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カジノ型デイサービスとは|施設での一日や料金、規制の可能性など

施設サービス
カジノ型デイサービスは、ゲームを取り入れて行われる新しい形の介護サービスです。楽しんで通える以外にも、ゲームそのものにリハビリの効果があることが分かっています。一方で、ギャンブル依存症などを心配する声も少なくありません。本記事では、そんなカジノ型デイサービスについて、内容や利用料金、賛否や施設例を詳しく解説していきます。
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(1)近年増加している、カジノ型デイサービスとは

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/799006

近年のデイサービスでは、体操や折り紙などの定番のレクリエーションにくわえ、料理や演劇、陶芸など、利用者が積極的に楽しめるものを取り入れようという動きが広がっています。

その試みのなかでも、特に注目を集めているのがカジノ型デイサービスです。

カジノ型デイサービスでは、スロットマシンやルーレット、カードゲーム、麻雀など、実際のカジノで行われているゲームを遊び、それを通じてリハビリにはげむことを目的としています。もちろん、個人ごとに必要なリハビリや口腔ケア、入浴など、基本的なサービスもあわせて行われます。

このような取り組みは、利用者にとっても好評で、要介護度の改善にも一定の効果が認められるなど、さまざまなメリットがあると考えられています。一方で、公的介護保険としてのあり方に、疑問や抵抗を感じる声も少なくありません。

(2)カジノ型デイサービスの特徴

カジノ型デイサービスは、まず建物自体がアミューズメント施設のようで、一般的なデイサービスのイメージとは大きく異なっています。

さらに、施設によっては送迎車に黒塗りのワンボックスカーを用い、内装にもシャンデリアやステンドグラスを配置するなど、高級感を演出したりしています。

ある施設ではディーラー役の介護スタッフもベストにネクタイ姿の制服を着て、まるで本物のカジノにいる雰囲気を感じさせます。

とはいえ、もちろん日本では法律でカジノの運営自体が禁止されているため(2019年9月現在)、現金を賭けて遊ぶことはできません。ゲームに使用するのは、デイサービスの施設内のみで通用する架空の通貨です。サービスに利用できる以外は、換金や商品との交換も行われず、あくまで順位をきそって遊ぶためだけに用いられています。

また、ギャンブルが好きではないという人向けにも、カラオケやゴルフ、カフェスペースなど娯楽施設を用意して、より幅広い人に楽しめる空間となっています。

(3)カジノ型デイサービスの料金

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2368678

カジノ型デイサービスは、ギャンブルをあつかうといっても、基本的に介護保険サービスであることに変わりありません。

そのため、基本料金も通常のデイサービスと同様です。

デイサービスの料金について、より詳しい記事はこちら

→『デイサービスの利用料金について

  • 単価10円の地域
  • 1日に7〜8時間の利用
  • 介護保険の自己負担額割合が1割負担

の場合、以下の金額が目安となります。

介護保険の自己負担額割合について確認できる記事はこちら

→『介護保険負担割合の判断基準 | 3割なのはどんな人?1割と2割の違い

要介護度 自己負担額
要介護1 645円
要介護2 761円
要介護3 883円
要介護4 1,003円
要介護5 1,124円

実際には、等級地ごとに地域別単価がもうけられ、事業所の規模などによっても違いが出てくるので、利用前に施設のホームページなどで確認することが必要です。

要支援者の場合は条件にかかわらず、月ごとの定額制で以下のように決められています。

要支援度 自己負担額
要支援1 1,647円
要支援2 3,377円

なお、ゲームを遊ぶ際には、カジノ型デイサービスで配布される架空の通貨を使用するので、利用料金は一切かかることはありません。

というのも、日本では2019年9月現在、実際にお金を賭けて公的に賭博・遊戯行為を行うことが禁止されており、法律の観点から不可能であるからです。

(4)カジノ型デイサービスでの一日

カジノ型デイサービスでは、一日をどのように過ごすのでしょうか。

ここでは、実際にある施設の「デイサービス ラスベガス」を例に、その流れを見てみましょう。

午前9時

自宅まで、送迎車が迎えにきてくれます。施設に到着したら、体温や血圧などをはかり、その日の健康チェックを行います。その後、朝食を摂り、ストレッチで全体運動を行います。

