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国民年金を未納するとどうなる?差し押さえまでの流れ・対処法・デメリット

公的制度
現在、国民年金の未納が大きな社会問題となっています。保険料の支払い対象とならない低所得者や学生、納付免除・猶予が適用された人を除くと年金の納付率はおよそ4割といわれています。未納が続くと高額な延滞金が発生し、財産の差し押さえや将来年金がもらえないだけでなく、いざというときの障害年金や遺族年金の受給もできません。本記事では、そんな国民年金について、払わなかったらどうなるのか、ということや、差し押さえまでの流れ、「払えない」と気づいた時にすべきことなどをまとめて説明していきます。
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(1)国民年金の未納率は高い

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2285804

国民年金は20歳以上の国民に加入が義務付けられている制度です。

国民年金の保険料を一定期間支払い続けることで、65歳になると老齢基礎年金を受給することができ、老後の貴重な収入源となります。2017年度末時点の国民年金の納付対象者は931万人でした。

2017年度の国民年金の納付率は66.3%で、過去最低だった2011年の58.6%以降は6年連続の上昇となっています。後納された分も含めると2015年度の最終納付率は73.1%でしたが、過去最高だった1992年の85.7%と比較すると現在の納付率の落ち込みがよくわかります。

この納付率は、経済的な事情で保険料を支払えない低所得者や学生、納付を免除・猶予されている人は算出の対象外となっているので、実質的な納付率はおよそ40%程度といわれています。

つまり、「年金制度が破綻するのではないか?」「受け取れる金額が保険料の払い込み額より少なくて、損をするのでは?」という懸念から、納付対象者が保険料を支払わない”年金未納”が増加し、社会問題となっているのです。

(出典:朝日新聞デジタル

(2)国民年金を未納するとどうなる?

現在、およそ3割の人が年金未納の状態となっているため、「そんなにたくさんの人が保険料を支払っていないのなら、自分も払わなくていいのでは?」と思ってしまうかもしれません。

しかし、国民年金を未納のまま放っておくと、主に

  • ”強制徴収”や”財産差し押さえ”の対象になる
  • 老齢基礎年金が受け取れない
  • 障害年金が受け取れない
  • 遺族年金が受け取れない

という4つの大きなデメリットが生まれ、最終的に大きな損をしてしまうことになるのです。以下、それぞれについて説明していきます。

未納が続くと「強制徴収」や「財産差し押さえ」の対象になることも

先述したように、年金未納の割合が増加してきています。そんな「年金未納問題」を解消すべく、政府は、年々「強制徴収」を強化しています。

具体的には、保険料を納めていない場合、日本年金機構から電話や文書での催促が来るようになります。

この催促を無視してしまうと「最終催告状」、続いて「督促状」が届き、これ以降は滞納すると年14.6%という高額な延滞金が発生します。

「最終催告状」が届いた人は”経済的に保険料の支払いができるはずなのに滞納している、悪質な滞納者だ”と国が判断しているということになります。

それでも支払いを拒んでいると、「督促状」が届いた時点で年金の時効は無効となるため、強制徴収の対象となります。

この「督促状」が届いても未納が続くと、最終的には強制徴収や財産差し押さえ対象となります。

老齢基礎年金が受け取れない

老齢基礎年金は65歳になると受給ができる、一般的に「年金」といわれるお金です。2018年の支給額は、40年間保険料を支払った場合の満額で779,300円/年です。

保険料を支払っていない期間があるとその分支給額は少なくなりますし、保険料の支払い期間が通算10年以上ない場合はこの老齢基礎年金の受給資格がないため、当然年金を受け取ることはできません。

障害年金が受け取れない

国民年金加入者が病気や事故で障害を負った場合、65歳になっていなくても年金を受け取ることができ、これを「障害年金」といいます。

受け取れる金額は障害の等級によりますが、

  • 1級の場合で974,125円
  • 2級の場合で779,300円

を受け取ることができ、

子供がいる場合は子供一人あたり224,300円が加算されます(3人目以降の子供は一人あたり74,800円)。

障害により働くことが難しくなった場合でも、国民年金の保険料をしっかり払っていないと、貴重な収入源である障害年金を受給することができなくなってしまうのです。

遺族年金が受け取れない

遺族年金とは18歳未満の子供を支援する目的の年金制度です。国民年金加入者が亡くなったとき、18歳未満の子供がいる場合に受け取ることができる年金で配偶者のみの場合には支給されません。

