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メリットばかり?外国人介護士の雇用にデメリットやリスクはあるのか

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人材不足が顕著な介護業界において、救世主と捉えられることもある、外国人の介護士。 実際に外国人介護士の人々を受け入れることで、各介護施設・事業所にはどんな影響が考えられるのでしょうか。 本記事は、各介護施設が外国人介護士の受け入れを行う前に理解しておくべきそのメリットやデメリット、リスクを丁寧に説明していくと同時に、仮に受け入れをするとした場合に必要となる基礎知識や手続きに関する説明をしています。
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(1)外国人介護士の受け入れの背景


出典:https://www.photo-ac.com/

日本では、2008年から、EPAを通じ、「外国人介護士」の受け入れが認められることとなりました。現在に至るまで、このEPAを通じ、3500人以上にも及ぶ外国人介護士が日本で活躍しています。

さらに、2018年には日本での在留資格として「介護」が新たに追加されるなど、介護業界における外国人の受け入れが進んでいます。

もともと日本政府の方針としては、日本国民の雇用安定のため、外国からの単純労働者の受け入れはなるべく行わないことが示されていましたが、介護業界の現場からの、「人手が足りない」「仕事量が多すぎる」といった声を受けての改革でした。

実際、外国人介護士の受け入れが開始して以降、介護職員から「負担が減った」「職場がにぎやかになった」などの反応が見えることから、業界に好影響を及ぼしている一面も見えます。

しかし一方で、この外国人介護士の受け入れを巡って、数々のトラブルや問題なども起きています。人材育成やコミュニケーション、法律関係の手続きなど、実際に受け入れる前は想像もしていなかったようなリスク・デメリットなども発生するケースもあるのです。

本記事は、各介護施設が外国人介護士の受け入れを行う前に理解しておくべきそのメリットやデメリット、リスクを丁寧に説明していくと同時に、仮に受け入れをするとした場合に必要となる基礎知識や手続きに関する説明をしています。

まずは、メリット・デメリットに簡単にまとめた図を紹介します。それらの詳細については、以降で説明していきます。

外国人介護士 メリット・リスクまとめ

(2)外国人介護士を受け入れる一般的なメリット

人材確保

まず、外国人の介護士の受け入れに関して、最も指摘されることの多いメリットは、「介護業界における人材不測の解消・軽減につながる可能性があること」だといえるでしょう。

現在介護業界は、様々な要因により、全体的に人材が大きく不足しているのです。公益財団法人介護労働安定センターによる調査(参考:http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/h29_chousa_kekka.pdf)では、なんと66%もの介護施設が人材の不足を感じている、という実態が明らかにされました。この背景には、大きく分けて

  1. 労働条件の要因
  2. 日本の人口に関する要因

の二つの要因があると考えられます。

労働条件の要因

一つは、介護業界における労働条件が、他業界と比べて平均的に劣っている点です。ここ何年にもわたり、多くの有識者に指摘され続けてきているにも関わらず、介護職の給与や福利厚生、労働環境といった部分に大きな改善がみられていないことから、介護という仕事に魅力を感じにくくなっている人の数がふえているのかもしれません。

実際、介護従事者が仕事に関して抱く悩みの中で最も大きいものが「仕事内容のわりに賃金が低いこと」が挙げられています(参考:大阪労働局『介護労働者の労働条件等の問題点について』)。

日本の人口に関する要因

もう一つは、日本という国がそもそも少子高齢化にあえいでいるため、そもそも労働市場に対する人材の安定供給がままならなくなってきていることです。

若年層の労働者の数が減少してしまうことで、事業や企業などの後継者が少なくなってしまい、産業の持続的な発展が難しくなってしまうのです。

この傾向は、日本に限らず、多くの先進諸国に対しても当てはまるため、この課題に対し、各国は対策を練ってきました。

これらの要因が複雑に絡まりあって生まれているのが、日本の介護業界における人材問題であるといえるでしょう。

外国人介護士の受け入れは、上記のように根が深い「人材不足」という問題を解決する可能性を秘めているのです。

今までも、アジアの途上国を中心とした国からすると比較的恵まれた環境で働くことができる日本という国に魅力を感じ、多くの外国人介護士が来日し、各介護施設にて活躍しています。

これにより、それまで慢性的な人手不足により現場の負担が大きくなっていたそれらの介護施設において、「負担が軽減された」という声が多く聞こえるようになったのです。

若く、体力のある介護士を多く取りそろえるのは、今やどの介護施設も抱える問題となっている中で、その条件を満たす介護士を安定的に雇用する際に、外国人介護士というのは、とてもニーズが高いと考える人も多いのです。

