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認認介護とはどのようなものか|原因や問題点、対策について解説

社会問題
認認介護とは、高齢者世帯の夫婦ともに認知症になってしまい、認知症の夫(または妻)が認知症の妻(または夫)を介護するという介護する側は非常に負担が大きいもので、生活面の崩れや火事、医療未受診、虐待などのリスクが高い介護状態です。 本記事では、そんな認認介護について、問題の具体的な内容や背景・原因、問題点や対策などを説明します。
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(1)認認介護とはどういうものか

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/798651

増え続ける認知症

日本は、急速な超高齢化、核家族化により65歳以上の夫婦のみで暮らしている“高齢者世帯”が増加しました。高齢者世帯の増加に合わせて、高齢者世帯の一方(例えば夫)が介護を必要となったときに、もう一方(例えば妻)が介護をする「老老介護」も増加しています。

さらに近年、厚生労働省によると、認知症患者の数は、2012年に約462万人だったものが、毎年増加を続け2025年には700万人を越えるといわれています。

「老老介護」よりも負担の大きいとされる「認認介護」

認知症の増加により、高齢者世帯の一方(夫または妻)、さらには高齢者世帯の夫婦ともに認知症になるケースも増え、「老老介護」よりも大変な「認認介護」をしている高齢者世帯も増えています。

老々介護について、より詳しい記事はこちら

→『増えている老老介護 | 認認介護に発展する危険性も・原因や対策

「認認介護」とは、高齢者世帯の夫婦ともに認知症になってしまったものの、高齢者世帯では夫婦以外の介護者がいないために、認知症の夫(または妻)が認知症の妻(または夫)を介護するという介護する側は非常に負担が大きいものです。

(2)認認介護の実態

この章では、「認認介護」の実態について、ご説明します。

認知症世帯の増加

認知症は特別な疾患ではありません。介護保険の要介護認定を申請するきっかけの第1位が認知症で、全体のうちの約2割弱になっています。(2019年6月現在)

内訳を見ても、要支援1から要介護5までの7区分のうち、要介護1~4までの4区分の1位が認知症で占めているのです。

また、内閣府の発表によると、2015年時点ですでに高齢者の38.9%が高齢者世帯となっており、高齢者世帯が増加傾向でることから、認認介護の状況も増加している状況となっています。

(参考:内閣府(2017)『平成29年版高齢社会白書(全体版)』)

介護者は、「高齢者」+「認知症」+「24時間体制」しかも、「ワンオペ」

世帯の夫(または妻)は、65歳以上の高齢者で、介護がないと自立した生活が送れず、しかも認知症であるという状況です。この状況を、65歳以上の高齢で、介護がないと自立した生活が送れず、しかも認知症である妻(または夫)が、1人で対応する、いわゆる「ワンオペ」状態で、しかも24時間体制で介護しなければいけないという、非常に過酷な状況です。

このため、介護を受ける人だけでなく、介護をする側の双方が共倒れしてしまうケースも決して珍しくありません。なかには、介護をしている人が限界を感じ、虐待や介護放棄、そして最悪の場合は事件などに至ってしまうケースもあります。

認認介護の現状

厚生労働省が行った「平成25年国民生活基礎調査」によると、全国の老老介護の状況は、在宅で介護をしている世帯の半数以上(51.2%)となっており、2世帯に1世帯が老老介護となっています。

そのうち認認介護の世帯割合については、国レベルでの調査結果はないためはっきりとした数字は分かりませんが、「認知症の人は、7人に1人から2025年には5人に1人が認知症」(厚生労働省が2015年1月に発表)という数字から考えれば、認認介護の世帯は増加傾向にあるといえます。

(3) 認認介護が生まれる原因① 平均寿命と健康寿命の差

なぜ、認認介護のケースが増加してきているのでしょうか。これより、上の図で示している認認介護が生まれる背景として考えられるポイントを3点、ご説明します。

まず、①平均寿命と健康寿命の差についてご説明します。

日本の平均寿命について

日本の平均寿命が男性で81.09歳、女性で87.26歳になり、前年度(男性80.98歳、女性87.14歳)よりも約0.1歳も伸びました。

(参考:厚生労働省「平成29年簡易生命表」)

