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生活困窮者自立支援制度とは|5つの支援内容、利用例、問題点など

介護制度
「生活困窮者自立支援制度」をご存知でしょうか。 これは平成27年度から始まった制度で生活困窮者を全面的にサポートする体制が整えられています。 ここでは生活困窮者自立支援制度の5つの支援内容、支援条件、引きこもりの方が利用した例などを紹介していきます。
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(1)平成27年度から始まった「生活困窮者自立支援制度」とは

平成27年度に生活に困窮し、生活保護を受ける状況に追い込まれている人を自立した生活を送れるように行政が中心となって支援する制度、「生活困窮者自立支援制度」がスタートしました。生活困窮者自立支援制度の内容は大きく次の5つに分けられます。

  1. 居住確保支援
  2. 就労支援
  3. 緊急支援
  4. 家計再生支援
  5. 子ども支援

生活困窮者自立支援制度を創設した厚生労働省は本制度の意義について、「本制度は、生活保護に至っていない生活困窮者に対する「第二のセーフティーネット」を全国的に拡充し、包括的な支援体制を創設するものである。」と定義しています。

つまり、生活困窮者自立支援制度は、2040年問題として懸念されている労働者不足の解消策、団塊ジュニアの支援策また、親子間の貧困の連鎖を断ち切る策として様々な機関が一体となって支援する事業なのです。

それぞれの支援ごとに具体的な支援内容、支援条件、対象者などを詳しく説明していきます。

(2)生活困窮者自立支援制度ができた背景

2040年問題

現在、日本の各地で少子化による人口減少が始まっています。これは地方都市に限った話ではなく、東京都においても、26市中10の市で人口減少が始まっています(*平成31年1月1日と平成30年1月1日の比較)。そして2020年から2040年にかけて、東京都では約90万人も減少し、深刻な労働者不足から社会の機能が立ち行かなくなるという“2040年問題”が危惧されています。

段階ジュニア

子どもや生産人口が減少するなか、一方では高齢者が増え、そのなかでも“団塊ジュニア“と呼ばれる出生数がひときわ多かった昭和46年~昭和49 年生まれの人が、高齢者の層に移行していきます。この団塊ジュニアの課題は、バブル経済の崩壊の影響により企業側が採用人数を減らしたこと、人口の多い年代層の影響で、“超氷河期”の就職活動を強いられてしまいました。このことで、正規職員としての就職ができずに、多くの非正規労働者やフリーターを輩出しました。

そのため他の年代層に比べ、雇用の不安定さや、他の年代層に比べて年間所得、そして生涯賃金が低いというのが特徴です。また、就職の失敗などで引きこもりなどに至ってしまう人が多いのも特徴のひとつです。

団塊ジュニアが低所得で十分な貯蓄がないまま定年退職し、高齢期を迎えることで、生活困窮者が一気に増加し、社会保障費の支出が大幅に増加することが懸念されており、先日、政府は「就職氷河期世代支援プログラム」のひとつとして、今後3年間で30代から40代半ばの正規雇用者を30万人増やすという閣議決定がされました。

親子間の貧困の連鎖

生活困窮世帯は、子どもに学習などに必要な費用がかけられないため勉強についていけず、高校進学をしない、または高校に進学しても中退してしまい、アルバイト収入などで成人しても生活困窮から抜け出せない貧困の連鎖が起こっています。深刻な人手不足において、貴重な若い働き手が労働力として機能しないのは、社会保障費の問題だけでなく、日本の経済活動にも大きな影響を与えています。

基準から外れた層

「結婚できる年齢」、「自動車免許を取得できる年齢」、「住民税が課税されない年間所得」など、何ごとにおいても一定の基準があります。生活保護を受給する場合も、収入状況や家族構成などの基準があり、この条件を満たさないと生活保護は受給できません。

しかし、生活保護の受給できる基準ギリギリで対象外の場合、所得が低く生活は厳しいのに生活保護を受けられないために、医療費や子どものためにかかる費用などの出費ができず、生活困窮から抜け出せないという人が増えています。

この層は、厚生労働省によると年間で約40万人(*平成23年度)もいて、生活環境が厳しい状況でありながらも、行政の支援など受け皿がないという多くの課題をもっています。

(3)生活困窮者自立支援制度が目指す目標

この制度は、相談者を生活困窮状態から抜け出させる、生活保護に至らないようにし社会保障費を抑制する、といった表面字的なものだけが目標として見られがちですが、実際には次の2つの大きな目標があります。