介護職としての適性が高い人材を雇用できる

外国人介護士を受け入れるメリットの一つが、介護職としての適性が高い人材を雇用できる可能性がある、ということです。

その根拠として指摘されているのが、外国人介護士として来日することの多い人々の国民性です。例えば、東南アジア諸国の人の性格の特徴として、他人への気遣いや明るさなどが挙げられています。

介護職は、仕事上1対1でのコミュニケーション能力が大きく求められます。実際介護の現場では、普段の会話やレクリエーションの時など、日本人よりも場を盛り上げたり、真摯に接したりする、といった意見もあります。

このことから、東南アジア諸国出身の介護士は、介護の仕事そのものに高い適性を持つ可能性があるのがうかがえます。

それに比べて、日本人職員は、介護の仕事に対しどれだけ親和性を感じているでしょうか。もちろん、性格や人間性の面からも、介護の仕事に大きなフィット感を感じている、という日本人介護士の方は多くいらっしゃいます。しかし、先述したように、待遇の面でも満足のいく条件の下で働けるか、という観点で見れば、日本人から見た日本はそこまで秀でているとはいいがたいでしょう。

国により程度こそ異なりますが、アジア諸国出身の人々からすれば、条件面では日本はとても魅力的だといえます。だからこそ、仕事にやりがいを感じやすいのです。

このように、外国人介護士は、先述したような「人材不足解消」という数合わせの役割にはとどまらず、質の観点から、日本においても優秀な介護士になりゆく可能性を持っているのです。

(3)外国人介護士を受け入れる一般的なデメリット(リスク)

ここまでは、外国人介護士を受け入れるメリットに関する説明をしてきました。主に人材の面から、量・質の両方の確保において非常に魅力的な「外国人介護士の受け入れ」なのですが、当然それにはデメリットやリスク、必要な手続きなど、ネガティブな側面も存在します。

コミュニケーションが難しい

その一つが、コミュニケーションにおいて、言語・文化の壁を乗り越えることの難しさです。

当たり前ですが、介護の仕事から、サービス利用者とのコミュニケーションは切っても切り離せません。入浴介助をするにしても、食事のお手伝いをするにしても、言語的であれ非言語的であれ、コミュニケーションなしではお互い必要な行動をとるための意思疎通ができません。

さらに介護職の場合、サービス利用者だけでなく、利用者の家族や施設長、他の職員など、多くの人とその都度必要なコミュニケーションをとる必要もあります。

いくら日本語が話せるとは言え、やはり母語かそうでないかの違いは大きく、そのギャップをどれだけの外国人介護士が埋めることができるのか、といった点に疑問を感じる、という意見も多く存在するのです。

本当に日本の介護業界への貢献になるのか、疑問すべきポイントもある

詳しい制度説明については後述いたしますが、どの外国人介護士も、「介護士としての知識と経験は日本人のそれと同じで、ただ外国人であるだけ」というわけではありません。

日本に来日する際には介護士の卵であったが、日本で勉強し、経験を積み、日本の国家資格試験である介護福祉士の資格を取得し、満を持して日本の介護士として専門性を発揮できるようになる外国人介護士の方は多くいらっしゃいます。

しかし、現実問題として、全ての外国人介護士の中では、その確率は半分程度(平成29年度、EPAにて来日したすべての外国人介護士の中で、介護福祉士の国家試験に合格したのは50.7%)です。

(参考:厚生労働省『介護分野における外国人人材に関する 諸制度や動向について ~技能実習制度など~』)

本当に彼らが介護士として成長をするのか、さらに、成長したのち、日本で本当に長い間介護士として勤務し続けてくれるのかどうか、それらの疑問点について完全に検証するには、まだ日本における外国人介護士の受け入れの歴史は十分ではないといえます。

手続きが煩雑

また、外国人介護士の受け入れの前にはなかなか想像はつきにくいかもしれませんが、国内の介護人材を雇用することと比べて、必要になる手続きも非常に多く、複雑なものであることも、デメリットとして指摘できるポイントでしょう。

そもそも外国人介護士側も、様々な手続きを、様々な関係機関と、様々な法律・規制に基づいた形で行った後に来日しています。その介護士を雇用する際には、同じだけの手続きが、やはり事業者側にも必要になるのです。

詳しい手続きの内容については本記事の後半に譲りますが、

  • 煩雑な手続きを行える時間的・仕事的な余裕があるのかどうか
  • それらのコストを支払ってまで雇いたい人材がいるのか

などについては、事前にきちんと考える必要があるでしょう。

(4)外国人介護士を受け入れるための3つの制度

さて、本記事のここまででは、外国人介護士を受け入れることのメリットとデメリットに関して説明してきました。

では、実際に受け入れるとしたら、どんな知識が必要で、どんな手続きを踏まなくてはいけないのでしょうか?

