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長谷川式スケール(HDS-R)とは|点数の付け方・問題点など

病気
長谷川式スケール(HDS-R)とは認知症の有無を判断するための簡易ツールです。この記事では、長谷川式スケールについて、実際の質問内容や問題点を解説します。また、認知症の疑いが見られたらどのように対処するべきかについても説明します。認知症は早期発見・早期治療が大切です。高齢のご家族がいる方はぜひ参考にしてみてください。
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(1)長谷川式スケール(HDS-R)とは

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1140762

長谷川式スケールとは、マリアンナ医科大名誉教授の長谷川和夫氏が1974年に考案した知能評価テストのことであり、現在では認知症の有無に関しての評価方法としてMMSEと並んでよく使用されています。

また、その正式名称は長谷川式簡易知能評価スケールといい、HDS-Rとも略されます。

長谷川式スケールの項目の内容は以下のようになります。

【 設問1 】 年齢 :お年はいくつですか?

(2歳までの誤差は正解とします)

設問1では、年齢を覚えているかどうかの記憶力、また生年月日からの計算能力を検査します。解答時に、数え年で答える人もおり、誕生日を迎えているかどうかで誤差が生まれる可能性があるため、2歳までの誤差は正解としています。

【 設問2 】今日は何年何月何日ですか? 何曜日ですか?

(年月日、曜日が正解でそれぞれ1点ずつ)

設問2では、時間の見当識を検査します。この設問は,時間の見当識に関する質問なので, どの順番で聞いてもよいです。たとえば,「今日は何曜日ですか?」「今日は何月何日でしたか?」「今年は何年になりましたか?」と順番は問いません。

【 設問3 】私たちがいまいるところはどこですか?

(自発的にでれば2点、5秒おいて家ですか?病院ですか?施設ですか?のなかから正しい選択をすれば1点)

設問3では場所の見当識を検査します。もし、評価をする際に住み慣れた家や施設ではなく病院で検査をするような場合は、病院名は答える必要はなく自分が今いる場所が、「病院」であると理解できていれば正解となります。

また、自発的に答えられなくても「家ですか?」「病院ですか?」「施設ですか?」のようにいくつかの項目の中から選択できれば減点にはなりますが、1点の点数となります。

【 設問4 】これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください。

(通常、以下の系列のいずれか1つを使用します。

  1. a)桜 b)猫 c)電車
  2. a)梅 b)犬 c)自動車)

設問4は、短期記憶の検査です。

この3つの言葉は「植物の名前」「動物の名前」「乗り物の名前」から連想する言葉として、認知症の人も,健常高齢者も共通して連想する言葉の上位 2つから選んで作成しているため他の言葉に置き換えてはいけません。

【 設問5 】100から7を順番に引いてください。

(100-7は?それからまた7を引くと? と質問する。最初の答えが不正解の場合、打ち切る)

設問5では、計算能力を検査します。この設問でははじめに100から7を引き回答してもらい、次にそこからまた7を引きますが、93という数を覚えてさらに7 を引くという作業記憶の課題でもあるため,93から7引いてくださいとは言ってはいけません。

【 設問6 】私がこれから言う数字を逆から言ってください。

(6-8-2、3-5-2-9など、ランダムに3~4個選んだ数字を逆の順序で言ってもらう、3桁逆唱に失敗したら、打ち切る)

設問6では、数字の逆唱能力また、数を頭で覚えておき、それを逆にして回答するという作業記憶を検査します。この設問の注意点として、数字を提示するときにはゆっくりと、1 秒間隔くらいのスピードで提示します。

また、「これからいう数字を反対から言ってみてください。たとえば、123を反対から言うと?」というように練習問題を入れるとわかりやすく評価しやすいです。

【 設問7 】 先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。

(自発的に回答があれば各2点、もし回答がない場合以下のヒントを与え正解であれば1点)

設問7では、3つの言葉の想起(3つの言葉の遅延再生)を検査します。自発的にすべて答えることができるか、どんな言葉だったか、例えば「動物の名前」のようなヒントを与えた場合は減点になります。

【 設問8 】 これから5つの品物を見せます。それを隠しますのでなにがあったか言ってください。

(時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など、必ず相互に無関係なもの)

設問8では、5つの物の名前の想起(物品記銘)を評価します。提示する物を選択する場合は、本人が使用したことのないものなど接点のないものは使ってはいけません

また、5つの品物は、「鉛筆」「消しゴム」のように関連性のある物は避けた方が良いです.

