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介護業界でサービス残業は当たり前なのか|実態や原因、その解決方法等

就職・転職
介護業界は、慢性的な人手不足や残業を申請しにくい雰囲気のため、介護業界で働く人の約6割がサービス残業を経験しています。働き方改革がスタートしたことを機に、管理者側もスタッフ側も残業について見直す必要があります。
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(1)介護業界における残業の実態 

出典・引用:家計経済研究所『在宅介護のお金と負担』

介護業界は残業が多い?

介護業界は、“残業が多い”、“残業が当たり前”という、巷で使われている“ブラック”の話がよく聞かれますが実態はどうなのでしょう。

介護業界の労働時間は、厚生労働省の調査によると正規職員で月164時間、月21日勤務、1日7.8時間という結果になっています。この数字を見る限り、決して残業が多いとは言えない状況です。ですが、なぜ、「介護業界は残業が多い」となるのでしょう。

この要因として、「実労働時間」-「記録上の労働時間」に表されるサービス残業というものが多く関わってきます。このサービス残業についてこれから説明していきます。

(出典:厚生労働省「II 事業所における介護労働実態調査結果-事業所用-」(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-   Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000071241.pdf))

(2)介護業界はサービス残業が多い? 

サービス残業とは?

サービス残業とは、勤務時間外でも実際には働いている、または実働はないものの待機などで時間が拘束されているにも関わらず、残業代がつかない状況で働くことです。

サービス残業が生まれる要因としては、事業所の管理者が残業を認めてくれない場合と、自分から「残業をつけるといろいろ言われたり、仕事ができない奴と思われたくない」という理由から残業を申請しない場合があります。

残業とサービス残業の違い

残業は、勤務時間となるので、通常の給料とは別に時間外手当が加算されます。また、勤務時間内にケガやトラブルがあれば労災や事業所が入っている各種保険が適用されます。

一方、サービス残業は勤務時間外、つまりプライベートの時間という扱いのため、実際に働いていても時間外手当は加算されず、また、何かケガやトラブルがあっても、労災も保険も適用されないので働く側にはリスクしかありません。

サービス残業をしている人は、介護業界の半数以上もいる

前出の厚生労働省の調査では、介護業界の労働時間は標準的な数値でしたが、全労連介護・ヘルパーネットの調査によると、「サービス残業がない」という回答は38.9%で、残りの61.1%が「ザービス残業がある」という衝撃的な回答でした。

サービス残業の内訳も、“5時間未満“が一番多く23.7%、10時間未満が14.1%、15時間未満が10.1%となっています。つまり介護業界の半数以上がサービス残業をしているという事になります。

(出典:全労連介護・ヘルパーネット「介護施設で働く労働者のアンケート調査」(http://www.zenroren.gr.jp/jp/kurashi/data/2014/140805_01.pdf

(3)介護業界でサービス残業が増えた背景・原因 


出典:https://www.irasutoya.com/

介護報酬の減額

介護スタッフの給料も基となるのが、高齢者である利用者と国・都道府県・市区町村が事業所に支払う利用料(介護報酬)です。この介護報酬は、厚生労働省が定めており、定期的に改訂しています。

この介護報酬は、そもそも一般的な企業の給与額よりも低いといわれていますが、高齢者の増加に伴う介護報酬の増加により社会保障費の支出が年々増えています。

国は社会保障費を抑制するために介護報酬を減額することで、介護事業の収入が減るため、人件費の抑制、削減のために残業代を渋る事業所が生まれてしまうのです。

人手不足

全産業的に労働者不足のなか、介護業界も慢性的な人手不足で悩んでいます。介護スタッフが足りていないため、シフトが組めない、業務内容がスタッフの数に見合っていない、一方で必要なケアをしなければいけないという責任感からサービス残業が生まれています。

介護現場の圧力

介護現場では、残業をしても“残業をつけづらい”という圧力があります。

例えば、事業所で「働き方改革で残業を減らさないといけない!」といつも責任者が言ってる、あきらかに時間外で働いていることに責任者が気づいても「残業を申請しなよ」とも、「時間過ぎてるから帰っていいよ」とも責任者は何も言わない、他のスタッフがサービス残業をしているなどがあります。

