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アニマルセラピーとは│認知症への効果や向いてる犬種、問題点など

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犬や猫と触れ合うと心が癒やされる経験をした人も多いのではないでしょうか。最近では猫カフェなどの動物のいるカフェの人気が高まっており、動物との交流に癒しを見出している人は少なくありません。こうした効果を狙って、動物との触れ合いを医療の分野に取り入れたのがアニマルセラピーです。この記事では、アニマルセラピーの具体的な効果や問題点などをご紹介します。
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更新日

(1)アニマルセラピーとは

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2661955

動物との触れ合いを通じて、ストレスが軽減されたり癒やしを感じた経験はないでしょうか?

動物と触れ合うことで元気が出たり、ポジティブになったりした経験をお持ちの方は少なくありません。

アニマルセラピーとは、動物との触れ合いを通して心理的安堵、精神的健康の改善を狙ったセラピー手法です。海外で生まれたセラピー手法なのですが、歴史は意外と古く様々な場所で導入されています。

なお、「アニマルセラピー」という言葉自体は、日本で作られた造語となっています。

※国際的にはAnimal Assisted Therapy(AAT=動物介在療法)と呼称されています。

(2)アニマルセラピーの歴史

アニマルセラピーのルーツは、古代ローマ時代まで遡ります。負傷兵を乗馬でリハビリをさせるのが目的でしたが、馬との触れ合いによって心的利点がある事が発見されました。

そして、18世紀に入るとイギリスの精神障がい者施設において患者に自制心を習得させる目的で鶏などの飼育が導入され、19世紀にはドイツで知的障がい者のコミュニケーションスキルを高めるために犬猫との触れ合いが取り入れられたとの記録があります。

本格的に治療を目的として導入されたのが20世紀以降であり、そこで現在の様な「アニマルセラピー」が形作られました。アニマルセラピーという治療法は、未だに手探りな部分も多いのですが、様々なデータが着々と集まりつつあるので、今後さらなる発展が期待されます。

(3)アニマルセラピーの種類

三種類のアニマルセラピー

アニマルセラピーは、国際的には『動物介在療法(Animal Assisted Therapy:AAT)』と呼ばれています。また、セラピーとして導入されているものとしては、『動物介在活動(Animal Assisted Activity:AAA)』もあり、概ねこの2タイプがアニマルセラピーと呼ばれています。

また、セラピーでは無いものの、教育の一環として動物とのふれあいをプログラムに含める『動物介在教育(Animal Assisted Education:AAE)』なども存在しています。

①動物介在療法(Animal Assisted Therapy:AAT)

医療の現場で用いられている手法で、専門的な治療を動物を用いてサポートする事を目的とした補助療法です。その目的は精神的治療、身体的治療、社会的機能の向上・改善等を目的としており、患者の状態によってそれぞれ選択・実施されています。

②動物介在活動(Animal Assisted Activity:AAA)

動物との触れ合いを通じて、情緒的、教育的、身体的治療効果を狙っており、その他にもレクリエーションやQOL(Quality of Life:生活の質)向上を目的としています。教育機関や福祉施設などで取り入れられており、国内で一般的に「アニマルセラピー」と呼ばれているものはこれにあたります。

③動物介在教育(Animal Assisted Education:AAE)

動物との触れ合いを教育の一環として取り入れたもので、小学校や児童施設等で主に行われています。教育計画や学習計画に基づき、教員と共に専門家が介して行われており、それらを通して命の尊さを学習することを目的としています。また、学習プログラムとして近年増加傾向にあります。

国内で行われているアニマルセラピーでは、主に犬を用いたものが主流ですが、情緒が高いとされる哺乳類は適性が高いとされています。

そのため、猫や馬の他にイルカやうさぎなども用いられており、「ドッグセラピー」、「ドルフィンセラピー」などが広く知られています。

(4)アニマルセラピーの効果

セラピーは薬や手術などによらない治療・療法の事を指しているので、アニマルセラピーも「癒やし」効果を期待できます。精神的な安定効果の他には、以下の様な効果を得られる可能性があります。

心身の健康促進

犬などのペットの暮らしが、その飼主のストレスを軽減することが指摘されています。

海外で行われた研究において、犬との暮らしで血圧が正常値に近づいた、「幸せホルモン」であるオキシトシンの分泌が促されたなどの報告があり、人の心身の健康促進に効果を期待できることが広く知られています。

また、後述しますが動物と触れ合いによって意欲や活動力が向上するので、認知症のリスク低減にも効果があるとされています。

社会性の向上

海外では、アニマルセラピーが受刑者や問題行為の見られる児童の社会性の向上にも用いられています。刑務所内で犬のトレーニングを行わせたところ、問題行動や再犯率が低下したことにより、社会復帰がスムーズに行えたなどが報告されています。

また、それを受けて国内でも刑務所内で盲導犬を育成する取り組みが行われています。いずれにしても、本人の社会性の向上(表情が豊かになる、発語が増えるなど)だけでなく、間接的であるものの社会的利点があるので、アニマルセラピーの意義は深いと言えます。

情緒の安定

動物との触れ合いを行うと、心理的な安堵を得ることが出来ます。その結果、ストレスの軽減や孤独感の解消、動物の友好的な性格により必要とされる充足感を得られるので、情緒の安定をもたらしてくれます。

また、北海学園大学が行った「アニマルセラピー導入の医療費削減効果分析」では、アニマルセラピーを実施することによって、総医療費は1350億円の削減につながるといった研究結果が発表されるなど、様々な定量的なデータが報告されているので、今後もさらなる発展がある可能性もあります。