医療の発達や栄養が良くなったことで平均寿命は毎年伸びており、今では年齢が「100歳」という人も決して珍しくなくなっています。

日本の平均寿命について、より詳しい記事はこちら

→『日本の平均寿命の推移と世界との比較 | 長い原因や延ばすためにできること

健康寿命と平均寿命との違いについて

一方で、平均寿命から寝たきりなどの重介護を必要とする期間を指し引いた健康的な生活を送れる期間である「健康寿命」は、男性が72.14歳、女性が74.79歳(平成28年)となっています。

健康寿命も毎年少しずつ伸びてはいるものの、まだまだ平均寿命との開きが男性で約9歳、女性で約12歳もあります。

この「平均寿命」から「健康寿命」を差し引いた期間、すなわち「介護が必要な期間」が、平均的に

そのため、「老老介護」という状況にいる要介護者がさらなる高齢化で認知症になり、介護をしている人も高齢により介護が必要な状態になり、ついには要介護者も介護者も認知症になってしまう、という連鎖を生み出しやすくなってしまっているのです。

(4)認認介護が生まれる原因② 核家族化

親子で同居する世帯が減少

次に2番目の要因として「核家族化」についてご説明します。

以前は、長男又は長女が家を継いで親や祖父母と一緒に生活をする大家族主義が主流でしたが、高度成長期以降、地方都市の若者が就職や大学進学のために東京圏や大阪圏、名古屋圏などの都市部へと流出し、地方都市では深刻な「過疎化問題」が発生しました。

また、流入した都市部においても、子供が仕事や結婚での独立、晩婚化による少子化や子供を産まない夫婦が増えたことで、核家族化し、高齢者夫婦だけで生活をする「高齢者世帯」が増えています。

総務省の発表によれば、平成12年では子供と親が同居する世帯が約4割だったのに対し、平成27年には約33%と、15年の間に減少しています。

(参考:総務省統計局(2019)『平成27年国勢調査 世帯構造等基本集計結果』)

子どもと同居しない核家族は、年とともに高齢者夫婦世帯と移っていきます。高齢者夫婦世帯は、昭和61 年に約200万世帯でしたが、平成29年には約1300万世帯と6倍以上に増えています。

(参考:厚生労働省(2018年)『平成 29 年 国民生活基礎調査の概況』)

高齢者世帯が増えることで、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」、そして、重度化した「認認介護」に至っているのです。

(5)認認介護が生まれる原因③ 金銭的事情

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2075837

認認介護が生まれる原因3つめは「金銭的事情」についてです。

男性の場合、一般的には60歳で会社を定年退職し、その後の数年間は、元の会社で再雇用勤務や、アルバイトなどで働き給与収入が得られますが、70歳を過ぎると年金収入だけに頼る人が増えます。

女性の場合、今と違って昔は女性が働くという概念が薄かったため、高齢になって無年金または十分な年金が得られない人も多いのが現状です。

高齢者になると、給与収入がなくなり、十分な年金が得られないことから、厚生労働省の発表では、高齢者世帯で生活保護を受給する世帯が2年間で5万世帯も増加しています。

十分な収入がないことで、外出する機会や必要な医療や介護サービスを受けないことも、「老老介護」が増え、そのまま重度化し、「認認介護」に至ってしまっているのです。

(6)認認介護の問題点

認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護する認認介護は、どのような問題があるのでしょう。

これより認認介護の問題点5つをご説明します。

①生活面が崩れる

認知症により、短期記憶が低下してしまうため買い物に行っても必要なものを買わなかったり、同じものを買ってしまったりしてしまいます。また、調理で鍋を焦がす、味付けが極端になるのも認知症症状の特徴です。このため十分な食生活ができなくなります。

また、服薬を忘れる、病院への受診日を忘れる、ゴミ出しの分別方法や種類別にごみを出す曜日が分からないなど、生活面で支障がでてきます。

さらに認知症の症状がすすむと、電気機器(エアコンやテレビなど)に使い方が分からなくなり、洗濯ができない、入浴ができないなど衛生面にも支障が出てしまい、生活が大きく崩れてしまいます。

②火災の危険

認知症の影響で、ガスコンロの火を消し忘れ、鍋を焦がすことがあります。最悪の場合は火災に至ってしまう危険性もあります。同様にストーブや仏壇のろうそくを点けたまま外出や就寝してしまうこともあります。