時間外での勤務をしてもとても残業を申請する雰囲気ではなく、この“時間内に仕事が終わらなかったらサービス残業をしてでも片付けて帰るのが当たり前“という目に見えない圧力が、サービス残業を生んでいます。

管理者という立場

施設長やホーム長など管理者は、施設の責任者という責務や管理する仕事が多岐にわたっていますが、“管理職”という扱いのため残業などの規定に該当しないという見解でした。

このためサービス残業が当たり前のように横行し、その結果、その下で働くスタッフも「上司がサービス残業をしているから」と残業を申請しにくい土壌が作られています。

その他

その他にも、介護業界で働くスタッフが言われる“福祉の人だから”というセリフ。

一般的に「福祉の人」=「困ったら何でもしてくれる」という誤った認識で、本来の業務内容や業務時間に関係なく、家族ができないこと、近所ができないことなどを「福祉の人なんだから」とお願いされることがあります。これも残業を増やしてしまう要因になっています。

(4)介護業界でなぜ残業時間が増えるのか? 

なぜ、介護業界は残業が増えるのでしょう?残業が増える要因3点をご説明します。

申し送り

施設勤務などでは、勤務時間内に発生した事案、トラブルなどとその後の対応の報告を次のシフトのスタッフに申し送りします。

申し送りの時間は以下のようなときに延びてしまいがちです。

  • 事案やトラブルが多い
  • 対応に難しい問題がある
  • 対応したスタッフの記録がしっかりしていない
  • 次のシフトのスタッフの勤務経験が浅い

こういった場合の申し送りに要する時間が残業を増やす要因の一つとなっています。

委員会やカンファレンスの出席

介護は“チームケア”というスタイルのため、高齢者(利用者)に関するいろいろな打ち合わせがあり、その打ち合わせに出席します。

会議には、以下のようなものがあります。

  • 入院時や退院時のカンファレンス
  • ケア会議地
  • 域包括ケアシステムの構築に関する会議民
  • 生委員との打ち合わせ
  • 行政が行っている介護保険運営協議会
  • 地域包括支援センター運営協議会
  • 在宅医療・介護連携推進に関する委員会

このようにたくさんの種類があるので、平日の日中だけでなく、夜間や土日の会議も増えてきています。

なかには、独居高齢者の退院カンファレンスなど答えが見つからず長時間になるような会議もあります。これらの会議が増えていることも、残業を増やす要因となっています。

緊急対応・トラブル対応

緊急対応やトラブルの対応によって時間が多くかかってしまう場合もあります。

施設

施設に入居、または利用している高齢者は、体調が急変するなどの緊急対応がよく起こります。体調が急変すると以下のような関連業務が発生します。

  • 部屋に行って様子を見る
  • 救急車を呼ぶ
  • 救急隊に状況を報告する
  • 親族に連絡・報告する
  • 経過を記録する
  • 次のシフトのスタッフに申し送りする

これらのような仕事が勤務時間終了間際の場合、緊急対応を途中で止めて帰宅するわけにはいかないので、当然時間外対応になっていきます。

在宅

在宅の場合でもトラブルなどの対応で、介護スタッフがまるで保証人や家族のように勤務時間外に呼ばれることがあります。以下は、トラブルの例になります。

  • 虐待対応
  • 徘徊
  • 独居高齢者の体調の急変
  • 安否確認

(5)残業問題を解決するには?

