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ひきこもり等の「生活困窮者自立支援制度」とは|対象者や問題点など

介護制度
2015年4月から開始した生活困窮者支援制度は、生活保護の前のセーフティネットとして、経済的な問題で日常生活を送るのが難しい、という相談者に対し、直接・間接的に様々な支援、サポートを行うう、という、市区町村が中心になって行われている支援事業です。 本記事では、そんな生活困窮者自立支援制度について、制定の背景や利用対象者、具体的な支援内容や「役に立たない」という指摘をしばしば受けるその理由などについて、まとめて解説していきます。
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(1)2015年4月から開始した生活困窮者自立支援制度とは

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/393238

生活困窮者自立支援制度とは、平成27年4月に施行された、社会保障制度の一つです。

生活困窮者自立支援制度は、働きたくても働けない・住む所がないなど、何らかの理由で自立した生活を行えない人を支援する制度です。

従来はその役割を「生活保護」という制度が担っていたものの、生活保護だけでは「生活に困窮する人」を全員捕捉して支援することが難しい、という判断のもと、より捕捉率の高いセーフティネットを、という背景で、この生活困窮者自立支援制度が成立されました。

な支援内容としては、地域の相談窓口を設け支援のためのプランを作成し、専門の支援員が相談者に寄り添いながら、他の専門機関と連携して、解決に向けた支援を行うことが目的の制度です。

(2)生活困窮者自立支援制度にて、具体的にどのようなサービスが受けられるのか

厚生労働省の公式資料(厚生労働省『生活困窮者自立支援制度 >制度の紹介』)によると、生活困窮者自立支援制度を利用すると実際に受けることができる具体的なサービスとして、大きく分けて以下の7種のサービス、

  • 自立相談支援事業
  • 住居確保給付金の支給
  • 就労準備支援事業
  • 家計相談支援事業
  • 就労訓練事業
  • 生活困窮世帯の子どもの学習支援
  • 一時生活支援事業

が提示されています。それぞれのサービスについて、以下にて具体的に説明していきます。

自立相談支援事業

まずは、相談者の抱える悩みや課題など、近しい人にはなかなか相談しづらい内容に関して、様々な側面からヒアリングを行っていき、相談者の現状把握を促進します。

そののち、自立した生活を送ることができるようになるまでのプランを相談者とともに作成していく、という支援内容です。

住居確保給付金の支給

離職などにより住居を失った方、または失うおそれの高い方には、就職に向けた活動をするなどを条件に、住居確保給付金の支給を行う、という支援内容です。

就労準備支援事業

就労準備支援事業として、コミュニケーションが苦手・社会復帰が不安な方に対して6カ月から1年の間、プログラムにそって、一般就労に向けた基礎能力を養いながら就労に向けた支援や就労機会の提供する、という支援内容です。社会生活に必要なスキル面での支援であるといえるでしょう。

家計相談支援事業

相談者が自ら家計を管理できるように、家計状況を把握し根本的な課題の解決に向け、状況に応じた支援計画の作成、相談支援、関係機関へのつなぎ、必要に応じて貸付のあっせん等を行い、生活再生を支援する、という支援内容です。

実際に、相談者が生活に困窮することにったきっかけが、「家計や収支の把握、管理ができず、気づいたら生活が立ち行かなくなっていた」ことであるケースも少なからず存在するようです。

こういったケースに対処するために、家計の管理能力を養うことも、非常に大切なのです。

就労訓練事業

中長期的に計画を立てながら、相談者個人が必要なスキルを身に着ける際の支援を行っていく、という支援事業です。

一時生活支援事業

住居をもたない方、またはネットカフェ等の不安定な住居形態にある方に、一定期間、宿泊場所や衣食を提供する、という支援内容です。

生活困窮世帯の子どもの学習支援

生活困窮世帯に住む児童は、教育を受けることができても、学習に打ち込める環境がなかったり、学習へのモチベーションが低かったりするなど、学習を進めるうえでの壁がいくつもあるケースが少なくありません。

学習支援という形で、勉強を習慣づけたり、学習の動機付けをしたり、学校生活をサポートしたりすることも、この生活困窮者自立支援制度の一環とされているのです。

(3)生活困窮者自立支援制度の対象者

では、実際にこの生活困窮者自立支援制度を利用できる、利用対象者はどのような人なのでしょうか。

厚生労働省によると、「生活困窮者自立支援制度は現在生活保護を受給していないが、生活保護に至る可能性のある者で、自立が見込まれる者」が対象とされています(厚生労働省『生活困窮者自立支援法について』)。