本段落では、外国人介護士を受け入れるとした場合に必要となる基礎知識をまとめていきます。

現在、介護業界における外国人介護士の受け入れを行うためのルートには、

  • 技能実習生(2017年11月1日)
  • EPA(経済連携協定)(2008年7月1日)
  • 在留資格「介護」(2017年9月1日)

の3種類が存在します。

以下、本段落では、この3つの制度、それぞれについて、主な項目ごとに簡単に比較しながら説明していきます。

制度開始時・制度の目的

技能実習生

技能実習生の制度は、2017年11月1日より開始しました。この制度はもともと、「技術移転を通じて、各国の成長を後押しする」という「国際協力」をその根底の目的としています。

あくまで「国際協力」が目的であるため、介護人材という限定をかけて人材の不足を補う意図は、この制度には含まれていないのです。

EPA(経済連携協定)

上記のことは、2008年7月1日から開始した、3つの制度の中で最も歴史の深いEPA(経済連携協定)についても同様に当てはまります。この制度は、人材交流を促進することで、締約国同士の経済基盤をより強固なものにする目的で開始されました。

つまり、EPAに関しても先述の技能実習生の場合と同様に、「介護業界」といった特定の業種・業界の人材交流を意図した協定ではないことから、こちらについても介護における人材不足の解決を主な目的とはしていないのです。

在留資格「介護」

在留資格「介護」は、2017年9月1日より適用される、入国管理法の改正により成立しました。

制度の目的は、専門性・技術・知識を携えた海外人材の確保です。つまり、上記の2つの制度と異なり、日本の介護人材不足により直接的にアプローチしているのです。

留学生の受け入れ国や可能業務などに関して、技能実習生やEPAのように複雑な制約がなく介護福祉士を確保できる点から、介護業界に大きな変化をもたらすことが期待されています。

雇用形態・待遇

技能実習生

まず、技能実習生制度における雇用形態です。

技能実習生は、あくまで日本が発展途上国への技術移転という国際協力を目的として受け入れていたルートの外国人介護士であることから、給与や福利厚生などの処遇については、各事業者の良心に任されていた部分が多々ありました。

しかし、テレビや新聞などのマスコミで取り上げられているように、残業代が出なかったり、長時間労働を強いられたりするなど、非常に劣悪な環境の下で仕事を強いられてしまったというケースもありました。

2017年の法改正により、技能実習生に対しても適正な待遇がなされるよう、より徹底した管理が求められていきます。

EPA(経済連携協定)

EPAの場合は、基本的に、介護福祉士の資格取得を目指す候補者としての来日になります。そのため、介護福祉士の国家試験受験資格を満たすため、最初の3年間は介護事業所での実習、という形で経験を積むことが求められます。

実習とはいえ、雇用形態は基本的には社員としての登用になります。この際、雇用条件などを求人前に提示することになります。

その雇用条件を一方的に変更して介護福祉士候補者が不利益を被った場合、事業所に罰則が適用されます。

具体的には、

  • 以降3年間にわたり受け入れができなくなる
  • その時点で雇用している介護福祉士候補者もほか事業所へ移転することになる

などです。

すなわち、こちらも技能実習生の部分で説明した通り、適正な労働環境の提供が徹底されていなくてはいけない、ということです。

在留資格「介護」

そして最後に、在留資格「介護」での雇用形態についてです。この制度においては、最初に在留資格「留学」として、日本語学校に1年間、介護福祉士の国家資格を取得するための養成学校に2年間通い、勉強することになります。

そのため、介護福祉士の資格を取得するための勉強に差しさわりのない程度に、介護施設でアルバイトをする場合でも週28時間以内と制限されます。その際、時給は「日本の無資格者と同等の報酬」をベースとすることが定められています。

どこの国から

技能実習生

技能実習生の送り出し国は、上記の表にて示されている15国になります。今後もこの国は増えていく可能性があります。

EPA(経済連携協定)