出典:https://d1f5hsy4d47upe.cloudfront.net/08/08d0ddb245c6178b777de5456840a9de_t.jpeg

施設を運営する責任者も、そこで働くスタッフも「福祉で働きたい」という思いで始めたのに、“残業”という労働環境で問題となってしまい、仕事を辞めてしまうのはとても残念なことです。そうならないために施設向けと職員向けの双方の視点で解決方法をご説明します。

施設向けの残業問題解決方法

残業の定義づけを行う

施設における残業の定義をしっかり設け、時間外で働く場合は、運営者がスタッフに依頼や指示をするように指揮命令系統の徹底を図る必要があります。

業務の効率化

介護業界に限らず、今の日本の産業全体として、人手が足りない、業務が多い、運営資金(残業代)に限りがある、という状況化でまず取り組むべきことは、業務内容の見直しです。

今までのように「どれも大事な業務」とは言ってられないので、今一度、業務内容を見直して、効率化を図ることで残業を減らすことが求められます。

外国人スタッフの導入

国では慢性的な人手不足を解消するために、国では入国管理法の改正を行いました。これにより介護職を含む人手不足で悩む業種に限り日本への入国や滞在期間の条件を緩和され、外国人労働者の導入がしやすくなりました。

外国人ゆえ、“言葉の壁”、“習慣の壁”などはありますが、慢性的な人手不足を解消することで、サービス残業を生む要因を抑えることが出来ます。

ロボットの導入

やはり国では、慢性的な人手不足や介護スタッフの腰痛対策などとして、さまざまな介護ロボットやIT化が進んでいます。初期投資の費用という問題はありますが、こちらも慢性的な人手不足や介助時の重労働の問題を解決する方法の一つです。

いかにロボット・AIの導入が効果的か、またロボットの導入の手順については下記の記事にてまとめています。

事業所の統合

小規模のデイサービスなどは、利用者にとっては小回りの利く事業所ですが、スタッフの確保の問題や事務費を削減しにくい面があります。

デイサービスを統合することで、事業所の賃料や車の維持費、ドライバーの費用、介護報酬の計算などで事務費を削減でき人件費に回すことができます。また、人材不足を解消することもできるので、サービス残業の抑制効果が見込めます。

また、小規模のヘルパー事業所などは、ヘルパーの替えが不足しがちのためサービス残業が生まれやすい状況です。小規模の事業所同士で統合を図ることで、運営者側の負担の軽減、ヘルパーの負担の軽減などスケールメリットが多く得られます。

ヘルパー事業所は立ち上げた際の志しや介護事業への思いに違いがあり、簡単に統合が難しいとは思いますが、こちらもサービス残業を解決する方法の一つです。

職員向け

残業代を請求する

時間外で働く場合は、事前に管理者に相談し、管理者から残業の依頼があれば残業を請求する、依頼がなければ時間で仕事を上がるというクセをつけるようにしましょう。

相談

介護業界は、一般的な企業のように労働組合を持たない事業所が圧倒的に多いため、労働者の権利が守られていません。

職場での問題で相談したい場合は、介護業界全体の労働組合や都道府県が設置している労働に関する相談窓口などは無料解決にむけた相談ができます。また、残業代を請求したい場合などは、費用がかかりますが弁護士事務所などに相談する方法があります。

転職

残業代を請求しにくい、または残業代の請求に応じてくれない場合や、労働組合や都道府県の窓口に相談しても進展が見込めないときは、労働環境がしっかりとした施設に転職する方法もあります。その際には、しっかりと“ホワイト”な施設を選ぶようにしましょう。

(6)介護業界のホワイトの職場を見分けるには? 

これから「介護業界で働きたい」、または「今働いている事業所はブラックなので辞めて、新しい事業所で働きたい」という人が、ホワイトな事業所を見分けるためのポイントを5点ご紹介します。

1.認定の有無

労働時間の短縮や休暇取得など職場環境の改善などに取り組んでいる介護事業所を2019年から厚生労働省が認定する認定制度が始まります。この認定を受けているかどうかが、ホワイトな職場の目安になります。

2.求人募集に残業代の規定がある

求人募集を見るときに、どうしても時給や月給欄、勤務時間帯に目が行ってしまいますが、残業や残業代といった“各種手当”の規定を掲載しているかどうかを確認しましょう。掲載していなかったり、あいまいな表現で掲載している事業所は、ちょっと心配です。

3.在籍年数が長い職員が多い

一般的に、労働環境が悪い事業所はスタッフがすぐ辞めてしまうので離職率が高くなりますが、労働環境がいい事業所は長く働くので、在籍年数が長い職員が多くなります。気になる事業所があれば、その事業所で働くスタッフの在籍年数をホームページなどで確認するのも貴重な判断材料となります。

