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【シミュレーション付】在職老齢年金の計算|それに必要な準備3つ

公的制度
働くことは生きがいにも繋がりとても良いことではありますが、60歳を過ぎて働くと老齢厚生年金の減額や全額支給停止になることがあります。これは在職老齢年金制度によるものです。複雑な在職老齢年金について、詳しく説明していきますので働きながら年金を受け取る方は参考にしてください。
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(1)計算する前に知っておきたい在職老齢年金とは

10年ほど前は60歳になれば会社を退職し、年金生活を送るというのが一般的であった時代もあります。

しかし、現在では男性は2025年、女性は2030年に支給開始年齢が65歳に引き上げられていることなどの影響もあり、60歳で定年になった後も働く方が増えています。

在職老齢年金とは60歳以降も厚生年金に加入しながら働き続けた方が受け取る老齢厚生年金のことを言います。そして月給と年金によっては、年金がカットされることがあるこの仕組みのことを「在職老齢年金制度」といいます。

ただし、65歳から受給できる老齢基礎年金は、働いても減額されることはありません。

この在職老齢年金では、受け取っている月給と年金額によれば、年金の支給カットだけでなく全額支給停止となる場合もあります。どれくらい働くと年金の支給がカットされるのか、また全額支給停止になるのか、これから詳しく説明していきます。

(2)そもそも自分は支給対象者?

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1504437

在職老齢年金は60歳以上で働いていること、厚生年金保険に加入していることが支給条件になります。しかし、そもそも在職老齢年金は、老齢厚生年金受給者が対象です。自分が老齢厚生年金支給対象者になるかを、チェックしておきましょう。

60歳から65歳までの方は、老齢基礎年金は受給できませんが、受給条件が揃っていれば老齢厚生年金は受給が可能です。これは「特別支給の老齢厚生年金」といわれるもので、次のような条件があります。

  • 男性の場合、1961年4月1日以前に生まれた方
  • 女性の場合、1966年4月1日以前に生まれた方
  • 共済組合の加入も含め厚生年金保険に1年以上の加入期間がある
  • 老齢基礎年金の受給資格がある(2017年8月1日からは10年の保険料納付済み期間)
  • 60歳以上であること

特別支給の老齢厚生年金には、報酬比例部分と定額部分がありますが、男性1949年4月1日、女性1954年4月1日以降に生まれた方は、定額部分の支給はありません。

また男性1949年4月2日~1953年4月1日、女性1954年4月2日~1958年4月1日生まれでは、報酬比例部分が60歳から支給開始となりますが、男性1959年4月2日~1961年4月1日、女性1964年4月2日~1966年4月1日生まれでは、64歳からの支給開始になります。性別や生年月日によって、支給開始年が違うことを知っておいてください。

また65歳からの老齢厚生年金の受給条件は、次のようになります。

  • 共済組合の加入期間も含め厚生年金の加入期間があること
  • 老齢基礎年金の受給資格があること
  • 年金受給ができる年齢に達していること

在職老齢年金では老齢厚生年金支給対象者でも、働くことで得られる月給によって、満額受給できるか、受給額がカットされるか、全額停止となってしまうか異なってきます。

(3)在職老齢年金を計算する際の事前準備① 報酬月額の算出

在職老齢年金を計算する際には、まず総報酬月額相当額を算出する必要があります。上記に書いている老齢厚生年金と合わせて考える月給とは、この総報酬月額相当額のことになります。この総報酬月額相当額は、標準報酬月額や標準賞与額などがわからないと出すことができません。

標準報酬額は、毎年4・5・6月に支給された報酬月額から平均額を算出し、健康保険・厚生年金保険法の保険料額表に当てはめることで出せます。これでその年の9月から翌年の8月まで、1年間の標準報酬額が決定します。

例えを挙げてみます。

4・5・6月にもらった報酬月額が22万・23万・23万とします。平均額を計算すると22万6千円となり、これを標準報酬月額表に当てはめると、標準報酬額は22万円となります。