仮にきちんと国民年金を納めていた場合、

  • 子供が1人の場合は1,003,600円
  • 2人の場合は1,227,900円
  • 3人の場合は1,302,700円

を受け取ることができます。

一家の大黒柱が亡くなった場合には、支給額が多い遺族年金を受給できなくなってしまうと、経済的に大きなダメージが残っていくケースが多いでしょう。

(3)国民年金を未納してから差し押さえまでの流れ

年金未納者の増加により、2018年度から強制徴収の対象になる基準が強化されています。2014年には年間所得が400万円以上で未納期間が13か月以上の人のみが強制徴収の対象でした。

しかし、2018年度では年間所得が300万円以上で未納期間が7か月以上の人というように対象者となる範囲が広がりました。徴収対象の厳格化により、強制徴収の対象者は現在の30万人から1万人程度増加するといわれています。

強制徴収に至るまでの流れを簡単に示すと、以下の順に処置がとられることになります。

  1. 「未納」
  2. 「最終催告状」
  3. 「督促状」
  4. 「強制徴収(差し押さえ)」

年金納付月の翌日までに国民年金の保険料を納めていないと「未納」の状態に

保険料未納の状態が3か月ほど続くと「特別催告状」が届きます。最初に届く特別催告状は青い封筒、そのまま放置していると黄色、赤と封筒の色が変わり、悪質な滞納者であると判断されます。

特別催告状に記載された期日までに保険料を納めない場合、延滞料が上乗せされることや世帯主、配偶者の財産を差し押さえることなどが記載されています。

特別催告状には、経済的な理由で保険料の納付ができない場合に、免除や猶予の申請を行うように促すという目的もあります。

特別催告状で国民年金の保険料を納めなかった場合、「最終催告状」が届きます

最終催告状では納付書に記載してある期限までに保険料を支払わない場合には財産差し押さえの滞納処分を開始することが明記されています。また、この段階で納付をしないと延滞金が発生してしまいます。最終催告状は、2016年度には8.5万通が送付されました。

最終催告状でも国民年金の保険料を支払わなかった場合、「督促状」が届きます

督促状の段階から年14.6%もの延滞金が発生します。2016年度には約5万通の督促状が送付されました。督促状が届いた場合は”年金の2年時効”は中断され、強制徴収の対象となります。

さらに、この差し押さえの対象となるのは本人の財産だけでなく、世帯主や配偶者の財産も含まれます。

(4)督促状が届くとどうなるのか

国民年金の未納が続き、最終催告状が届いても保険料を納めなかった場合、「督促状」が届きます。

経済的に保険料の納付がどうしても難しいという場合には、必ず督促状が届くまでの段階で年金事務所に分割払いや納付免除、納付猶予ができないかを相談に行きましょう。督促状が届いてしまった以降は、相談に行っても、保険料の分割払いをすることは認められなくなります。

なお、この督促状の段階になると、連帯納付義務がある配偶者や世帯主にも通知が届きます。

督促状に記載されている納付期限までに保険料を納めない場合には最大で14.6%の延滞金が発生し、納付期限が過ぎた場合、差し押さえによる強制徴収となります。年金の時効は2年ですが、督促状が届いた段階で時効はストップします。

高額な延滞金が上乗せされた保険料を納付するか、差し押さえによる強制徴収かのどちらかしか選択肢はありません。

(5)国民年金未納の結末である差し押さえ

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1689463

督促状が届くのは、”収入や資産があるのに保険料を納めていない悪質な滞納者である”と国に判断されているということです。督促状が届いた後も無視を続けた場合、「差押予告通知書」が届きます。

