントロールしよう
疲労感は身体が持ち主に対して「休まないと危険です」と促す信号のようなものです。
「疲れがとれない」を感じているのに無理して働き続けていると、思わぬ事故を起こしたり、病気を発症したりしてしまう可能性もあります。
忙しい毎日の中では中々休息を取ることも難しいかもしれませんが、自分の命を守るためにも疲労を感じたら適度に休んで、健康な状態で毎日を過ごせるように心がけましょう。