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ネグレクトとは | 意味や事例「セルフ・ネグレクト」も解説

社会問題
「ネグレクト」とは、要介護者が必要としている援助をあえてしない、という介護放棄をことを指します。ネグレクトについては、直接手をあげて行動することを指すわけではないため、虐待をしているという認識が低いですが、最悪の場合には死にいたるケースもある危険なものです。 本記事では、そんな「ネグレクト」の概要や具体的な事例から、その他の高齢者虐待の説明、さらにはネグレクトの原因や対策まで、まとめて解説していきます。
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(1)ネグレクトの意味

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/387303

ネグレクトとは、在宅介護において発生しやすい虐待の一種です。例えば、食事を作らない・出さない、排泄があってもオムツ交換をしない、風呂に入らせないなど、介護を放置することです。

ネグレクトの背景として、普段から行なっていた介護が精神的ストレスの限界に達したとき、『介護放棄』という形で現れるのです。

(2)高齢者虐待とはどのようなことを指すのか

高齢者虐待と言えば、殴る叩くなどを発想する人が多いと思いますが、実はそれ以外にも様々な形のケースが存在します。

高齢者虐待には、大きく分けて以下の5つの種類があります。

  • 身体的虐待
  • 心理的虐待
  • 性的虐待
  • 経済的虐待
  • 介護や世話の放棄・放任(ネグレスト)

それぞれ、以下でくわしく説明します。

身体的虐待

物を投げつける、つねる、叩くといった、身体に直接ダメージを与える虐待にです。顔や手などの普段から肌が露出している部位でなく、服で隠れる胸部や腹部にダメージを与えることが多いです。

デイサービスやショートステイなど、外部の介護保険サービスを利用した際、そちらのスタッフによって発見される場合が多いです。

心理的虐待

介護者の暴言によって対象者の精神的な部分にダメージを与える虐待です。

「臭い!」「汚い!」「邪魔だ!」といった暴言をぶつけることで要介護者を傷つける事例もあれば、威圧的な態度をとったり、無視を決め込んだりと、無言で心理的に圧力をかける事例も含まれます。

性的虐待

キスの強要や陰部を触るという虐待です。家族よりも、介護サービスを提供するスタッフによって行なわれる場合が多いです。

また、排泄を失敗した際など、懲罰的な意味合いを込めて服を着させずに放置することなども性的虐待とされることがあります。

経済的虐待

経済的虐待とは、本人のお金を取り上げて、本人が必要とするものに使わなかったり、介護をする人が勝手に使い込んでしまったりすることを指します。

要介護者は介護サービスを受けることなしには生活が不可能に近い状態にあるため、経済的に立ち行かなくなるとそれはその人の命に関わる問題になります。上記のような例が「虐待」とみなされるのは、それらが要介護者を間接的に、それでいて深いダメージを与えることになるからです。

介護・世話の放棄・放任(ネグレクト/ネグレスト)

ネグレクト/ネグレストとは、冒頭で触れた、介護放棄のことです。介護や支援をしないと、健康で文化的な生活を営む事ができないことを分かっていながら、放置する虐待の種類です。

特に食事を作ったり、介助しないと栄養失調で死に結びつく可能性があり、大変深刻な結果を引引き起こしてしまう危険な虐待なのです。

(3)介護者による虐待がここ数年増加している

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1889668

高齢者の数がどんどん増加するにつれて、『老老介護』や『認認介護』の問題も社会問題になり、やがては虐待の数も増加していきます。

上記でご説明したように、身体的にダメージを与えることがだけが虐待ではありません。

施設入所しており、本人には支払い能力があるにも関わらず、家族がお金を取り上げて支払いをしない経済的虐待も増えています。

(4)ネグレクトの事例①

ネグレクトについて事例を使って分かりやすく説明します。高齢者施設で利用者の支援をするプロであるはずの介護スタッフからうけることもあるネグレクト。

要介護3で80歳の女性は、尿意・便意がありながらも身体を自由に動かすことができずに、ナースコールを押して排泄物が出た事を知らせていました。

ある日の夜勤中、尿意を感じたためナースコールを押して、スタッフを読んでトイレに連れて行ってもらうように頼みました。しかし、そのナースコールに対応したスタッフは「今忙しいから、履いているオムツのなかにそのままして!」と言いその場を離れてしまったのです。

オムツのなかに排泄をするように促されても、そう簡単にできるものではありません。そこで、この利用者は何度も何度もナースコールを鳴らしたのですが、結局部屋に来てくれることなく辛い思いをしたのです。

このように、本来なら介護をしてトイレで出来るはずの排泄介助を行なわないのは、ネグレクトという虐待になります。

(5)ネグレクトの事例②

次に在宅介護でのネグレクトについてです。

要介護2で70歳の男性は、自宅で生活する時間が長く、介護保険サービスはほとんど使っていませんでした。主介護者は長男の嫁でしたが、育児と介護のストレスからとうとう十分な介護が出来なくなってしまいます。

強いストレスが続いたある日、とうとう食事を作らなくなってしまいます。キッチンにあるパンやお菓子を適当に渡すぐらいで、栄養のある食事ができず、遂には栄養失調になり倒れてしまったのです。