午前10時

ソファやベッドで休憩して、映画鑑賞などでリラックスします。

午前11時

5分ほど部分運動をしてから、テーブルゲームのレクリエーションを行います。ルールが分からない場合でも、丁寧に教えてもらえるので誰でも参加できます。

午後12時

各自好きなタイミングで好きなメニューの昼食を摂ります。50分ごろに歯磨きをして、口腔ケアを行います。

午後1時

ふたたび全体運動を行います。そのあとは、利用者同士でコミュニケーションを取ったり、事前予約で入浴や個別リハビリのサービスを受けたりすることもできます。

午後2時

部分運動のあと、パズルや塗り絵などのレクリエーションを行います。

午後3時

部分運動のあと、ふたたびテーブルゲームのレクリエーションを行います。

午後4時

30分ごろに1日分のゲーム結果を集計して、もっともすぐれた人に表彰が行われます。45分ごろから送迎車で、各自帰宅します。

(5)カジノ型デイサービスを利用するメリット・デメリット

カジノ型デイサービスではそのメリットに大きな注目が集まっていますが、一方でデメリットを指摘する声も少なくありません。

それぞれ、くわしく見ていきましょう。

カジノ型デイサービスを利用するメリット

脳の活性化

ゲームの最大のメリットとして上げられるのが、脳の活性化です。特に、カジノゲームは戦略を練ったり、相手の考えを読み取ったり、得点や賭金の計算をしたりと、注意力や集中力もフルに使うので、認知症の予防にも効果が大きいとされています。ディーラーやほかのプレイヤーとのコミュニケーションが増えるのも、プラスになるでしょう。

機能訓練にもなる

また、カジノではカードゲームや麻雀、スロットのように指先を使うゲームが多いので、機能訓練としての効果も認められています。お金を出したり払ったりするのも、高齢者になると機会が減るので、よいトレーニングになります。実際に、カジノ型デイサービスを利用した人の多くに、要介護度の改善などが見られるケースが報告されています。

リハビリ・デイサービスへのモチベーションアップ

何より、リハビリに対して意欲を持てるようになるのも重要な点です。高齢になると何かと自宅に引きこもりがちになり、それがきっかけで心身にもおとろえが生じます。しかし、カジノ型デイサービスではみずから楽しんで施設に通う人が多く、さらに通貨をもらうために運動へも積極的に参加するようになるとされています。

カジノ型デイサービスを利用するデメリット

ギャンブル依存症の危険性

デメリットとしてもっとも指摘されるのは、ギャンブル依存症の問題です。これは、カジノ型デイサービスにかぎらず、通常のギャンブルでも同じことがいえます。ゲームばかりに夢中になって、普段の日常生活が退屈になってしまったり、ストレスが溜まってイライラしやすくなったりと、さまざまな悪影響が考えられます。

周囲への印象

もうひとつは、周囲への悪印象です。カジノ型デイサービスは、その雰囲気などからギャンブルや風俗のイメージを持たれることもあり、本人や家族が周りから白い目で見られる可能性もあります。また、近隣住民にとってもギャンブル場のような建物があることに、抵抗感をおぼえる人も少なくないようです。

(6)カジノ型デイサービスが増加してきている背景


出典:https://www.photo-ac.com/

デイサービスの数は、介護保険がスタートした2000年以降から大きく増加して、2002年には早くも1万件を突破しています。さらに小規模デイサービスが創設された2006年からはその割合が高くなり、全体で2倍となる2万件以上を記録しています。

この背景には、デイサービスは宿泊が必要ないので施設の管理に手間やコストがかからず、スタッフも資格のハードルが低いので集めやすい、といった理由がありました。

しかし、2015年に介護保険の見なおしで小規模デイサービスの介護報酬が10%近く削減されると、その影響からか、2016には倒産数が23件とそれまでの1桁台を大きく上回ってしまいます。その後も、毎年数十件程度の倒産を出しつづけ、全体数も2016年にピークの4万件を超えて以降は、減少に転じてしまいます。

このように、明らかに供給過多となってしまった状態では、各事業所はひとりでも多く利用者を獲得しようと、さまざまなサービスを取り入れるようになりました。カジノ型デイサービスが増えはじめたのも、その流れが理由のひとつとなっているわけです。

(7)カジノ型デイサービスには肯定的な意見と否定的な意見がある

カジノ型デイサービスをめぐっては、世間でもさまざまな肯定意見と否定意見が出ています。

その内容を、くわしく見てみましょう。

肯定的な意見

肯定的な意見は、おもにリハビリテーションとして効果が高いというものです。

ゲームが機能訓練や認知症予防に役立つというのももちろんですが、これまでデイサービスにあまり興味が持てなかった人も、多く通うようになっている点が指摘されています。

特に、デイサービスでは男女間のサービス利用にへだたりがあり、男性の利用者は全体のわずか20%程度しかないことが問題視されていました。

これは、男性のほうが女性にくらべて新しい環境になじみにくく、コミュニケーションに消極的な人が多いことが原因として考えられています。また、体操や折り紙などのレクリエーションが子供っぽく感じられ、抵抗があるという意見も少なくありません。

