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「2035年問題」とは? | 厚生労働省の保健医療政策や介護課題

社会問題
2035年問題とは2035年に発生すると予想される諸問題の総称です。2035年には団塊ジュニアが65歳以上になり、高齢化が一層深刻になる見込みです。この記事では、2035年におこるとされる介護を中心とした諸問題や厚生労働省が発表した「保健医療2035」について解説します。
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(1)2035年問題とは


出典:https://www.photo-ac.com/

2025年、日本では団塊の世代がすべて75歳を迎え、後期高齢者となります。これは全人口の実に5人に1人にあたり、65歳以上を含めると3人に1人に及びます。これは、人類がこれまで経験したことのない「超々高齢社会」の到来を意味しています。

このように、人口と労働人口が同時に減少し、少子高齢化が進行しているのは先進国では日本だけで、たとえばアメリカでは人口が増加しており、ドイツでは若干人口は減少しているものの、労働人口は増加しています。

このため、日本においては、持続可能性を維持しながらより多くの国民が納得できる日本独自の新しい社会保障のモデルが必要とされていて、これらの課題を「2025年問題」といわれています。

さらに、2035年には団塊ジュニアが65歳以上となる一方で、団塊の世代は85才となり、寿命を迎える年齢に差し掛かります。その際、爆発的に介護サービスを必要とする後期高齢者が増加する「2035年問題」が起こることも予測されています。

(2)2035年の高齢化率

2012年に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口」における出生中位・死亡中位推計結果によれば、2015年時点で団塊の世代が65歳以上となり、高齢者人口は3,392万人となりますが、2025年には3,657万人に達すると見込まれています。

その後も高齢者人口は増加し続ける一方で総人口は減少していくと予測されるため、高齢化率は上昇が続き、総人口の33.4%、およそで3人に1人が高齢者となるというのが日本の2035年の姿です。

また、2042年以降、高齢者人口は減少に転じるものの、依然出生数を上回ることが予測されるため、高齢化率の上昇は止まらず、国民の約2.5人に1人が65歳以上の高齢者となる社会が到来するとも予測されています。

このような高齢化率の上昇が2035年問題の背景となっています。

(3)2035年の単独世帯数

2035年問題において、家族類型別の世帯をみると、2015年に1,842万世帯だった単独世帯は一般世帯総数が減少に転じる2023年以降も増加し続け、2032年以降は減少していきますが、2040年時点でも2015年より153万世帯多い 1,994万世帯となります。

そして、一般世帯総数に占める割合は2015年には34.5%だったものが2040年には39.3%へ4.8 ポイント上昇すると予測されています。

また、世帯主が65歳以上の世帯数も一般世帯総数よりも増加率が高いとされていて、総世帯数に占める割合は2015年の36.0%から2040年の44.2%へと大幅に上昇し、さらに世帯主が75歳以上の世帯では2015年の46.3%から2040年には54.3%へと拡大するため、世帯の高齢化も一層進む見込みです。

(4)2035年問題において予想される経済の問題

2035年問題において、日本はさまざまな課題を抱えていますが、経済に関しては少子化や高齢化、人口減少、単独世帯の増加などの人口動態の変化によって、経済面をはじめとした地域間格差も拡大し、一部地域の存続が困難となる可能性もあります。

また、相対的貧困や世代間格差も拡大することにより、財政状況は危機的な状態に陥ることが予測されます。現在日本ではすでにGDPの200%を超える公的債務を抱えていますが、人口減少に伴う経済社会の激変によって2040年度過ぎには債務残高が500%まで膨張し永遠に返済が不可能になるともいわれています。

(5)2035年問題において予想される介護の問題


出典:https://www.photo-ac.com/

2035年問題における介護に関する課題としては、介護需要が拡大することによって、介護サービスや介護予防サービスにおける介護職員や介護施設が不足することが挙げられます。

また、公費や保険料負担の拡大なども予測されることから、介護サービスを必要とする各世帯それぞれの負担は一層重くなっていくものと考えられます。

2035年問題の対策には、介護サービスの質と⽣産性の向上が欠かせませんが、それには官と民がそれぞれの役割を明確にするとともに、質と生産性向上における展望を共有して、必要な対応を効果的かつ効率的に行っていくことが求められています。

