(1)寝起きの体温の特徴
体温計測は寝起きにするもの
医師からの指示で体温を測っている方や、基礎体温を測っている方は、体調がすぐれない時を除いて、寝起きの体温を測ることから、「体温を測る」といえば「寝起きにするもの」というイメージをお持ちの人も多くいるのではないでしょうか。
体温は、朝早くには低め、夕方から夜にかけて高めになるのが一般的です。運動や食事後、睡眠、女性の月経周期、感情の起伏によっても変動し、人間の24時間の体温リズム(概日リズム)に関係しています。
寝起きの体温は低い
特に寝起きは1日の中でも低く計測されます。人間はている間に体温が下がりますので、寝起きは体温が上がりきらずに平熱よりも低くなるからです。
もちろん、正しく体温を測れない場合も、体温が低い・または高い値になってしまうので、注意が必要です。
(2)体温の正しい測り方
正しく体温を測るには、腋の下で中心体温を測定します。
- 測定前、腋の下の汗をしっかり拭きとります。
- 腋の下のくぼみ奥に斜め下から体温計を挟みます。
- 計測が終わるまで動かないようしっかりと固定します。
図る際の注意点① 正しい時間帯で、脇をしっかり固定して測る
入浴後や食後、運動後などは体温が高くなる時間帯なので、正確に体温を測るためにも30分程度時間を空けます。
さらに、計測時、測っている手のひらを上に向けると、しっかりと腋がしまり固定できます。
図る際の注意点② 体温計ごとの違いを考慮する
体温を測る時には当然、「家にある体温計を使う」というケースが多いでしょう。
その際、所持している体温系の種類によって、体温の出るその出方に若干の違いがありますので、出た温度が必ずしも100%正確なものではないことを念頭に置きましょう。
体温計の種類 | 説明 | 商品例 |
---|---|---|
水銀体温計 |
使用されることが少なくなってきましたが、 体温計の中で最も正確に計測でき、計測時間は5~10分です。 腋に挟んで計測します。 |
|
電子体温計 |
一般に私たちが使う体温計です。 実測式、予測式の2種類あり、予測式は90秒で計測できるため大変便利です。 しかし、計測法によっては水銀体温計より高め、低めにでることがあるので正確に測りにくく、水銀体温計に比べるとエラーも多くみられます。 |
|
耳式体温計 |
1秒という短時間で鼓膜の温度を計測します。 大変便利なので乳児や幼児に用いられることがありますが、計測の仕方や耳の状態(中耳炎、耳垢、耳の穴の大きさなど)により誤差が多いというデメリットがあります。 |
|
非接触体温計 |
乳児や幼児、高齢者の計測に便利なのが、非接触体温計です。 おでこに1秒当てるだけで簡単に体温を測ることができます。病院でも多く使用されています。おでこの体温から外気温に応じで舌下体温に換算し、体の深部体温を計測することができます。 |
|
婦人体温計 |
女性がホルモンバランスを知るために計測する体温計です。 予測式、実測式と2種類ありますが、どちらも毎朝同じ時間、寝起きに布団の中で身体を動かさず寝た状態のままで、口の中で計測します。1周期計測することで低温期、高温期などホルモンバランスの状態を知ることができ、月経周期の把握や妊活、体調変化の予測に活用できます。 |
耳やおでこで測るタイプは大変便利ですが、計測方法や場所によっては大きな誤差が生じることがあります。明らかに発熱、ぐったりしているなど様子が異なれば、最も正確に計測できる、腋で測るタイプで再計測した方がより正確でしょう。
(3)平熱の平均はどのくらい?
自分が測定した体温が平均と比べて高いのか低いのかが気になる人は多いのではないでしょうか?
結果からいうと、36.89℃±0.34℃(36.6℃から37.2℃の間)という数値を、日本人の体温の平均値として出している文献が有力とされています。
(参考:日新醫學 44(12), 633-638, 1957-12)
もちろん、年齢や時間帯など、様々な要素によって体温は変化していくものなので、この数値より高くても低くてもそこまで気にする必要はありません。
日本人の平均平熱を調べるよりも、自分の平熱のほうが、発熱状態かどうかの判断基準としてふさわしいでしょう。
(4)自分の平熱を知るにはどうすればよいか
平熱というと「36.5くらい?」と、イメージで捉えがちですが、一人ひとり平熱は異なりますので、正確に自分の平熱を知っておくことが大切です。
正しい平熱を知り、予防のため健康状態や病気のサインを把握しましょう。
自身の平熱を測るポイント
- 1日4回(起床時、午前、午後、寝る前)
- 食前、食間、安静にして計測
- 日を空けて数日計測
- 計測した体温は時間とともに記録
計測した体温の平均が平熱になります。
平熱が安定しない、体温が一定に保たれないなど、体温調節がうまくいかないケースも考えられます。
症状によっては何らかの疾患も疑われる可能性があるので、普段からあまりに体温が高い・低い、と感じる際には、その場でできる処置をしたのち、医療機関に診察してもらいましょう。
(5)寝起きの体温が高い際に考えられる原因① 生活リズムの乱れ
不眠によって体温が下がりにくい
日ごろのストレスや生活習慣によって生活リズムが乱れてしまいます。生活リズムの乱れは不眠を引き起こし、体温が下がりにくく身体に熱がこもった状態となり、リラックスした睡眠をとることができません。
生活リズムの乱れで寝起きの体温が高い
体調不良や風邪症状がないのに寝起きの体温が高い場合は、生活リズムの乱れが原因の可能性があります。改善するには、十分な睡眠、栄養バランスのとれた食事、適度な運動で生活習慣を整え、生活リズムを整えましょう。
