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介護職員処遇改善加算とは | 対象者/受給条件/メリットなど

在宅介護サービス
介護職員処遇改善加算の「処遇改善」とは具体的には、職員の賃金アップを指します。賃金を含めた職場環境を他産業と同等以上に底上げするために事業所を支援する仕組みが目的で創設されました。導入された背景や受給条件、どのように支給を行うのかなどを解説します。
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(1)介護職員処遇改善加算とは

介護職員処遇改善加算とは

介護職員処遇改善加算とは、介護サービス事業所が、介護職員のキャリアアップの仕組みを作ったり、職場の労働環境の改善を行ったりした場合に、その介護サービス事業所に対してお金が支払われる制度です。支払われるお金は、介護職員の給与アップを目的としています。

平成23年度までは、「介護職員処遇改善賃金交付金」と呼ばれていましたが、平成24年に介護職員処遇改善加算として創設されました。

介護職員処遇改善加算は、各サービス事業所が取り組み内容を申請する必要があります。申請が通れば、介護報酬に介護サービス毎に一定率を加算して支払われます。支払いを受けた介護サービス事業所は、介護職員の給料とは別に手当として介護職員に支給する必要があります。

(2)導入背景

目的は、介護業界の人材不足対策

介護職員処遇改善加算制度の導入の背景は、介護現場での離職率の高さにあります。

年々介護サービスを利用する人は増えている反面、介護職員数はその増加に追いついていません。介護職は給与が低かったり、労働環境があまり良くなかったりする場合があることから、なかなか人材が定着しないという現状があります。

介護職員処遇改善加算の「処遇改善」とは具体的には、職員の賃金アップを指します。介護職の賃金水準は他の産業や職種と比較すると低いと言われています。その水準を上げ、介護職員の確保と人材の定着を図ることを目的の一つとしています。

賃金を上げるだけでは職場は改善しない

しかし、賃金水準がアップしただけでは、人材確保に直結するわけではありません。賃金を含めた職場環境を他産業と同等以上に底上げするために事業所を支援する仕組みをつくることも、介護職員処遇改善加算制度の目的の一つです。

(3)受給対象者


出典:https://www.photo-ac.com/
  

介護職員処遇改善加算は、誰でも受給できるわけではありません。同じ介護サービスの現場で勤務をしても介護職員処遇改善加算の手当をもらえる職種ともらえない職種があります。

介護職員処遇改善加算は、あくまで介護職員を対象としています。そのため、同じ介護サービス現場で働いていても、看護師や栄養士、理学療法士など、他の職種に従事している場合は支給の対象にはなりません。

ただし、支給する対象職員の給料をどれだけ増やすかは、事業所に委ねられています。

(4)受給条件


出典:https://www.photo-ac.com/

介護処遇改善加算の受給条件として、まずは事業所で働くすべての介護職員に周知していること、つまり介護職員処遇改善加算の算定要件の内容の説明が絶対条件となります。

また、加算金額は下記の加算要件を事業所がいくつかクリアしているかによって、介護職員処遇改善加算の支給金額(=加算の種類)が決まります。この加算要件には、大きく分けて、

  1. キャリアパス要件
  2. 職場環境等要件

の2つがあります。まずは、この2種類の「介護職員に対する処遇の改善を行っているかどうかを判断する際の要件」についてそれぞれ説明していきます。

加算要件の種類

1.キャリアパス要件

要件の種類 要件の内容
キャリアパス要件Ⅰ A. 職位・職責・職務内容に応じた任用要件を定めること。
B. Aに掲げた職位や職業、または職務内容等に応じた賃金形態について定めること。
C. A、Bの内容についての職業規則などのもので書面で明確にし、全ての介護職員に周知していること。
キャリアパス要件Ⅱ

A. 以下の条件を満たした計画を作成していること。

  • 資質向上のための計画に沿って研修機会の提供または、技術指導等を実施(OJT、OFT-JT等)するとともに介護職員の能力評価を行うこと。
  • 資格獲得のための支援 (金銭、休暇の取得、シフト調整など)をすること。

B. Aの内容について全ての介護職員に周知していること。

キャリアパス要件Ⅲ A. 介護職員について、以下の3つの昇級する仕組みのどれかを導入していること。(複数の組み合わせも可)
  • 「勤続年数」や「経験年数」などの経験に応じて昇給する仕組み。
  • 「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの資格の取得に応じて昇給する仕組み。
  • 「実技試験」や「人事評価」などの一定の基準に基づいて昇給する仕組み。
 (ただし客観的な評価基準や昇給条件が明確に示されていること。)
B. Aの内容について全ての介護職員に周知していること。

2.職場環境等要件

  • 賃金改善を除く処遇改善(資質の向上、職場環境・処遇の改善)の取り組みを行うこと。
  • 処遇改善はただ定めて、行政に提出するだけではなく、全ての介護職員に周知してもらう方法も明らかにする必要がある。