【 設問9 】 知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。

(答えた野菜の名前を右欄に記入する。途中で詰まり、約10秒間待っても出ない場合にはそこで打ち切る。

  • 0~5個=0点
  • 6=1点
  • 7=2点
  • 8=3点
  • 9=4点
  • 10=5点

という具合に、答えることができたものの個数に応じて点数を付ける)

設問9では言語の流暢性を検査します。この設問は知識を調べる設問ではなく、言葉 がどのくらいスラスラでてくるかという言語の流暢性の設問であるため同じ野菜の名前がでてきても「それは先ほど言いましたね」と遮ることはせず、重複してもそのまま記録用紙 に記載し、重複した物をあとで減点します。

また、認知症高齢者の平均出現個数が約5個、健常高齢者の平均出現個数が約10個であるため6個目から1点と加算します。

この設問から、長谷川式スケールは主に記憶力を中心とした認知機能障害の有無を大まかに知ることを目的とした検査方法であり、9項目の設問で構成された簡易認知症評価スケールです。

(2)長谷川式スケールの点数による区別

さて、長谷川式スケールの内容に関しては上記のようになりますが、一体何点から認知症という区別になるのでしょうか。

この長谷川式スケールは満点が30点であり、点数階層別の判定内容は以下の通りです。

長谷川式スケールの点数と認知症の判定
21点以上 非認知症
20点以下 認知症
10~19点 中等度
10点以下 高度

(3)長谷川式スケールの問題点

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1504437

この認知症検査の長谷川式スケールですがいくつか問題点があります。

認知度の高さの影響

まず一つ目に、長谷川式スケールの認知度が高いことです。

近年後期高齢化社会であり「認知症」が問題視されることが増えたことで、この長谷川式スケールの内容をテレビなどのメディアで知っており予防のために普段から練習を行っている場合や、また医療従事者は長谷川式スケールの内容を理解しているため実際の認知症の度合いを正しく検査できないことが有ります。

意識レベルの影響

二つ目に、意識レベルにより検査結果に差がでることです。不眠症や精神疾患、認知症の症状が強く出た患者様はよく精神安定剤や睡眠薬を利用している場合があります。

そのような人は意識レベルが日により差がある場合があり、検査を行う前にコミュニケーションを取りしっかり話せているかどうか、眠そうでないか等評価する必要があります。

言葉を話すことに関する障害の影響

三つ目に、失語症や高次脳機能障害の有無です。

失語症とは、頭の中で理解していても言葉に出なかったり、言葉は流暢であっても意味のない羅列であったりと「言葉を話す」ことに何かしらの障害のあることであり、高次脳機能障害は、記憶障害・注意障害(一つの作業に集中できない)・遂行機能障害(自分で考えて行動できない)・社会的行動障害(急に興奮したり、暴力をふるう)ことを言います。

検査時はこのような障害の有無に関しても理解する必要があります。

認知症のなかの区分の難しさ

四つ目に、認知症とひとくくりに評価は可能だがどの認知症かの区分は難しい点です。認知症には、「アルツハイマー型」や、「レビー小体型」「脳血管障害型」など種類があります。長谷川式スケールだけではここまでの区分はできず、「認知症」であるかどうかの検査になります。

(4)認知症の症状

認知症症状は、長谷川式スケールような記憶障害などのほかにも日常生活の様々なところで予兆が見られます。できるだけ初期症状での治療を始めるためにも症状を理解する必要があります。

ここでは、認知症の症状を説明します。

認知症の症状は、①中核症状と②周辺症状に分けられます。

  1. 中核症状…記憶障害・見当識障害・理解判断力の障害・実行機能障害・失語・失認(五感の判断が不明確な状態)・失行(体は動くが生活動作が理解できない状態)などが挙げられます。
  2. 周辺症状…不安・抑うつ・徘徊・弄便・妄想・せん妄・幻覚・暴力・暴言・失禁・睡眠障害・異食

これらの症状には上記のようなものが挙げられます。

認知症は、様々な理由、具体的には

  • 脳卒中
  • アルコール
  • 外傷
  • 加齢

などにより脳が萎縮し障害され、細胞が壊れることで引き起こされます。

そのため、細胞が壊されることでその役割を司る細胞がいなくなり起こる症状を中核症状と言い、中核症状によって引き起こされる二次的障害を周辺症状(認知症の行動・心理症状とも呼ばれ、中核症状が原因で本人の性格や環境、心理状態によって出現する障害)と言います。