4.兼業主婦が多く在籍している

兼業主婦は自身の子育てや親の介護など多種多様なライフスタイルのなかで仕事をしなければいけません。

そんな兼業主婦が多く働いている事業所は、画一的でサービス残業が多い労働環境ではなく、柔軟性があり、残業もそれほど多くない、またはしっかり残業代が支払われている事業所という見方ができます。

兼業主婦が多く在籍している事業所もホワイトな職場の目安といえるでしょう。

5.仕事やスタッフの管理体制

利用者の管理、仕事内容の管理、スケジュール管理、スタッフの管理などが紙台帳や紙帳簿で行われている所は、記録を残すのも手書き、書類作成も手書き、その書類を捜すのにもひと苦労するという非効率的な労働環境です。

ですが、パソコンなどシステムが導入されている事業所は、効率性が高く、ホワイトな職場といえるでしょう。

(7)介護業界の残業ルール


出典:https://www.photo-ac.com/

時間内に仕事が終わらなかったから残業しているという人も多いかと思いますが、残業には法律上のルールがあります。この章では、残業に関するルールをご説明します。

労働時間

労働基準法という法律があり、このなかで、「1週間について、40時間、1日について8時間を超えて労働させてはいけない(第32条)」という規定があります。つまり、1日8時間以内、週40時間以内が基本的な労働時間となります。この時間を超えた労働が“残業”となるのです。

残業時間

労働組合がある事業所は、残業に関しては36協定(「サブロク協定)というものがあり、残業時間は、1ケ月45時間以内1年間で360時間以内と上限が定められています。労働組合がない事業所も基本的に36協定の時間が上限の目安となります。

(8)2019年4月から残業規制が始まる

「時間外勤務をしたら残業代を払えば問題ない」と思っている管理者の方は気をつけてください。

残業時間の上限や残業の割増賃金率、罰則を定めた「働き方改革関連法」が、2018年の7月に成立し、いよいよスタートします。大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から施行します。

残業時間の上限は次のとおりです。

通常の平均残業時間の上限 1ケ月45時間以内、1年360時間以内
特別条項の上限 1ケ月間100時間以内。ただし6ケ月間のみで、1年720時間以内

この時間を超える残業が発覚した場合は、罰則が科せられます。

この法律は、医師や研究開発者など除外や猶予される業種もありますが、介護業界は適用となりますので、特に運営者の方はご注意ください。

(9)残業問題による介護職員の離職 

負のスパイラル

サービス残業はもちろんのこと、残業手当がつく残業であっても、残業時間が増えることは離職の原因となります。(公財)介護労働安定センター「平成30年度介護労働実態調査」(http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2019_chousa_roudousha_chousahyou.pdf)によると、介護スタッフの労働条件の悩みのなかで「労働時間が長い」が9.2%、「不払い残業がある・多い」が5.9%となっています。

残業などで労働時間が延びることで、離職率が上がってしまいます。離職率が上がるということは人手不足となり、その欠員を埋めるために残ったスタッフでカバーするために残業がまた増えてしまうという、負のスパイラルに陥ってしまいます。

エア退社

「この仕事を最後までやりたい」、「自分の責任を果たしたい」、でも「残業は申請しにくい」という場合に、タイムカードや出退勤簿に退勤の記録を残し、そのまま仕事を続ける“エア退社“が問題となっています。

エア退社は、実労働時間の記録が残らない、サービス残業の助長、勤務外の扱いのため事故やケガの保険・保証が得られないという問題があります。

(10)介護職に就かれている方はもう一度ご自身の残業を考え直してみては?

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/346365

介護職に就かれている方はもう一度ご自身の残業を考え直してみよう!

せっかく「介護の世界で働きたい」という志しで働き始めた仕事なので、介護事業所の運営者や責任者、管理者、そして働くスタッフも、働き方改革がスタートしたことを機に、今後働き続けられるために、残業を含めた自分の働き方を考え直してみましょう!

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