(6)2035年問題において予想される医療の問題

2035年問題では、保健医療に関しても多くの課題を抱えています。現在でも生活習慣病や多疾患といった疾病の慢性化や複雑化は進んでいるのですが、2035年には現在にも増してさらなる疾病構造の慢性化、複雑化が起こることが予測されています。

これにより、保健医療に対するニーズは増加するだけでなく多様化が起こり、他の福祉サービスや保健医療サービス同士のミスマッチが懸念されています。

実際に、現在でもすでに医療従事者の専門細分化によって、過剰診断や過剰治療、過剰投薬、重複受診などが起こっています。このため、緊急の場合の対応から、健康診断の結果についての相談までを幅広く行うプライマリ・ケアの実現が求められます。

2035年問題ではさらに、以下のようなことが課題とされています。

  • 複雑で高度化する技術革新への対応
  • 医療従事者への過度な負担の軽減
  • 医療の透明性の確保や説明責任不足の解消

(7)2035年問題における政府の取り組み

2035年問題を見据え、厚生労働省では医療技術の進歩や、変化する保健医療の環境への対応を目指すべく、2015年から「保健医療2035」と呼ばれる策定懇談会を開催しています。

この懇談会では、2035年問題を展望し、20年後を視野にビジョンを構想し、保健医療において守らなければならない基本理念や価値観のほか、変革の方向性についても検討されています。

保健医療2035は、いまだかつて人類が経験したことのない少子高齢社会を乗り越えるため、保健医療の機能を発展させることはもとより、日本ばかりでなく、世界の繁栄と安定に貢献するために従来の発想や価値観を転換し、技術革新などを最大限活用して具体的な改革を進めていく方向性を示すための提言です。

(8)厚生労働省が発表した「保健医療2035」の基本理念


出典:https://www.photo-ac.com/

2035年問題に対応するため、保健医療2035では目標の実現のために、以下のような3つの基本理念が掲げられています。

公平・公正(フェアネス)

将来世代に渡り、職業や年齢、所得、家族の有無などによって健康水準に差を生じさせることなく、誰もが安心して納得でき、医療サービスの価値に応じた評価が行う。

自律に基づく連帯

コミュニティや日常生活のにおいて、一人ひとりが役割を主体的に果たすとともに、個人の自立のみに依存せず、必要十分なセーフティネットを構築し、社会から取りこぼされる人を生じさせることなく、保健医療への参加を促す仕組みづくりをする。

日本と世界の繁栄と共生

保健医療への投資によって日本のみならず、世界の経済・社会システムの安定と発展に寄与し、保健医療を国力のの柱として地球規模の課題解決を主導するとともに、国際社会との協働によって平和と繁栄の中で共生できる世界を構築する。

(9)保健医療2035の具体的なアクション

2035年問題に対応するため、保健医療2035では3つのビジョンが掲げられ、それぞれに具体的なアクションが提示されています。

リーン・ヘルスケア~保健医療の価値を高める

~2020年

医療技術評価の制度化や施行など

~2035年

医療提供者の技術や医療用品の効能などを患者側の価値によって評価し、診療報酬点数に反映するなど

ライフ・デザイン~主体的選択を社会で支える

~2020年

効果が実証されている予防の積極的推進など

~2035年

健康における社会的決定要因を考慮したコミュニティやまちづくりなど

グローバル・ヘルス・リーダー~日本が世界の保健医療を牽引する~

~2020年

健康危機管理体制の確立など

~2035年

感染症の封じ込めのほか災害時における支援などで健康危機管理に関して国際的に貢献する機能を大幅に強化するなど

(10)2035年問題を理解して将来に備えよう

健康長寿でありたいという思いは世界中の誰もが男女や年齢を問わず持っているものです。しかし、そのニーズを満たす力を、経済成長の鈍化と人口動態の変化などにより、財政は年々失ってきているのです。

要は、サービスの従事者の数の増加が、医療費をはじめとする社会保障費の急増に追いつくがどうかが、2035年問題の本質なのです。

今後はこれまでのような部分的な制度改正を繰り返すだけでは保健医療制度の持続可能性を確保することはできません。そのため、われわれ国民一人ひとりも、2035年問題を正しく理解して、長期的な視点に基づいて環境に適応し、将来に備えることが求められています。

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