(4)在職老齢年金を計算する際の事前準備② 過去1年間の賞与の算出

また総報酬月額相当額を出すために必要な標準賞与額は、1年間の賞与を12で割ったもので、千円未満は切り捨てになります。

1年間とは、もし2019年10月の総報酬月額を出す場合なら、2018年11月から2019年10月となり、総報酬月額相当額を出す月を含めて1年間さかのぼってもらった賞与の金額になります。このため計算する月が替われば、金額が変わってくる可能性があるので注意してください。

例えを挙げてみます。

10月の総報酬月額相当額を計算するとして、2018年11月から2019年10月の間に受け取った賞与額が72万5千円とします。

千円未満は切り捨てとなるため、標準賞与額は72万円になります。「72÷12=6」となり、総報酬月額相当額を計算するときの賞与額は6万円ということになります。

(5)在職老齢年金を計算する際の事前準備③ 年金基本月額の算出

在職老齢年金を計算するためには、年金の基本月額も知っておく必要があります。年金基本月額は、1年間に受給する老齢厚生年金の年金額を12で割ったものになります。在職老齢年金を計算するために、老齢厚生年金がいくら受給できるのかも確認しておきましょう。

老齢厚生年金の受給額の計算の仕方

1.60~65歳特別支給の老齢厚生年金の場合:定額部分と報酬比例部分を足したもの

●定額部分

1,626円×※生年月日に応じた率×被保険者期間の月数

※1952年以降に生まれた方で2019~2020年までは「0.938」

●報酬比例部分①+②

平均標準報酬月額×※生年月日に応じた率×2003年3月までの被保険者期間の月数
平均標準報酬額×※生年月日に応じた率×2003年4月以後の被保険者期間の月数

①の※は1946年以降に生まれた方では「7.125/1000」
②の※は1946年以降に生まれた方では「5.481/1000」

2.65歳以上の老齢厚生年金の場合:報酬比例部分のみとなり上記の計算と同じ

20歳以上60歳未満のすべての方には、納付した保険料や受け取る見込みの年金額などが記載された、「ねんきん定期便」が年に1回誕生月に送付されますが、60歳以上でも厚生年金保険の加入者には引き続き届きますので確認してみてください。

(6)実践!在職老齢年金のシミュレーション

在職老齢年金の計算に必要な項目が算出できたら、さっそくシミュレータで計算してみましょう。

結果は出たでしょうか?ここからは在職老齢年金のシミュレーションについて簡単に説明していきたいと思います。

先に説明したように在職老齢年金を計算するには、総報酬月額相当額を算出する必要があります。総報酬月額相当額は、「標準報酬月額+(標準賞与額÷12)」になります。

先ほどの例えでみると、標準報酬額は22万円となっており、賞与の月額6万円と足して28万円が総報酬月額相当額となります。

総報酬月額相当額が出ればこれに月額の老齢厚生年金を足すことで、在職老齢年金がいくらもらえるかわかります。先ほどの例えで、賞与ありと賞与なしでみてみましょう。

60~65歳 老齢厚生年金 5万円 (標準報酬月額22万円+賞与なし 総報酬月額相当額22万円)
5万円+22万円=27万円 28万円以下となるため支給カットとなる年金はなし

60~65歳 老齢厚生年金 5万円 (標準報酬月額22万円+賞与月額6万円 総報酬月額相当額28万円)
5万円+28万円=33万円 28万円を超えるため、支給カットになります。

自分のもらえる在職老齢年金がいくらか、また支給カットになるのか次からのシミュレーションで、しっかりチェックしてみましょう。

(7)在職老齢年金シミュレーションの結果を計算式から読み解く【60歳~65歳未満の方向け】

60~65歳では、年金基本月額+総報酬月額相当額が28万円以上になるのであれば、支給カットされることになります。年金基本月額と総報酬月額相当額によって、計算式が4通りにもなります。自分がどれを使えばよいか、チェックしてください。