EPAに関しては、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3国が送り出し国となっています。

厚生労働省が、そもそもこの制度自体がこの3国の強い要望に基づいたものであり、この制度は看護・介護人材の不足を補うためのものでない、と強調していることは、注目に値するでしょう。(参考:厚生労働省『インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて』)

在留資格「介護」

最後に、在留資格「介護」についてです。在留資格については、そもそも入国管理法が定めており、基本的に送り出し国に制限を定めているわけではありません。ですので、これまで受け入れてこなかった国からの人材の受け入れも可能になった点が、他の2つの制度と異なる点でしょう。

(5)外国人介護士の育成方法

EPAを利用して日本に来た外国人たちは、最終的に国家資格を取得できなければ、どれだけお金をかけても研修をしても、帰国するしかありません。

そうならないためにも、人材育成が重要なポイントになります。

最初は、日本語をまったく話すことができない外国人がほとんどです。事務所に配属される前に、現地で3ヵ月間と日本で半年間、勉強を行います。その期間で日本語の研修を行いますが、日本語を習得できる人は少ないようです。

そうなると、事務所に配属されてから事務所の方で外国人介護士を育てる必要があります。

そこで、必要と言われている研修項目は、以下の項目などです。

  • 日本語の習得・コミュニケーションを取れるようにする
  • 介護技術、介護の知識
  • 日本文化の勉強
  • 生活面のケア
  • 日本ならではの風習への配慮

これらをすべて行うと、費用負担も1千万円近くにもなると言われています。

EPAにおける外国人介護士の人材育成は簡単ではありません。しかし、国家資格を取得できれば、日本の介護士不足を補う役目を果たしてくれるでしょう。

(6)外国人介護士雇用の成功例(現場からのポジティブな意見)

次に、以上のような制度を通し、多くの手続きを経て外国人介護士を受け入れてきた介護施設の現場からの反応をまとめてみてみましょう。

  • 「外国人介護士の方々は、元々働いている自分達にコミュニケーションを合わせてくれるので、一緒に仕事をしていてやりにくさを感じたことがない。」
  • 「一番の懸念は、サービス利用者の方々の反応でしたが、語学力については日々成長しており、特に問題は感じませんし、むしろそのひたむきさに心を打たれた、とおっしゃっていただくこともあります。」

このように、人材の不足という「量」的なメリットだけでなく、人材の「質」的にも、外国人介護士に対してはポジティブな意見が多く聞かれることがうかがえます。

(7)外国人介護士雇用の失敗例(現場からのネガティブな意見)

  • 「どんなに介護士として成長をしても、結局何年かしたら帰国してしまうので、現場としては人材不足の解消に貢献できている印象はない」
  • 「やはり言語の違いというのはコミュニケーションにおいて、一番の障壁であるように感じます。介護の仕事というのは、1にも2にもコミュニケーションです。その中で、外国人介護士の方々が現場の負担になってしまうタイミングは、正直ないとは言い切れません。」

先述した外国人介護士の受け入れのための3つのルートのどれかによっても影響はあるのですが、制度によっては外国人介護士を受け入れても、その全員が長年日本の介護業界で従事し、貢献していく、ということは難しいと考えられます。

その場合、人材不足の解消、という大きなメリットを感じにくいだけでなく、外国人介護士を受け入れる負担だけが強く感じられてしまうケースもあるのです。

また、介護の仕事に欠かせないコミュニケーション能力、なかでも言語力の面で、やはり日本人の介護士と比べ、おぼつかなく感じられる面はどうしてもあるのでしょう。そのコミュニケーション能力を補うスキルを持っているかどうか、というように、ある程度外国人介護士への評価がシビアなものになってしまうこともあるようです。

(8)メリットデメリットを理解したうえで雇用を


出典:https://www.photo-ac.com/

以上、ここまでで述べた通り外国人介護士の受け入れには様々な方法・制度があり、複雑な手続きを経て可能になるものです。それにも、様々なメリットやデメリットが存在するのです。

そのため、外国人介護士の受け入れをするか否か、するとしたらどの制度を使うか、しないとすればほかに人材不足をどのような方策で解消していくのかについての意思決定を、各介護施設には求められているといえます。

その際、外国人介護士がどのような経緯で来日するのか、どのような手続きを経て就業に至るのかなどについて詳しく知り、メリット・デメリットが何であるのかを把握しておくことが重要だといえます。

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