平成23年度には、福祉事務所来訪者のうち生活保護に至らない者は、高齢者等も含め年間約40万人いると発表されています。生活保護を受給したくてもできない、というケースです。

このように、生活保護には至らないものの、金銭的・文化的に極めて厳しい生活を続けている、という人は多くおり生活困窮者自立支援制度はそのような人々を今後生活保護受給者にしないよう社会復帰させるための制度です。

(4)生活困窮者自立支援制度が成立した背景

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/424016

先述のように、様々な分野で相談者に対し支援を行っていくという、一見手厚い生活困窮者自立支援制度は、どのような背景で成立したのでしょうか。ここでは、関東学院大学経済学部の田中 聡一郎教授が執筆した『生活困窮者自立支援制度はどのようにスタートしたか? ――実施初年度の支援状況と課題――』という論文を参考に、以下の3つの社会情勢を挙げていきます。

リーマンショックによる、労働市場の低迷

まず生活困窮者自立支援制度の導入の大きなきっかけとしては、2008年9月のリーマンショックが挙げられます。リーマンショック後、日本が不況にあえいでいる時期、派遣労働者の解雇(いわゆる「派遣切り」)がなされるケースが増加するなど、労働市場が一気に悪化したことで、生活困窮者が増大したのです。

生活保護制度に対する風当たりの強まり

また、それ以前に施行されていた生活保護制度も、受給者が急増したことで多くの国民が制度の見直しが必要であると主張するようになり、「生活保護以外の社会保障」の必要性が強まったことも一つの背景として考えられます。その結果、生活に苦しんでいるにもかかわらず、生活保護を受給できないといった状況にある稼動年齢層への就労支援を行う必要があると考えられた、との指摘もあります。

引きこもりや介護離職などの社会問題の顕在化

また、上記の2つの要因に加え、団塊の世代ジュニアと呼ばれる中高年の引きこもりや高齢化による介護離職、超高齢者社会による年金の増大などのより、できるだけ就労者を増やす必要があることも生活困窮者自立支援制度の背景にあります。

参考)http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/sh20264005.pdf

(5)生活困窮者自立支援制度 の利用方法

このような生活困窮者自立支援制度を利用するには、相談窓口への相談をまず行う必要があります。

主に生活困窮者自立支援制度の相談窓口は、都道府県および市の福祉担当部署や社会福祉協議会、社会福祉法人、NPOなどに設置されます。

生活困窮者自立支援制度の利用のため相談窓口へ相談することで、現在の生活に関してお話を聞き必要に応じて生活困窮者自立支援制度を利用することができます。

生活に困ったらまずこのような相談窓口に相談することをお勧めします。

参考)https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201504/2.html

(6)生活困窮者自立支援制度における、相談後の流れ

では生活困窮者自立支援制度では具体的にどのような流れで支援を行うかというと

相談窓口へ相談→生活状況の確認→支援プランの作成→支援決定・サービス提供→定期的なモニタリング→安定した生活の獲得という流れになります。

相談窓口へ相談をしてみる

相談窓口に配属されている職員具が相談を受けます。何らかの理由で窓口まで来られない場合は、支援員が自宅に訪問も可能です。

生活状況の確認

生活の困りごとや不安を聞き、生活の状況と課題を分析し、自立に必要な支援を検討します。

支援プランの作成

支援を必要とする人の意思を尊重しながら、自立に向けた目標や支援内容を考え、一人一人にあったプランを作成します。

支援決定・サービス提供

完成した支援プランを、自治体を交えた関係者の話し合い(支援調整会議)を経て正式に決定します。その支援プランに基づいて各種サービスが提供されます。

定期的なモニタリング

各種サービスの提供がゴールではなく、各種支援メニューの提供状況を支援員が定期的に確認します。支援プランどおりに行かない場合は、プランを再検討します。

安定した生活の獲得

支援の結果、困りごとが解決すると支援は終了になり、安定した生活を維持できているか、支援員によるフォローアップを行います。

このように生活困窮者自立支援制度は安定した生活の獲得に向けサポートしていきます。

(7)生活困窮者自立支援制度が実際に自立に貢献した事例① 

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/292306

生活困窮者自立支援制度の利用例として事例①として、以下のような事例があります。

Aさんは妻と娘の 3 人暮らしであり、飲食店を経営していたが、不況のため廃業に追い込まれました。

妻(46 歳)は、夫が仕事を失って以来、家計を支える役割を担うようになり、現在はパートを 3 つ掛け持ちしています。

家庭が不安定になり、長女(14 歳、中学校 2 年生)は、中学入学後勉強についていけず、学校を休みがちになり夜遊びも増えました。

このような場合、まず本人だけでなく家族も含めた包括的な支援が必要になり、まず働く自信を無くしてしまったAさんにヒアリングを行い、飲食店の経営を行っていたことが強みと前向きになり、調理補助として再就職することができました。

