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口腔衛生管理体制加算とは | 算定条件・対象者・申請方法などを解説

公的制度
口の中の環境を良好に整えることは、誤嚥性(ごえんせい)肺炎や感染症の予防に繋がるということが最近の調査・研究で明らかになってきました。そのような背景から、利用者の口腔内環境を整えるための体制を整えている施設や事業所を評価する「口腔衛生体制管理加算」が設けられています。口腔衛生体制管理加算の算定要件や対象者、申請方法などを詳しく説明します。
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(1)口腔衛生管理体制加算とは

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2483505

口腔衛生管理体制加算とはその名の通り、口腔衛生を管理する為に必要な体制を整えている施設・事業所が算定できる加算です。この加算では、施設・事業所関係者の取り組みのみならず、歯科医療機関との連携が重要視されています。

施設・事業所と歯科医療機関の、スムーズな連携のもとで行われる口腔衛生に関する取り組みにより、利用者の口腔内環境を衛生に保つことが求められています。

(2)加算導入の背景

口腔衛生管理体制加算は、平成21年の介護報酬改定時に新設されました。

当時、施設・事業所で重点的に行われるケアといえば「食事介助」「入浴介助」「排せつ介助」「移動介助」がメインであり、口腔衛生を整える為の「口腔ケア」を積極的に取り組んでいる施設・事業所は、そう多くはありませんでした。

しかし、適切な口腔ケアを受けている要介護高齢者は生活の質やADLの向上、高齢者の死因としてよく耳にする誤嚥性肺炎を予防効果などが多くの研究者より指摘されました。

そのような背景を受け、介護保険施設・事業所に入居する利用者の口腔機能を維持する体制づくりを整えるため、口腔衛生管理加算が新設されました。以降、口腔衛生管理加算を算定する施設・事業所は年々増加し、平成27年12月の時点で、約56%の施設で算定されています。

(3)加算を算定できる事業所は?

口腔衛生維持管理加算を算定できる施設・事業所は、以下の通りです。

  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(地域密着型特別養護老人ホーム)
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院
  • 特定施設入所者生活介護(介護付きケアハウス)
  • 地域密着型特定施設入所者生活介護(地域密着型介護付きケアハウス)
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

(4)加算算定要件は?

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/352634

口腔衛生管理体制加算を算定するための要件は、大きく分けて2点あります。それぞれ詳しく説明します。

口腔ケア・マネジメントに係る計画書の作成

歯科医師または、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士の、技術的アドバイスと指導に基づいて、利用者の口腔ケア・マネジメントに係る計画書が作成されていることが必要です。

この計画書は、1度作成した場合、施設・事業所の体制に大きな変更が生じない限り、都度、修正する必要はありません。その後の具体的な指示については、以下2に記載する「技術的助言及び指導」の際に行うこととなります。

歯科専門職による介護職員に対する口腔ケアに係る技術的助言及び指導

歯科医師または、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、加算を算定しようとする施設・事業所の介護職員に対して、月に1回以上口腔ケアにかかる技術的アドバイスと指導を行う必要があります。歯科医師か歯科衛生士より、直接指導を受け、その指導記録を残しておく必要があります。

(5)加算算定単位数は?

1ヶ月につき30単位を、施設・事業所の利用者全員に算定することが出来ます。

しかしこの単位を取得するためには(4)で説明した算定要件を満たさなければなりません。

(6)加算算定上の留意点とは?

口腔衛生管理体制加算を算定する上で、留意しなければいけない点がいくつかあります。それぞれ詳しく説明します。

技術的助言・指導は、歯科訪問診療や訪問歯科衛生指導の実施時間外に行う

口腔衛生管理体制加算は、歯科医院が、歯科訪問診療料や訪問歯科衛生指導料を算定した日の属する「月」であっても算定できます。

しかし、加算要件にある「介護職員に対する技術的助言・指導または入所者の口腔ケア・マネジメントに係る計画に関する技術的助言・指導」は、歯科訪問診療や訪問歯科衛生指導の実施時間外に受けなければいけません。

歯科医院が、歯科訪問診療や訪問歯科衛生指導の実施時間に技術的助言・指導を行った場合は、口腔衛生管理体制加算を算定する上での技術的助言・指導と見なされず、加算を算定することが出来ないので、留意が必要です。

「口腔ケアに係る技術的助言及び指導」の内容は、決まっている

口腔衛生管理体制加算を算定する上で必要となる「口腔ケアに係る技術的助言及び指導」の内容は、以下の通りに定められています。

  • 利用者の口腔内状態の評価方法
  • 適切な口腔ケアの手技
  • 口腔ケアに必要な物品整備の留意点
  • 口腔ケアに伴うリスク管理
  • その他当該事業所において日常的な口腔ケアの実施にあたり必要と思われる事項のうち、いずれかに係る技術的助言及び指導

