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【シーン別】松葉杖の使い方|身体に合わせるための調節方法や注意点など

移動・歩行
松葉杖を使って歩くのは意外に難しいですよね? 松葉杖の正しい使い方は生活のシーンによって異なってきます。 ここでは松葉杖の使い方を重点的に説明し、体に合うような調整方法など安全に使うための知識も紹介します。
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(1)松葉杖の長さを、体に合うように調整する方法 


出典:https://www.photo-ac.com/

怪我をしたときや、足の力の衰えを感じ始めたときなどにお世話になるアイテムの一つに「松葉杖」があります。

特に、初めて松葉杖を使う人に多いのですが、足を支えるため・足の治療をするために使っているのに、間違えた使用法が原因で足やそのほかの部位の状態を悪化させてしまうケースが時折見られます。

まず、そもそも選ぶべき松葉杖の長さ(高さ)ですが、

杖の先を爪先より約15センチほど前に置き、グリップ(手でつかむ所)を握ったとき、肘がわずかに曲がるくらいの高さ

に調整します。

高さの簡易な求め方としては、成人の場合、「身長から41㎝引いた値」が一般的です。グリップのところに調節ネジがあり、そこで高さを調節します。グリップの位置(高さ)は、足の付け根の高さあたりになります。

(2)松葉杖使用の際の注意 


出典:https://www.photo-ac.com/

松葉杖を使うときには、いくつか注意点があります。

腋で支えない

腋の下には血管や神経があるので、長時間圧迫し続けると神経障害を起こすことがあります。

腋の深い所を横木(腋当て/松葉杖の一番上の所)に乗せて体重をかけることは避け、腋の奥から指3本からこぶし一つ分くらい下の所で、上腕と肋骨でしめつけるようにして支えます。

進行方向へむかって大きく杖を出さない

松葉杖の先を前に出すときに、あまり大きく距離をとるとバランスを崩し転倒の危険があります。とくに地面がぬかるんでいたりする雨の日や足元がすべりやすい所では注意が必要です。

横木が抜けないように注意する

腋で支える必要はありませんが、しっかり横木をはさんでいないと横木が腋からはずれ、転倒や怪我をしている足に思わぬ負荷がかかることにもなり危険です。

(3)一側下肢の整形疾患の場合の松葉杖の使い方 

どちらか一方の足に問題のある場合の松葉杖を使った歩き方では、「3点歩行」がもっともよく用いられている方法です。

「3点歩行」には次の3種類があります。

  • 患側の脚を使わない3点歩行
  • 患側の足に一部負荷をかける3点歩行
  • 患側の足にも負荷をかける3点歩行

それぞれについて詳しく説明していきます。

患側の脚を使わない3点歩行

問題のない側の脚で身体を支え、左右両方の松葉杖を同時に一歩前に出し、前に出した二本の松葉杖を支えにして、今度は問題のない脚を前に出します。

これを繰り返しながら進みます。この歩行方法を繰り返すことで、問題のある側の脚を使わないで進む方法です。

・患側の足に一部負荷をかける3点歩行

ある程度の負荷を患側の脚にかけてもよい場合は、患側の脚を松葉杖で支えるようにして、患側の脚と両方の松葉杖を同時に前に出し、次に問題のない脚を前方に出し、これを繰り返しながら進みます。

患側の足にも負荷をかける3点歩行

患側の脚に負荷をかけながら、患側の脚と両方の松葉杖を同時に前に出し、次に問題のない脚を前方に出し、これを繰り返しながら進みます。この歩行方法が患側の脚にどれくらいの負荷をかけるかは、患側の足の状態等によって変わるので、医師の指示に従って下さい。

片方(一本)だけの松葉杖歩行

治療が進むと松葉杖を二本から一本だけにすることもあります。

松葉杖を片側だけ使用する場合は、問題のない脚側の腋に松葉杖をはさみます。問題のない脚で体を支えながら、松葉杖と患側の脚を同時に前に出し、患側の脚に負担がかからないよう松葉杖で体を支えながら、問題のない脚の方を引き寄せます。

これを繰り返しながら前進します。

(4)両側下肢の整形疾患の場合の松葉杖の使い方

両側下肢に問題のある場合の松葉杖を使った歩き方では、次のような方法があります。

  • 2点歩行
  • 4点歩行
  • 大振り歩行
  • 小振り歩行

それぞれの方法を詳しく説明していきます。

2点歩行

片側の松葉杖と、それとは反対側の脚を同時に出し、次に先とは反対側の松葉杖とその松葉杖とは反対側の脚を同時に出します。右足なら左杖、左足なら右杖、と交互に出して前進します。

