介護に関わるすべての人を応援します

介護人材の確保をどうすべき?流出対策の取り組み事例や助成金など

社会問題
日本の介護業界は現在、少子高齢化や高い離職率などに苦しみ、破綻への道を歩んでいるとしばしば指摘されています。実際、2025年には介護人材が38万人も不足するといわれるように、介護施設にとって「人材確保」というのは喫緊の課題となっています。本記事では、そんな介護業界における人材問題について、人材不足の原因や人材確保のための対策、実際の取り組み事例などを詳しく説明していきます。
公開日
更新日

(1)介護人材の確保は困難?

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1352189

介護サービスをめぐる需給バランスが徐々に崩壊

近年深刻な社会問題として挙がっているのが、企業の人材不足です。これは、介護業界も例外ではありません。介護業界でも働き手が不足しており、満足なサービスが行えない、また施設の待機者が増えるなどの原因もそのためといえます。

介護施設では、それぞれの職種の人数に基準が設けられています。そのため、その基準をクリアできなければ、運営は困難になるといえるでしょう。

その点から、人材の確保は、施設を運営していくにあたり、喫緊の問題といえます。

2017年の厚生労働省発表の「2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計」では団塊の世代が75歳以上になる2025年には、需要の253万人に対し、供給は215万人となり38万人もの不足になるとしています。

しかし2019年に行われた「介護労働実態調査」によれば、2025年まで待たずとも現時点で不足していると感じている事業所は67.2%にもなります。不足している理由として、社会問題として挙がっている少子高齢化や、離職率が高いにもかかわらず採用が困難であることなどが挙げられています。

(参考:介護労働安定センター『平成 30 年度 「介護労働実態調査」の結果(外部リンク)』)

2025年に介護人材が圧倒的に不足し始める、という2025年問題について、より詳しい記事はこちら

→『2025年問題で医療業界はどう変わる?とるべき5つの対策総まとめ

(2)介護人材確保の課題①  少子高齢化

人手不足の大きな原因となっているのが、少子高齢化です。2025年には団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、65歳以上の高齢者が3人に1人となる超高齢化社会がやってきます。

2017年では65~74歳1,767万人、75歳以上1,748万人ですが、2025年には65~74歳が1,497万人と減る中、75歳以上では2179万人となり、後期高齢者数が爆発的に増えます。しかし出生数の減少にともない、労働力となる20~60歳の人口も減少してしまいます。2017年では、7,596万人であったのが、2025年には7,170万人となり、400万人も減ってしまうのです。

75歳以上の介護が必要になる高齢者が爆発的に増えているのに、介護者は減少しているということで、人手不足が起こっても仕方がない状況になっているといえます。

(3)介護人材確保の課題②  離職率の高さ

介護の仕事は無資格でもできないことはありませんが、初任者研修や実務者研修の資格がないと、就職は難しくなります。しかし、介護の仕事がしたいと資格を取ったはずなのに、いざ仕事を始めると思っていた環境ではなかったと、退職する人が多いといえます。

ただ2019年の介護労働実態調査では、2016年に16.7%に一度増えた離職率ですが、その後は減少し2018年では15.4%となっています。

その中職員が抱えている労働条件や仕事に関しての悩みはさまざまですが、一番多いのが「人手が足りない」ということです。

またその他には

  • 「収入が少ない」
  • 「思うように休みが取れない」
  • 「身体的、また精神的にきつい」

などが挙がっています。

(4)人材流出対策① 従業員の傾向を知る

職員が不足していると感じている事業所は67.2%と紹介しましたが、労働者側の調査では特に施設職員で7割以上が不足していると感じているとなっています。不足することで、実際現場で働いている職員の負担は大きくなり、離職に繋がるという負のスパイラルに陥る危険性を十分事業主は理解しておくべきです。

また退職理由として多く上がっているのは「職場の人間関係」です。離職を止める対策として、職員の現状を理解し、悩みや不安などが話しやすい職場にすることが重要だといえます。

経営者や事業主は職員から

  • 「仕事を選んだ理由」
  • 「今の勤務先の継続意向」
  • 「現在の法人に就職した理由」
  • 「職場の人間関係はうまくいっているか」
  • 「前職を辞めた理由」