生活困窮者の自立と尊厳の確保

あくまでも主役は相談者本人であるので、本人の意向や尊厳を守り、生活的な自立だけにとどまらず、社会的な自立なども含めて支援します。

生活困窮者を通じて地域づくり

生活困窮者の早期発見や見守りなど地域のネットワークを構築し、包括的に支援する土壌づくりを行い、「支援する-支援される」ではなく「お互いが助け合い」という地域を構築します。

(4)生活困窮者自立支援制度の内容 ①居住確保支援

次に生活困窮者自立支援制度の具体的な支援方法をご説明します。まず1つ目は、生活の基礎となる住まいの支援、“居住確保支援“についてです。これは、離職によって住宅を失った、またはその恐れがある人に住宅確保給付金を支給することで、住まいを確保する支援です。

支援対象者

次のすべてに該当する人です。

  • 離職後2年以内で65歳未満の人
  • 現在住居がない、または住居を失う恐れがある人

支援条件

次のすべてに該当する人です。

  • 月収が一定額以下(*東京都23区の場合は、単身者で月13.8万円未満、2人世帯で17万2千円以下)であること。
  • 預貯金が一定額以下(*東京都23区の場合は、単身者で50万円以下、複数世帯で100万円以下)であること。
  • ハローワークで月2回以上の就職相談、市役所で月4回以上の面接支援を受けていること。

支援内容

住宅の家賃分として単身の場合で月53,700円、複数世帯の場合で月69,800円(ともに東京都23区の場合)の給付が原則として3ケ月間受けられます。状況に応じて延長することもあります。

(5)生活困窮者自立支援制度の内容 ②就労支援

住まいの支援の次は、安定した収入を得るために仕事に就くための支援「就労準備支援事業」と「就労訓練事業」についてご説明します。

支援対象者

  • 就労準備支援事業:就労に一定期間を要する人
  • 就労訓練事業:就労のための支援を受けても、一般就労への移行が困難な人

支援条件

  • 就労準備支援事業:就労に向けた準備が一定度整っており、ある程度時間をかけて個別の支援を行うことで、就労が可能な人
  • 就労訓練事業:就労への移行のため柔軟な働き方を認める必要がある人

支援内容

  • 就労準備支援事業: 就労支援員によるキャリアコンサルティングや履歴書の作成指導、ハローワークの同行訪問、個別求人開拓、面接対策、就労後のフォローアップなどを6ケ月から1年間の期限付きで支援
  • 就労訓練事業:軽易な作業等の機会の提供に併せ、個々の就労支援プログラムに基づき、一般就労への支援を行う。

実践状況

神奈川県横浜市では、ケースワーカーと就労支援員による「生活訓練」、「社会訓練」、「技術習得訓練」の3つのプログラムを支援し、ハローワークの協力を得て、就労に結び付ける“就労意欲喚起事業”を実施。1年間の支援結果として、56人が受講し、48人がプログラムを修了し、29人が就労に結び付いた。

前年比と比べた傾向

就労支援事業を行う市町村は、平成27年度に100市町村でスタートし、平成29年度には全国の約44%に当たる393市町村まで増えてきました。

就労支援事業を行っている宮城仙台市では、平成26年度では9名に留まっていましたが、平成27年度では年度の途中で29名と、3倍以上の実績がでています。

また、東京都目黒区の就労準備支援事業では、平成27年度の25件から平成28年度には175件と大きく実績を伸ばしています。

(6)生活困窮者自立支援制度の内容 ③緊急的な支援

これまでは、失業や病気などにより生活が困窮してきた人が生活保護に至る前に、自立した生活にむけた支援を説明してきましたが、すでに生活の基本である衣食住が破綻してしまった、いわゆる“ホームレス”と呼ばれる人たちへの支援についてご説明します。

支援対象者

路上生活者(いわゆる“ホームレス”)等

支援条件

住むところがなく、収入が基準以下で、生活に困窮している人

支援内容

①日常生活・健康面での支援

  • 緊急一時的に宿泊や食事を提供し、健康状態の悪化を防ぎます。
  • 保健所等と連携し、健康診断などを行い、健康面での改善を図ります。
②就労に向けた支援


就労に向けた情報提供を行い、就労意欲のある人には、緊急一時的な支援から、個々の状況に合ったきめ細かい就労支援を行う「ホームレス自立支援センター」の利用に導きます。

③その他

 市町村の福祉に関する複数の部署が連携し、生活保護や高齢福祉、障害福祉、介護保険など必要なサービスに繋げます。

実践状況

ホームレス緊急一時宿泊(シェルター)事業
  •  設置型(都道府県または市町村が施設を設置して支援):2市町村5施設、定員1,514人
  •  借上型(都道府県または市町村が民間施設(アパートや旅館)を借上):41市町村63施設、定員652人