その点、カジノ型デイサービスでは男女比がほぼ半々となっていて、あきらかに通いやすくなっていることが分かります。

否定的な意見

否定的な意見としては、やはりギャンブル依存症を心配する声が目立ちます。

現在のところ、そのような報告はまだ上がっていませんが、もしもギャンブル依存症になってしまった場合、リハビリ面でも悪影響が出ることが考えられます。

それにくわえて、もうひとつ大きな問題となっているのが、介護サービスは介護保険や税金が財源となっているという点です。そのような公費をギャンブルに用いるのが本当に適切なのか、疑問を持つ声も広く聞かれます。

また、今後カジノ型デイサービスでのサービスが過剰になっていくことで、それにともない、保険料の上昇や自己負担増につながるのでは、という指摘もあります。

(8)カジノ型デイサービスは、今後規制が強まる可能性もある

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/727220

カジノ型デイサービスの規制については、すでに行われている地域もあります。

まず全国に先駆けて、兵庫県神戸市では2015年9月に、カジノ型デイサービスを規制する条例が可決されました。

それにより、以下の3点いずれかにあてはまる業者は、デイサービスの事業者に指定しない、とさだめられています。

  • 射幸心をあおるゲームを一日中行える
  • 依存症を強める疑似通貨を用いている
  • 賭博や風俗をイメージさせる広告がある

さらに、10月には兵庫県でも同様の条例が可決されています。

じつは、この時点ではまだ兵庫県や神戸市にはカジノ型デイサービスは進出していませんでした。しかし、近年の増加傾向を受けて、先手を打ったということのようです。

実際に、兵庫県姫路市にあるクルーズ船を模したデイサービスでは、プールや音楽、園芸など娯楽性の高いレクリエーションとして、カジノゲームも導入されていましたが、条例可決をきっかけに撤去されています。

姫路市は介護事業所の指定を独自に行える中核市なので法改正の影響はありませんが、規制が広がるのを見すえて予防措置を取ったという形でしょう。

現在のところ、厚生労働省ではカジノ型デイサービスのプラスの面を認め、静観の構えを見せています。しかし、今後ギャンブル性を強くしたサービスがあらわれたり、全国各地に広がったりすると、あらためて規制の動きが出てくる可能性も否定できません。

(9)東京・福岡などに多いカジノ型デイサービスの施設例

現在、日本で中心となってカジノ型デイサービスを展開しているのが「デイサービス ラスベガス」です。

運営を行う株式会社日本エルダリーケアサービスでは、もともと介護サービスを広く手がけていましたが、現代表がアメリカで笑顔あふれる介護現場を目のあたりにしたことがきっかけで、このサービスが生まれました。

まず、2013年に東京都足立区に第1号店、さらに翌年には、神奈川県横浜市に2号店がオープンしています。

その後、関東を中心に加盟店もふくめ、

  • 東京都
  • 埼玉県
  • 群馬県
  • 神奈川県

に15店舗、さらに中部地方の

  • 静岡県
  • 愛知県
  • 岐阜県

に7店舗、そして2019年には九州の宮崎県にも1店を展開しています。

ラスベガスの名称どおり、店内は華やかなカジノ風の装飾にいろどられ、バカラやブラックジャックなど、かなり本格的なゲームを楽しむことができます。

ほかにも、ディーラーの制服や、景品の記念紙幣、日々の記録をつけるパスポートなど、とことん雰囲気にこだわって、楽しい時間を過ごせるように工夫されています。

デイサービス ラスベガス(外部リンク)

URL:http://las-vegas.jp/

(10)カジノ型デイサービスは賛否両論。デイサービスの目的を考えてみよう

カジノ型デイサービスは、まだはじまったばかりのサービスということもあり、その見方は人によってさまざまです。

高齢者が積極的に参加して、さらにゲームそのものに機能訓練やコミュニケーション促進の効果があることもまちがいありません。デイサービスはまず通わなければ意味がないので、その点では確実にプラスといえるでしょう。

一方で、こうしたサービスが増えてくると、ギャンブル性のみを追求した事業所が出てくることも否定できません。しかし、デイサービスの目的は、あくまで利用者の日常生活の質を向上させることにあります。もちろん、家族の介護の負担をやわらげるという点も重要でしょう。

そうしたことをあらためてよく考えたうえで、今後のカジノ型デイサービスの成り行きを見守っていきたいところです。

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