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対症療法とは│原因療法との違い・4つの目的・具体例等まとめ

病気
対症療法とは、病気そのものを治すのではなく、痛みや苦しみをともなう症状をやわらげるための治療法です。それによって、さまざまな効果を期待することもできます。その目的や具体例ついて解説していきます。
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(1)医療の現場で重宝される対症療法とは?

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2281990

病気そのものよりも、症状を緩和することに主眼を置いた治療法のこと

対症療法は、病気によって引き起こされる症状をやわらげるための治療法です。

「対処療法」と勘違いされることがよくありますが、症状に対して行う治療法なので、正しくは「対症療法」です。

具体的には、

  • 鎮痛薬で痛みをおさえる
  • 解熱薬で熱を下げる
  • 抗ヒスタミン薬でかゆみを消す

といった方法が対症療法として挙げられます。

中には、対症療法では病気の根本的な治療につながらず、ただ問題を先延ばしにしているだけなので意味がない、という趣旨の論調も見られますが、実際には、病気の進行や患者の状態によっては対症療法のほうがより効果を上げるケースも存在するため、一概には言えません。

さらにいえば、症状を和らげることで患者の精神的負担も軽減できることから、風邪のような軽症から、ストレスなどが引き起こす心身症、そして死に至る終末期まで、医療の現場ではとても幅広く用いられています。

本記事では、この対症療法について、その目的や具体例について説明していきます。

(2)原因療法との違い

疾病などに対するアプローチとが異なる

原因療法とは、対症療法とは異なり、病気の原因を探り、それを取り除こうとする治療法です。それによって、病気を根治させることが目的です。

たとえば、感染症ならそれを引き起こす細菌やウィルスを、抗生物質や抗ウィルス薬などで死滅させます。そうすることで、感染症による症状と感染症を引き起こした原因、その両方を同時に軽減することができるのが特徴です。

ただし、逆に言えばこの原因療法は結核やコレラ、赤痢のようにはっきりとその病原菌が解明されている病気にしか用いることはできません。

治療の目的が若干異なる

ほかにも、悪性腫瘍を手術で摘出する、アレルゲン免疫療法でアレルギーの原因物質に体を慣らす、という方法も原因療法として挙げられます。

これに対して、対症療法はあくまで症状をやわらげ、おさえることが目的です。原因は分からないまま、あるいは治療法が確立していないというケースも多く、かならずしも完治するわけではありません。

対症療法と原因療法では、このようにその目的が大きく異なっています。

しかし、これら2つの治療法は、それぞれ互いに対立するものではなく、症状をやわらげつつ原因をとりのぞくという、並行した治療が行われるのも一般的です。

(3)対症療法の目的① QOL(クオリティ オブ ライフ)の向上

病気によって引き起こされる症状には、痛みや発熱、せきなど、いずれも苦痛や不快感をともなうものが多くあります。対症療法はそれをやわらげ、穏やかな状態に戻すことを目的としています。

これを、QOLの向上といいます。QOLとは「quality of life」、つまり「生活の質」のことで、人間らしく社会的に満足な生活を送れるようになることを指しています。

かつては、どれだけ苦しい思いをしても、とにかく根治を優先する、あるいは少しでも命を永らえるべきだ、という考え方が医療現場では強くありました。

しかし、近年ではこのOQLに注目して、それを保つための治療法も盛んになっています。そのような状況で、対症療法の重要性もますます高まってきています。

(4)対症療法の目的② 合併症の予防

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/346364

ある病気が原因となって引き起こされる別の病気のことを、合併症といいます。

たとえば、糖尿病は特に合併症の多い病気として知られています。糖尿病になるとインスリンのはたらきがおとろえ、血中のブドウ糖が吸収されにくくなって濃度が高まります。すると、その影響で全身の血管がダメージを受けてしまうようになります。

これが、脳梗塞や動脈硬化などさまざまな合併症を引き起こします。なかでも、腎障害、網膜障害、神経障害は糖尿病の三大合併症として知られています。

このような合併症をふせぐためにも、血糖降下薬やインスリン注射による対症療法が、とても重要な意味を持ってくるわけです。

(5)対症療法の目的③ 自然治癒力の向上

対症療法の目的は?

対症療法の目的のひとつに、自然治癒力を高めるということがあります。

たとえば、風邪を引くと多くの人は市販の風邪薬を飲みます。

しかし、風邪というのはそもそも特定の病気ではなく、軽い感染症のことをまとめて呼んでいるだけです。

したがって、風邪薬もウイルスなどの原因を取りのぞくことはなく、あくまで、せきや熱、鼻水、のどの痛みなどの症状をやわらげるにすぎません。

せきや熱などは、免疫反応

もともと、このせきや熱などの症状は、体内でウイルスを排除するために起こっている免疫反応でもあります。しかし、これがあまりに長引いたり強く出たりすると、ストレスや体力低下によって、かえって抵抗力を下げてしまいます。