などといったことを、それとなくヒアリングし、把握しておくことが大切だといえるでしょう。

雇用者と職員間でコミュニケーションを図り人間関係を改善することで、人材流出の防止になります。

(5)人材流出対策② 助成金の活用

介護職員処遇改善加算とは

職員の退職理由の一つとなっている収入が少ないという問題においては、2012年度より創設されている介護職員処遇改善加算などが活用できるようにしましょう。しかし活用するためには、いくつか要件をクリアすることが条件となります。

キャリアパス要件

Ⅰ=職位や職責・職務内容などに合った採用がされており賃金体系が整備されていること
Ⅱ=キャリアアップできるよう計画が立てられており研修の実施や機会が与えられていること
Ⅲ=経験や資格によって昇給できるまたは昇給を判定できる仕組みを作っていること

職場環境要件

賃金以外で職場の環境など処遇の改善に対し取り組みが行われていること

クリアできている要件によって、加算額も異なってきます。

  • 加算Ⅰ・・キャリアパス要件すべて+職場環境要件をクリア 37,000円の加算
  • 加算Ⅱ・・キャリアパス要件ⅠとⅡ+職場環境要件をクリア 27,000円の加算
  • 加算Ⅲ・・キャリアパス要件ⅠorⅡ+職場環境要件をクリア 15,000円の加算
  • 加算Ⅳ・・キャリアパス要件ⅠorⅡor職場環境要件をクリア 13,500円の加算
  • 加算Ⅴ・・キャリアパス要件、職場環境要件ともにクリアしない 12,000円の加算

また2019年10月からは、更に賃金の改善を図るために「特定処遇改善加算」が創設されることになっています。加算Ⅰ~Ⅲをすでに取得している施設や事業所で、主に勤続10年以上の介護福祉士が対象となります。ただし、勤続10年に関しては、施設や事業所の判断で柔軟に対応が可能です。

介護職員処遇改善加算について、より詳しい記事はこちら

→『介護職員処遇改善加算とは | 対象者/受給条件/メリットなど

(6)介護人材確保のための取り組み事例

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1115111

介護労働安定センターによれば、人材を確保し、早期離職防止や定着促進に最も効果のあった方策として挙げられるのは、次のようになります。

  • 賃金や労働時間などの労働条件の改善
  • 職場内のコミュニケーションの円滑化
  • 非正規職員から正規職員への転換の機会を設ける
  • 労働時間において希望を聞く

実際に対策が行われた事例について紹介していきますので、参考にしてみてください。

「イチローデイサービスつるみ・みどり」という事業所の事例

課題

  • 経営者と職員間に大きなギャップがあった
  • 賞与制度がなく評価が実感できない
  • スタッフの育成ができていない

改善策

  • 職業能力評価項目の整備
  • 賞与制度をつくる
  • キャリア形成促進助成金を活用して、評価制度や教育訓練休暇制度を導入

結果

  • 人材育成や評価・報酬などについては一部改善がみられた
  • 改善策を維持し、従業員のスキルアップが図れるようにするのが課題

イチローデイサービスつるみ・みどり

URL:https://www.ichiro-life-care.jp/(外部リンク)

「デイサービスみずうみ」という事業所の事例

問題

  • すべての職員に対し人事考課制度や賃金制度などがない
  • 2年間昇給がなく評価面談の実施もなかった
  • どこで評価が行われ賃金に結び付いているかわからず、将来のキャリアが描きにくい状態

改善策

  • 人事考課制度の制定
  • 賃金規定の設定
  • 職員と経営者の面談の実施

結果

  • 仕事ぶりや能力が評価され、賞与などに繋がることで職員が意欲的になった
  • 運用・維持が課題

デイサービスみずうみ

URL:https://kaigo.homes.co.jp/scare/ob_2570102208/(外部リンク)

(7)採用はどのように行う?