食事があれば、本人は自力で食べることができましたが、食事を提供しなかったこの行為はネグレクトという虐待になります。

(6)介護におけるネグレクトは、どのような罪に問われるか

身体を直接傷めつける身体的虐待などの他の高齢者虐待と比べると、ネグレクトという行為は罪の意識を感じずらい部類に入ります。

しかし、ネグレクトは「高齢者虐待防止法」というように、明確に罰されることとして法律に明記されており、罰則として『3ヶ月以上5年未満の懲役』を受けることになります。死に至る可能性があるネグレクトですので、罰則も厳しいものとなります。

(7)ネグレクトは、どこに相談すればよいのか

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1025466

まず大前提として、相談と通報は切り分けて考えなければなりません。高齢者虐待防止法では、虐待の疑いがある段階で通報する義務があります。

通報先として、以下の2つが挙げられます。

  • 『地域包括支援センター』
  • 『自治体に設置された通報窓口』

通報して、それが間違った情報であっても罪になることはありません。通報した人の話を元に、それぞれの機関が調査して事実確認を行います。そして、最終的に解決へと導いてくれる仕組みになっているのです。

ですので、介護者や要介護者などの当事者以外でも、周囲にいて疑いのある点があれば、まずはすぐに通報することが重要です。

(8)新たに問題視されている「セルフネグレクト」

セルフネグレクトとは、自分自身を放置してしまって、生活に必要な適切な支援を受けることがない状況を作り出すのです。たとえば、TVなどでも取り上げられて話題になることもある、いわゆるゴミ屋敷がセルフネグレクトのよい例です。

セルフネグレクトの場合、心理的な理由が影響して自分自身をコントロールできなくなることで問題が大きくなっていくことが多いです。セルフネグレクトが起きると、結果的に自分が不利益な状態になるのはもちろんですが、周囲の人達への悪影響も大いに深刻にとらえられます。

先ほどのごみ屋敷のケースでいえば、異臭問題や火災の原因となるだけでなく、進路の妨げにもなるなど、自分自身の問題だけで解決しないことが、セルフネグレクトの大きな問題点なのです。

(9)介護者・要介護者の周囲の人によるチェック

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1504437

在宅介護の場合、加害者になるのは普段お世話をしている家族が多く、デイサービスなど外部のサービスを利用した際、そのスタッフが異変に気付くケースもあります。虐待を早期に解決するには、本人が発しているサインを見落とすことなく、なるべく早い段階で通報することが重要です。

高齢者虐待を早期発見するためのチェック項目

  1. 頭・顔・頭皮になどに傷がある
  2. 痛いから家に帰りたくないなどの訴えがある
  3. かなりの程度の潰瘍やじょくそうがある
  4. かきむしりや噛むつく行為がある
  5. おびえる・泣くなどの症状がある
  6. 肛門や性器に不自然な傷がある
  7. 体重の変動が激しい
  8. 利用料を払いたがらない

(10)ネグレクトを防ぐためにできること

介護をする人がネグレクトをしてしまう最大の原因はストレスです。そのストレスを少しでも軽減することにより、虐待の可能性を少しでも減らすことができます。では、そのストレスを軽減する方法ですが、周囲の接し方の工夫が大きなものとして挙げられます。

  • 特定の個人に介護の責任を押し付けることなく、理解・協力の姿勢を見せること
  • 介護者が悩んでいたり、考え事をしていたら、その理由が介護に関係あることでもないことでも、積極的に耳を傾けていく

など、自分はひとりではない、ということを示していくことが大切だといえるでしょう。

さらに、介護サービスを提供する事業所側にも、メンタルケアの面でできることがあります。

例えば、介護をしている家族が精神的にも肉体的にも追い詰めらているのを見かけたら、「デイサービスの回数を増やしてみませんか?」と提案したり、直接・ないしは電話越しでの相談を受けたりするなど、負担のかかりすぎない程度に、サービス利用者のメンタルケアをしていくことで、介護者の精神的負担を軽減させることができます。

高齢者虐待をしない・させないために

重要なことは、『できるだけ早めに気付くこと』 です。

当然ですが、虐待を防止するにはまずは介護者自身が自分の気持ちを理解し、上手に介護ストレスと向き合う必要があります。

しかし、それを踏まえても、介護者も人間ですのでストレスマネージメントにも限界があります。自分ではストレスを感じていないと思っていても、限界近くまで来ていることもあるのです。

ですから、そのストレスが爆発する前に、いくつか現れる「サイン」に、いち早く気が付いてあげることができるのは、当事者以外の周囲の人々が主でしょう。主介護者である人を気に掛けて、ストレスが虐待という形で現れないように注意する必要があります。

虐待に気づくことさえできれば、まずはその傷を最小限に抑えるようにするなど、取り返しのつかない状況に陥らないよう、虐待をする側とされる側との間の距離を離すなど、何らかの対応策をとることができるからです。

まずは、本記事で取り扱ったネグレクトをはじめとした高齢者虐待について理解し、周囲にそういった問題が起こっていないかどうか、注意してみましょう。

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