利用者個別の口腔ケアに関する事項ではなく、施設・事業所全体の口腔ケアに係る体制整備に関する事項となります。

「口腔ケア・マネジメントに係る計画」の記載内容は、定められている

口腔衛生管理体制加算を算定する上で必要となる「口腔ケア・マネジメントに係る計画」に記載する内容は、以下の通りに定められています。

  • 当該事業所において利用者の口腔ケアを推進するための課題
  • 当該事業所における目標
  • 具体的方策
  • 留意事項
  • 当該事業所と歯科医療機関との連携の状況
  • 歯科医師からの指示内容の要点
  • その他必要と思われる事項

それぞれの項目について記載された計画を定めなければいけません。

(7)口腔衛生管理加算との違い

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1097688

今回、取り上げている「口腔衛生管理体制加算」と名称が似ており、混同されることが多い「口腔衛生管理加算」があります。

どちらも、施設・事業所における口腔衛生管理について評価する加算となりますが、「口腔衛生管理体制加算」は、施設・事業所の体制整備を評価する加算なのに対して、「口腔衛生管理加算」は利用者一人ひとりに対して行った口腔衛生管理に関する取り組みを評価する加算です。

「口腔衛生管理加算」を算定するための前提として「口腔衛生管理体制加算」を算定していることが求められていることから、口腔衛生管理体制加算の上位加算としての位置づけとなります。

(8)口腔衛生管理体制加算を算定するメリット

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2343518

加算自体の単位数は月30単位であり、収支の点からは、そう大きなメリットはないと思われがちな口腔衛生管理体制加算ですが、多方面でのメリットがあります。

職員の口腔ケアに対する意識の向上

冒頭お伝えした通り、他のケアと比べると後回しにされがちな「口腔ケア」。しかし、口腔衛生管理加算を算定することで、おのずと口腔ケアを行う体制が整えられます。

口腔ケアは、行えば行うだけ、口腔内の環境が改善されます。明らかに改善されていく利用者の口腔内環境を見た職員は、口腔ケアの重要性を理解し、主体的に口腔ケアに取り組むようになります。そのきっかけとして、「口腔衛生管理体制加算」の算定は、大きなメリットがあります。

誤嚥性肺炎やインフルエンザなどの発症を抑える効果がある

細菌が肺に入り込み発症する誤嚥性肺炎を予防する為に、口腔ケアを推進するのは効果的です。最近では、口腔ケアを行うことで、インフルエンザの発症を抑える効果があることが研究者により示されています。

適切な口腔衛生を維持することは、口腔内のみならず、利用者の全身状態の安定にもつながります。

稼働率があがり、収支改善につながる

上記2の通り、利用者の全身状態が安定することから、おのずとベッド稼働率は向上します。口腔衛生管理体制加算を算定することで得られる介護報酬はわずかではありますが、このようにベッド自体の稼働率は向上することが期待できるので、結果として、大幅な収支改善につながる可能性があります。

(9)口腔衛生管理体制加算を算定するデメリット

口腔衛生管理体制加算を算定すること自体に大きなデメリットはありませんが、算定要件を満たす上で、課題となってくるのが「歯科医院」の協力体制です。

歯科医院には、通常の歯科医院営業の合間を見て、「口腔ケア・マネジメント計画書」の作成や、「技術的助言・指導」を行ってもらう必要があります。複数の歯科医師を雇い入れている歯科医院であれば、ある程度、融通は聞くかもしれませんが個人開業が多い歯科医院は通常の営業で手一杯という場合が多いようです。

施設・事業所に協力歯科医院がある場合は、まず当該歯科医院に相談してみるとよいでしょう。

(10)口腔衛生管理体制加算算定から始まる口腔ケア

口腔ケアは、「食事介助」「入浴介助」「排せつ介助」「移動介助」と並ぶ重要なケアの1つです。

しかし、もともと口腔ケアを重視していなかった施設・事業所にとっては、これら4つと同等のケアとして取り扱うこと体制を整えることは、そう簡単なことではありません。

そこで、この「口腔衛生管理体制加算」を口腔ケアを重視して取り扱う体制を整える為の施設・事業所の動機づけ、きっかけづくりとして、活用してみてはいかがでしょうか。適切な口腔ケアを行うことで、様々な効果が現れ、いつの間にか、「口腔ケア」が他のケアと同等のケアとして取り扱われていることでしょう。

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