良い人材を確保するための方法としては、「求人媒体の利用」が現在は主流であるといえるでしょう。

求人媒体の種類としては、

  • ハローワーク
  • Webの就職サイト
  • 民間の職業紹介機関
  • 就職情報誌
  • 新聞の折り込みチラシ

など、オンライン・オフラインを問わずいくつもあります。

求人媒体を利用することで、応募者対応・面接設定などを行うことができ採用に当たってのコストやプロセスが削減できます。また広範囲に求人でき、良い人材の確保に繋がります。ただ、ハローワークなどはコストがかかりませんが、その他の媒体ではコストが発生します。

紙媒体の場合は掲載に対しコストが発生し、新聞折り込みよりも求人雑誌の方がコストが高いとされています。Webサイトでは求職者が応募をかけた段階でコストが発生するサイトが多いのですが、希望の人材が採用できるまでコストが発生しないサイトも増えています。応募でコストが発生するサイトでは、応募がある都度数千円~3万円程度が必要になり、採用までコストが発生しないサイトでは採用後数万円~10万円程度必要になります。

コスト面も考慮しながら、事業所にあった求人媒体を選択し、良い人材を確保できるようにしましょう。

最近はWebの就職・転職サイトの利用が多くなっています。いくつか介護求人サイトをピックアップしますので参考にしてください。

  • 介護ワーク…東証一部上場のグループ企業が運営・優良派遣事業者・全国対応
  • カイゴジョブ…求人数が多い・全国対応
  • かいご畑…優良派遣事業者・全国対応

(8)採用における工夫の例

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2207139

今まで求人に応募がない、また採用してもすぐ退職してしまうなどの問題があるなら、採用に関して何らかの問題があるはずです。改善するためには、「求人」と「選考」を工夫しましょう。

求人に関する工夫

求人の表示内容を工夫

実際の労働条件より良くしたり、曖昧な表示にしたりしていると早期離職に繋がりやすくなります。そのため、労働条件が悪いと感じるなら見直しを図り、表示は明確にし、偽りのない労働条件を提示するようにすることで改善できます。

求人の媒体を工夫する

先ほど紹介したような、事業所にあった応募者の反応が良い求人媒体を利用しましょう。

求人媒体以外にも事業所のアピール方法を考える

事業所の認知度を上げるための努力も必要です。WebサイトやSNSなどを利用するのは、求人に大きな効果が期待できます。

選考に関する工夫

面接時にチェックリスト、あるいはマニュアルなどを作成して、面接者によって評価のばらつきがないようにすることが重要です。また面接だけでなく、できれば職場を見学してもらいましょう。面接時の対応だけではなく、他の職員や利用者に対する応募者の様子を観察することで、良い人材が確保できます。

(9)介護人材を確保したら育成はどうする?

2018年の厚生労働省の「介護人材確保に向けた取り組み」では、約190万人だった介護人材を2016年から毎年6万人ずつ確保し、2025年までに55万人を増やす必要があると公表されました。

これだけの人材を確保するのはかなり難しいといえますが、確保ばかりに気を取られていてはいけません。良いケアを行うためには、確保できた人材の育成が必要です。

ケアに時間を取られてしまい人材育成に時間や人員を充てることができなければ育成はできず、育成できないことで業務が回らなくなるという悪循環になってしまいます。人員不足であっても先を考え、育成のための時間と人員を確保しましょう。

育成の方法として、OJTを取り入れている施設は多いといえます。上司や先輩がマンツーマンで指導するこの方法で、スキルとやる気が高められ、職員間のコミュニケーションも図れます。教えてもらう立場の者だけでなく、教える側も基礎に返ることで業務の理解が向上し、指導することでスキルアップに繋がるなどメリットが多いといえます。

ただ、教える側の職員のスキルが低ければ、OJT終了後も即戦力とはならないかもしれません。教える側によって差が出ないよう、マニュアルなどを作成して行いましょう。

(10)介護人材確保のための取り組みを始めよう

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/942755

日本はこれからも高齢化が進むに従い、何らかの介助が必要な高齢者も増えていくことに間違いありません。また介護職はAIの技術の進歩による代替えが心配される未来でも、なくならないといわれている職種です。そのため、人材確保は早急に対応していかなければいけない問題になります。

退職者が増える、求人に応募がないなどでは、雇用している側にも問題があるといえるでしょう。退職者が増えれば、残った職員の負担が大きくなります。職員が不足していると感じながら、運営を続けるのは介護事故などに繋がり危険です。

経営者や事業主は、労働関連法令を理解し、雇用状況の把握と早急な処遇改善などの対応が求められます。良い人材の採用、早期離職防止のための対策を行い、施設をあげて職員を確保できるよう取り組みを始めてみてください。

この記事が気に入ったら
いいねしよう!