中核症状と周辺症状の関係の例を挙げるとすると、認知症を発症することで中核症状である記憶障害・見当識障害・理解判断力の障害・実行機能障害が出現し、掃除や洗濯をすることを忘れてしまったり、外出する際スケジュールを忘れたり道がわからなかったりとできないことが増えたとします。

そのようにできないが増えることで、「どうしてできないのだろう」「生きていても仕方ない」と引きこもってしまい不安の心理症状がでて、うつ症状や睡眠障害や暴言などの周辺症状が現れることが有ります。

(5)認知症の疑いがあったら

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1889668

「認知症かもしれない」とご家族に感じることがあれば、初期の診断・治療のためにも早期の受診をお勧めします。

しかし、認知症の初期症状は物忘れだけでなく、周辺症状のうつ症状や食欲不振などが見られ、認知症と老人性のうつや内臓系の病気と様々な可能性が考えられ何科に受診するか困ることがあるかもしれません。

また、「認知症の疑いがある」と言われると大概の人がショックを受けることが多いです。そのため、はじめは何科でも良いのでかかりつけ医(主治医)に相談することが良いです。

もし、かかりつけ医がいない場合は、高齢になるにつれて様々な病気も増えるため、かかりつけ医を決めておくようにしましょう。

その他、かかりつけ医以外の受診科であれば、神経内科・精神科・心療内科・脳神経科・もの忘れ外来・老年科などを受診しましょう。

(6)病院での診断方法

まず、病院にて認知症かどうか判断するために面談を行います。

長谷川式スケールやMMSEや時計描写や計算問題での認知症検査のほかに、容貌や態度に変わった点がないかどうか(姿勢が左右にかたむいてないか?歩容はおかしくないか?視線は?話し方は?急に怒るなどの気分のむらはないか?)や身体検査、認知症のタイプを判断するために脳画像検査(CT・MRI)を行います。

(7)診察前の準備

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/344888

認知症診断のための受診時には、家族は気になる症状に関してまとめておくことをお勧めします。

例えば、気になる症状に関して

  • 「いつから?」
  • 「どのような症状?」
  • 「精神面は?」
  • 「睡眠や食欲は?」

といった基本事項を聞く質問を投げかけるほかに、

  • 既往歴
  • 事故などの外傷を負ったことはあるかどうか
  • 服薬状況
  • また長谷川式スケールにあるような項目で「自分の年齢がわからない」などがないか

といったことなどもまとめておくとスムーズです。

(8)本人に診察を拒否された場合

家族から見て「認知症」の症状であっても、「認知症」ではないと本人が主張することは多くあります。

そのような際の対処法として、「認知症」という言葉をなるべく使わずに病院受診を行う、医療従事者との接点を作るのがおすすめです。

また、一度自宅にて長谷川式スケールを実施してみることも一つの手です。

例えば、保健センターなどの医療機関から「健康診断」の案内が来た、「定期検診」を一度受けに行こうなどと誘うことも有効です。

また、同年代の親しい友達などがいる場合は、「最近、認知症のような症状がでて病院へ行った」「すごく親切で良かったよ!一度行ってみたら?」「この年になったらみんな行くよ」などといったポジティブな情報を発信してもらうことも有効です。

それでも受診が難しい場合は、「認知症相談窓口」や「地域包括支援センター」などに事情を相談してみましょう。

(9) 認知症は早期発見・早期治療が大切

認知症の原因となる病気には、「慢性硬膜下血腫」や「正常圧水頭症」のように、早期診断・治療すれば治るものあります。

また、アルツハイマー型認知症は早期からの治療で進行を食い止める・遅らせることもできますし、最近の研究から体や頭を同時に使い認知症予防を行う事で認知症予防・改善できる可能性が高いと言われています。

そのためにも、認知症の早期発見・早期治療は肝心です。

(10)長谷川式スケールで認知症の早期発見を

長谷川式スケールは、インターネットでも項目が上がっており検査時の注意点も記載されています。少しでも気になる症状が見られた場合は一度スケール上の項目を会話の中でも良いので質問し、認知症の簡単な判断は行う事ができます。

長谷川式スケールを使用して認知症の早期発見を目指しましょう。

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