そのことで妻はバイトを減らすことができ、長女との時間が増え長女の生活習慣の改善に繋がりました。

またその上で長女での学習支援を行い、高校進学も可能になりました。

(参考:公益社団法人 全国賃貸住宅経営者協会連合会『生活困窮者自立支援制度を利用して 生活を立て直した事例の紹介』)

(8)生活困窮者自立支援制度が実際に自立に貢献した事例② 

生活困窮者自立支援制度の利用例として、このような事例もあります。

両親と3人暮らしのBさんは、高校中退後アルバイトを経験したもののすぐに辞めてしまい、家にひきこもってしまいました。

母親(78歳)は病気がちのうえ高齢のために足腰が弱くなり、身の回りのことはある程度まで対応できるものの一部介護が必要な状況であり、その上父親(80歳)は無口でとても厳格な性格で家事や介護には極めて消極的です。

一家の収入は父親の厚生年金が中心となっており、母親が管理する家計は常に苦しい状態である上、今後両親が亡くなった後厚生年金も受給できず、息子は生活に困る状況でした。

Bさんは支援員と何度も話すうちに、「男性介護者の会」に興味が湧き試しに行ってみたところ、自分の存在を認めてもらえる仲間に出会うことができて、一緒に活動することで、自信を取戻しました。

自信を取り戻すことで、ひきこもりの人などにも理解のある飲食店を紹介してもらい働き始め、初めは環境に慣れず休みがちでしたが、職場の理解も得ながら徐々に休みも減りました。

また母親の介護は介護保険を申請してヘルパーさんに来てもらうことで、安心して働けるようにもなりました。

このように生活困窮者自立支援制度を利用し、社会復帰を果たした例も多くあります。

(参考:政府広報オンライン『暮らしに役立つ情報』)

(9)生活困窮者自立支援制度が「役に立たない」と呼ばれる理由・問題点など

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2370965

そもそも認知度が低い

まず一つもの問題点としては、この生活困窮者自立支援制度は認知度がまだ低く利用できる人が少ないという点です。

支援の条件から外れてしまう場合も少なくない

またその他に、以下の「支援の条件」に当てはまっていない場合には、そもそも利用することもできないため、多くの生活困窮者がふるいにかけられてしまっていることも、上記の理由として挙げられます。もちろん、「世帯の生計を主として維持していた」場合や、相談員が「暴力団員でないこと」というのは当然だとして、その他の条件は少々判断が難しいことも一つの要因でしょう。

  • 例えば、住居確保給付金を受けるためには以下の条件を満たしている必要があります。
  • 離職や廃業により経済的に困窮したとき
  • 世帯の生計を主として維持していたこと
  • ハローワークの利用など求職活動を真剣に行っていること
  • 離職から2年以内で、65歳未満
  • 「国の雇用施策による給付等」及び「地方自治体等が実施する類似の給付等」を申請者及び申請者と同一の世帯に属する方が受けていない
  • 暴力団員でないこと

支援内容に地域格差が生まれてしまうケースがある

また、自治体が行わなければならない必須事業は自立相談支援事業と居住確保支援のみで、学習支援などは任意事業にあるため、支援内容に地域格差がでやすい点も挙げられます。

(10)生活保護の前のセーフティーネットである生活困窮者自立支援制度の下、相談だけでもしてみては

このように生活困窮者自立支援制度は、生活保護の前のセーフティーネットでありまだまだ利用する中で問題点はありますが、時には社会復帰の可能な支援を受けられるケースもあります。

そのためまず少しでも悩んだ際は、相談だけでもすることをお勧めします。

もちろん、生活に関する悩みは、必ずしも本記事で取り上げたような「経済的困窮」だけに限らないでしょう。生活困窮者自立支援制度のほかにも様々な支援制度が存在するので、少しでも何か生活に悩みや問題を抱えている方は、ぜひ以下の記事を参考に、ほかの制度についても知ってみてください。

介護に関する相談窓口のまとめについての記事はこちら

→『介護に関する相談ができる場所6つ|メールや電話でも可能な窓口

生活保護に関する相談窓口に関してはこちら

→『生活保護受給のための世帯分離 | 可能なパターン2つと相談場所

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