*共に24年実績(厚生労働省の資料より)

まだまだ実施している市町村は少数派となっています。

前年比と比べた傾向

緊急支援事業を行う市町村は、平成27年度に57市町村でスタートし、平成29年度には256市町村まで増えてきましたが、施設の確保という問題があり全国の28%に留まっています。

東京都では平成25年度に1,057人いたホームレスが平成29年度には695人まで減少しています。(東京都福祉保健局の資料より)

(7)生活困窮者自立支援制度の内容 ④家計再生支援


出典:https://www.photo-ac.com/

路上生活者は、支援が必要な状況が分かりやすいのですが、実は支援が必要な状況なのに、まわりからは困窮状況が分かりづらい層があります。これは、一見普通に生活を送っているようで、じつは借金などにより家計状況がひっ迫し生活が破綻寸前な層です。こういった層に家計を再生させる支援を行うことで、生活困窮状態から抜け出すための取り組みです。

支援対象者

  • 借金や利子が膨らみ返済が滞り破綻の恐れがある人
  • 家計の収支のバランスをうまくできない人。また、その原因が自分で分からない人。

支援条件

現状の家計を再生したい意欲のある人

支援内容

  • 家計収支について課題(収入、生活費や医療費、借入、税金など)を分析し、相談者に応じた個別計画を作成する。
  • 家計の再生にむけた支援(公的制度の利用の紹介、家計簿の作成など)を実施
  • 借入金や公共料金の滞納などの債務整理については、法テラスなどの専門機関に繋げる
  • 必要に応じて公的な福祉借入金(福祉貸付金、母子貸付金、生活貸付金など)のあっせんを行う。

実践状況

これまで各機関がバラバラに機能していた状態から、この事業をきっかけに、消費相談窓口や敷居が高かった法テラスや弁護士事務所と連携を図るようになり、市によっては地域ケア会議での検討ケースとして取り扱ったり、関係機関での定期的な情報交換会なども行われています。

前年比と比べた傾向

家計再生支援事業を行う市町村は、平成27年度に80市町村でスタートし、平成29年度には362市町村まで増え、全国の40%に伸びています。

東京都目黒区の家計再生支援事業では、平成27年度の78件から平成28年度には264件と約3倍以上の実績を出しています。

(8)生活困窮者自立支援制度の内容 ⑤子ども支援


出典:https://www.pakutaso.com/

支援制度の最期は、子どもへの支援についてです。生活困窮は子どもの教育面にも大きな影響があり、そのまま大人になっても生活困窮してしまう貧困の連鎖を引き起こしてしまいます。この貧困の連鎖を断ち切るために、子どもへの支援を行っています。

支援対象者

主に生活困窮家庭の子ども(義務教育)

支援条件

  • 埼玉県の取り組みでは、「生活保護を受給している家庭の中学生とその保護者」
  • 高知県高知市の取り組みでは、「生活保護を受給している家庭の中学生」

支援内容

生活困窮家庭の子供に無償で学びの場を提供し、子どもの進学の促進、高校進学者の中退防止を図ります。

実践状況

  • 埼玉県の「チャレンジ支援事業」では、教員OBが生活保護世帯へ定期的に訪問し、子供の進学などの助言を行ったり、県内17か所で学生ボランティアによる学習教室を実施。
  • 高知県高知市の「チャレンジ塾」では、市が民間団体に委託し教員OBや学生による学習教室を市内5か所で実施。また、市が雇用した就学促進員(教員免許資格者)による生活保護世帯へ定期的に訪問し、子どもの保護者へ事業利用の働きかけを行う。

前年比と比べた傾向

家計再生支援事業を行う市町村は、平成27年度に184市町村でスタートし、平成29年度には504市町村まで増え、全国の56%と半分以上の市町村が取り組んでいます。

東京都目黒区の子ども支援事業では、平成27年度の955件から平成28年度には1,532件と着実に実績を出し、親子間の生活困窮による貧困の連鎖を断ち切るための成果をだしています。

(9)生活困窮者自立支援制度の利用例

ここまで、生活困窮者自立支援制度の内容について説明してきましたが、これより実際の利用例についてご紹介します。

ケース① Aさん(38歳)高齢の両親と3人暮らし 高校中退後から引きこもり

両親が自身に介護が必要になったが子どもに介護力がないこと、収入が両親の年金だけで、子どもの引きこもり・就労の件で相談。

支援員により両親の介護は介護保険の申請をし、認定後にサービス利用に至る。子どもについては、理解のある飲食店で働き始めた。はじめのうちは休みがちでしたが、環境に慣れてくると徐々に休みも減り、安定した就労に至りました。