参考:アニマルセラピー導入の医療費削減効果分析

(5)認知症におけるアニマルセラピーの効果は

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1818168

認知症になった高齢者は、何らかの施設に入居すると徐々に活動力や意欲がなくなることがあります。その結果、会話や表情が著しく乏しくなり、身体的な機能低下と合わせて精神的にも不安定にある事があります。

認知症におけるアニマルセラピーでは、それら精神的不安定を取り除く効果やポジティブな情動の変化を狙って導入されています。また、動物との触れ合いを通して、自発性の向上、意欲向上、コミュニケーション拡大を通して、生活の自立度・質の改善が期待されています。

(6)アニマルセラピーに向いている犬種は

アニマルセラピーに向いている犬については、どんな犬種でも素質があるとされていますが、個体の性格によっては向き不向きがあるので、以下の条件を満たしている事が求められます。

セラピードッグの条件

  • ワクチンを定期的に受けており、健康上の状態に問題ないこと
  • 人、犬共に友好的であり、吠えたり噛んだりしないこと
  • 基本的なしつけ(おすわり、待てなど)ができていること
  • 人に触れられることに抵抗感が無いこと
  • 警戒心(人、音、状況に怖がらない)の強くない犬であること
  • 忍耐力があること

また、アニマルセラピーはボランティア活動団体が行っている場合が多いですが、場所によっては適性テストを経る必要があるようです。

向いている犬種

基本的にはどの犬種でもセラピードッグになれるのですが、アニマルセラピーの現場では温厚で忍耐力がある犬が採用されやすいです。そんな特徴をもつ犬種として、

  • ラブラドールレトリバー(辛抱強い)
  • ゴールデンレトリバー(温厚)
  • ボーダーコリー(賢く従順)
  • ジャーマンシェパード(賢く忍耐強い)

などが適正が高いといえます。

また、動物との触れ合いを想定して小型犬も良しとされるので、ダックスフンド(懐きやすく活発)、トイプードル(賢く甘え上手)等も適性が高いでしょう。ただ、国内のアニマルセラピーの現場を見てみると、シェパード、プードル、MIX犬など様々な犬が活躍しているので、前述した「条件」を満たしていればどの犬でも適性があると言えます。

(7)アニマルセラピーの問題点

アニマルセラピーの効果は様々な研究結果が裏付けていますが、その反面問題も抱えているセラピーでもあります。もちろん、運営する事自体の難しさもありますが、やはり最大の問題はアニマルセラピーに用いる動物自身へのストレスが挙げられます。

アニマルセラピーに用いられる動物は、その活動の性質上普通のペットよりもストレスや疲労のが過度に掛かる傾向が強くなっています。実際、アニマルセラピーになる条件として、忍耐力が求められるため、動物へのストレスが避けられない事が分かります。

また、セラピーを受ける側がそもそも動物が嫌いだったり、アレルギーがあったりすることもあるため、安易に取り入れるのは危険です。

(8)アニマルセラピーを受けたいときは

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1504414

アニマルセラピーはNPOや一般社団法人などが提供している場合が多く、ボランティア活動として無料で行っているところもあれば、有料で提供しているところもあります。

地域によっていくつかの団体が存在しているので、ネットなどで「お住いの地域名 アニマルセラピー 利用」と検索して確認してい見ましょう。また、団体によってはアニマルセラピーの求人や資格認定(NPO法人日本アニマルセラピー協会)を行っているところもあるので、気になる人はお住まいの地域で探してみることをお薦めします。

(9)アニマルセラピーを利用する際の注意点

前述の通り、アニマルセラピーには、動物自身の負担、動物が苦手、アレルギーの問題が挙げられます。また、利用するにあたっては以下の様な注意点があります。

無理強いしない

利用者においては、動物が苦手な人もいます。そういった方にアニマルセラピーを無理強いすると、本人だけでなく動物への負担も大きくなるので、それらを考慮する必要があります。

衛生面への配慮

高齢者にアニマルセラピーを行う場合、衛生面への配慮が欠かせません。特に、高齢者は抵抗力が低下している可能性があるので、感染症(人獣共通感染症)予防をする必要があります。また、アニマルセラピーに用いる動物に関しても、ワクチンの投与、寄生虫の駆除、シャンプーや爪切り等の衛生面のメンテナンスも行います。実施にあたっては、動物が高齢者の口をなめない様にし、アニマルセラピー終了後には手を洗うようにします。

事故の防止

アニマルセラピーに用いる動物は、基本的なしつけがされている必要があり、セラピストが行動をコントロールしなければなりません。そのため、アニマルセラピーの現場に出るまでには、適性が判断され、問題のある動物は患者と接することのない様にし、事故を未然に防ぐ必要があります。

また、利用する側である高齢者が動物に攻撃性を示す可能性もあるので、実施にあたってはまずは施設管理者との協議を行う必要があります。

動物の安全の確保

アニマルセラピーで最も負担がかかるのは用いられる動物自身です。そのため、動物のストレスや負担には配慮が必要になります。

また、利用者側からの暴力だけでなく、その動物に与えてはいけない食べ物を周知しておく事が大切です。いずれにしても、動物の安全を確保するために、必要事項の周知徹底、好ましい環境、適切な動物選びは慎重に行うべきです。

(10)アニマルセラピーは今後が期待できる手法

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2658672

アニマルセラピーの需要の多くは、高齢者などを対象とした福祉施設にあるようです。今後超高齢化社会が訪れる事を考えれば、その母数は増えニーズは更に高まることが予測されます。

また、高齢者ばかりでなく、介護の現場では家族や職員の負担軽減のためにアニマルセラピーを用いるケースも多くなっているので、潜在的なニーズが高いといえます。

今後アニマルセラピーの効果がさらに認知されれば、介護の現場では欠かせない存在になるかもしれません。

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