なかには、ストーブの周りに新聞のチラシや脱いだ服やタオルなどが散乱しているなど、引火の危険性がある状況で生活をしているケースもあります。

③金銭管理ができない

認知症で記憶が低下し、機械の操作方法などの記憶も衰えてしまい、銀行の窓口やATMからお金をおろすことが難しくなります。

また、計算力も衰えてしまうので、年金収入に見合った食料品や日用品などの金銭管理も難しくなってきます。さらには、短期記憶の低下により、電気料金や水道料金、家賃など必要な支払いも忘れてしまい、家賃の長期未納が原因で退去命令がでることも珍しくありません。

金銭管理ができないために、詐欺や悪徳商法に騙される事件も増えています。

④必要な医療を受けられない

認知症により、通院日を忘れる、通院に必要な病院の受付カードが見つからない、病院に行きたくても介助者がいないので病院に行けない、といった理由で必要な医療を受けることができないために、病気や認知症などがどんどん進行してしまいます。

⑤虐待・事件

認知症の影響で正確な判断ができなくなることがあります。このため、夫(または妻)の様子がおかしい、倒れたなど体調の悪化に対応ができず、最悪の場合は夫婦ともに共倒れになる事件も起きています。

また、認知症の症状は介護者をイライラさせることがあり、介護する側も、認知症で正確な判断ができない、感情のコントロールができないために高齢者虐待を引き起こす原因になっています。

虐待ケースの45.5%が介護が必要な認知症、10.6%が介護は必要ないが認知症、12.8%が認知症の疑いがあるという結果(参考:東京都総務局人権部「東京都高齢者虐待事例情報調査の結果について(2006年)」)がでています。

高齢者虐待について、より詳しい記事はこちら

→『高齢者虐待の事例 | 通報の義務・原因・防止の取り組みまとめ

(7)認認介護の対策① 兄弟姉妹や子供、親せきを頼る

認認介護は、生活面や健康面での問題があり、火災や虐待のリスクもある負担の大きい介護状態です。それでは、認認介護になった場合はどうすればいいのでしょう。

この章では、認認介護の対策として、兄弟姉妹や子供、親戚に頼ることについてご説明します。

認知症は、何もしないでいるとどんどん進行してしまいます。そこで、定期的に家の中に入り、認知症夫婦の身体的な状況や部屋の様子などを見て、体調の変化や部屋の異変を察知することが、とても重要になってきます。

しかしながら、ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員など、本人が知らない人は、なかなか家の中には入れてくれません。そこで、定期的に部屋に入れるのは、兄弟姉妹や子ども、親せきになります。

また、救急医療での治療や手術、入院、施設入所などでは、ほとんどのケースで親族の同意書が必要となります。

早い段階から兄弟姉妹や子供、親せきと連絡を取り、協力を求めることが必要です。

(8)認認介護の対策② 介護サービスを利用する


出典:https://www.photo-ac.com/

前章で認認介護の対策として兄弟姉妹や子ども、親せきに頼ることが必要と説明しましたが、なかには、兄弟間の関係が悪い、子どもには迷惑を掛けられない、子どもがいない、親せきとは疎遠ということで、頼りずらいというケースもあります。

また、協力を得られても遠方に住んでいて頻繁には見に行けないということもあります。そこでこの章では公的サービスについてご説明します。

介護保険サービス

65歳以上であれば、介護保険サービスの申請ができます。まずは、地域包括支援センターに相談し、要介護認定を申請し、認定結果に基づいてヘルパーサービスやデイサービス、訪問看護など介護保険サービスを受けることができます。

特に、看護師が自宅に来る訪問看護サービスは、服薬や体調管理などのケアをお願い出来るので認認介護にとって大きな存在です。

介護保険サービスの利用については利用料(自己負担分)が発生しますが、収入に応じて1割から3割となっているので、少ない負担でサービスを利用することができます。

介護保険サービスについて、より詳しい記事はこちら

→『介護保険サービスとは | 特徴・内容・自己負担額など

市町村の高齢者サービス

市町村ごとに、いろいろな高齢者サービスがあります。配食サービスや徘徊探知機の貸し出し、オムツ代の補助、タクシー券給付、豪雪地帯では除雪費用の補助などいろいろなサービスがあります。