1.年金基本月額+総報酬月額相当額28万円以下 支給カットなし

2.年金基本月額+総報酬月額相当額28万円以上 支給カットあり

2.の年金基本月額+総報酬月額相当額28万円以上の方は次の計算式で支給カット分が計算できます。

①年金基本月額28万円以下 総報酬月額相当額47万円以下
(年金基本月額+総報酬月額相当額-28万円)÷2

②年金基本月額28万円以下 総報酬月額相当額47万円以上
(47万円+年金基本月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-47万円)

③年金基本月額28万円以上 総報酬月額相当額47万円以下
総報酬月額相当額÷2

④年金基本月額28万円以上 総報酬月額相当額47万円以上
(47万円÷2)+(総報酬月額相当額-47万円)

わかりやすいよう、①の場合の計算例を挙げておきます。

先に例題とした年金基本月額5万円 総報酬月額相当額28万円の場合
(5+28-28)÷2=2.5
2万5千円の支給カットとなり、年金基本月額5万円でも受給できるのは半分の2万5千円となります。

もし年金基本月額5万円、総報酬月額相当額が33万円であれば
(5+33-28)÷2=5
となり支給カットが5万円となり、老齢厚生年金は全額支給停止になってしまいます。

(8)在職老齢年金シミュレーションの結果を計算式から読み解く【65歳以上の方向け】

65歳以上は老齢厚生年金と総報酬月額相当額を合わせて47万円を超えない限り支給カットはありません。また47万円を超えて支給額がカットされても、全額支給停止になることはありません。

それから先に説明したように、老齢基礎年金については働いても支給カットされることはないため、安心してください。

ただ、老齢厚生年金基本月額+総報酬月額相当額が47万円を超えた場合は、次の計算方式で支給カットされます。
(老齢厚生年金月額+総報酬月額相当額-47)÷2

つまり超えた分の1/2の年金額が支給カットされることになります。

例えを挙げてみます。

老齢厚生年金月額10万円 総報酬月額相当額45万円の場合
(10+45-47)÷2=4
となり4万円が支給カットされ、受給できるのは6万円となります。

(9)在職老齢年金制度の廃止が検討されている

政府は2019年6月「経済財政運営と改革の基本方針」を発表しました。その中で、全世代型社会保障への改革として、働く意欲がある高齢者の能力が発揮できるよう、70歳までの就業機会を確保し、在職老齢年金制度については、廃止を含めた見直しを図るとしています。

制度の見直しは昨年も考えられており、2019年より支給停止調整額が46万円から47万円と若干緩くなりました。

しかし現在、在職老齢年金制度により、支給が減額されている方は60~65歳では約88万人、65歳以上では約36万人にもなります。

この在職老齢年金制度があるために、高齢者の働く意欲が失われているのではないかという指摘や、60~65歳の方に関しては、男性2025年、女性2030年になれば年金支給開始が65歳となるため、在職老齢年金の対象者がいなくなることなどから、廃止も含めた見直しになっています。

実際、支給カットが行われない月給28万円を超えないところで働いている方が最も多く、支給カットにならないよう働き方を調整しているとみられています。

もし、在職老齢年金制度がなくなり年金の支給カットが行われなければ、60歳代でもフルタイムで働く方が14万人程度も増えると予測されています。働いて保険料や税金を納める人が増えることで、60歳代でも制度の担い手になると考えられているのです。

しかし廃止が決定した訳ではありません。検討段階のうちは、どのくらい自分が支給できるのか、また支給カットされるのかを知っておいて損はないでしょう。

(10)在職老齢年金の計算方法を理解することで”損”をせずにすむ

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1079572

在職老齢年金は計算方法を理解することで、シミュレーションができ、損をしないですむといえます。この制度は複雑であるため計算するとなると、面倒だと投げ出してしまう方もいるかもしれませんが、今回のように計算に必要な準備を行い、手順通りに計算すれば簡単にシミュレーションできます。

在職老齢年金は廃止になる可能性もありますが、高所得者優遇になる可能性や、支給カットを廃止すれば財源に負担がかかることなど大きな問題もあるため、すぐに一度に廃止にすることは難しいはずです。

受給できる条件が揃っている方は、働き方を考えれば、損をしないで年金が受け取れる制度です。ぜひ一度、自分の支給額を計算してみてください。

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