4点歩行

片側の松葉杖を前に出し、その松葉杖とは反対側の脚を前に出した杖の近くに引き寄せます。それから今引き寄せた側の杖を前に出し、それからその杖とは反対側の脚を前に出します。

たとえば、左の松葉杖を先に出したならば、次に右足を持っていき、それから右の松葉杖を前に出し、今度は左足を前に出すという順番で進みます。この歩き方においては、前に出している脚あるいは杖以外の3点が常に体を支えている形になります。

大振り歩行

両方の松葉杖を同時に前に出し、両方の杖で体を支えるようにしながら、両脚を振り出すようにもってきて、松葉杖をついた地点より前に出します。これを繰り返しながら進みます。

小振り歩行

先の大振り歩行のように両方の松葉杖を同時に前に出し、両方の杖を支点にして、両足を松葉杖をついている位置と同じか手前まで振り出します。

(5)階段昇降の際の松葉杖の使い方 


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松葉杖での階段の上り下りは、平地を歩くな愛と比べてバランスや上肢の力が要求されます。

階段を上る場合

階段をのぼるときは、両方の松葉杖でしっかり支えつつ問題のない側の脚をまず階段にのせてからその脚で支えるようにし、松葉杖と反対側(問題のある側)の脚を上げます。なお、この歩行方法では松葉杖が一本の場合も同じ順番になります。

階段を下りる場合

下りるときはまず、問題のない側の脚で支えるようにし、両方の松葉杖と患側の脚を先に下ろします。その次に松葉杖で体を支えるようにして問題のない脚を下ろします。

これを繰り返して階段を下ります。松葉杖が一本の場合も同じ順番になります。

階段の上り下りでの注意点

上るときも下りるときも、松葉杖が身体よりも上の段にあると、腋が突き上げられる形になり非常に危険なので必ず杖が体の位置と同じ段か、下の段になるように注意して下さい。

(6)坂道歩行の際の松葉杖の使い方  


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坂道は傾斜があるものの階段とは違い、基本的には平地と同じ使い方になります。しかし平地を歩行する場合と比して重心を保ちにくいので平地以上に注意が必要になります。

横木(腋当て/腋にはさむ杖の一番上の所)がぶれないようにする

坂道の上りも下りも重心が変わりやすいため、平地以上に横木がぶれないようしっかり上腕と肋骨ではさみます。

松葉杖をあまり前方に出さない

平地でもあまり前に杖を出しすぎるとバランスを崩し危険ですが、坂道では平地以上に出し過ぎに注意する必要があります。杖を前に出し過ぎると、腋にはさんでいる横木もぶれ、重心が変化してバランスを崩しやすくなり危険です。

少し前傾を保つ

坂道では上りも下りも、少し前傾を保つようにします。

(7)松葉杖治療中のときにあると便利なもの

松葉杖を使う生活を送るなかでいろいろ役に立つグッズをご紹介したいと思います。

松葉杖カバー

腋当て用とグリップ(手で握るところ)用があります。

松葉杖を長時間(あるいは長期間)使用すると、
人によっては手にマメができたり、そのマメがつぶれて痛い思いをしたりしますが、
カバーを装着することでクッションが効いて、ワキや手への衝撃をやわらげ負担を軽減します。

杖先カバー

松葉杖の先につけるカバーで、これがあることで、外から帰ってきたときに部屋を汚さずにすみます。

またグリップが効いているので、フローリングの部屋などでもすべらず、装着することで防音効果もあります。

両手が使えるハンズフリーの松葉杖

カナダ製の「アイウォークフリー」という松葉杖は、少し値が張りますが、
両手が使える革新的な松葉杖で、膝より下の怪我でギプスをしている人にはお勧めです。

ギプス用シューズやサンダル

ギプスをすると、普段履いていた靴は当然履けませんが、何も履かないで外出すればギプスが汚れるだけでなく、汚れたギプスのまま部屋に入ることになり大変不衛生です。

そこで、ギプスをしたまま履ける靴の出番です。

ギプスシューズ(あるいはギプスシュー)、ギプスサンダル、キャストサンダル、キャストシューズ、キャストブーツといった呼び方で売られています。防水性や通気性に優れ、軽量で脱着の簡単なものを選ぶとよいでしょう。