(6)寝起きの体温が高い際に考えられる原因② 病気
寝起きの体温が高い際に考えられる原因の一つとして病気が挙げられます。症状の一つとして体温が高くなる疾患を3つ紹介します。
自律神経障害
自律神経障害は、原因がなく慢性疲労、めまい、便秘、しびれ、耳鳴り、不眠、イライラなどの症状が現れます。体温の調節ができにくいといった症状も含まれ、寝起きの体温が高いというケースがあります。適切な体温調節できないため免疫力低下のリスクが高まります。
更年期障害
更年期になると気温が高くないのに、身体のほてりや発汗といった“ホットフラッシュ”という症状が現れます。女性ホルモンが減少し、自立神経のコントロールが乱れ体温調節がうまくできずに起こります。ホットフラッシュは一人ひとり症状の出る時間や頻度、程度が異なります。
レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症、血管性認知症に次いで多く、3大認知症のひとつ。脳にレビー小体といわれるタンパク質が蓄積し、幻視や行動鈍麻、転倒しやすいといった症状が現れます。
また、多汗・寝汗といった発汗障害、低体温症も顕著で、体温調節がうまくできません。
(7)寝起きの体温が高い際にすべき対策① 就寝・起床のタイミングを整える
寝起きの体温が高い場合、生活習慣を見直し、生活リズムを整えることからスタートしましょう。生活リズムを整えるには、毎日同じ時間に就寝し、起床することが大切です。
就寝・起床時間を整えれば、体内時計が正常化され、生活リズム、体内リズムを整えることができます。
(8)寝起きの体温が高い際にすべき対策② 睡眠環境を整える
生活リズムを整えるには、質の高い睡眠をとることも有効です。質の高い睡眠をとることで、十分な休息ができ、朝は疲労感なくすっきりと目覚めることができます。
まずは、寝室の光や温度、湿度など環境や寝具を適切にしましょう。また、不眠症や睡眠サイクルの乱れ避けるため、就寝前のスマホ・パソコンの使用は控えましょう。これらが発するブルーライトが、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を抑制してしまうからです。
寝る30分前はスマートフォンを見ずに、ストレッチやマッサージをして心身共にリラックスできるよう睡眠環境を整えることが大切です。
(9)寝起きの体温が高い際にすべき対策③ 疾患が原因でないか、医師に相談する
寝起きの体温が高い場合、生活リズムの乱れが関係しますが、体調不良や隠れた疾患があることも考えられます。
- 免疫機能の低下や乱れ
- ウイルス感染
- 悪性腫瘍
などの可能性もありますので、就寝・起床時間や睡眠環境を整えても寝起きの体温が戻らない場合は、原因を知るために医療機関を受診し、医師に相談することをおすすめします。
(10)寝起きの体温が極端に低い際に考えられる原因と対策
寝起きの体温が高い場合も気になりますが、極端に低いのも気を付けたい症状です。35度以下の低体温は、新陳代謝の不活発、血行不良、免疫機能の低下を引き起こし、慢性疲労や生活習慣病の原因にもなります。
特に女性は、不妊症や子宮内膜症など婦人科系の疾患の原因の1つとして"冷え"が挙げられているため、注意が必要です。
低体温の原因は生活リズムや生活習慣の乱れが主な原因です。
原因
- ストレス
- 睡眠不足
- 運動不足
- 偏った栄養バランスの食事
- 食べ過ぎ
- シャワー浴
- 水分の摂りすぎ
これらの原因によって、慢性疲労、肩こりや月経不順、頭痛、不眠、便秘、新陳代謝の低下といった症状に加え、寝起きの体温が低いといった症状が現れます。
対策
運動
日中に身体を動かすと基礎代謝力が向上します。継続した運動を行い、筋肉量を増やすことで体温アップに効果的です。特に鍛えるべき部位としては、筋肉の70%が集中している下半身がおすすめです。
入浴
就寝1時間前にゆっくりと湯船に浸かることで、芯から温まり、安眠効果につながります。お気に入りのアロマオイルや入浴剤を使用することでさらにリラックス効果が高まります。
食材
身体を温める食べ物を積極的に摂るようにしましょう。例えばお米や赤身の魚や肉、根菜類、豆腐などです。冬に寒い地方でとれるもので、赤・黒・橙のカラーの食材がおすすめです。
また、バナナに多く含まれるトリプトファンは「癒しホルモン」と呼ばれ、心身ともにリラックス効果があります。
飲み物
お風呂上りや就寝前、ハーブティーやホットミルクを飲むことで体を温め、また心身の緊張を鎮めることができるため、安眠に効果的です。
睡眠時間
成長ホルモンが分泌される深夜0時までに睡眠することで、細胞分裂が活発に行われ免疫力向上へつながります。
睡眠環境
寝室の温度、湿度、光、インテリアにも気を付けましょう。寝具を清潔で寝心地の良いものにし、居心地の良い環境を作ります。インテリアカラーはリラックス効果の高い"青色"がおすすめです。
(11)寝起きの体温は、その日の体調のサイン
体温は、熱があるか調べたいときに測るだけのものではありません。
特に寝起きの体温は、その日の体調のサインともいえるものです。寝起きの体温と自分の平熱を知るだけで、自分自身の健康管理や生活習慣病の予防に役立てることができます。
平熱と比べて極端に高い場合、低い場合は身体が何らかの不調を出しているサインとしてとらえ、生活リズムを見直したり、医師へ相談したりと、寝起きの体温に注意してみましょう。