市町村の高齢者サービスの利用料は、無料または利用料の1から2割程度なので、こちらも少ない負担でサービスを利用することができます。

ただし、どのサービスも必ず申請が必要です。市役所や地域包括支援センターに利用条件や必要書類などについて相談してみましょう。

(9)認認介護の対策③ 予防する・状態の悪化を遅らせる

認認介護の対策、最後は認知症そのものに対する対策です。残念ながら今の医療では認知症を完全に治すことが難しいとされていますが、認知症の症状が悪化するのを遅らせる方法、そして認知症を予防する方法はあります。

この章では、「認知症予防」と「認知症の進行を遅らせる」という2つのアプローチについてご説明します。

認知症予防

認知症予防のアプローチとしては、様々なものが指摘されてきています。その中でも、最も肝要なもののうちの一つに、「生活習慣」に対する意識を高めることが挙げられます。

具体的には、

  • 1日3食、野菜や魚、肉などバランスのとれた食事をする。
  • 毎日、同じ時間に起きる、同じ時間に寝るなど生活習慣を整える。
  • 喫煙や適量を超えた飲酒を避ける。
  • 地域活動などに参加し、話をしたりする。
  • 定期的に体を動かして、脳に刺激を与える。

などといったことが挙げられます

認知症の進行を遅らせる

認知症予防しても、認知症になってしまったら次の策は認知症の進行を遅らせることです。

具体的には、

  • 認知症を受け入れてくれるデイサービスなどに行き、いろいろな人と話したり、体を動かすなど、脳に刺激を与える。
  • 毎日、しっかり服薬をする。

などが、明日からすぐ始めることができる習慣の例として挙げられます。

なお、服薬に関しては、「お薬カレンダー」や「お薬手帳」などのアイテムを使うと便利です。

お薬手帳の使い方などに関して、より詳しい記事はこちら

→『お薬手帳とは | 割引などのメリットや、アプリの説明など

その他、最近ではお化粧をすることで脳に良好な刺激を与える「化粧療法」やペットと遊ぶ「ペット療法(アニマルセラピー)」や昔好きだった音楽を聴く「音楽療法」など多くの手法が発表されていますので、そういった方法を試してみるのもいいでしょう。

ペットとの触れ合いなどを通じて脳を刺激したりすることができる「アニマルセラピー」について、興味を持った方は、ぜひこちらの記事もご参考下さい。

→『アニマルセラピーとは│認知症への効果や向いてる犬種、問題点など

(10)介護サービスの利用を考えてみては

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/424016

どんどん悪化する「認認介護」

少子高齢化などにより、核家族が増え、高齢の夫婦だけで生活する高齢者世帯が増えています。高齢になるにつれて介護が必要になっても、核家族のために介護する側も高齢という“老老介護”という状況も増えています。さらに、介護される側も、介護する側も認知症になってしまう“認認介護”に至ってしまうケースも増えています。

認認介護が生まれてしまう原因は、平均寿命と健康寿命との差、つまり重度な介護する期間が男性で9年、女性で12年もあること、核家族化により高齢夫婦者世帯が増えたこと、収入が限られているという金銭的な問題により、必要な医療や介護を受けられないためです。

認認介護は、夫婦ともに記憶の低下や正確な判断ができないなどのために、生活面が大きく崩れたり、火事のリスク、金銭管理ができない、必要な医療が受けられない、事件や虐待のリスクといった問題があり、そのままにしてはおけない問題なのです。

認認介護の3つの対策

本記事で説明した通り、認認介護に対して考えられる対策は、

  1. 兄弟姉妹や子ども、親族の協力をもらって、定期的に家族の様子や部屋の状況を見て変化や異変を感じ取ること
  2. 介護サービスや市町村が行っている高齢者サービスなど、無料や少ない費用で利用できるサービスを利用する
  3. 生活習慣や日常の活動などで認知症予防に努め、もし認知症になってしまったら、進行を遅らせるために介護サービスの利用や服薬をしっかり行うこと

が挙げられます。もちろんこれ以外にも対策としてできることはたくさんあります。認認介護を他人事とせず、今からできることをやっていきましょう。

介護サービスは「認認介護」の味方

認認介護は、生活面や病状、認知症の状況が悪くなっていきます。早め早めに使える方法を使っていけば認知症の進行を遅らせることができ、自宅での生活も続けていくことができます。

認認介護は、親族の力だけでなく、介護サービスを上手に使っていくことが重要なポイントです。

まずは、地域包括支援センターに相談してみましょう。

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