シールタイト

ギプスをした足に装着することで、ギプスをしたまま入浴できるアイテムです。水の侵入を防ぐ設計になっているため、包帯やギプスを濡らす心配がなくお風呂やシャワーを楽しめます。

キャスター付きの椅子

足を怪我していると座ることや、座った状態から立ち上がることは大変難儀です。キャスター付きの椅子であれば、座って用事をしたり、家の中を移動することができます。

(8)通勤・通学時の松葉杖使用のコツ


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松葉杖で職場や学校に行く場合は、長い距離を移動する際、傷めている足にできるだけ負担がかからないために、使い方や動き方に注意と工夫が必要になります。

混雑を避ける

電車通勤や通学の場合、時間帯によっては駅構内も電車内も人であふれかえっていて、松葉杖を使う人にとっては危険をともなうこともあります。混雑した電車内は座ること自体が難しく、長時間立っていなければならないことも、松葉杖を使う人にとっては負担になります。

また、出入り口が人でふさがれて電車を降りれなかったり、人に押されてバランスを崩して倒れるという事態も起きかねません。怪我をしている足のためにも、可能であれば少し時間帯をずらして電車に乗るのも安全に目的地に到着するための工夫の一つです。

利用する施設のバリアフリー状況を把握する

通勤や通学で電車を利用している場合は、自分の乗り降りする駅のエレベーターがどこにあるのか、
車椅子の人なども使える広いスペースをもった多機能トイレはあるのかないのか(あるとすればどこにあるのか)といったバリアフリー状況を予めつかんでおくことをお勧めします。

ネットが使える環境にあるならば、鉄道会社のホームページで各駅の案内図やバリアフリー状況についての情報が載っているので確認するとよいでしょう(ネットが使えない場合は、直接電話による問い合わせや駅員に尋ねることができます)。

駅以外でも、目的地に着くまでに利用することになるかもしれない施設等があれば、バリアフリー状況を事前に把握しておくことが勧められます。

最近ではコンビニのトイレでもスペースの広い多機能トイレを設けているところもあります。もしも乗り降りする駅にそのようなトイレがない場合、駅周辺のコンビニのトイレを利用するということもできます。

バスを利用する場合の工夫

バスは車椅子の人などでも利用できるノンステップバスを利用すれば便利です。
ノンステップバスは乗降口に階段がなく、路面との段差も少ないため、乗り降りにおける負担を減らせます。

時にはタクシーの利用も考える

いつも利用するには経済的負担がますが、天候のひどいときはタクシーを利用する手もあります。また、途中までは電車を利用し、自宅と駅の間、駅から職場や学校の間だけタクシーを利用する、といった工夫も必要になる時があるでしょう。

(9)松葉杖で飛行機に乗る場合

松葉杖の機内持ち込みは可能ですが、サイズは「55cm×40cm×25cm」以内に限り、先端が尖っている杖は持ち込めません。

また、機内に持ち込んだ松葉杖は、座席の下や座席の上の収納棚に仕舞うことができます(客室乗務員に預ける場合もあります)。

杖が金属製の場合、金属探知機の反応が考えられますが、事前に申し出ることで機内に持ち込めることもあります。また、座席の予約は前方の通路側を予約することをお勧めします。

前方の座席の方が後方の座席よりも飛行機を降りるときに早く降りることができ、機内での移動や飛行機から降りるときは、窓側よりも通路側の座席のほうがスムーズにいきますし、客室乗務員を呼ぶのにも便利です。

また経済的に余裕があれば座席のランクを上げることで席のスペースが広くなり、その分、足も楽に過ごすことができます。杖のサイズが「50cm×60cm×120cm」以内であれば、荷物として預けることも可能です。

(10)行く場所や杖の使用目的に合わせて、安全に使用しよう


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松葉杖は脚を骨折したり捻挫して歩けなくなったときに、患側の脚を保護しつつ歩行の手助けをしてくれる便利なアイテムです。しかし、使い方を間違えると治療中の脚に思わぬ負荷を与えてしまい怪我の治りを遅らせたり、別の問題を引き起す可能性もあります。

場所ごとの歩き方や正しい状態で使うための調整方法を理解したうえで安全に使用しましょう。

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