ケース② Cさん(47歳) 両親と中学生の子どもの3人くらし 自営が廃業

夫婦で経営した飲食店が廃業になり、夫は自信を失い失業中で、妻がパートを掛け持ちで行った収入のみ。中学生の子供は勉強についていけず学校を休みがちになる。

相談の結果、夫は支援相談員とのカウンセリングにより自信をもち、調理補助の仕事に就労し、収入が安定。妻はパートを1つだけにした結果、子どもとの時間がとれるようになった。また、子どもは学習支援を受け、高校に進学した。

この他にも、失業により会社の寮から退去が迫られていたが、住居確保給付金の助成を受け居住を確保、就労訓練事業で対人スキルを習得し就労に至ったケースや、リストラから会社の寮から退去させられ路上生活に至ったが、生活保護を受けながら一時生活支援事業で就労でき、生活保護を廃止したケースなどもあります。

(10)生活困窮者自立支援制度を利用したい場合は

生活困窮した時に多くの支援が受けられる生活困窮者自立支援制度を利用するとき、どうすればいいのかについてご案内します。

相談窓口を確認

お住いの市役所または地域包括支援センターに電話し、「生活困窮に関する相談窓口」の場所を聞いて確認しましょう。市町村が直営で相談窓口を設置しているのは約38%で、市役所内に相談窓口を設置していることが多いですが、出先機関に設置している場合もあります。市によっては社会福祉協議会やNPOなどに委託(29年度は53%)しており、市役所とは違う場所に窓口を設置している場合がありますのでご注意ください。

相談

相談員に困りごとや不安、生活状況を具体的に、できるだけ詳しく相談しましょう。収入や、家賃、医療費などの支出などは、生活費を管理している銀行の通帳などがあると状況が分かりやすくなります。また、債務の有無、債務があればその状況が分かる明細表などがあると、債務整理の対策方法も具体的になります。

支援プランの作成

相談員は、相談者の意思を尊重しながら、自立に向けた支援内容や目標を一緒に考え、支援プランを作成します。

支援決定・支援開始

作成した支援プランを市町村の職員や関連部署の担当者と話し合い(支援調整会議)を行い、支援内容を決定し、支援プランに沿った支援サービスを開始します。

モニタリング

支援サービス開始後も定期的に支援の状況をモニタリングします。支援プランのとおりに上手く行かない場合や、新たな課題が発生した場合は、その都度、支援プランを再検討します。

フォローアップ

期限付きのサービスの場合、支援終了後に自立できているかを関係者間で情報共有し、自立出来ていない場合は、他のサービスなどを含めてフォローアップしていきます。

(11)生活困窮者自立支援制度の課題

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1504414

任意事業

生活困窮者自立支援制度で挙げた5つの各支援事業は、市町村の任意事業です。つまり、どの支援事業も行っていない市町村や、5つのうち一部の支援事業だけを行っているもあります。

また、相談員を社会福祉士や精神保健福祉士といった福祉の専門職を配置する市や、介護士や保健士、キャリアコンサルタントを配置する市、市役所の一般事務の職員が相談員にあたるなど、市町村によって相談員のスキルにバラツキがあること、相談員の勤務体制が常勤の場合や週2~3日の非常勤の場合もあり、相談体制にもバラツキがあります。

今後は、支援事業の実施数を増やし、全国の相談レベルの平準化と底上げが課題となります。

支援事業の周知

生活困窮者自立支援制度は、福祉系の事業としては歴史が浅いためあまり知れ渡っていません。さらに、生活困窮者の特徴として「困った」、「どうにかしなきゃ」という意識が稀有な人も多く、生活困窮者が自ら相談に行くということは少数事例となっています。今後は、市役所の関係部署や福祉事業所、民生児童委員といった支援者と学校や自治会など地域が連携し、アウトリーチで生活困窮者を早期に把握し、早期に支援することが課題となります。

(12)生活困窮者自立支援制度の下、相談だけでもしてみては

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/232833

今後、日本はどんどん人口が減少していきます。それに合わせて地域の力も落ちて行ってしまっては、あらゆる機能がダウンしてしまいます。今引きこもっている人も何らかの事情で失業した人も、抱えていた課題が解消されれば地域の力となります。それには、小回りの利く地元事業者、その地域に住む元教師や大学生ボランティアといった地域の力が必要です。

つまり、この生活困窮者自立支援制度は、地域の力を活かしながら、さらに造り上げていくものです。

困ったときは一人で抱えないで相談してみましょう。

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