加算の種類

上記の要件のうち、どれを満たしているかで、その事業所が得られる加算の種類も、金額も変わってくるのです。

厚生労働省による、介護職員処遇改善加算制度に関するパンフレットを見てみましょう。

介護職員処遇改善加算の種類

(引用:厚生労働省『「介護職員処遇改善加算」のご案内』

この表を見ることで、それぞれの事業所がどの加算の種類の要件にマッチしているか、どのくらいの加算を見込めるのかなどについて確認することができます。

(5)介護職員処遇改善加算をもらえない事業所もある

介護職員処遇改善加算は、全ての事業所が算定を行っているわけではなく、制度自体の取得を行っていない事業所があります。2017年4月に拡充された介護職員処遇改善加算制度では、64.9%の事業所しか取得していません。

ではなぜ、介護職員処遇改善加算の届出を行わないのでしょうか。

行わない理由として一番多いのは、事務作業が煩雑になるという理由です。

処遇改善加算を算定して支給するには、処遇改善計画書の作成や処遇改善実績報告の作成、全職員への処遇改善手当の支給等の事務作業が必要となるため、作業が煩雑化してしまいます。

小規模の介護事業所ではこの業務に割く時間と労力の確保ができずに、介護職員処遇改善加算の届け出ができていないというのが現状です。

(6)いくらもらえるのか

介護職員処遇改善加算を算定した場合、実際にはいくらもらえるのでしょうか。報道では、毎月〇万円昇給したというケースが見られますが、それほど昇給するケースは多くはありません。

具体的にいくらもらえるかは、個々の事例によって異なるため明確な金額を算出することはできません。処遇改善加算の区分が5段階(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ)あり、介護サービス種別により加算率は違います。同じ加算Ⅰの区分であっても、訪問介護は13.7%、通所介護では5.9%とそれぞれのサービスによって、加算率が変わります。

また、介護職員処遇改善加算の介護職員への分配は、各事業所の判断に委ねられます。

たとえば、常勤職員のみに配分する事業所もあれば、非常勤職員にも配分する事業所があること、勤務年数で判断する事業所、毎月配分する事業所もあれば、年に数回に分けて配分する事業所もあります。

よって、毎月、いくらもらえるのかという試算が難しくなってしまうのです。

(7)職員の給料には、どのように反映されるのか


出典:https://www.photo-ac.com/

一般的には、給与明細にも明示される

介護職員処遇改善加算を算定している事業所に勤めている介護職員の給与明細には、処遇改善加算という項目が設定されるのが一般的です。

項目に処遇改善加算が記載され、支給金額が明記されていることで支給されていることがわかります。

明細に記載のない場合は

事業所によっては、別途支給、賞与と合わせて支給という事業者も存在するとは思いますが、いずれにしても、明細書がない場合は、給与に関する対応が不適切な事業所であるということになります。項目もない、支給もない場合は、事業所が介護職員処遇改善加算を算定していないか、違法状態にあるということです。

介護職員処遇改善加算は、使用用途が制度で限定されています。加算によって得られた金額以上のお金を、職員の処遇改善に使用しなければなりません。万が一、別の用途に加算によって得られた金額を使用していると、不正請求になります。

また、キャリアパス要件をクリアしていないケースや「研修を計画的に行っていない」、「研修計画自体がない」など、受給要件に沿っていない場合も不正となります。

以上のような不正を行うと、介護サービス事業所は、行政処分の対象となり、介護サービス事業所の指定取り消しや介護報酬の返還などの処置がとられます。介護サービス事業所は不正に受給した介護報酬の返還を求められます。ペナルティとして不正に得た金額の4割増の金額を返還しなければなりません。

(8)介護職員処遇改善加算のメリット

介護職員処遇改善加算は、介護職員の給料が上がる以外にも、その他の処遇の改善を行ってくれる制度です。

キャリアパス要件として、資格取得の推進や仕組みづくり、職場環境の整備として、介護職員の人材育成や腰痛防止等の対応等、行うことを目的としています。介護サービス事業所がこのような取り組みを行うことは、介護職員にとっては、働きやすい職場になっていくというメリットがあります。

(9)介護職員処遇改善加算の問題点

介護職員処遇改善加算の問題点としては、介護職員の手取りが増えたという一部の報道とは裏腹に現場のスタッフの実感があまり伴っていないところにあります。

要因としては、処遇改善加算の区分が5段階(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ)あることや、介護サービス種別により加算率が違うこと、さらには介護職員処遇改善加算の介護職員への分配が各事業所の判断になっていることが挙げられます。

介護職員から見ると、支給条件が分かりにくいこともあり、給与が上がったという実感が持てないケースも多いようです。

(10)介護職員処遇改善加算は介護業界を盛り上げる

介護職員処遇改善加算の算定により、介護職の給料はテコ入れが図られています。

キャリアパス要件や処遇改善の取り組みの度合いにより加算率が上がり、その分給与が上がります。介護職員処遇改善加算は昇給だけでなく職場の環境も良くする理想的な制度です。

しかし、この制度は算定を申請するかどうかや、加算をどのように分配するかについて事業所の采配が大きいため、あまり恩恵を受けられない職員もいるなど課題を多く残しています。こうした課題については改善の余地がありますが、介護職員処遇改善加算が優良事業所を見つける一つの指標となることは確かです。

介護職員処遇改善加算をたくさんもらえる職場は、介護職にとっては働きやすい職場であるとういうことになります。

介護職に就く際は、その事業所が介護職員処遇改善加算を受給しているかどうかも確認してみましょう。

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