これは、財産の差し押さえや公売をして滞納している保険料を強制的に徴収するという予告です。

差し押さえられるのは口座にある現金だけではなく、給料、車やバイク、不動産、生命保険、自営業の場合は売掛金などといった事業資金までが対象となります。差し押さえ対象となるのは、本人だけでなく配偶者や世帯主の資産も含まれています。

差し押さえが実行される前には、滞納者本人だけでなく配偶者や世帯主も含めて保険料を支払う能力があるかどうかを事前にチェックしているため、「払えない」といって回避することはできません。

(6)国民年金の強制徴収対象

差し押さえの強制徴収対象となるのは、年間所得が300万円以上で保険料を7か月以上滞納している人です。2018年から強制徴収の対象範囲が拡大され、2013年は年間所得400万円以上、滞納期間13か月以上が対象でした。

「年間所得」とは額面の金額ではなく、税金等を差し引いたあとの「課税所得」のことなので、実際には額面の年収で440万円程度の人が対象となります。この年間所得は世帯ごとの所得であるため、滞納者本人がこの額に満たない収入の場合でも、配偶者の収入を合わせて超える場合には強制徴収対象となります。

現在の日本の平均年収は420万円といわれているので、”平均以上の十分な収入を得ているにも関わらず、国民年金の保険料を納めていない”ということになります。

(7)未納者・滞納者に対する徴税強化

年金の強制徴収対象は年収300万円以上で13か月以上の滞納者でしたが、2018年1月には年間所得300万円以上で7か月以上の滞納者に変更されるという発表がありました。年間所得の基準は、最初は400万円だったものが350万円になり、今回の変更では300万円と、年々引き下げられています。

この変更により強制徴収の対象者は37万人になると予測されています。

実際に、2010年には3379件だった差し押さえ件数も2013年には10,476件が対象となり、強制徴収件数は増えています。

要するに、現在の強制徴収対象者に属さないからと言って、国民年金の未納・滞納を安心してできるわけではないのです。

ですから、払える人はきっちり保険料を支払い、経済的に払えない、という人は、そのまま何もせず放ったらかしにしておくのではなく、免除・猶予の申請を行うようにしましょう。その際の詳しい流れは、この記事の(9)にて説明しています。

(8)過去の未納分を収めることができる「後納制度」

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1504436

保険料を支払っていない期間が長いと、その分将来受け取れる年金が少なくなってしまいます。この状態を救済するために「後納」という制度があり、過去2年分をさかのぼって納めることができます。

年金の受給資格は保険料を通算10年以上納めていることが条件となっているので、後納することで受給資格を満たしたり、老齢基礎年金の額を増やすことができます。

2017年には175,740人が後納制度を利用し、後納された保険料は約191億円でした。2015年9月30日までは過去10年分を、2015年10月から2018年9月までの3年間は過去5年分までをさかのぼって支払える制度もありました。

(9)国民年金を払えない時の救済措置「猶予」「免除」

会社が倒産したり解雇されたり、予期せず収入が途絶えてしまった場合、国民年金の保険料を支払うことは難しくなります。保険料が支払えない場合には「納付猶予」や「納付免除」の手続きを行い、承認されれば”年金未納”にはなりません。

一定額より収入が少ない場合には保険料の免除が適用され、失業により収入がない場合には保険料は全額免除になる可能性が高くなります。免除には全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4段階あります。

猶予を利用できるのは50歳未満で前年所得が一定以下の場合に限られます。

猶予・免除の制度を利用するには住民登録をしている市役所の国民年金担当窓口を訪問し、自分で申請の手続きをする必要があります。

(10)国民年金は、しっかり納めることが大切

”年金未納”は将来年金を受け取れなくなるだけでなく、滞納を続けた場合には財産の差し押さえや高額な延滞金を上乗せして支払わないといけなくなるなど、デメリットしかありません。

老後だけでなく、万が一死亡したときや障害を負って働くことができなくなったときに受け取れる「遺族年金」や「障害年金」も受け取れなくなり、自分だけでなく家族にも迷惑がかかってしまいます。

「収入が少なくて保険料を納めることができない」「突然失業して収入がなくなってしまった」など、経済的に保険料を納めることができない場合でも”年金未納”のままにせず、必ず市役所や年金事務所に相談しましょう。

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