風邪薬は、それをうまくコントロールして、体力を回復させつつ自然治癒力を高めていく、という役割も持っているわけです。

このように、対症療法が結果的に病気の根治に結びつくというケースも数多くあります。

(6)対症療法の目的④ 「痛い/かゆい→触る/掻く→症状悪化」という悪循環の予防

飲み薬や塗り薬などで、「痛さ/かゆさ」を軽減する

虫刺されやアトピーでは、かゆみや痛みなどの症状が生じます。それをやわらげようと、つい患部を触ったり掻いたりしてしまいます。

しかし、これは実際に症状がやわらいでいるわけではありません。ただ別の痛みをあたえることで、一時的に痛みやかゆみを感じにくくなっているだけなのです。

むしろ、触ったり掻いたりすることで患部に刺激をあたえ、かゆみをもたらすヒスタミンなどの成分が過剰に分泌されるようになります。すると、それをおさえようと、ふたたびかきむしる。よけいに、痛みやかゆみがひどくなる。このような悪循環によって皮膚がダメージを受け、炎症はますますひどくなっていきます。

一度このようになってしまうと、根治することも難しくなってしまいます。

そこで、痛みやかゆみを飲み薬や塗り薬でやわらげる対症療法が、その予防として役立ってくれるわけです。

(7)対症療法の例【認知症の場合】

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/656664

認知症のなかでもっとも多く、過半数を占めているのがアルツハイマー型認知症です。その原因は、脳内にたまるアミロイドβという異常なタンパク質と考えられています。

しかし、なぜそれが発生するかは、今のところよく分かっていません。

そのため、認知症の患者には薬などで進行を遅らせる対症療法がおもに行われています。

現在、日本では

  • ドネペジル
  • ガランタミン
  • リバスチグミン
  • アセチルコリンエステラーゼ

の4種類の抗認知症薬が用いられています。

  • 「ドネペジル」
  • 「ガランタミン」
  • 「リバスチグミン」

の3つは、いずれもアセチルコリンエステラーゼ阻害薬です。

アルツハイマー型認知症になると、神経伝達物質のアセチルコリンが減少します。これらの薬はその分解酵素のはたらきをさまたげて、記憶障害の症状をおさえる効果があります。ドネペジルのみは、レビー小体異常型認知症にも効果が認められています。

一方、「メマンチン」にはNMDA受容体の活性化をおさえて、過剰なグルタミン酸のダメージから神経細胞を守る効果があります。グルタミン酸は興奮性の神経伝達物質なので、アルツハイマー型認知症に見られるイライラや暴力などの行動・心理症状をおさえ、落ち着かせることができます。

ほかにも、精神的な症状には、向精神薬や抗うつ薬、抗不安薬などが用いられることがあります。

また、音読やゲームなどで脳を活性化し、回想法や音楽療法、芸術療法などで感情を刺激するリハビリテーションも、対症療法の一種として行われています。

(8)対症療法の例【アトピー性皮膚炎の場合】

ステロイドや保湿剤などが例に挙がる

アトピー性皮膚炎は、遺伝をはじめ、住居や食事、ストレスなど、さまざまな環境がからみ合って引き起こされると考えられています。そのため、何が原因かを特定することは難しく、確実に根治する治療法も確立されていません。

基本的には、かゆみや赤みなどの症状をおさえる対症療法が行われます。

なかでも、もっとも多く用いられるのがステロイド外用薬です。皮膚に直接塗ることで、とても高い抗炎症作用が得られます。

ただし、あまり強かったり、長く使い続けたりすると、感染症やニキビ、皮膚炎、多毛などの副作用も出やすくなります。医師の指導があれば安全なので、しっかりしたがうようにしましょう。

ステロイド以外では、炎症をやわらげる効果のあるタクロリムス軟膏、抗アレルギー薬や免疫抑制剤、乾燥をふせぐ保湿剤なども、対症療法として用いられます。

(9)終末期の対症療法である、ターミナルケアとは?

ターミナルとは、日本語で「終末期」という意味です。

つまり、これ以上の延命が難しいと判断された患者に行うケアのことを、ターミナルケアといいます。

そのため、回復を目的とした治療ではなく、残された時間をいかに充実して過ごせるか、という対症療法が中心となります。

特に、終末期になるとほとんどの病気で、より痛みや苦しみが増すようになります。これらを緩和するために、鎮痛剤や鎮静剤の投薬を日常的に行います。また、体が動かせなくなった患者には、入浴や排せつといった介助を行い、できるだけ日常生活をストレスなく過ごせるようにします。

また、終末期の患者は苦痛が続くことで、精神的にも大きなダメージを受けます。心身ともに疲れ果て、死に対する不安や恐怖、残される家族への心配などにも悩まされるようになります。

このような心の面でもしっかりケアを行い、おだやかな最期を迎えられるようにすることがターミナルケアの最大の役割です。

ターミナルケアについて、より詳しい記事はこちら

→『ターミナルケアとは│緩和ケアとの違いやメリットなどについて説明

(10)状況に応じて用いられる対症療法への理解を深めよう

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1504451

対症療法というと、ただ症状をやわらげるだけで、病気を治すわけではない。ただの一時しのぎや気休めだ、という意味で用いられることがいまだにあります。

しかし、症状をやわらげる対症療法は、自然治癒を高めたり、悪循環を防いだりすることで、病気そのものを根治へとみちびく役割もあります。そして何より大切なのが、患者の心身を保つQOLの向上には欠かせない治療法だ、ということです。

軽い風邪から終末期まで。医療現場では、とても幅広い状況で用いられている対症療法。その目的や効果をよく知って、医療そのものへの理解も深めましょう。

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